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第24章 新人さんを確保しよう!
121 Dは道場破りのD
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今年もやっぱり留学生が多い。
ざっと4割が留学生。
なので例によって、学校案内等はジェニーとソフィーに頑張ってもらう。
具体的には英語とフランス語担当として。
おかげで、今年もなんとか乗り切った。
新入生懇話会や学校案内、今日の研究会や各事務局等の紹介と、一通り終わった次の日の午後3時。
俺は香緒里ちゃんやジェニー、ルイスとともに学生会室に詰めていた。
本当はロビーと工房で遊んでいたいのだが、『せめて4月中は会長らしく学生会室にいて下さい』と香緒里ちゃんに駄目出しされてしまったのだ。
なので工房は、ソフィーとロビーと詩織ちゃんという組み合わせで行っている。
まあソフィーはほぼ監視というか、ネットサーフィンで時間を潰している様子だが。
ロビーのバイク改造はなかなかうまくいっている。
少なくともエンジンのトルクは冗談みたいに増えた。
審査魔法によれば最高25N・m位なので、ざっと倍だ。
しかも低回転域からフラットにトルクが出る設定になっている。
本当はもっと出せるのだが、エンジン本体のパーツの強度が不安。
なのでこれでも抑えているのだ。
あとは香緒里ちゃんが使っているバネ屋から、程よいバネを取り寄せて……
という作業は、残念ながら学生会室にいる今は出来ない。
仕方なく真面目な顔をしながら別の課題、例の最強のお守り用論文集めをしているところだ。
「審査魔法持ちのロビーが入ってくれたのはよかったれすけど、あと2人位欲しいれすね」
「確かに。でも今年はまだネットの方、そういう反応は無いんだろ」
「そうれすね」
と言った所でジェニーのスマホが鳴る。
「ルイス宛て新入生のお客さんが2人、こっちに向かっているそうれす。道場破りだそうれす。いま工房を出たそうれす」
「道場破り、って何だ」
ルイスが訝しげな顔をする。
「拳法や柔道等の格闘技の練習場に行って、そこの一番強い人と戦って勝つことれ、自分がこの練習場の誰より強いとアピールすることれす」
「ああ、俺と奈津希さんでやっていた事か」
そんな事をやっていたのか、君達は。
現会長はそんな事実、知らなかったぞ。
「あれ、知らなかったれすか。学生会HPでも『頭文字D』というタイトルで不定期連載していたれす。ちなみにDは道場破りのDれす」
そんな物騒な連載止めてくれ。
どうせ奈津希さんが面白半分に書いているのだろうけれど。
「あれ面白いよね。特に中盤で氷の女王と戦ってピンチになる回」
「引き分けて露天風呂でお互いの健闘を称え合うれす。あれは良かったれす」
何書いているんだ、奈津季さん。
「接近れす、あと15秒」
机の上をそそくさと整える。
ぴったり15秒後、学生会室の扉が乱暴に開かれる。
「頼もう!」
と現れたのは女の子2人組。
いかにも勝ち気そうなツインテールの女の子と、その後ろにいる一見静かそうなポニーテール女の子。
「いらっしゃい」
ととりあえず俺は2人を歓迎する。
「空いている処はどこでも座っていいれすよ」
「紅茶とコーヒー、温かいのと冷たいのどっちですか」
「ではお言葉に甘えて、紅茶の冷たいので」
「違う!」
ツインテールの方が、既に馴染み始めているもう一人の女の子を制した。
「私達は道場破りに来た! 誰が攻撃魔法科のルイス・ヴィンセント・ロングだ」
「僕だ」
ルイスが軽く手を上げる。
「我々は学生会に試合を申し込む。いざ尋常に勝負願いたい」
「修先輩、ちょっと行ってきていいか」
当然俺は頷く。
「どうぞ。何なら詩織も引っ張って行っていい」
「わかった」
ルイスはにやりと一瞬笑って、そして立ち上がる。
「おー、何か1年前のルイスを思い出すれすね」
「言うな、それは」
ルイスはちょっと苦い顔。
そう言えば1年前の今頃、ルイスは奈津季さん相手に一戦してボロボロ状態になったんだっけ。
歴史は繰り返すなあ、と思いながら3人で生暖かく見送る。
◇◇◇
いつもの屋上露天風呂。
風遊美さんがいないし、ソフィーもロビーと隣同士の樽湯で会話中。
なので俺はぬる湯で思い切り伸びている。
ルイスがぬる湯の対角線上にいるが、彼なら別に気にしなくていいし。
「今日はルイスが大活躍だったみたいじゃないか」
隣の浴槽から奈津季さんが話しかけてくる。
奈津希さんは同じマンションに住んでいることもあり、今でもほぼ毎日この部屋に来ている。
風遊美さんは週1回ペースになったけれど。
それにしても。
「何でそれを知っているんです」
話が早すぎる。
「もうネットで更新していたぞ」
えっ、それはまさか。
「『頭文字D』ですか」
「ああ。そんな名前だったな」
えっ!?
「あれは奈津希さんが書いているんじゃないんですか」
「今は僕が書いている」
ルイスがそう自白。
まさかルイスが、そんなものを書いていたとは。
「元々はルイスが、修行日記として自分用に書いていたんだ。で、面白くないからジェニーと2人で色々直してHPに掲載した。今では完全にルイスが自分で書いている。今日は炎の魔法使いと氷の魔法使い相手に圧勝したようじゃないか」
ルイスは照れくさそうに下を向いた。
「前に奈津希先輩にやられた事と同じ方法だ。魔力は確かに大きいけれど、使い方がまだまだ甘い」
「全開の炎魔法と氷魔法を通り抜けたり、挙句の果てに詩織を1人で戦わせて相手にデコピンさせるというのは意地が悪くないか」
「あれは奈津季先輩が由香里先輩相手に戦った時と同じ、空気の層をつくるだけの魔法だ。詩織に戦わせたのは、それが一番実力差を認識できると思っただけだ」
奈津希さんは頷く。
「確かにあれはやる気無くすよな。こっちは何も出来ないのにいきなりデコピンされるという」
「デコピン5発で戦意喪失した。結構持った方だと思う」
「それで再起不能にならなければな。まあ道場破りする位の根性あれば大丈夫か」
「僕もそう思う。あれはまだまだ強くなれる」
何か相当えぐい戦いをしていたようだ。
新人2人のメンタル面は大丈夫だろうか。
学生会会長としては、ちょっと気になるところだ。
ざっと4割が留学生。
なので例によって、学校案内等はジェニーとソフィーに頑張ってもらう。
具体的には英語とフランス語担当として。
おかげで、今年もなんとか乗り切った。
新入生懇話会や学校案内、今日の研究会や各事務局等の紹介と、一通り終わった次の日の午後3時。
俺は香緒里ちゃんやジェニー、ルイスとともに学生会室に詰めていた。
本当はロビーと工房で遊んでいたいのだが、『せめて4月中は会長らしく学生会室にいて下さい』と香緒里ちゃんに駄目出しされてしまったのだ。
なので工房は、ソフィーとロビーと詩織ちゃんという組み合わせで行っている。
まあソフィーはほぼ監視というか、ネットサーフィンで時間を潰している様子だが。
ロビーのバイク改造はなかなかうまくいっている。
少なくともエンジンのトルクは冗談みたいに増えた。
審査魔法によれば最高25N・m位なので、ざっと倍だ。
しかも低回転域からフラットにトルクが出る設定になっている。
本当はもっと出せるのだが、エンジン本体のパーツの強度が不安。
なのでこれでも抑えているのだ。
あとは香緒里ちゃんが使っているバネ屋から、程よいバネを取り寄せて……
という作業は、残念ながら学生会室にいる今は出来ない。
仕方なく真面目な顔をしながら別の課題、例の最強のお守り用論文集めをしているところだ。
「審査魔法持ちのロビーが入ってくれたのはよかったれすけど、あと2人位欲しいれすね」
「確かに。でも今年はまだネットの方、そういう反応は無いんだろ」
「そうれすね」
と言った所でジェニーのスマホが鳴る。
「ルイス宛て新入生のお客さんが2人、こっちに向かっているそうれす。道場破りだそうれす。いま工房を出たそうれす」
「道場破り、って何だ」
ルイスが訝しげな顔をする。
「拳法や柔道等の格闘技の練習場に行って、そこの一番強い人と戦って勝つことれ、自分がこの練習場の誰より強いとアピールすることれす」
「ああ、俺と奈津希さんでやっていた事か」
そんな事をやっていたのか、君達は。
現会長はそんな事実、知らなかったぞ。
「あれ、知らなかったれすか。学生会HPでも『頭文字D』というタイトルで不定期連載していたれす。ちなみにDは道場破りのDれす」
そんな物騒な連載止めてくれ。
どうせ奈津希さんが面白半分に書いているのだろうけれど。
「あれ面白いよね。特に中盤で氷の女王と戦ってピンチになる回」
「引き分けて露天風呂でお互いの健闘を称え合うれす。あれは良かったれす」
何書いているんだ、奈津季さん。
「接近れす、あと15秒」
机の上をそそくさと整える。
ぴったり15秒後、学生会室の扉が乱暴に開かれる。
「頼もう!」
と現れたのは女の子2人組。
いかにも勝ち気そうなツインテールの女の子と、その後ろにいる一見静かそうなポニーテール女の子。
「いらっしゃい」
ととりあえず俺は2人を歓迎する。
「空いている処はどこでも座っていいれすよ」
「紅茶とコーヒー、温かいのと冷たいのどっちですか」
「ではお言葉に甘えて、紅茶の冷たいので」
「違う!」
ツインテールの方が、既に馴染み始めているもう一人の女の子を制した。
「私達は道場破りに来た! 誰が攻撃魔法科のルイス・ヴィンセント・ロングだ」
「僕だ」
ルイスが軽く手を上げる。
「我々は学生会に試合を申し込む。いざ尋常に勝負願いたい」
「修先輩、ちょっと行ってきていいか」
当然俺は頷く。
「どうぞ。何なら詩織も引っ張って行っていい」
「わかった」
ルイスはにやりと一瞬笑って、そして立ち上がる。
「おー、何か1年前のルイスを思い出すれすね」
「言うな、それは」
ルイスはちょっと苦い顔。
そう言えば1年前の今頃、ルイスは奈津季さん相手に一戦してボロボロ状態になったんだっけ。
歴史は繰り返すなあ、と思いながら3人で生暖かく見送る。
◇◇◇
いつもの屋上露天風呂。
風遊美さんがいないし、ソフィーもロビーと隣同士の樽湯で会話中。
なので俺はぬる湯で思い切り伸びている。
ルイスがぬる湯の対角線上にいるが、彼なら別に気にしなくていいし。
「今日はルイスが大活躍だったみたいじゃないか」
隣の浴槽から奈津季さんが話しかけてくる。
奈津希さんは同じマンションに住んでいることもあり、今でもほぼ毎日この部屋に来ている。
風遊美さんは週1回ペースになったけれど。
それにしても。
「何でそれを知っているんです」
話が早すぎる。
「もうネットで更新していたぞ」
えっ、それはまさか。
「『頭文字D』ですか」
「ああ。そんな名前だったな」
えっ!?
「あれは奈津希さんが書いているんじゃないんですか」
「今は僕が書いている」
ルイスがそう自白。
まさかルイスが、そんなものを書いていたとは。
「元々はルイスが、修行日記として自分用に書いていたんだ。で、面白くないからジェニーと2人で色々直してHPに掲載した。今では完全にルイスが自分で書いている。今日は炎の魔法使いと氷の魔法使い相手に圧勝したようじゃないか」
ルイスは照れくさそうに下を向いた。
「前に奈津希先輩にやられた事と同じ方法だ。魔力は確かに大きいけれど、使い方がまだまだ甘い」
「全開の炎魔法と氷魔法を通り抜けたり、挙句の果てに詩織を1人で戦わせて相手にデコピンさせるというのは意地が悪くないか」
「あれは奈津季先輩が由香里先輩相手に戦った時と同じ、空気の層をつくるだけの魔法だ。詩織に戦わせたのは、それが一番実力差を認識できると思っただけだ」
奈津希さんは頷く。
「確かにあれはやる気無くすよな。こっちは何も出来ないのにいきなりデコピンされるという」
「デコピン5発で戦意喪失した。結構持った方だと思う」
「それで再起不能にならなければな。まあ道場破りする位の根性あれば大丈夫か」
「僕もそう思う。あれはまだまだ強くなれる」
何か相当えぐい戦いをしていたようだ。
新人2人のメンタル面は大丈夫だろうか。
学生会会長としては、ちょっと気になるところだ。
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