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第33章 詩織ちゃんの新魔法と裏切りの黒魔女
174 美味しいから仕方ない
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「漁船が工房前から離陸したれす。もうまもなく着くれす」
ジェニーがそう報告があったので、俺は立ち上がり、客間の掃き出し窓を全開にする。
すぐに違和感たっぷりだけれど見慣れた代物が、学校上空からこっちに向かってくるのが見えた。
ルイスの操船で鮮やかにスピードを落として着陸する。
何時見ても色々シュールな風景だ。
「どうだった」
結果はわかっているのだけれど、挨拶として一応聞いてみる。
「ちょっと獲りすぎた。残りは工房の冷蔵庫に解体済みで入っている」
そう言いつつ、ルイスは前に巨大アジの開きをつけ込むのに使ったトロ舟を重そうに持って出てきた。
解体作業を一通りやって、中身をトロ舟に入れてきたらしい。
その後ろでロビーも同じようにトロ舟を抱えている。
更にもう1個トロ舟を、女性陣で抱えている。
「他に荷物は」
「これで大丈夫ですわ」
理奈ちゃんから返事があった。
早速台所は戦場状態。と言ってもスペースの都合でキッチンで戦っているのは香緒里ちゃん、ジェニー、ソフィーの3人。
他は手を洗って大広間でダベリング。ちょうどいいので世田谷姉妹を紹介する。
ルイスは世田谷を見るなり、
「いつもお世話になっています」
と挨拶したので、やはり面識があるようだ。
エイダちゃんが学生会に入るのも問題は無さそう。
「もう少し早ければ、今日の釣り大会もご一緒出来たのですけれど」
「まあどうせ、今日は泊まって宴会していくんだろ」
「私も1年生です。補助魔法科の日吉美雨と申します」
そんな感じで、もう普通に話をし始めている。
と、ルイスが俺に何か言いたそうな顔をしている事に気づいた。
「どうしたルイス」
端っこに寄って聞いてみる。
「修先輩は世田谷先輩と知り合いなのか」
「5年で入った研究室の同僚だ。何でだ」
ルイスは何故か、そこでうんうんと頷いた。
「攻撃魔法科の方で年度末位に色々あったらしいと聞いた。魔法工学科が反則技で優秀な学生を引き抜きいたという噂も聞いたが、事実だったんだな」
「おかげでうちの研究室の男3人で、賄賂代わりの杖を大量生産する羽目になった。ただこの件はオフレコな」
「了解した。確かに助教以上の杖が皆新型になっていた。それもこの関係だった訳だ」
ルイスは何か納得できたという感じで頷いている。
「世田谷先輩は、別の方向から強さを求めたんだな」
それはどう言う意味だろう。
だが何故か、この時の俺はルイスの言葉の意味を聞き損ねてしまった。
何かルイスの言葉と雰囲気に、色々な意味がありそうな気がしたのにも関わらず。
そしておよそ、20分程経過後。
全員で巨大な座卓を囲んで、昼食準備完了だ。
「お昼御飯はカンパチとキハダマグロ、スマのお刺身です。バラハタとロウニンアジは晩御飯で出します。だからちゃんとお腹の中に余裕を持っておいて下さいね。では、いただきます」
香緒里ちゃんの宣言で昼食がスタートした。
刺身と味噌汁と御飯だけという、それだけ書くと質素な昼食。
しかし刺身が豪華すぎる。大皿5枚にそれぞれしっかり量が盛られていて、きっとこれを買うと……
よそう、値段換算すると虚しくなる。
場馴れした連中は、恐ろしい速度で狙った獲物を取って自分の皿へと運ぶ。
最初はその勢いに怯んでいた世田谷姉妹も、直に状況を察してその戦いに加わった。
さすが攻撃魔法科、反応が早い。
俺は例によって、のんびりペースでゆっくりと食べる。
この競争にはついて行けない。
それに選ばなければ、刺身が完全に無くなる前にある程度食べられる。
今までの経験からそれがわかっているから。
ちなみに今の人数は13人。
これに由香里姉達が戻ってくれば17人だ。
多いよな、やっぱり。
買い出しても買い出しても食料の減りが早いのは、もう仕方ない。
皿の刺身が少なくなると、ルイスがキッチンへ行っては切って追加してを繰り返し、気づくと3升炊きの炊飯器の底が見え始めている。
「夜の方が豪華なんだから、食いすぎるなよ」
そんなルイスの注意も既に遅かった模様だ。
奈津希さん食事当番時のように無限御飯おかわり可能な環境ではないから、被害はそれほどでも無いだろう。
余分に炊いた筈の御飯も全て無くなり、皿の刺身も何度も追加したにもかかわらずなくなったあたりで、昼食終了となった。
「それでは片付け後、午後2時半までが露天風呂が女子専用です。男性は内風呂の方でお願いします」
飯後の休憩タイムに入る。
なお世田谷は片付け後、真っ先に風呂の方へ飛んでいった。
よっぽど露天風呂が気になっていたらしい。
俺は3升の米を研いで、また炊飯器にセットする。
御飯を炊いておいて、炊いた御飯をラップの上に広げて乗せておけば、誰か氷系魔法持ちが急速冷凍してくれる。
それを火炎魔法持ちの鈴懸台先輩なり愛希ちゃんなりに解凍して貰えば、御飯が足りなくなっても大丈夫。
奈津季さんがいない分は、こんな感じで小技と魔法を駆使している訳だ。
でも誰か、火炎魔法と風魔法両方を使って、あの3分間炊飯をマスターしてくれると助かるのだけれど。
ルイスは風魔法の他に火炎魔法も使えるようになった。
それでも奈津希さんの真似は、そう簡単には出来ないそうだ。
やっぱり奈津希さんの魔法は色々な意味で特異だったんだな、と何かしみじみ感じる。
今はフランスのノルマンディー地方だけれど元気だろうか。
まあ詩織ちゃんが時々会いに行っているらしいし、何も詩織ちゃんから聞かないから元気なんだろう、きっと。
ジェニーがそう報告があったので、俺は立ち上がり、客間の掃き出し窓を全開にする。
すぐに違和感たっぷりだけれど見慣れた代物が、学校上空からこっちに向かってくるのが見えた。
ルイスの操船で鮮やかにスピードを落として着陸する。
何時見ても色々シュールな風景だ。
「どうだった」
結果はわかっているのだけれど、挨拶として一応聞いてみる。
「ちょっと獲りすぎた。残りは工房の冷蔵庫に解体済みで入っている」
そう言いつつ、ルイスは前に巨大アジの開きをつけ込むのに使ったトロ舟を重そうに持って出てきた。
解体作業を一通りやって、中身をトロ舟に入れてきたらしい。
その後ろでロビーも同じようにトロ舟を抱えている。
更にもう1個トロ舟を、女性陣で抱えている。
「他に荷物は」
「これで大丈夫ですわ」
理奈ちゃんから返事があった。
早速台所は戦場状態。と言ってもスペースの都合でキッチンで戦っているのは香緒里ちゃん、ジェニー、ソフィーの3人。
他は手を洗って大広間でダベリング。ちょうどいいので世田谷姉妹を紹介する。
ルイスは世田谷を見るなり、
「いつもお世話になっています」
と挨拶したので、やはり面識があるようだ。
エイダちゃんが学生会に入るのも問題は無さそう。
「もう少し早ければ、今日の釣り大会もご一緒出来たのですけれど」
「まあどうせ、今日は泊まって宴会していくんだろ」
「私も1年生です。補助魔法科の日吉美雨と申します」
そんな感じで、もう普通に話をし始めている。
と、ルイスが俺に何か言いたそうな顔をしている事に気づいた。
「どうしたルイス」
端っこに寄って聞いてみる。
「修先輩は世田谷先輩と知り合いなのか」
「5年で入った研究室の同僚だ。何でだ」
ルイスは何故か、そこでうんうんと頷いた。
「攻撃魔法科の方で年度末位に色々あったらしいと聞いた。魔法工学科が反則技で優秀な学生を引き抜きいたという噂も聞いたが、事実だったんだな」
「おかげでうちの研究室の男3人で、賄賂代わりの杖を大量生産する羽目になった。ただこの件はオフレコな」
「了解した。確かに助教以上の杖が皆新型になっていた。それもこの関係だった訳だ」
ルイスは何か納得できたという感じで頷いている。
「世田谷先輩は、別の方向から強さを求めたんだな」
それはどう言う意味だろう。
だが何故か、この時の俺はルイスの言葉の意味を聞き損ねてしまった。
何かルイスの言葉と雰囲気に、色々な意味がありそうな気がしたのにも関わらず。
そしておよそ、20分程経過後。
全員で巨大な座卓を囲んで、昼食準備完了だ。
「お昼御飯はカンパチとキハダマグロ、スマのお刺身です。バラハタとロウニンアジは晩御飯で出します。だからちゃんとお腹の中に余裕を持っておいて下さいね。では、いただきます」
香緒里ちゃんの宣言で昼食がスタートした。
刺身と味噌汁と御飯だけという、それだけ書くと質素な昼食。
しかし刺身が豪華すぎる。大皿5枚にそれぞれしっかり量が盛られていて、きっとこれを買うと……
よそう、値段換算すると虚しくなる。
場馴れした連中は、恐ろしい速度で狙った獲物を取って自分の皿へと運ぶ。
最初はその勢いに怯んでいた世田谷姉妹も、直に状況を察してその戦いに加わった。
さすが攻撃魔法科、反応が早い。
俺は例によって、のんびりペースでゆっくりと食べる。
この競争にはついて行けない。
それに選ばなければ、刺身が完全に無くなる前にある程度食べられる。
今までの経験からそれがわかっているから。
ちなみに今の人数は13人。
これに由香里姉達が戻ってくれば17人だ。
多いよな、やっぱり。
買い出しても買い出しても食料の減りが早いのは、もう仕方ない。
皿の刺身が少なくなると、ルイスがキッチンへ行っては切って追加してを繰り返し、気づくと3升炊きの炊飯器の底が見え始めている。
「夜の方が豪華なんだから、食いすぎるなよ」
そんなルイスの注意も既に遅かった模様だ。
奈津希さん食事当番時のように無限御飯おかわり可能な環境ではないから、被害はそれほどでも無いだろう。
余分に炊いた筈の御飯も全て無くなり、皿の刺身も何度も追加したにもかかわらずなくなったあたりで、昼食終了となった。
「それでは片付け後、午後2時半までが露天風呂が女子専用です。男性は内風呂の方でお願いします」
飯後の休憩タイムに入る。
なお世田谷は片付け後、真っ先に風呂の方へ飛んでいった。
よっぽど露天風呂が気になっていたらしい。
俺は3升の米を研いで、また炊飯器にセットする。
御飯を炊いておいて、炊いた御飯をラップの上に広げて乗せておけば、誰か氷系魔法持ちが急速冷凍してくれる。
それを火炎魔法持ちの鈴懸台先輩なり愛希ちゃんなりに解凍して貰えば、御飯が足りなくなっても大丈夫。
奈津季さんがいない分は、こんな感じで小技と魔法を駆使している訳だ。
でも誰か、火炎魔法と風魔法両方を使って、あの3分間炊飯をマスターしてくれると助かるのだけれど。
ルイスは風魔法の他に火炎魔法も使えるようになった。
それでも奈津希さんの真似は、そう簡単には出来ないそうだ。
やっぱり奈津希さんの魔法は色々な意味で特異だったんだな、と何かしみじみ感じる。
今はフランスのノルマンディー地方だけれど元気だろうか。
まあ詩織ちゃんが時々会いに行っているらしいし、何も詩織ちゃんから聞かないから元気なんだろう、きっと。
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