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第28章 心なき身にもあはれは知られけり~秋・俺の学生会で最後の学園祭~
141 この方、誰のお客様?
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学園祭は無事始まった。
学校行事って毎回学生会長の挨拶があるのだが、これは何とかならないものだろうか。
いい加減慣れたけど、事前準備が面倒だし疲れるのだ。
あと委託販売物品は昨日中に創造制作研究会に渡した。
ちなみに委託販売分の内訳は、
○ 香緒里ちゃん制作の刀 20口
○ 詩織ちゃん制作の刀 20口
○ 多属性用魔法杖 3個仕様7、4個仕様5、5個仕様3
○ 医療用特殊魔法杖 外科仕様7 内科仕様7
○ キーホルダー・ストラップ両用超小型杖 40
程である。
それ以外に、香緒里ちゃんも詩織ちゃんも、数口用意しているようだ。
俺自身も同じタイプの若干の予備と、違うタイプの別在庫を作ってある。
そして俺の集大成、ボールペン型も無事完成した。
元になった本物と外見は全く同じだが、少しだけ重くなってしまった。
筐体の裏側を少し削って魔法銀の導線を複数配置し、更に幾つもの超薄型強化魔法陣が丸まって収納されている。
なお全く同じ外見だが設定が異なるものも、1本作成した。
これは江田先輩への去年の礼だ。
わざと外見を奈津季さん仕様と同じにしたのだが、気づいてくれるだろうか。
まだどちらも渡していないけれど。
さて、学生会事務局の方は、基本は俺と香緒里ちゃんとルイスと詩織ちゃんの4人で回す予定だ。
ジェニーとソフィーは例年通り、迷子担当兼取材・広報班。
1年生3人は基本フリー。
何かあった際に、個々に連絡を取って対応をお願いする予定。
ただ昨年から開催されている滅多斬り大会はルイスが出場するし、居合斬模範演技の前後には俺、香緒里ちゃん、詩織ちゃんの3人が席を外す。
その際は1年3人にも応援してもらう事になるけれども。
それにロビーは修理魔法使用可能で審査魔法持ちなので、何か装備品等に故障や不具合がある場合は第一対応をお願いするかもしれない。
まあそんなところだ。
開会式が終了した後、俺はのんびり歩きながら学生会室に向かう。
今年も人員的な出だしは好調だ。
天気予報も概ね晴れが続くようだしな。
そんな事を思いながら歩いていた時だ。
「学園祭運営本部から学生会長宛て、EU魔法特区から学生会長宛てのお客さんと思われます。学園祭本部で対応中。なお日本語が話せない模様です」
「学生会長津田了解」
何だろう。
俺にEUの特区からの客が来る予定は無いぞ。
それに俺、外国語はまるで駄目だし。
EU特区というとルイスが適役なのだが、彼は今頃滅多斬り大会予選出場中だ。
とすると……フランス語なら向こうもわかるかな。
「学生会長津田から学生会取材班ジェニー又はソフィー、通訳依頼。学園祭本部までお願いします」
「学生会ジェニー了解」
EUの特区の共通語のひとつはフランス語だし、英語も多分通じるだろう。
なので完全に人頼みだけれど、通訳は北米組に投げる。
それでもまあ、俺も行かなきゃならないけれど。
俺が運営本部に着いた時にはもうジェニーとソフィーも到着していた。
わりと大柄で褐色の長い髪の、見慣れない白人女性が座っている。
年齢的には由香里姉か、もうちょっと上の感じ。
この人が例のお客さんだろうか。
さっそくジェニーに状況を聞いてみる。
「この方はEUの特区の大学生のエリカさんと言うそうれす。前にEUの特区で同じ学校にいた時の知り合いが、うちの学校にいるらしいと聞いて訪ねてみたそうれす。この学校で何か会長をしているという話を聞いたそうれすが、伝聞なので自信が無いそうれす」
少なくとも俺でない事は確かだ。
とすると、学生会長なら由香里姉か風遊美さんだろうか。
「学年は何年生か、聞いてみてくれ」
ジェニーが相手と英語でない言語でやりとりする。
「前と同じなら、今は大学3年とのことれす」
とすると由香里姉かと思って、考え直す。
EUと言うと、むしろ風遊美さんだ。
向こうとこっちは新学期の開始時期が違うから、学年がずれる可能性があるし。
しかし風遊美さんの今の名前は、日本に来てからの名前だ。
前の名前はちらっと聞いたけれど、残念ながら思い出せない。
「ジェニー、その人の前の名前を聞いてもらっていいか」
またジェニーがやりとり。
「向こうの学校でははテオドーラ・ローラ・カストナーという名前だったそうれすが、この名前は仮の名前だったそうです。こっちに来てから名前を変えたらしいそうれす」
そうだ、テオドーラだ。間違いない。
「わかった。でもジェニー、ひとつだけ確認。彼女に敵意とかそういうの無いよな」
風遊美さんは、前の学校ではボロボロ状態だったと自分で言っていた。
なので失礼ではあるけれど、念には念を入れてだ。
「全然大丈夫です。私が保証するれす」
「なら本人と連絡をつける。学生会室へ案内しよう」
あえて風遊美さんの今の名前は出さない。
用心し過ぎかもしれないけれど。
風遊美さんへ、SNSでエリカさんという方がEU特区から来ていること、これから学生会室に案内する事を連絡する。
直ぐに返事が返ってきた。
学生会室に向かうそうだ。
「ジェニー、悪いが案内して先に学生会室に向かってくれ。ちょっとお茶菓子を買ってくる」
「了解れすよ」
あと学生会室にも無線連絡。
「学生会長津田から学生会室あて。風遊美さんのお客さんがこれからそっちに向かう。ジェニーとソフィーが引率する」
「学生会室薊野了解」
今の番は香緒里ちゃんだった。
ならちょうどいい。
俺はお茶菓子を買うべく、お馴染み創造製作研究会へダッシュする。
学校行事って毎回学生会長の挨拶があるのだが、これは何とかならないものだろうか。
いい加減慣れたけど、事前準備が面倒だし疲れるのだ。
あと委託販売物品は昨日中に創造制作研究会に渡した。
ちなみに委託販売分の内訳は、
○ 香緒里ちゃん制作の刀 20口
○ 詩織ちゃん制作の刀 20口
○ 多属性用魔法杖 3個仕様7、4個仕様5、5個仕様3
○ 医療用特殊魔法杖 外科仕様7 内科仕様7
○ キーホルダー・ストラップ両用超小型杖 40
程である。
それ以外に、香緒里ちゃんも詩織ちゃんも、数口用意しているようだ。
俺自身も同じタイプの若干の予備と、違うタイプの別在庫を作ってある。
そして俺の集大成、ボールペン型も無事完成した。
元になった本物と外見は全く同じだが、少しだけ重くなってしまった。
筐体の裏側を少し削って魔法銀の導線を複数配置し、更に幾つもの超薄型強化魔法陣が丸まって収納されている。
なお全く同じ外見だが設定が異なるものも、1本作成した。
これは江田先輩への去年の礼だ。
わざと外見を奈津季さん仕様と同じにしたのだが、気づいてくれるだろうか。
まだどちらも渡していないけれど。
さて、学生会事務局の方は、基本は俺と香緒里ちゃんとルイスと詩織ちゃんの4人で回す予定だ。
ジェニーとソフィーは例年通り、迷子担当兼取材・広報班。
1年生3人は基本フリー。
何かあった際に、個々に連絡を取って対応をお願いする予定。
ただ昨年から開催されている滅多斬り大会はルイスが出場するし、居合斬模範演技の前後には俺、香緒里ちゃん、詩織ちゃんの3人が席を外す。
その際は1年3人にも応援してもらう事になるけれども。
それにロビーは修理魔法使用可能で審査魔法持ちなので、何か装備品等に故障や不具合がある場合は第一対応をお願いするかもしれない。
まあそんなところだ。
開会式が終了した後、俺はのんびり歩きながら学生会室に向かう。
今年も人員的な出だしは好調だ。
天気予報も概ね晴れが続くようだしな。
そんな事を思いながら歩いていた時だ。
「学園祭運営本部から学生会長宛て、EU魔法特区から学生会長宛てのお客さんと思われます。学園祭本部で対応中。なお日本語が話せない模様です」
「学生会長津田了解」
何だろう。
俺にEUの特区からの客が来る予定は無いぞ。
それに俺、外国語はまるで駄目だし。
EU特区というとルイスが適役なのだが、彼は今頃滅多斬り大会予選出場中だ。
とすると……フランス語なら向こうもわかるかな。
「学生会長津田から学生会取材班ジェニー又はソフィー、通訳依頼。学園祭本部までお願いします」
「学生会ジェニー了解」
EUの特区の共通語のひとつはフランス語だし、英語も多分通じるだろう。
なので完全に人頼みだけれど、通訳は北米組に投げる。
それでもまあ、俺も行かなきゃならないけれど。
俺が運営本部に着いた時にはもうジェニーとソフィーも到着していた。
わりと大柄で褐色の長い髪の、見慣れない白人女性が座っている。
年齢的には由香里姉か、もうちょっと上の感じ。
この人が例のお客さんだろうか。
さっそくジェニーに状況を聞いてみる。
「この方はEUの特区の大学生のエリカさんと言うそうれす。前にEUの特区で同じ学校にいた時の知り合いが、うちの学校にいるらしいと聞いて訪ねてみたそうれす。この学校で何か会長をしているという話を聞いたそうれすが、伝聞なので自信が無いそうれす」
少なくとも俺でない事は確かだ。
とすると、学生会長なら由香里姉か風遊美さんだろうか。
「学年は何年生か、聞いてみてくれ」
ジェニーが相手と英語でない言語でやりとりする。
「前と同じなら、今は大学3年とのことれす」
とすると由香里姉かと思って、考え直す。
EUと言うと、むしろ風遊美さんだ。
向こうとこっちは新学期の開始時期が違うから、学年がずれる可能性があるし。
しかし風遊美さんの今の名前は、日本に来てからの名前だ。
前の名前はちらっと聞いたけれど、残念ながら思い出せない。
「ジェニー、その人の前の名前を聞いてもらっていいか」
またジェニーがやりとり。
「向こうの学校でははテオドーラ・ローラ・カストナーという名前だったそうれすが、この名前は仮の名前だったそうです。こっちに来てから名前を変えたらしいそうれす」
そうだ、テオドーラだ。間違いない。
「わかった。でもジェニー、ひとつだけ確認。彼女に敵意とかそういうの無いよな」
風遊美さんは、前の学校ではボロボロ状態だったと自分で言っていた。
なので失礼ではあるけれど、念には念を入れてだ。
「全然大丈夫です。私が保証するれす」
「なら本人と連絡をつける。学生会室へ案内しよう」
あえて風遊美さんの今の名前は出さない。
用心し過ぎかもしれないけれど。
風遊美さんへ、SNSでエリカさんという方がEU特区から来ていること、これから学生会室に案内する事を連絡する。
直ぐに返事が返ってきた。
学生会室に向かうそうだ。
「ジェニー、悪いが案内して先に学生会室に向かってくれ。ちょっとお茶菓子を買ってくる」
「了解れすよ」
あと学生会室にも無線連絡。
「学生会長津田から学生会室あて。風遊美さんのお客さんがこれからそっちに向かう。ジェニーとソフィーが引率する」
「学生会室薊野了解」
今の番は香緒里ちゃんだった。
ならちょうどいい。
俺はお茶菓子を買うべく、お馴染み創造製作研究会へダッシュする。
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