異世界まではあと何日

於田縫紀

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第7章 特産品を考えよう

第27話 正しい魔法の使い方?

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 幸い今日も外は雨。
 だから早朝散歩は中止。

 もっとも今の私は家を離れる訳にはいかない。
 家でしか魔法を使えない環境でアイテムボックス魔法を使っているから。

 家を出たら……どうなるのかな。
 多分入らなくなってものが出るだけだと思うのだが自信はない。
 ただそんな実験をして大変な事になるのは嫌。
 だから試したりはしない。
 
 さて、アイテムボックスから漬け込んでいる魚を出し、スマホでタイマーをセット。
 漬け込んでいる時間の間にお勉強だ。
 語学の勉強は今日が基礎課程最後の部分。
 今日中に修了試験まで終わらせるつもりだ。

 ◇◇◇

 修了試験の成績は85点で無事合格。
 ただし私としては少しばかり不本意な成績だ。
 何回でも受けなおせるので次は9割を目指そう。
 それとも先に進んだ方がいいのかな。

 魔法の方は第2段階。
 治癒と治療を訓練した。

 この2つの訓練方法はほぼ同じ。
 治癒や治療したい部分の体温、血流、神経、筋肉の動きをじっくりイメージするのがメイン。

 損傷した部分や疲労がたまっている部分、炎症等。
 そういった異常があればその部分に他と違う反応を感じる。
 その感じた反応から正常な状態に戻るよう意識する。
 これが上手く出来れば治癒なり治療が出来るようになるらしい。

 治癒魔法と治療魔法の違いは、
  ○ 主に身体の回復力を強化する事で正常に戻すのが治癒
  ○ 原因を取り除いたり回復行為以外の操作をするのが治療
だそうだ。
 治癒は極端な話、患部に『治れ!』と意識するだけでなんとかなる。
 治療は起動して身体の状態を確認後、どうするか方針を決め、意識しないとならない。
 
 そんな訳で治療魔法にはそこそこ医学的な知識も必要だ。
 その知識項目が結構多くて覚えるのが大変。
 しかしこれが出来るようになればお薬がいらなくなる。
 そういう意味で覚える価値がある魔法だ。

 さて、勉強をしながらしていた事がある。
 出していた干物候補を漬け時間を見ながら収納していたのだ。
 つまりアイテムボックス内には漬け終わり時間を迎えたイワシとサバが出番を待っている。

 それでは作業を開始しよう。
 まずは一番簡単そうな塩味のイワシから。
 キッチンから久しぶりに使うアルミ製の網つきバットを出してきて、上に漬け終わったイワシを開いた面を上にして並べる。
 向こうへ行く前に業務用の干し網を購入するべきだろうか。
 そんな事を考えながら。

 さて、それでは魔法による干物作成だ。
 腹開きのイワシ2匹をじっくり見ながらイメージする。
 全体から程よくふんわり水分が蒸発する姿を。

 魔法が起動している事を感じる。
 表面の色艶が変わっていくのが見える。
 1匹は半生、もう1匹は飴色に近くなるまできっちりと。
 頭部分だけは食べやすいようカリカリになるまで。

 流石魔法、あっという間に干物らしくなった。
 しかし干し上げる時間がかかっていない。
 これは味にどう影響しているだろうか。

 やはり官能評価で調べるべきだろう。
 つまり試食だ。

 このまま魔法で加熱。
 表面だけ少し強めに熱を加え、それ以外もそこそこしっかり温度を上げて。
 中から脂がしみ出してきた。
 いかにも美味しそうだ。
 
 これはご飯が必要だ。
 確かキッチン上の棚に震災用の備蓄でパックご飯のストックを入れておいた筈。
 キッチンへ行って持ってくる。
 なおパックご飯はレンジでなく魔法で加熱。
 この方が早いから。

 それではできたての干物、いただきます。
 まずは半生の方から。

 うむ、正しい干物の味がする。
 ただの焼き魚より少し凝縮した旨みを。
 ただ私的にはもう少し薄味にしても良かったかな。
 とりあえずご飯が進む。

 あと骨は外す方が正解かもしれない。
 日本人は魚を食べる習慣があるけれど、ヒラリアは肉中心。
 ならば手間無くそのまま食べられる方がいいだろう。

 さて、しっかり干した方はどうだ。
 おお、濃い。
 濃いだけではなく質が違う旨さもある。
 魔法で時短した干物だが、これはいいものだ。
 文句なく美味しい。
 後を引く旨さだ。
 
 残念ながら今回この味この種類はこれで終わり。
 しかしこれはいいものだった。
 異世界にイワシはいるだろうか。

 いや待て私、今、アイテムボックスにはサバも干すのを待って待機している。
 砂糖醤油イワシやサバも。
 こいつらの味を確認せねば。
 いや本当は食べたいだけだけれども。

 脳みそが塩味干物をもっと食べたいと訴えている。
 ならサバだ。
 骨や頭、尻尾を片付け、アイテムボックスから漬け終わったサバをドン!

 美味しくなれ、美味しくなれ。
 そう思いつつ魔法で水分を飛ばす。
 乾燥具合は肉の薄い部分が飴色になるまで。
 一夜干し程度も悪くはないが今はこっちの気分なのだ。

 ひっひっひっ、完成だ。
 それではこのまま焼きへと突入。
 しみじみ魔法の便利さを感じる。
 干物を作って焼くには最高だ。

 脂がポトポト染み出てきた、いかにも美味しそうな干物。
 今回は先に背骨周辺をつまんで一気に外す。

 最初に食べるのはこの骨部分、厳密には骨についた肉部分だ。
 干物に限らずこの部分が一番美味しいと個人的には思っている。
 そんな訳でねぶるようにいただく。
 ああ美味しい。

 そして身の方も皮ごとガブリと。
 うん、こっちは塩味もちょうどいい。
 ああ正しく美味しい。
 とにかく美味しい。

 ただヒラリアで商品として出すには、やっぱり頭と骨は取った方がいいだろう。
 普段魚を食べた事がない人でもそのまま食べられるように。 
 私としてはもったいないと思うけれど。
 骨についた身こそ至高だから。

 ただこの味は向こうでもきっと通用する。
 少なくとも私はそう思う。
 勿論知られるまでは売れないだろうけれど。
 その辺は試食販売なりなんなりで周知する事として。

 ああ、充実した昼食だった。
 魚2匹とパックご飯だけだけれども。
 余は満足じゃ。
 残骸をゴミ袋に捨て、バットと箸をキッチンで洗って。

 勉強もしたし塩味の干物も試した。
 とりあえず今回のターンはここで終了させておこう。
 何でもかんでもやると疲れて悲惨な結果になる。
 だからここで一度休憩。
 
 おなかいっぱいで眠くなったので睡眠薬はいらない。
 おやすみなさい……
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