異世界まではあと何日

於田縫紀

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第8章 片づけているのは何ですか

第30話 第二の特産試作中

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 基本的に1日は昼寝を挟んで2ターンまで。
 そして2ターン目には外出をしない。
 これが現在の私の行動設定というか現況だ。

 だから買い物に行くのは明日。
 本日これからの第2ターンでやる事は買い物と試作の為の下調べ。
 調べる内容は蒲鉾の作り方だ。

 昨日通販で届いた大型すり鉢とすりこぎ。
 手動フードプロセッサー。
 肉挽き器。
 これらが出番を待っている。

 何故似たような機能のものを3種も買ってしまったのだと思われるかもしれない。
 でも仕方ないのだ。

 すり鉢とすりこぎは間違いない方法だが効率が良くない。
 手動フードプロセッサーは業務用に使用した際の耐久性が信頼できない。
 あと機械系だとどこまで細かく出来るかにも不安がある。

 今ひとつ信用できないHowToサイトやサクラの多い通販サイトの評価等まで熟読。
 結果として購入した3種類に絞り込んだのだ。
 なにせヒラリアでの現金収入を支える事になるかもしれない。
 だからある程度お金をかけるのは仕方ない。
 
 Webの海で練り物自作関係について読み漁ること1時間半。
 私は練り物の作り方をほぼ理解した。
 一度荒いミンチにした後、軽く水にさらし、その後きっちり絞って塩を加えて更に細かくミンチにして練り練り。
 これに熱を加えればいい。 

 骨や皮、血合いを綺麗に取り除くと白くなる。
 取り除かないと灰色で舌触りが少しざらついたものになる。
 静岡の黒ハンペンなんてのは取り除かない派の代表だ。

 出来たすり身を板につけて蒸せば蒲鉾。
 ゆで上げればはんぺん。
 棒につけて焼けばちくわ。 
 揚げればさつま揚げ、地方によってはてんぷらと呼ぶものだ。

 勿論細かい材料の違いはある。
 味を調える為に砂糖や味醂を加えてもいい。
 食感の為に卵白や山芋なんてのを加えてもいい。
 片栗粉を少量つなぎとして加えるのもありだ。

 使用する魚もある程度何でも問題ない模様。
 ただ一般的に使われるのは白身魚が多い。
 ヒラリアで食べられている魚も白身が主体。
 蒲鉾だのハンペンだのを作るには都合がいい筈だ。
  
 よし、なら最低限購入するのは、
  〇 白身魚
  〇 片栗粉
  〇 油
といったところでいいだろう。

 塩や砂糖、みりんは在庫がある。
 山芋は取り敢えず今回は使わない方針で。
 ヒラリアで入手できるか不明だし。

 取り敢えず一番参考になりそうなサイトのレシピを印刷。
 向こうへ持っていく参考資料用のバインダーに綴じる。
 よし、これで今日の第2ターンでやるべき事はOK。

 それでは夕食。
 魚は無くなってしまったし、パックご飯の在庫も少ない。
 だから今日はお手軽な即席麺で。

 鍋に水を入れ、魔法で沸騰させてからソーセージと冷凍野菜を入れ、更に加熱。
 即席麺を入れ箸で混ぜつつ更に加熱。
 麺がほどければ完成だ。
  
 丼に移す際になって気がつく。
 どうせ魔法で加熱するなら最初から丼で作っても良かったかなと。

 スープの粉を3割程度入れかき混ぜて、いただきます。
 うん、やはりこのくらいの薄味が好きだ。
 あと久しぶりの即席麺も悪くない。

 向こうにラーメンはあるだろうか。
 後で調べることにしよう。
 明日の分の勉強も少しやっておこうかな。
 買い物に行ったり忙しいだろうから。

 ◇◇◇

 翌日、一般社会人なら定時上がりの頃。
 買い物から帰って1ターン目終了しひと眠りの後、無事起きて2ターン目に突入。
 やはり人が多い処へ行くと疲れる。
 しかも今日は朝市、そこそこ混んでいた。

 朝市と言ってもここの朝市は朝からやっている訳では無い。
 駅前にある少し観光要素が入った普通の商店街だ。 
 だから朝10時くらいに行くとちょうど全部の店が開いたくらいの状態。
 つまり一番品物が揃っている。

 なおお勧めの買い物時は夕方。
 売り切る為に値引きしているものを買い漁るのが正しい。
 しかしその時間は混むし、欲しいものが確実にあるかわからない。

 だから今回みたいな時は朝10時が正解。
 しかし今日は思ったより混んでいた。
 そんな訳で買い出し終了して帰宅後、全てをそのままアイテムボックスに入れ、固形栄養食を食べてそのまま第1ターン終了した訳だ。

 なお混んでいた理由は簡単。
 今日は土曜日だっただけだ。
 こういう生活をしていると曜日感覚がなくなる。

 さて、買って来た魚はカツオ、シイラ、サバ、イワシ。
 この前と種類は同じだ。
 違いはカツオが1匹でシイラが2匹という点だけ。
 この時期安い魚となるとこうなってしまう。
 旬だから安いだけではなく美味しいし。

 さて、まずはシイラからさばくとしよう。
 この前やったばかりなのでやり方は憶えている。
 体表をタワシでこすってぬめりと鱗を落として……

 頭と骨部分はアイテムボックスへ。
 皮はちょい小細工。
 そばつゆにチューブニンニクを投入して造ったつけ汁につけて冷蔵庫へ入れる。

 この前は皮は捨てた。
 皮に毒があるとかいうWeb記事があったから。
 しかしよくよく調べてみると熱を通せば問題ない模様。
 そして揚げて美味しいなんてレシピも発見。
 だから今回は試してみるつもりだ。

 シイラの頭も今回はじっくり食べる予定。
 前回食べて結構な量の肉があるのがわかったから。

 しかしシイラ、基本的には味がさっぱりしすぎ。
 どこかのWebページに塩とオリーブオイルをかけて食べると美味しいとあった。
 今度食べる時はそれを試してみる予定。

 ただまずは本題、蒲鉾を作ってからだ。

 小骨も血合いも取った白身の肉を、まずは包丁で刻みまくる。
 刻んだものを氷水にさらしてまぜまぜ。
 浮いてきた鱗等のごみをとった後、布巾にてがっしり絞る。
 何か旨味が逃げそうで勿体ない気がするが必要な工程だそうだ。

 この氷水混ぜ混ぜ&搾り取りを3回やったら重さを測る。
 今回のシイラミンチ、水晒し済み絞り済みはほぼ1kg。
 これに塩をまず1%入れてフードプロセッサー、だと入らないからすりこぎでごしごしする。

 この時身の温度が上がらないよう、魔法で冷やしながらやる。
 魔法が使えない一般人レシピではすり身を少し冷凍庫で凍らせたり、シャーベット状にした酒を混ぜたりするらしい。

 混ざってきたら塩さらに1%追加。
 更に砂糖を入れ、卵白を入れてゴシゴシ。
 明らかに粘りが出て来たところでタネ完成だ。
 あとはこれを蒸したり揚げたり茹でたりすればいい。

 今までの味の傾向から、シイラの身は油とよく合う気がする。
 なら最初にやるべきはさつま揚げだ。
 どうせ揚げ物をやるならさっきの皮も一緒に揚げてしまおう。

 鍋に油を入れ、魔法で170度まで加熱する……

 ◇◇◇

 揚げたもの、蒸したもの、魔法で全体を熱したもの。
 それぞれ仕上がりは割と異なる。
 
 味そのものはどれもなかなか美味しい。
 市販品より仕上がりは荒いが味はむしろ上品。
 さっぱりした中に旨味がある感じ。

 個人的な好みとしては、
  揚げたもの>魔法加熱>蒸したもの
という順番。

 揚げたのをそのまま食べても美味しい。
 魔法加熱したのを切って板わさにするのもいい。
 蒸したものは食感はぷりっという感じでいいのだがいまいち癖が無さ過ぎる。
 そんな感じ。

 ただ実は一緒に作った皮揚げが一番好みだった。
 よく洗った皮をそばつゆにチューブニンニク入れた汁に30分漬け込んで、片栗粉をたっぷりつけて160度程度の油でじっくりしっかり揚げたもの。

 Webで見たレシピそのままなのだが、これがパリパリでサクサクで少し海苔にも似た海の風味もあって、それでいて魚の味もして非常に美味しい。
 見た目は黒くてよくないのだけれども。

 いや、蒲鉾が美味しくない訳ではないのだ。
 しかしついでに作った皮揚げが一番美味しいというのが妙に悔しい。

 さて、悔しいはともかくとして。
 蒲鉾はそこそこ美味しく出来た。
 これも特産品としては悪くない。
 量産するとしたら蒸したり揚げたりするより魔法仕上げがいいかな。
 手間がかからなくて楽だしかかる時間も短くて済む。

 そんな結論で本日の試作&夕食は終了だ。
 ご馳走様、なんやかんや言って美味しかった。
 余は満足だ。
 片づけをして今日の第2ターンは終了としよう。
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