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第14話 予定外の産物
61 3月の状況
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ついに通貨の使用が開始となった。
とりあえずはビブラム達の対策のおかげで、混乱なく移行したようだ。
しかし初日、うどん店と醸造店が大忙しだった。
両方の店に私の顕現を出した他、ロシュとブルージュにも手伝って貰った上で、更にアルトラまで手伝いに投入。
営業が終わった1時過ぎには、もう全員がぐったり状態だ。
それでも店を閉めた後、醸造店とうどん店の全員で、うどん店の客席を使って会議を実施する。
ここにいるのは、醸造所担当がミマス、エリオラ、エイミ、カジタル、デルファの5人。
製麺所担当がクエルチェ、リーザ、ミミサ、ジョゼ、レクス
の5人で、クエルチェ以外は10代後半、レクスだけ男性だ。
これに本日の手伝いとして、
ロシュ(客が多い時は製麺所で、それ以外は醸造所)
ブルージュ(主に醸造所の会計補助)
アルトラ(主に製麺所の会計補助)
が加わっている。
「初日だからですよね、こんなに忙しかったのは」
リーザの言葉に、クエルチェがふっとため息に似た息をはいた。
「それならいいのですけれどね。この村はまだ200人ちょっとしかいないのよ。今度の雨期にはセキテツから900人来るし、島やアキヅシマから移住してくる人も増え始めている。だからこのくらいは、お手伝いの3人に来て貰わなくても何とか出来るようにしないとね」
クエルチェが言うとおり、この先人口は増えていくだろう。
ビシューからこの村へ逃げてきた人は50人を超えたし、今なら農地が手に入ると聞いてミョウドーから来た家族もいる。
クエルチェの言葉は、更に続く。
「あと醸造所の方は、生産設備を増やさないとまずい気がするわ。ミマス、今日とおなじペースで売れたら、あとどれくらいで在庫がなくなるのかしら」
2桁以上の割り算を使わなければならないから、ケカハ的には結構難しい計算だ。
しかしミマスは、既に計算していた模様。
「どれも1週間持ちません。特にお酒とミリンが心配です。ショーユやミソは1回買えば当分持つから大丈夫だと思いますけれど、お酒やミリンは飲めば終わってしまいますから」
ここで出している酒は。麦の香りがするアルコールという感じのきつい蒸留酒だ。
ほぼ蒸留したままのストレートなもので、成分調整でブレンドしたりはするけれど、寝かしたりはしていない。
ミリンは米ではなく小麦を使い、酒を入れて仕込んだもの。
だから厳密には日本のみりんと違うし、香りも違うけれど、琥珀色の甘いどろっとした液体なのは、日本のみりんと同じ。
この酒とミリンを混ぜて、水で割って、冷やして飲む。
困った事に、これがなかなかに美味い。
柑橘類を搾って加えると、もう最高。
そんな飲み方を教えてしまった私が、きっと悪いのだろう。
そういった贅沢に免疫がなかった皆様が、悲しいくらいにはまってしまった様だ。
「販売制限をつくっておいて良かったよね」
「こんなに簡単にお酒が手に入ることなんて、今まで無かったから」
これまで酒は高価で貴重だったから、普通の村人は行事等の際に1口飲めるか程度だった。
それが普通に買えるようになってしまったのだ。
もちろんアル中が増えるとまずいという事で、酒やミリンは販売制限をかけておいた。
1日に1人、規定の器1つまで。
器の大きさは1合、概ね180ml。
それでも此処で売っている酒はアルコール分がだいたい30%で、みりんは15%。
全部を1日で飲みきったら、間違いなく飲み過ぎだ。
「酒やミリンは毎日売るのではなく、何日かに1回にした方がいいかもしれないわね。それでも醸造所はもっと大きくして、人も倍くらいに増やさないと駄目だと思うわ」
「確かにクエルチェの言うとおりね」
うんうんと私も同意する。
勿論私がいれば、全在を使って瞬時に生産することも可能だ。
しかし出来ればそういったチート無し、この村の人間だけで出来るようにしたい。
魔法を使えるのがチートだという意見は聞かない方針で。
◇◇◇
一方でビシューの方は、不気味な沈黙が続いている。
キンビーラ主導による弱体化計画は、順調に進んでいるようだ。
いつもの昼食会、空は曇りで寒いので温かい肉うどん。
前にも何回か出したけれど、割と好評なので今回も登場だ。
うどんをすすりつつ、キンビーラがビシューに対しての状況を説明する。
「海を仕事とする者、例えば漁民や海運業者は、ほぼビシューから撤退した。それ以外の者も海近くに住む者は、ビシューから逃げだし始めている。
そうやって住民が他に移住しいなくなった場所のほとんどは、高波で削り取って海や島にした」
これまでにキンビーラがやった事については、報告を受けている。
○ 海から5里以内の住民に神託で避難勧告する
○ 避難・脱出に際し、妨害活動阻止の為の監視や船等の脱出手段の提供を行う
○ 食料の供与、脱出先の確保を行う
等だ。
その結果、海近くのかなりの住民を動かす事に成功したらしい。
この活動については、私も手伝っている。
主にやったのは、島の地形改変による受け入れ場所の確保作業と、受け入れた住民への魔法授与、食料の提供。
食料はケカハの村で生産したものではなく、それ以前に収納したものが主だ。
しかしすぐ食べられるような、うどん&うどんつゆセットなんてのも供与している。
援助+布教という気持ちで。
島もいくつか受け取って、ケカハの一部にした。
おかげで私の領地人口が、また千人単位で増えている。
「それでも動かないという事は、モ・トーはどうする気でしょうか」
アルツァーヤの質問に私は頷く。
私もその辺がよくわからないし、知りたいから。
キンビーラは苦い顔をしてかぶりを振った。
「私にもわからない。
戦闘を仕掛けてこないのは、私相手では神力的に勝ち目がない事がわかっているからだろう。沿岸部の住民を逃がす際にも姿を現さない。
しかしこのままでは、ビシューの力は衰える一方だ。なら交渉なり何なりしてくるのが普通だと思うのだが、それもない」
この中では一番ビシューの情報を持っているキンビーラでも、わからないようだ。
いったいモ・トーは何を考えているのだろう。
何もない事は、私にとってはいいことだろう。
しかし何かが起こるかもしれないという状態が続くのは、精神衛生的によろしくない。
とりあえずはビブラム達の対策のおかげで、混乱なく移行したようだ。
しかし初日、うどん店と醸造店が大忙しだった。
両方の店に私の顕現を出した他、ロシュとブルージュにも手伝って貰った上で、更にアルトラまで手伝いに投入。
営業が終わった1時過ぎには、もう全員がぐったり状態だ。
それでも店を閉めた後、醸造店とうどん店の全員で、うどん店の客席を使って会議を実施する。
ここにいるのは、醸造所担当がミマス、エリオラ、エイミ、カジタル、デルファの5人。
製麺所担当がクエルチェ、リーザ、ミミサ、ジョゼ、レクス
の5人で、クエルチェ以外は10代後半、レクスだけ男性だ。
これに本日の手伝いとして、
ロシュ(客が多い時は製麺所で、それ以外は醸造所)
ブルージュ(主に醸造所の会計補助)
アルトラ(主に製麺所の会計補助)
が加わっている。
「初日だからですよね、こんなに忙しかったのは」
リーザの言葉に、クエルチェがふっとため息に似た息をはいた。
「それならいいのですけれどね。この村はまだ200人ちょっとしかいないのよ。今度の雨期にはセキテツから900人来るし、島やアキヅシマから移住してくる人も増え始めている。だからこのくらいは、お手伝いの3人に来て貰わなくても何とか出来るようにしないとね」
クエルチェが言うとおり、この先人口は増えていくだろう。
ビシューからこの村へ逃げてきた人は50人を超えたし、今なら農地が手に入ると聞いてミョウドーから来た家族もいる。
クエルチェの言葉は、更に続く。
「あと醸造所の方は、生産設備を増やさないとまずい気がするわ。ミマス、今日とおなじペースで売れたら、あとどれくらいで在庫がなくなるのかしら」
2桁以上の割り算を使わなければならないから、ケカハ的には結構難しい計算だ。
しかしミマスは、既に計算していた模様。
「どれも1週間持ちません。特にお酒とミリンが心配です。ショーユやミソは1回買えば当分持つから大丈夫だと思いますけれど、お酒やミリンは飲めば終わってしまいますから」
ここで出している酒は。麦の香りがするアルコールという感じのきつい蒸留酒だ。
ほぼ蒸留したままのストレートなもので、成分調整でブレンドしたりはするけれど、寝かしたりはしていない。
ミリンは米ではなく小麦を使い、酒を入れて仕込んだもの。
だから厳密には日本のみりんと違うし、香りも違うけれど、琥珀色の甘いどろっとした液体なのは、日本のみりんと同じ。
この酒とミリンを混ぜて、水で割って、冷やして飲む。
困った事に、これがなかなかに美味い。
柑橘類を搾って加えると、もう最高。
そんな飲み方を教えてしまった私が、きっと悪いのだろう。
そういった贅沢に免疫がなかった皆様が、悲しいくらいにはまってしまった様だ。
「販売制限をつくっておいて良かったよね」
「こんなに簡単にお酒が手に入ることなんて、今まで無かったから」
これまで酒は高価で貴重だったから、普通の村人は行事等の際に1口飲めるか程度だった。
それが普通に買えるようになってしまったのだ。
もちろんアル中が増えるとまずいという事で、酒やミリンは販売制限をかけておいた。
1日に1人、規定の器1つまで。
器の大きさは1合、概ね180ml。
それでも此処で売っている酒はアルコール分がだいたい30%で、みりんは15%。
全部を1日で飲みきったら、間違いなく飲み過ぎだ。
「酒やミリンは毎日売るのではなく、何日かに1回にした方がいいかもしれないわね。それでも醸造所はもっと大きくして、人も倍くらいに増やさないと駄目だと思うわ」
「確かにクエルチェの言うとおりね」
うんうんと私も同意する。
勿論私がいれば、全在を使って瞬時に生産することも可能だ。
しかし出来ればそういったチート無し、この村の人間だけで出来るようにしたい。
魔法を使えるのがチートだという意見は聞かない方針で。
◇◇◇
一方でビシューの方は、不気味な沈黙が続いている。
キンビーラ主導による弱体化計画は、順調に進んでいるようだ。
いつもの昼食会、空は曇りで寒いので温かい肉うどん。
前にも何回か出したけれど、割と好評なので今回も登場だ。
うどんをすすりつつ、キンビーラがビシューに対しての状況を説明する。
「海を仕事とする者、例えば漁民や海運業者は、ほぼビシューから撤退した。それ以外の者も海近くに住む者は、ビシューから逃げだし始めている。
そうやって住民が他に移住しいなくなった場所のほとんどは、高波で削り取って海や島にした」
これまでにキンビーラがやった事については、報告を受けている。
○ 海から5里以内の住民に神託で避難勧告する
○ 避難・脱出に際し、妨害活動阻止の為の監視や船等の脱出手段の提供を行う
○ 食料の供与、脱出先の確保を行う
等だ。
その結果、海近くのかなりの住民を動かす事に成功したらしい。
この活動については、私も手伝っている。
主にやったのは、島の地形改変による受け入れ場所の確保作業と、受け入れた住民への魔法授与、食料の提供。
食料はケカハの村で生産したものではなく、それ以前に収納したものが主だ。
しかしすぐ食べられるような、うどん&うどんつゆセットなんてのも供与している。
援助+布教という気持ちで。
島もいくつか受け取って、ケカハの一部にした。
おかげで私の領地人口が、また千人単位で増えている。
「それでも動かないという事は、モ・トーはどうする気でしょうか」
アルツァーヤの質問に私は頷く。
私もその辺がよくわからないし、知りたいから。
キンビーラは苦い顔をしてかぶりを振った。
「私にもわからない。
戦闘を仕掛けてこないのは、私相手では神力的に勝ち目がない事がわかっているからだろう。沿岸部の住民を逃がす際にも姿を現さない。
しかしこのままでは、ビシューの力は衰える一方だ。なら交渉なり何なりしてくるのが普通だと思うのだが、それもない」
この中では一番ビシューの情報を持っているキンビーラでも、わからないようだ。
いったいモ・トーは何を考えているのだろう。
何もない事は、私にとってはいいことだろう。
しかし何かが起こるかもしれないという状態が続くのは、精神衛生的によろしくない。
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