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第14章 とっても長い春休み⑴ 漁船と宴会と怪しい朝と
63 貪欲な豚のなれの果て
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いつもはジェニー専有スペースの寝湯に、トドが5人転がっている。
「風呂の水圧すら苦しいです」
この香緒里ちゃんの言葉が、全てを物語っている気がする。
つまり食べ過ぎたせいで、普通の風呂に浸かるのも苦しい状態。
それでも寝湯に浸かっているあたり、露天風呂好きも極まっているようだ。
「私も少し食べすぎたようです」
風遊美さんはそう言いつつも、いつも通りぬる湯で伸びている。
俺は樽湯の温度調節を低めにして浸かっていて、奈津希さんはメインの大浴槽を1人で大の字になって専有中。
他の5人、つまり夕食で追加でご飯を食べた5人は、寝湯で動けないようだ。
寝湯でも身体の半分以上は湯に浸かれるから、身体が冷える心配は無いけれど。
「うう身体を動かすのもしんどい。これだけ食べすぎたのは、冬休み実家近くの焼肉店で元を取れるか弟と戦って以来だ」
「私も久しぶりにやりすぎましたわ」
「反省はしているわ。だが後悔はしていない」
「More people are killed by overeating and drinking than by the sword.」
何やら色々言っているが、要は食い過ぎというだけだ。
「だけどまた明日あの刺身が出たら、きっと食べてしまうんだろうな」
「明日は身が柔らかくなる代わりに、ちょっと味が熟成されて旨味が増すよ」
「うっ、とりあえず今は考えたくないわ」
「同感なのです」
ちなみに樽湯は寝湯の隣。
だから視線をちょっと横にずらせば、腹を上にして並んでいる5人のあられもない状態が丸見えだ。
だが勿論紳士な俺は、そんな事はしない。
「そういえば修君、今日は樽湯にいるけれど、そこのお湯はぬるめなのですか」
「樽湯は温度調整出来るんです。今日は俺用にぬるめにしています」
ぬる湯だと常に風遊美さんの隣で心臓に悪いから、という理由は勿論言わない。
「ちょっと試してみようかしら」
俺が返事をする間もなく風遊美さんは立ち上がって、そして樽湯の俺の真向かいに入る。
一瞬だが小柄な白い全身が俺の目に焼き付いた。
「うん、確かにちょうどいい温度ですね」
俺は樽湯を2人用には設計していない。
確かに脚を伸ばせる程度の半径にはしているから、真向かいで互い違いに脚を入れれば入れはするが。
そして、この体勢になってしまうと俺も逃げ出しにくい。
出ると丸見えだし、かと言って入っていても、構造の都合上、視線が前に行ってしまうし。
「風遊美さんずるいです。修兄と一緒に樽湯なんてずるいです」
「私はぬるめのお湯が好きなだけです」
「だったらぬる湯でいいじゃないですか」
「いつもぬる湯ですし。たまには別のお湯に入るのもいいかなと思っただけです」
風遊美さんは平然と香緒里ちゃんに言い返しているが、俺はちょっとやばい。
何せ無理に横を見ない限り、風遊美さんのほぼ全身が湯の中に丸見えなのだ。
そして俺も多分同じ。
そして香緒里ちゃんだけでなく、他の方々の意向も少し心配だ。
なら、多少の犠牲は払っても。
「そろそろ先上がるから」
俺は撤退を決意する。
この場所で樽湯から出ると寝湯側からも丸見えだが、やむを得ない。
俺はかけてあったタオルを掴んで、自分の部屋へと脱出。
しかし風呂を上がっても、まだまだ油断は出来ない。
今日は全部で俺を含めて8人いる。
つまり俺のベッドを定員3名として使う可能性が高い。
その被害をどうすれば最小に抑えられるか。
本当は麻痺魔法や睡眠魔法を持っていれば、俺自身にかけて昏倒してしまえばいい。
しかし俺にそんな魔法は無い。
なのでリビングでネットを閲覧しながら、くじ引き結果を神妙に待つ。
実際、相手によっても被害度合いは大分変わるのだ。
例えば寝入りやすいが危険なのが香緒里ちゃん。
逆に夜遅くまでネタに振り回され疲れるが、気楽なのは奈津希さん。
では誰が一番いいかと言うと、これは判断がつかない。
全員が一長一短というか、何長も何短もありすぎて。
正直誰もが、とても魅力的ではあるのだ。
去年までの俺の人生の女っ気無さと比べると、何か随分と変わっなと思う。
由香里姉も香緒里ちゃんも、元々はあくまで幼馴染。
疑似姉妹としてしか見ていなかったし。
もっともあの頃と今とどちらがいいか、そう考えると難しい。
人は今の自分に無いものを求めるから、きっと。
客間の窓が開いて、どやどや人が中に入ってくる気配がした。
風呂から皆さん撤収してきたようだ。
俺は視線をノートパソコンのモニターから離さないようにしてやり過ごす。
「うーん、やっぱり風呂上がりの一杯はいいな」
奈津希さん、何か飲むのはいいから胸隠してくれ。
モニターに反射して見えている。
他は洗面所でドライヤーで髪を乾かしているのが、香緒里ちゃんと風遊美さん。
洗面所も広いしドライヤーも魔力仕様だし問題ない。
部屋へのそのそ入って気配が消えたのは、由香里姉と月見野先輩。
ジェニーも自分の部屋から出てこないし、鈴懸台先輩の姿も見えない。
このあたりは食べ過ぎから回復出来ていないようだ。
ならば今日の俺の敵は、健在な3人のうちの2人か。
それにしても香緒里ちゃんは、今日の夕食を無事消化出来たのかな。
他が酷い状態なのでちょっと心配だ。
ドライヤーの音が止む。
香緒里ちゃんと風遊美さんが一緒に洗面所から出てきて、俺の前へ。
「今日は私達と一緒です」
「よろしくお願いします」
うっ、何か食合せが微妙に悪そうな2人だ。
何でそう感じるのかと言われると、困るけど。
俺は香緒里ちゃんと風遊美さんに挟まれて、俺の部屋へ。
「何なら明日朝、事後写真の記念撮影するかい」
「結構です」
奈津希さんはこの前の件、全然反省していないようだ。
まあそれはともかく。
俺は自分の部屋のベッドへと追いやられる。
風遊美さんが扉を閉めて照明を豆球にして、そして俺の両側を2人で固める。
否応無しの就寝体勢だ。
「風呂の水圧すら苦しいです」
この香緒里ちゃんの言葉が、全てを物語っている気がする。
つまり食べ過ぎたせいで、普通の風呂に浸かるのも苦しい状態。
それでも寝湯に浸かっているあたり、露天風呂好きも極まっているようだ。
「私も少し食べすぎたようです」
風遊美さんはそう言いつつも、いつも通りぬる湯で伸びている。
俺は樽湯の温度調節を低めにして浸かっていて、奈津希さんはメインの大浴槽を1人で大の字になって専有中。
他の5人、つまり夕食で追加でご飯を食べた5人は、寝湯で動けないようだ。
寝湯でも身体の半分以上は湯に浸かれるから、身体が冷える心配は無いけれど。
「うう身体を動かすのもしんどい。これだけ食べすぎたのは、冬休み実家近くの焼肉店で元を取れるか弟と戦って以来だ」
「私も久しぶりにやりすぎましたわ」
「反省はしているわ。だが後悔はしていない」
「More people are killed by overeating and drinking than by the sword.」
何やら色々言っているが、要は食い過ぎというだけだ。
「だけどまた明日あの刺身が出たら、きっと食べてしまうんだろうな」
「明日は身が柔らかくなる代わりに、ちょっと味が熟成されて旨味が増すよ」
「うっ、とりあえず今は考えたくないわ」
「同感なのです」
ちなみに樽湯は寝湯の隣。
だから視線をちょっと横にずらせば、腹を上にして並んでいる5人のあられもない状態が丸見えだ。
だが勿論紳士な俺は、そんな事はしない。
「そういえば修君、今日は樽湯にいるけれど、そこのお湯はぬるめなのですか」
「樽湯は温度調整出来るんです。今日は俺用にぬるめにしています」
ぬる湯だと常に風遊美さんの隣で心臓に悪いから、という理由は勿論言わない。
「ちょっと試してみようかしら」
俺が返事をする間もなく風遊美さんは立ち上がって、そして樽湯の俺の真向かいに入る。
一瞬だが小柄な白い全身が俺の目に焼き付いた。
「うん、確かにちょうどいい温度ですね」
俺は樽湯を2人用には設計していない。
確かに脚を伸ばせる程度の半径にはしているから、真向かいで互い違いに脚を入れれば入れはするが。
そして、この体勢になってしまうと俺も逃げ出しにくい。
出ると丸見えだし、かと言って入っていても、構造の都合上、視線が前に行ってしまうし。
「風遊美さんずるいです。修兄と一緒に樽湯なんてずるいです」
「私はぬるめのお湯が好きなだけです」
「だったらぬる湯でいいじゃないですか」
「いつもぬる湯ですし。たまには別のお湯に入るのもいいかなと思っただけです」
風遊美さんは平然と香緒里ちゃんに言い返しているが、俺はちょっとやばい。
何せ無理に横を見ない限り、風遊美さんのほぼ全身が湯の中に丸見えなのだ。
そして俺も多分同じ。
そして香緒里ちゃんだけでなく、他の方々の意向も少し心配だ。
なら、多少の犠牲は払っても。
「そろそろ先上がるから」
俺は撤退を決意する。
この場所で樽湯から出ると寝湯側からも丸見えだが、やむを得ない。
俺はかけてあったタオルを掴んで、自分の部屋へと脱出。
しかし風呂を上がっても、まだまだ油断は出来ない。
今日は全部で俺を含めて8人いる。
つまり俺のベッドを定員3名として使う可能性が高い。
その被害をどうすれば最小に抑えられるか。
本当は麻痺魔法や睡眠魔法を持っていれば、俺自身にかけて昏倒してしまえばいい。
しかし俺にそんな魔法は無い。
なのでリビングでネットを閲覧しながら、くじ引き結果を神妙に待つ。
実際、相手によっても被害度合いは大分変わるのだ。
例えば寝入りやすいが危険なのが香緒里ちゃん。
逆に夜遅くまでネタに振り回され疲れるが、気楽なのは奈津希さん。
では誰が一番いいかと言うと、これは判断がつかない。
全員が一長一短というか、何長も何短もありすぎて。
正直誰もが、とても魅力的ではあるのだ。
去年までの俺の人生の女っ気無さと比べると、何か随分と変わっなと思う。
由香里姉も香緒里ちゃんも、元々はあくまで幼馴染。
疑似姉妹としてしか見ていなかったし。
もっともあの頃と今とどちらがいいか、そう考えると難しい。
人は今の自分に無いものを求めるから、きっと。
客間の窓が開いて、どやどや人が中に入ってくる気配がした。
風呂から皆さん撤収してきたようだ。
俺は視線をノートパソコンのモニターから離さないようにしてやり過ごす。
「うーん、やっぱり風呂上がりの一杯はいいな」
奈津希さん、何か飲むのはいいから胸隠してくれ。
モニターに反射して見えている。
他は洗面所でドライヤーで髪を乾かしているのが、香緒里ちゃんと風遊美さん。
洗面所も広いしドライヤーも魔力仕様だし問題ない。
部屋へのそのそ入って気配が消えたのは、由香里姉と月見野先輩。
ジェニーも自分の部屋から出てこないし、鈴懸台先輩の姿も見えない。
このあたりは食べ過ぎから回復出来ていないようだ。
ならば今日の俺の敵は、健在な3人のうちの2人か。
それにしても香緒里ちゃんは、今日の夕食を無事消化出来たのかな。
他が酷い状態なのでちょっと心配だ。
ドライヤーの音が止む。
香緒里ちゃんと風遊美さんが一緒に洗面所から出てきて、俺の前へ。
「今日は私達と一緒です」
「よろしくお願いします」
うっ、何か食合せが微妙に悪そうな2人だ。
何でそう感じるのかと言われると、困るけど。
俺は香緒里ちゃんと風遊美さんに挟まれて、俺の部屋へ。
「何なら明日朝、事後写真の記念撮影するかい」
「結構です」
奈津希さんはこの前の件、全然反省していないようだ。
まあそれはともかく。
俺は自分の部屋のベッドへと追いやられる。
風遊美さんが扉を閉めて照明を豆球にして、そして俺の両側を2人で固める。
否応無しの就寝体勢だ。
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