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第18章 まもりたいもの
83 第一回魚祭り?
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奈津希さんと風遊美さんの2人体勢で、魚を捌き血抜きをする。
ルイス君が冷蔵庫と作業台と船庫を行ったり来たりして運んでいる。
俺もただ見ているだけでは申し訳ない。
だから俺は、当日必要になるだろう皿を、適当なステンレス板で作ることにした。
これだけ並べたり、巨大アジフライだのを入れるには、相当大きな皿が必要だろうと思ったから。
ステンレス板をストックから取ってくると、何か叩く音が響き出した。
見ると詩織ちゃんが、香緒里ちゃんが使った鋼材類を使って包丁を作っている。
今度は何をつくっているのだろう。
見ると刺身切り用の柳刃包丁のようだ。
気が利くなと一瞬思ったが、すぐに考え直した。
香緒里ちゃんがやって見せた包丁の作り方を、自分でも実践してみたかっただけだろう。
詩織ちゃんの考え方からして、その方が正しそうだ。
一応声をかけて確かめてみる。
「包丁作りはどうだ、楽しいか」
「楽しいです。包丁の次は天下五剣レプリカなんてのもいいのです」
包丁では無く日本刀か。
それは確かに楽しそうだ。
元々製法は日本刀を念頭に考えていたのだし、作れない事はないだろう。
一方で、見物人が少しずつ着実に増えていく。
魚を捌くところだけでなく、詩織ちゃんの包丁作りまで見物人が出ている。
パソコンやスマホで広報作業をしているジェニー・ソフィー組のおかげだろうか。
そんな感じで魚を全て下拵えした後。
約2時間半漬けた漬け汁の中の巨大アジ2枚を取り出し、流水で汁を完全に洗い流してから詩織ちゃんの例の乾燥庫へ入れ、低温乾燥モードにした。
この頃には野次馬というか見物人が計30人まで増えていた。
短い時間に随分集まったものだ。
島が狭すぎて、娯楽が少ないせいもあるだろうけれど。
◇◇◇
そして3日後、火曜日。
『巨大アジの開きをみんなで食べる会in魔技高専』。
告知期間は短かったのだが、大盛況だ。
人数が多くなりそうなので、急遽折りたたみテーブル20台を借りて設置。
それでも場所が足りずに皿を手に持ってウロウロしている学生が多数。
高専学生の8割近くが顔を出しているのではないだろうか。
先生達も結構来ている。
多分高専生ではない人々も来ている。
賑やかなのはいいことだから、別に構わない。
巨大アジの開きも巨大アジのフライも、順調に減ってきている。
もっとも一番人気はやはり刺身盛各種で、次点はイソマグロのまぐろカツだ。
刺身は出すと10分位で消えるので、頃合いをみつつ補充担当のルイス君が冷蔵庫から追加している。
焼き物や揚げ物の補充は、奈津希さんがやってくれている。
詩織ちゃんとソフィーちゃんは、交代しながらあら汁を提供中。
ジェニーは写真撮影やSNS発信専門で、風遊美さんと香緒里ちゃんは案内役。
俺は空になった皿の回収やゴミ袋の管理等、まあ雑用だ。
白ご飯の不足問題については、大学カフェテリアが白米専門の出店を急遽出してくれた。
月曜日午後に、カフェテリアの方からそういう提案があったそうだ。
なのでご飯は工房横路上で丼容器に盛った状態100円で販売中。
3回位カフェテリアの方から、巨大なごはん入り容器が運ばれてきた。
順調に売れているんだろうなと俺は思う。
ちなみに工房に隠してある、学生会幹部用のでっかい炊飯器の中身は既に空。
試食と称して海鮮丼やマグロカツ丼を身内で食べまくった結果である。
それでも今、詩織ちゃんが売店から丼2個のご飯を買ってきているのが見えた。
多分ソフィーちゃんと自分の分だろうが、既に2人ともご飯2杯相当以上は食べている筈だ。
特に詩織ちゃん、その体で一体何処に飯を入れているんだ。
春休みの釣り後のように、部屋にトドが増殖する事態は勘弁して欲しいぞ。
そう思いつつ、俺もこっそり3杯目の海鮮丼を食べている訳だけれども。
ちなみに今食べている丼の上は、イソマグロや巨大アジの漬けがメイン。
若干甘めのタレに漬けて胡麻をふりかけたもの。
この時期の脂ののりがいまいちな魚の刺身なら、この漬けが一番美味い。
そう俺は思う。
この刺身の漬け、見た目が他の刺身盛ほど綺麗でないので売れ行きが悪かった。
でも今では出すと争奪戦に近い状況。
次第に美味さが伝わったようだ。
まあ俺は役員特権で、冷蔵庫から直接分捕るのだけれども。
海鮮漬け丼を食べ終わった俺は、空いている皿は無いか会場を眺める。
開始ほぼ2時間経過で、やっと会場も落ち着いてきた。
あら汁提供組は、どうやら汁が売れ切れたようだ。
既に撤収作業をしている。
巨大アジの開きと巨大アジフライは、ほぼ完食状態。
冷蔵庫の中も、もう在庫無し状態らしい。
奈津希さんとルイス君が、自分達用にとっておいたらしい色々を丼ご飯でかっこんでいるのが見える。
案内役も、ほぼ新規来場者がいなくなって暇らしい。
香緒里ちゃんが、ご飯と刺身の割合が間違った刺身丼を食べているのが見えた。
それでもまだ100人以上はここにいるだろうか。
カフェテリアの御飯売店も「売切」札が出た。
突発的な行事だったにせよ、食事会は成功したようだ。
まだ午後6時前だし、時間的にはまだ早い。
撤収も何人か協力者を借りたので、それほど手間取らず終わるだろう。
ルイス君が冷蔵庫と作業台と船庫を行ったり来たりして運んでいる。
俺もただ見ているだけでは申し訳ない。
だから俺は、当日必要になるだろう皿を、適当なステンレス板で作ることにした。
これだけ並べたり、巨大アジフライだのを入れるには、相当大きな皿が必要だろうと思ったから。
ステンレス板をストックから取ってくると、何か叩く音が響き出した。
見ると詩織ちゃんが、香緒里ちゃんが使った鋼材類を使って包丁を作っている。
今度は何をつくっているのだろう。
見ると刺身切り用の柳刃包丁のようだ。
気が利くなと一瞬思ったが、すぐに考え直した。
香緒里ちゃんがやって見せた包丁の作り方を、自分でも実践してみたかっただけだろう。
詩織ちゃんの考え方からして、その方が正しそうだ。
一応声をかけて確かめてみる。
「包丁作りはどうだ、楽しいか」
「楽しいです。包丁の次は天下五剣レプリカなんてのもいいのです」
包丁では無く日本刀か。
それは確かに楽しそうだ。
元々製法は日本刀を念頭に考えていたのだし、作れない事はないだろう。
一方で、見物人が少しずつ着実に増えていく。
魚を捌くところだけでなく、詩織ちゃんの包丁作りまで見物人が出ている。
パソコンやスマホで広報作業をしているジェニー・ソフィー組のおかげだろうか。
そんな感じで魚を全て下拵えした後。
約2時間半漬けた漬け汁の中の巨大アジ2枚を取り出し、流水で汁を完全に洗い流してから詩織ちゃんの例の乾燥庫へ入れ、低温乾燥モードにした。
この頃には野次馬というか見物人が計30人まで増えていた。
短い時間に随分集まったものだ。
島が狭すぎて、娯楽が少ないせいもあるだろうけれど。
◇◇◇
そして3日後、火曜日。
『巨大アジの開きをみんなで食べる会in魔技高専』。
告知期間は短かったのだが、大盛況だ。
人数が多くなりそうなので、急遽折りたたみテーブル20台を借りて設置。
それでも場所が足りずに皿を手に持ってウロウロしている学生が多数。
高専学生の8割近くが顔を出しているのではないだろうか。
先生達も結構来ている。
多分高専生ではない人々も来ている。
賑やかなのはいいことだから、別に構わない。
巨大アジの開きも巨大アジのフライも、順調に減ってきている。
もっとも一番人気はやはり刺身盛各種で、次点はイソマグロのまぐろカツだ。
刺身は出すと10分位で消えるので、頃合いをみつつ補充担当のルイス君が冷蔵庫から追加している。
焼き物や揚げ物の補充は、奈津希さんがやってくれている。
詩織ちゃんとソフィーちゃんは、交代しながらあら汁を提供中。
ジェニーは写真撮影やSNS発信専門で、風遊美さんと香緒里ちゃんは案内役。
俺は空になった皿の回収やゴミ袋の管理等、まあ雑用だ。
白ご飯の不足問題については、大学カフェテリアが白米専門の出店を急遽出してくれた。
月曜日午後に、カフェテリアの方からそういう提案があったそうだ。
なのでご飯は工房横路上で丼容器に盛った状態100円で販売中。
3回位カフェテリアの方から、巨大なごはん入り容器が運ばれてきた。
順調に売れているんだろうなと俺は思う。
ちなみに工房に隠してある、学生会幹部用のでっかい炊飯器の中身は既に空。
試食と称して海鮮丼やマグロカツ丼を身内で食べまくった結果である。
それでも今、詩織ちゃんが売店から丼2個のご飯を買ってきているのが見えた。
多分ソフィーちゃんと自分の分だろうが、既に2人ともご飯2杯相当以上は食べている筈だ。
特に詩織ちゃん、その体で一体何処に飯を入れているんだ。
春休みの釣り後のように、部屋にトドが増殖する事態は勘弁して欲しいぞ。
そう思いつつ、俺もこっそり3杯目の海鮮丼を食べている訳だけれども。
ちなみに今食べている丼の上は、イソマグロや巨大アジの漬けがメイン。
若干甘めのタレに漬けて胡麻をふりかけたもの。
この時期の脂ののりがいまいちな魚の刺身なら、この漬けが一番美味い。
そう俺は思う。
この刺身の漬け、見た目が他の刺身盛ほど綺麗でないので売れ行きが悪かった。
でも今では出すと争奪戦に近い状況。
次第に美味さが伝わったようだ。
まあ俺は役員特権で、冷蔵庫から直接分捕るのだけれども。
海鮮漬け丼を食べ終わった俺は、空いている皿は無いか会場を眺める。
開始ほぼ2時間経過で、やっと会場も落ち着いてきた。
あら汁提供組は、どうやら汁が売れ切れたようだ。
既に撤収作業をしている。
巨大アジの開きと巨大アジフライは、ほぼ完食状態。
冷蔵庫の中も、もう在庫無し状態らしい。
奈津希さんとルイス君が、自分達用にとっておいたらしい色々を丼ご飯でかっこんでいるのが見える。
案内役も、ほぼ新規来場者がいなくなって暇らしい。
香緒里ちゃんが、ご飯と刺身の割合が間違った刺身丼を食べているのが見えた。
それでもまだ100人以上はここにいるだろうか。
カフェテリアの御飯売店も「売切」札が出た。
突発的な行事だったにせよ、食事会は成功したようだ。
まだ午後6時前だし、時間的にはまだ早い。
撤収も何人か協力者を借りたので、それほど手間取らず終わるだろう。
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