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第10章 新役員がやってきた
45 事後写真は誰のため
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そんな訳で俺は露天風呂を逃げ出した。
そのまま風呂から遠い方のトイレを経由して自分の部屋に戻る。
窓の鍵は東と南両方開けた状態で、カーテンは露天風呂のある東側だけ閉じて。
パソコンでCADを呼び出して、冬の課題の設計を少し考える。
今回の課題は全自動草刈り機。
例によって設計だけでも点は貰えるが実証機があれば加点対象。
草刈り対象は学校の敷地全体だ。
これって、どう見ても実際に使う気まんまんだよな。
そう思いつつ色々図面に落とし込んでいく。
うーん、不整地の移動方法は補助脚かクローラーか。
そんな事を考えていたら、いきなり後ろから後頭部を軽くチョップされた。
振り返ると、由香里姉と香緒里ちゃん。
それぞれ自分の枕と小さいバックを持って立っている。
「部屋に入ってきたのに気づかないんだものね」
「修兄はそういう人です」
しかし何故2人が枕を持って立っているんだろう。
頭が急な切り替えについていけない。
「今日は私達がいっしょに寝る番。よろしくね」
えっ、と思って気づく。
そうだ、今日は補助ベッドを入れても2人余る計算。
そして俺のベッドで3人寝れることは実証済み。
「という訳で、数年ぶりですが」
「3人で一緒におやすみなのです」
そういう事か……
最初からこういう計算だったな、と今悟ったがもう遅い。
俺はずるずるとベッドの方へと追いやられる。
やりかけの作業をセーブする暇さえ与えてくれない。
20秒後。
俺はベッドの中央に倒されて。
右を香緒里ちゃん、左を由香里姉にがっちり固められる。
こういう時はさっさと寝るに限る。
幸い香緒里ちゃんと寝る時と同様の睡魔が襲ってきてくれた。
という訳で俺は、落ちる。
◇◇◇
閉じたまぶたの向こうから光を感じた。
俺は目を開ける。
見慣れた俺の部屋。
両手ともしっかり握られて身動き取れない状態。
そして部屋の入口方向に、本格的な一眼レフを構えた長身の女の子。
「証拠写真、撃撮~っ」
ストロボの光とシャッター音が俺達を襲う。
「え、何~」
由香里姉も香緒里ちゃんも起きてきた様子。
「さあそこで両脇はピースサイン!」
その声にそそのかされて。
由香里姉と香緒里ちゃんは意識も完全でないまま、自由な方の手でピースする。
「はいどうもありがとう!じゃあまた!」
騒動の元は去っていき、ドアが閉じられた。
「ん……折角楽しかったのに」
「そうです。無理やり引き戻されました……」
両脇でそんな台詞が聞こえ、そして。
「あっ」
由香里さんが小さく声をあげる。
「くっ、これがこの前の朝風呂の真相ね」
「私は念のため夜用ナプキンを付けてきましたから」
香緒里ちゃんは涼しい顔でそう告げる。
おいそれ俺の前で言っていい台詞か。
ちなみに俺も無事なようだ。
昨晩思わぬ事故でトイレに行ったおかげらしい。
「くっ、修動かないで目を閉じていて」
由香里姉が起き上がる気配。
布団が動くと同時にちょっと酸っぱいような俺のじゃない臭いがする。
あ、やばいこの臭いエロい。
何とかそれに耐えていると。
「もう大丈夫よ」
と言うので俺も起き上がる。
香緒里ちゃんも俺の手を離す。
と、リビングの方で何やら歓声があがった。
何だろう。
俺達3人は部屋を出る。
大画面液晶テレビに群がって何かを見ていた5人が俺達の方を見る。
「昨晩ハオ楽シミデシタネ」
わざとらしい言い方で鈴懸台先輩。
何だ何だと思って俺達が見た液晶テレビに写っていたのは、ベッドで俺を中心に両脇でVサインをしている薊野姉妹。
寝衣は乱れているし、俺はいかにも眠そうだし、薊野姉妹は寝起きのトロンとした表情でVサインしているし、これはどう見ても。
「事後写真だよなこれ、絶対」
「ずるいれすユカリさんもカオリさんもずるいれす。一緒に楽しみたかったれす」
「これが学校で公開されたら大騒ぎですわね。ユカリもカオリちゃんも隠れファン多いみたいですし」
「ファンというか、教授会が招集されてしまいますね」
皆の感想の後に、由香里姉の低い声。
「宮崎台さん、あなたの仕業ね」
不意に気温が急激に下がる。
例によってダイヤモンドダストも舞っている。
「い、いや朝風呂入っていて何となく覗いたらいい感じだったんでさ。ついつい家に帰って親父のデジタル一眼借りて来ちゃった。でも思った以上の出来栄えだった、ついやってしまった今は反省している」
由香里姉は無言で液晶テレビに接続されたデジタル一眼を奪う。
中の媒体だけ出してカメラ本体を宮崎台さんにほいっと返して自分の部屋へ。
由香里姉がドアを閉めて完全に見えなくなってから、一気に皆話し始める。
「今の怒っているよな絶対」
「でも本当に怒っているなら、ユカリなら媒体ごとカメラを冷凍破壊位はしますわ」
「そうだよな。ちょっと今の怒り方はユカリとしては不自然だよな」
「それにしてもカオリさん、本当に何も間違いなかったのれすか」
「一緒に手を繋いで寝ていただけです」
確かに現実では手を繋いで寝ていただけだ。
夢で何をしていたかは別問題だが。
「まあ何れにせよ、今の写真はやっぱりまずいですわ」
「わかっているって。つい出来心で撮ってみたら思った以上の出来だったから」
そんな中、由香里姉が部屋から戻ってきた。
「削除ソフト使って復元不能な状態で消去したわ。もうこんな事しないで下さいね」
「はーい」
怪しい返事で宮崎台さんは媒体を受取り、カメラに仕舞う。
「それれは、朝ごはんはパスタでいいれすね」
ジェニーが台所へと向かう。
最近の朝ごはんはスパゲティかラーメンが多い。
主に朝食はパスタファリアンのジェニーが作るから。
◇◇◇
後日、俺は偶然にあの写真を発見してしまった。
由香里姉の私用パソコンのデスクトップに、寝ぼけ顔の俺と同じく寝ぼけ顔の薊野姉妹がピースをしている写真。
実はあの写真、気に入っていたんだな、由香里姉。
そのまま風呂から遠い方のトイレを経由して自分の部屋に戻る。
窓の鍵は東と南両方開けた状態で、カーテンは露天風呂のある東側だけ閉じて。
パソコンでCADを呼び出して、冬の課題の設計を少し考える。
今回の課題は全自動草刈り機。
例によって設計だけでも点は貰えるが実証機があれば加点対象。
草刈り対象は学校の敷地全体だ。
これって、どう見ても実際に使う気まんまんだよな。
そう思いつつ色々図面に落とし込んでいく。
うーん、不整地の移動方法は補助脚かクローラーか。
そんな事を考えていたら、いきなり後ろから後頭部を軽くチョップされた。
振り返ると、由香里姉と香緒里ちゃん。
それぞれ自分の枕と小さいバックを持って立っている。
「部屋に入ってきたのに気づかないんだものね」
「修兄はそういう人です」
しかし何故2人が枕を持って立っているんだろう。
頭が急な切り替えについていけない。
「今日は私達がいっしょに寝る番。よろしくね」
えっ、と思って気づく。
そうだ、今日は補助ベッドを入れても2人余る計算。
そして俺のベッドで3人寝れることは実証済み。
「という訳で、数年ぶりですが」
「3人で一緒におやすみなのです」
そういう事か……
最初からこういう計算だったな、と今悟ったがもう遅い。
俺はずるずるとベッドの方へと追いやられる。
やりかけの作業をセーブする暇さえ与えてくれない。
20秒後。
俺はベッドの中央に倒されて。
右を香緒里ちゃん、左を由香里姉にがっちり固められる。
こういう時はさっさと寝るに限る。
幸い香緒里ちゃんと寝る時と同様の睡魔が襲ってきてくれた。
という訳で俺は、落ちる。
◇◇◇
閉じたまぶたの向こうから光を感じた。
俺は目を開ける。
見慣れた俺の部屋。
両手ともしっかり握られて身動き取れない状態。
そして部屋の入口方向に、本格的な一眼レフを構えた長身の女の子。
「証拠写真、撃撮~っ」
ストロボの光とシャッター音が俺達を襲う。
「え、何~」
由香里姉も香緒里ちゃんも起きてきた様子。
「さあそこで両脇はピースサイン!」
その声にそそのかされて。
由香里姉と香緒里ちゃんは意識も完全でないまま、自由な方の手でピースする。
「はいどうもありがとう!じゃあまた!」
騒動の元は去っていき、ドアが閉じられた。
「ん……折角楽しかったのに」
「そうです。無理やり引き戻されました……」
両脇でそんな台詞が聞こえ、そして。
「あっ」
由香里さんが小さく声をあげる。
「くっ、これがこの前の朝風呂の真相ね」
「私は念のため夜用ナプキンを付けてきましたから」
香緒里ちゃんは涼しい顔でそう告げる。
おいそれ俺の前で言っていい台詞か。
ちなみに俺も無事なようだ。
昨晩思わぬ事故でトイレに行ったおかげらしい。
「くっ、修動かないで目を閉じていて」
由香里姉が起き上がる気配。
布団が動くと同時にちょっと酸っぱいような俺のじゃない臭いがする。
あ、やばいこの臭いエロい。
何とかそれに耐えていると。
「もう大丈夫よ」
と言うので俺も起き上がる。
香緒里ちゃんも俺の手を離す。
と、リビングの方で何やら歓声があがった。
何だろう。
俺達3人は部屋を出る。
大画面液晶テレビに群がって何かを見ていた5人が俺達の方を見る。
「昨晩ハオ楽シミデシタネ」
わざとらしい言い方で鈴懸台先輩。
何だ何だと思って俺達が見た液晶テレビに写っていたのは、ベッドで俺を中心に両脇でVサインをしている薊野姉妹。
寝衣は乱れているし、俺はいかにも眠そうだし、薊野姉妹は寝起きのトロンとした表情でVサインしているし、これはどう見ても。
「事後写真だよなこれ、絶対」
「ずるいれすユカリさんもカオリさんもずるいれす。一緒に楽しみたかったれす」
「これが学校で公開されたら大騒ぎですわね。ユカリもカオリちゃんも隠れファン多いみたいですし」
「ファンというか、教授会が招集されてしまいますね」
皆の感想の後に、由香里姉の低い声。
「宮崎台さん、あなたの仕業ね」
不意に気温が急激に下がる。
例によってダイヤモンドダストも舞っている。
「い、いや朝風呂入っていて何となく覗いたらいい感じだったんでさ。ついつい家に帰って親父のデジタル一眼借りて来ちゃった。でも思った以上の出来栄えだった、ついやってしまった今は反省している」
由香里姉は無言で液晶テレビに接続されたデジタル一眼を奪う。
中の媒体だけ出してカメラ本体を宮崎台さんにほいっと返して自分の部屋へ。
由香里姉がドアを閉めて完全に見えなくなってから、一気に皆話し始める。
「今の怒っているよな絶対」
「でも本当に怒っているなら、ユカリなら媒体ごとカメラを冷凍破壊位はしますわ」
「そうだよな。ちょっと今の怒り方はユカリとしては不自然だよな」
「それにしてもカオリさん、本当に何も間違いなかったのれすか」
「一緒に手を繋いで寝ていただけです」
確かに現実では手を繋いで寝ていただけだ。
夢で何をしていたかは別問題だが。
「まあ何れにせよ、今の写真はやっぱりまずいですわ」
「わかっているって。つい出来心で撮ってみたら思った以上の出来だったから」
そんな中、由香里姉が部屋から戻ってきた。
「削除ソフト使って復元不能な状態で消去したわ。もうこんな事しないで下さいね」
「はーい」
怪しい返事で宮崎台さんは媒体を受取り、カメラに仕舞う。
「それれは、朝ごはんはパスタでいいれすね」
ジェニーが台所へと向かう。
最近の朝ごはんはスパゲティかラーメンが多い。
主に朝食はパスタファリアンのジェニーが作るから。
◇◇◇
後日、俺は偶然にあの写真を発見してしまった。
由香里姉の私用パソコンのデスクトップに、寝ぼけ顔の俺と同じく寝ぼけ顔の薊野姉妹がピースをしている写真。
実はあの写真、気に入っていたんだな、由香里姉。
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