異世界まではあと何日

於田縫紀

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第4章 魔法使いの第一歩

第14話 魔法の基礎? をお勉強

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 目を覚まして時計を見る。
 午前10時ちょっと過ぎ。

 思ったよりがっつりと寝てしまったなと感じる。
 でもおかげで少し考えが整理できた。

 あの理屈っぽい説明は私のような理系をけむに巻く為にわざとそうしているのではないか。
 そんな事を思いつつまたサイトを開く。

『魔法を効率よく使うには魔素マナの性質を知ることが重要です。
 魔素マナは単一種類ですが、環境に応じて幾つかの発現形態をとります。魔法を使用する場合は魔素の形態に応じた機能を意識しましょう』

 魔法と言えばファンタジーの代名詞的代物の筈。
 しかし実際は細菌型マイクロマシンの使い方講座だ。
 でもいい、この方が私には納得しやすい。
 たとえ原理が今の物理でとても扱いきれない範囲であっても。
 だから先へと読み続ける。

『① エネルギー操作型
  虚数空間に貯蔵したエネルギーを三次元空間に任意に出し入れする発現形態です。生物外に存在する魔素マナの6割はこの形態をとっています。
  エネルギーの出し入れによって加熱や冷却が可能である事は勿論、出し入れするエネルギーの移送制御により加速や減速、方位転換等運動方面にも活用可能な形態です』

 いきなり謎技術炸裂だ。
 エネルギー操作自由自在なんてなったら事実上何でも可能だろう。
 物質だって理論上作れる。
 もちろん存在する物質を消滅させる事も可能だ。
 なんて思ったら注意書きがある。

『大量のエネルギーを使用して物質を生成する事はおすすめしません。物質の生成には膨大なエネルギーが必要です。大抵の場合はピコグラム以下の物質を生成するだけで魔法使いの能力を超えてしまう事でしょう』

 E=mc²だから確かに物質生成には大量のエネルギーを必要とする。
 その辺の理屈が現在の科学的知識と一致するところが微妙にファンタジーじゃない。
 なんて思いながら先へと読み進める。
 
『② 物質貯蔵型
  虚数空間にエネルギーではなく特定物質を貯蔵する発現形態です。貯蔵するものは人体を構成する元素全般にわたります。この発現形態と①のエネルギー貯蔵型形態を使用する事により、人間が生物的に生存する為に必要なほとんどの物質を生成する事が可能です』

 なるほど。
 水を出したりするにはこの形態を使用して水を合成する訳か。
 エネルギーから直接物質を生成するより遥かに効率的だ。
 それにこれが使えるなら人造肉なんてのも魔法で出せる筈だ。
 生きていく為には便利かつ必須だなと感心する。

『③ 情報伝達・解析型
  魔法で火を起こす場合、この工程が『燃焼物を取り寄せる』→『酸素と高熱で反応させる』事であると理解し命じる事が出来る術者は僅かです。このように術者の命令を実際の工程に変換する為に必要なのがこの発現形態となります。
  このタイプは次のような動作を行います。
  ⅰ 術者による魔法起動命令を受信する
  ⅱ 多次元空間通信により受信した魔法起動命令の実現方法をデータベースに問い合わせる
  ⅲ 実現方法を受信し、周囲から必要な魔素マナを集める
  ⅳ 実現方法に従って集めた魔素マナを操作する』

 つまり魔法実現の為のデータベースなんてものが存在する訳だ。
 だからこそ知識が足りない人間の祈りのような魔法でも実際に効力を発揮するという訳だろう。
 しかしそのデータベースとやらは何なのだ。
 何処にあって誰が管理しているのだ。
 非常に気になるが、その答は何処にもない。

『この形態の機能によって大抵の病気は魔法で治療可能です。21世紀日本で治療可能な病気はほぼ全てデータベースで網羅している他、一部21世紀日本でも治療方法が確立されていない病気も治療可能です』

 謎のデータベースの件は別として、この事自体は朗報だ。
 つまり私もうつ病治療の薬を持っていく必要が無いという事だから。
 実は薬の件はずっとひっかかっていた。
 そういう意味では安心だ。

『④ 高次元操作型
  認識可能な3次元及び時間次元の他、コンパクト化された膜状空間等の全てにおいて転置及び移動を行う特殊発現型です。これ単独では作動せず必ずエネルギー操作型を必要とします。
  アイテムボックス魔法に使用するという程度だけおぼえておけばいいでしょう』

 怪しい。
 このあっさりとした書き方がだ。
 きっとこれを使用して他にも出来る事があるのだろう。
 例えば世界間移動とか。
 
 しかしこの発動型については私の知識を遥かに超えている。
 というか私が苦手意識のある部分をつんつん突いてくる。
 大学のお勉強で躓いた悪夢が脳裏をよぎるのだ。
 超弦理論だのM理論だのといった難解な大統一系統の理論が。
 カラビ・ヤウ多様体なんて想像できないぞ。

 実際はこの辺、私の頭で理解するにはあまりに難しかった。
 仕方ないから数学のプロ坂入先輩に基礎であるケーラー多様体から教えて貰ったが、それでも理解できなかった。
 一応数式上は追えるのだ。
 けれど脳内でイメージなんて出来やしない。

 しかし当時私がいたのは一応旧帝大理学部物理学科、別名天才の墓場。
 出来る奴はあっさりイメージ可能な模様。
 その辺が天才とそれ以外の違いなのだろう。
 当時の私が身の程というものを嫌と言うほど知らされてしまった事案である。

 当たり前のように理解して私に解説が可能だった坂入先輩もきっと天才側なのだろう。
 私とは違って。
 奴の専門は物理ではなく数学だったけれども。

 そう言えば先輩は今頃元気でやっているだろうか。
 首都圏北部で真面目な公務員を装っている筈だけれど。
 私と同じように似合っていない仕事で参ったりしていないだろうか。
 ここ数年は年賀状のやりとりだけ。
 だから未だ独身である以外の事はわからない。

 でもあの人なら何とかなっているかもしれない。
 私より天才で馬鹿だから。
『俺は自分を騙せる程頭が良くて、自分に騙される程馬鹿だからな』
 そう自分で言っていたし。
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