機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

文字の大きさ
上 下
69 / 202
第16章 新人歓迎! 新学期

69 新入生様ご案内

しおりを挟む
 3人は旗台詩織、ルイス・ヴィンセント・ロング、ソフィー・サラ・グリンヒルと名乗った。
 それぞれ補助魔法科、攻撃魔法科、補助魔法科だそうだ。

 まずは詩織ちゃんが質問する。

「実はですね、魔技高専に無事入学出来たのですけれど、どうも実際にやることのイメージが湧かないのです。勿論学校だから勉強するのは当然なのですけれど、魔法については身近でないせいか、どうしてもイメージとしてわからないのです。カリキュラムとか取得単位とかの資料は見たのですけれど」

「他には学校生活等もですね。私もルイスも日本は初めてなので、生活環境等も含めて若干不安がありまして。ジェニーさんに相談したら、月曜なら暇だから遊びに来るつもりでおいでよ、と誘われまして」

 成程、学生会執行部希望という訳ではないのか。
 でもまあ、後輩に頼られたなら相談にのってやらないとな。

「まずは同じ学科の先輩に聞いて、何なら専門教室や資料庫等も見て説明してもらえばいいかな。幸い補助魔法科も攻撃魔法科もいるし」

「あ、出来れば私は魔法工学科の方にお話を聞きたいのです。実は第一志望が魔法工学科だったのですが不合格で、第二志望の補助魔法科に救って貰った状態なのです。出来れば今後、転科を狙っているのです」

 転科はこの学校では珍しいことではない。
 魔法の適性は思春期に大きく変わることが珍しくないからだ。
 ただ大抵は魔法工学科から攻撃魔法科か、補助魔法科から攻撃魔法科への転科で、それ以外はあまりないけれど。

「なら、それぞれの科に分かれて説明会といこうぜ。いいかい風遊美」

「そうですね」

 という事で、それぞれに別れる事にする。

 
 俺と香緒里ちゃんがまず詩織ちゃんを連れて行ったのは、いつもの俺達の工房だ。

「ここは学生会の工房だけど、設備は授業で使う工作室と同等以上にはなっている。まあ実際に魔法工学科で何をするかってのは、作ったものを見た方が早い」

 シャッターを開けると、詩織ちゃんが小さく悲鳴をあげた。
 しまった。
 例の悪ノリ工作の品々もそのままだった。

「ミサイルだの変な神像だの蝋人形だのは冗談だから気にしないで」

「あ、そう言えばネットで見たのです」

 ネットにはそんな事まで掲載しているようだ。

「という訳でまずはわかりやすいものから。ネットでも見たかな、空飛ぶ漁船」

「一応知ってはいましたけれど、見れば見るほど漁船そのものですね」

 と言いつつ、詩織ちゃんは下だの横だの、色々な角度から船を観察している。
 這いつくばったり隙間から覗き込んだり。
 格好だけではない、いかにも好きモノの観察の仕方だ。

「外観からは違いは見えにくいよな。香緒里ちゃん、ちょっと俺の感覚を中継してもらっていいか」

 俺は審査魔法を使った状態で香緒里ちゃんに頼み、審査魔法で認識した船の構造を詩織ちゃんに中継してもらう。

「こういう魔法素材はどうやって入手するんですか」

 詩織ちゃんが目をキラキラ状態で尋ねた。

「この船の場合は香緒里ちゃんの魔法で作ってもらった。ただ一般的な魔法素材はネットにデータベース化されている。例えば」

 俺はパソコン前まで歩いて、魔技大のデータベースを呼び出す。

「大体のものはここで調べられるし注文もできる」

 詩織ちゃんはパソコン画面を覗き込む。

「成程、検索も割と親切なのです。でも結構いいお値段がするですね」

「だから、逆に面白い物を開発したら良い収入になる、例えばあのバネの山」

 俺は香緒里ちゃんのバネ工場の方を指す。

「このデータベースで注文するとこんなにいい値段」

 性能諸元と金額、あと予約状況が表示される。

「うわあ、暴利ですね。でも品切れで予約も先まで埋まっているです」

 最初、俺も暴利だと思った。
 なので、田奈先生に言われた言葉を返してやる。

「これ位の値段にしないとさ。他の市販素材やモーター類との値段の兼ね合いで駄目なんだと」

「あ、確かにそうなのです。応用範囲を考えたらこの素材で市場が混乱しそうです」

 詩織ちゃん、思った以上に飲み込みが早い。
 確かに魔法工学科向きかもしれないなと俺は思う。

「何か工作の経験は」

「お金が無いのでVRのロボプロ位なのです」

 ロボプロとは、互いにロボットを作って対戦させるネットワークゲームだ。
 普通のゲームと違うのは、ロボットを作る材料がほぼ市販されているもので構成されていること。
 制御もアルデュイーノ等実在するマイコン基板をシミュレートしたものを使い、自分でプログラムを組む必要がある。
 つまり、実際にロボットを組み立てるのと同等の知識を必要とするゲームだ。

「なら後は実際に素材を加工する訓練をすれば、知識的には充分かな」

「入校した頃の私より上ですね」

 香緒里ちゃんも同意する。

「あとはこのパソコン内に今まで俺が作った物が一通り入っている。見てみるか」

 俺はCADを呼び出す。

「あ、出来ればジェニーさんの義足の構造を見たいのです。あれだけ自由に動く構造はどうなっているのか知りたいです」

 もちろん情報はサーバに入れてある。
 dから俺はあの義足のデータを呼び出した。

「このCADの操作方法は分かるか」

「多分。VRロボプロのコンストラクションとほぼ同じなのです」

 その言葉を証明するかのように、詩織ちゃんは慣れたマウス操作でスムーズに画面を動かし関節やら疑似筋肉やらの機構を確認する。

「膝関節の構造が凝っていますね。球体関節ではなくジャイロ構造なのですか」

「ベアリング組み合わせたら、その方が摩擦低いし。軸の太さと構造で強度はカバーして、動きは例のバネ任せだな」

「確かにここを太くして動きが阻害されても、もともと膝は反対方向には曲がらない。それに単純球体関節と違って力を与えても滑りが出ないです。動力源のバネの固定もし易いです」

 詩織ちゃんこいつ面白い。
 理解力があるし、指摘が的確だ。
 俺の製作意図をあっさりと理解してくれる。
 これは確かに工学的センスがあるのだろう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

処理中です...