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第24章 新人さんを確保しよう!
119 俺とは話があうけれど
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久しぶりのバネ作業だ。
旅行前に全員参加でバネ作業をやったので、納期遅れとか急ぎの品は無い。
ただ春休み後は、学生会行事が続く。
だから出来れば、4月分のノルマはこなしておきたい。
そんな訳で在庫確認も含め、ガシガシと作業を行う。
基本はジェニーが、工場から送られてきた材料バネの開封と確認。
香緒里ちゃんが魔法付与。
俺が製品審査と梱包。
なんとか4月納入分がもう少しで終わりという処まで来た。
時計を見ると12時少し過ぎ。
もうお昼タイムだ。
今日は学生会新2年生組は、ポスターや学内広報の印刷や掲示板貼りをしている。
合流して一緒にマンションに帰って昼ご飯にする予定だ。
バネ作業については、業務量的には、今日はここまででいいだろう。
とすると、気になるのは例の外人のバイク作業の進展だが……
キャブのジェット調整をしているのを見ると、もう少しかかりそうだ。
「何なら俺はもう少しここにいるから、皆が来たら先に行っていてくれ」
小声で香緒里ちゃんに頼む。
「修兄、随分気に入ったようですね」
「そりゃそうだ。魔法工学科でも真に機械いじりが好きなのは少ないしな。肩入れしたくもなるだろ」
一応彼には聞こえない程度の声量で喋る。
と、ジェニーが顔を上げた。
「学生会室をでたところれす」
新2年生組も、間もなく到着か。
今日作業した分を整理して台帳を確認していると、聞き慣れた声が近づいてきた。
「香緒里社長、こっちの進展はどうですか」
「詩織ちゃん、社長は止めて欲しいです」
「へっへっへっ、社長ですしスポンサー様ですから」
詩織ちゃんは、揉み手しながらそんな事を言っている。
で当然、ルイスとソフィーちゃんも一緒に……
あ、ソフィーちゃんが何かバイク修理中の外人を見て固まった。
そして俺には聞き取りにくい早口の英語で何か言っている。
どういう事だろう。
2人は何やら早口の英語でやり取りしているが、俺にはよく聞き取れない。
そこでジェニーが途中で説明してくれる。
「どうもあの人が、ソフィーのBFのロビーさんのようれす」
えっ。
確かによく考えると、ソフィーの言っていた特徴には合致する。しかし……
「てっきり修兄より年上だと思っていました」
香緒里ちゃんの言うとおりだ。
身体がでかくてごついだけでない。
全体的に雰囲気が俺より年上という感じなのだ。
それに今年高専入学なら、バイクの免許はどうしたんだろう。
特区登録だから自分名義だと思うのだが。
「積もる話もあるようですし、今日はテイクアウトを買って、ここで食べましょうか」
香緒里ちゃんの提案に全員が賛成した。
◇◇◇
そんな訳で昼食は、大学カフェテリアからのテイクアウトだ。
ちなみに費用は会社持ちで、領収書代わりのレシートは俺がキープしている。
作業場整備とその謝礼、という事にでもしておこう。
こういう細かい作業の積み重ねが、税金削減につながるのだ。
まあそれはともかく。
いつもの巨大作業台をテーブル代わりに皆で囲む。
勿論ロビーも一緒だ。
「それにしても、来たのなら何故ソフィーのところに顔を出さなかったれすか」
「その前にどうしてもモーターサイクルの事が気になったデス。モト作業が終わったら連絡するつもりだたデス」
「昔の修兄と同じですね」
否定出来ないので黙っている。
「ここの作業場、凄くいいデス。ここの管理者はよくわかっているデス。これは何か専門の研究室の作業場なのかデス」
「ロビー、その前に自己紹介」
ソフィーに促され、ロビーはバツの悪そうな顔をする。
「ロビー・ヤング・ウッズ。16歳、ノースダコタ出身。前はアンティコスティ」
そこで口が止まる。
「あと学科は」
「魔法工学科、入学予定」
「使える魔法は」
「審査魔法と機械制御魔法」
ソフィーに促されつつ答えるが、やはりすぐ口が止まる。
「日本語が苦手なら、ゆっくりでいいですよ」
「違うんです。英語でも普段のロビーはこんな感じです」
成程、なら話しやすい方に話題を変えてやろう。
「なら、あのバイクについて聞いていいか」
俺がそう仕向けるとロビーの口調が変わった。
「アンティコスティは寒すぎて施設が全部室内にあるデス。免許も16歳からだからカーもモトサイクルも乗れないデス。ノースダコタは14歳から免許取れたからいつも乗っていたデス。ここへ来てすぐ16歳になたから早速手続きして買ったデス」
「いいバイクだな。機構がシンプルで、手の入れがいがありそうだ」
「わかってくれるデスか。今はジェットで誤魔化したデスが、ビックキャブ入れて排気系いじってサスのバネレートも上げたいデス。トルクが不足でリアサスが柔いデス」
「タイヤもちょい細いな。多少パワー喰われても、もう少し太いほうが楽しいだろう」
俺とロビーの方を見ながらソフィーがため息をつく。
「こんなに饒舌なロビーはめったに見ません」
「類友、れすよね」
「同病相憐れむ、とも言います」
ジェニーと香緒里ちゃんが何か言っているが、気にしてはいけない。
「それよりここの責任者は誰デスか。会って挨拶したいデス」
「今は俺さ。何もかしこまることは無い」
「なら頼むデス。俺もここを使わさせてデス。ここはいい作業場デス」
「何故そう思う」
「工具や機械類が全部生きているデス。このテーブルだってオリジナルの作業台デス。向こう側の切り欠きもここの溝も、ここに残るバイスの跡も実践的に作って使っている証拠デス。あの工具箱の工具だって、メーカーによらず使い易いものをセレクトしてるデス。工作機械だって元は古いデスが、アップデートされているのは見ればわかるデス」
こいつ、出来る。
工房の隅でバイクの作業をしていただけなのに、見るところはしっかり見ている。
「わかってくれると嬉しいな。正にそれは俺が手を入れた場所だ」
「元の管理者もいいセンスしているデスが、今言ったのは全部最近手を入れた跡デス。それだけここの作業場に愛着を持って手を入れている証拠デス」
やばい、ここまでわかってくれると、俺が惚れてしまいそうだ。
旅行前に全員参加でバネ作業をやったので、納期遅れとか急ぎの品は無い。
ただ春休み後は、学生会行事が続く。
だから出来れば、4月分のノルマはこなしておきたい。
そんな訳で在庫確認も含め、ガシガシと作業を行う。
基本はジェニーが、工場から送られてきた材料バネの開封と確認。
香緒里ちゃんが魔法付与。
俺が製品審査と梱包。
なんとか4月納入分がもう少しで終わりという処まで来た。
時計を見ると12時少し過ぎ。
もうお昼タイムだ。
今日は学生会新2年生組は、ポスターや学内広報の印刷や掲示板貼りをしている。
合流して一緒にマンションに帰って昼ご飯にする予定だ。
バネ作業については、業務量的には、今日はここまででいいだろう。
とすると、気になるのは例の外人のバイク作業の進展だが……
キャブのジェット調整をしているのを見ると、もう少しかかりそうだ。
「何なら俺はもう少しここにいるから、皆が来たら先に行っていてくれ」
小声で香緒里ちゃんに頼む。
「修兄、随分気に入ったようですね」
「そりゃそうだ。魔法工学科でも真に機械いじりが好きなのは少ないしな。肩入れしたくもなるだろ」
一応彼には聞こえない程度の声量で喋る。
と、ジェニーが顔を上げた。
「学生会室をでたところれす」
新2年生組も、間もなく到着か。
今日作業した分を整理して台帳を確認していると、聞き慣れた声が近づいてきた。
「香緒里社長、こっちの進展はどうですか」
「詩織ちゃん、社長は止めて欲しいです」
「へっへっへっ、社長ですしスポンサー様ですから」
詩織ちゃんは、揉み手しながらそんな事を言っている。
で当然、ルイスとソフィーちゃんも一緒に……
あ、ソフィーちゃんが何かバイク修理中の外人を見て固まった。
そして俺には聞き取りにくい早口の英語で何か言っている。
どういう事だろう。
2人は何やら早口の英語でやり取りしているが、俺にはよく聞き取れない。
そこでジェニーが途中で説明してくれる。
「どうもあの人が、ソフィーのBFのロビーさんのようれす」
えっ。
確かによく考えると、ソフィーの言っていた特徴には合致する。しかし……
「てっきり修兄より年上だと思っていました」
香緒里ちゃんの言うとおりだ。
身体がでかくてごついだけでない。
全体的に雰囲気が俺より年上という感じなのだ。
それに今年高専入学なら、バイクの免許はどうしたんだろう。
特区登録だから自分名義だと思うのだが。
「積もる話もあるようですし、今日はテイクアウトを買って、ここで食べましょうか」
香緒里ちゃんの提案に全員が賛成した。
◇◇◇
そんな訳で昼食は、大学カフェテリアからのテイクアウトだ。
ちなみに費用は会社持ちで、領収書代わりのレシートは俺がキープしている。
作業場整備とその謝礼、という事にでもしておこう。
こういう細かい作業の積み重ねが、税金削減につながるのだ。
まあそれはともかく。
いつもの巨大作業台をテーブル代わりに皆で囲む。
勿論ロビーも一緒だ。
「それにしても、来たのなら何故ソフィーのところに顔を出さなかったれすか」
「その前にどうしてもモーターサイクルの事が気になったデス。モト作業が終わったら連絡するつもりだたデス」
「昔の修兄と同じですね」
否定出来ないので黙っている。
「ここの作業場、凄くいいデス。ここの管理者はよくわかっているデス。これは何か専門の研究室の作業場なのかデス」
「ロビー、その前に自己紹介」
ソフィーに促され、ロビーはバツの悪そうな顔をする。
「ロビー・ヤング・ウッズ。16歳、ノースダコタ出身。前はアンティコスティ」
そこで口が止まる。
「あと学科は」
「魔法工学科、入学予定」
「使える魔法は」
「審査魔法と機械制御魔法」
ソフィーに促されつつ答えるが、やはりすぐ口が止まる。
「日本語が苦手なら、ゆっくりでいいですよ」
「違うんです。英語でも普段のロビーはこんな感じです」
成程、なら話しやすい方に話題を変えてやろう。
「なら、あのバイクについて聞いていいか」
俺がそう仕向けるとロビーの口調が変わった。
「アンティコスティは寒すぎて施設が全部室内にあるデス。免許も16歳からだからカーもモトサイクルも乗れないデス。ノースダコタは14歳から免許取れたからいつも乗っていたデス。ここへ来てすぐ16歳になたから早速手続きして買ったデス」
「いいバイクだな。機構がシンプルで、手の入れがいがありそうだ」
「わかってくれるデスか。今はジェットで誤魔化したデスが、ビックキャブ入れて排気系いじってサスのバネレートも上げたいデス。トルクが不足でリアサスが柔いデス」
「タイヤもちょい細いな。多少パワー喰われても、もう少し太いほうが楽しいだろう」
俺とロビーの方を見ながらソフィーがため息をつく。
「こんなに饒舌なロビーはめったに見ません」
「類友、れすよね」
「同病相憐れむ、とも言います」
ジェニーと香緒里ちゃんが何か言っているが、気にしてはいけない。
「それよりここの責任者は誰デスか。会って挨拶したいデス」
「今は俺さ。何もかしこまることは無い」
「なら頼むデス。俺もここを使わさせてデス。ここはいい作業場デス」
「何故そう思う」
「工具や機械類が全部生きているデス。このテーブルだってオリジナルの作業台デス。向こう側の切り欠きもここの溝も、ここに残るバイスの跡も実践的に作って使っている証拠デス。あの工具箱の工具だって、メーカーによらず使い易いものをセレクトしてるデス。工作機械だって元は古いデスが、アップデートされているのは見ればわかるデス」
こいつ、出来る。
工房の隅でバイクの作業をしていただけなのに、見るところはしっかり見ている。
「わかってくれると嬉しいな。正にそれは俺が手を入れた場所だ」
「元の管理者もいいセンスしているデスが、今言ったのは全部最近手を入れた跡デス。それだけここの作業場に愛着を持って手を入れている証拠デス」
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