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第6章 嵐と実りの季節です

26 義足改良とセクハラと

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 今日の放課後は学園祭の全体会議。
 幹部3人は会議出席で不在だ。

 なので書類仕事を中断し、俺達3人は工房へ来ていた。
 目的はジェニーの義足の改良だ。

「でも、今の状態でもこの義足結構良いすよ」

 ジェニーはそう言って、軽く助走をつけて飛び上がり、空中で一回転して着地してみせる。

「これくらいは出来ますし」

「そんなプログラム入れていないんだけどな」

 俺が想定したのは単純なジャンプまでなのだが。
 なおスカート内部にちらりと水色の布が見えたが無視。

「今回改良しようと思うのは主にソケット部分だ。ジェニーに魔力があるのなら魔力で固定と保持が出来る。構造が簡単になるし取り外しやメンテナンスも楽になる」

 実を言うと本音は露天風呂実施時のノーパン対策だ。
 この前は厳しかった。
 厳しすぎて何度もベッドから脱出しようと試みたが、ちょっとバランスを崩すとジェニーに接触しそうでその度に諦めたのだ。

 俺は以前にモデリングしたジェニーの義足をディスクから呼び出す。

「この足の付根部分より前や後ろに大きく回っている部分を全部無くして、体重がかかる部分の最小限にする。クッション性を考えてこの部分はそのまま。代わりに身体への保持は魔法保定具を使う。ある程度の柔軟性を持たせるから使い心地も今までと同等以上の筈だ」

 この魔法保定具は結構一般的に出ている魔法道具だ。
 基本的な効果は記憶した魔力パターンを持つ個人と一定以下の距離を保つ事。

 今回用意したのは若干高機能化したもので、身体のどの部分から一定の距離にするかを選べる機能がついている。
 勿論使用者が明示的に機能をオフにすることも可能。

 これを使えばソケットのライナー部分はまだ少し残っているジェニーの太腿部分のみにすることが出来る。
 それならノーパンでなくても着脱可能だ。

 ジェニーは工房の片隅から肘掛け付きの椅子を持ってくると、おもむろにスカートをまくってパンツを下ろしだした。
 俺はとっさに回れ右をする。

「ちょっと、ジェニー何をするつもりなの」

「パンツを脱がないと義足が外せないす」

 香緒里ちゃんにも衝撃的だったようだ。

「でも修兄だって男性だよ。一応は配慮しないと」

「もう形状は知られているし意味ないす。ほら」

 ジェシーが示したのは義足のモデリングデータ。

 ソケット部分と身体部分はCADデータとして学生に配布されたものだ。
 あの時は仮想の人間だと思って気にもとめていなかった。

 しかしジェニー本人のデータだと思ってみると、確かに問題がある。
 具体的に言うと股の間の女性の器官の形状までモデリングされているのだ。
 気づかなければよかった。

「ふーん、修兄はこれを見て色々考えていたんですね」

 香緒里ちゃんの声が冷たい。

「課題用の仮想の人間のデータと思っていたから気付かなかったの」

「でもデータしっかり保存して取ってあるじゃないですか」

「何か修理や改造する時のために全部データは残す主義だから。現に改良のために今も呼び出したんだし」

 言い訳じゃなく事実なんだ。頼む納得してくれ。

「私も確かに課題で作ったデータは全部取ってあります。しょうがないですね」

 一応香緒里ちゃんは納得してはくれたようだ。
 まだ微妙に口調が冷たい気がするけれど。

「オサム、義足外しましたすよ」

「香緒里ちゃん、俺そっち向いて大丈夫か」

「今はもう大丈夫です」

 との事なので俺は回れ右をしてジェニーの方を見る。
 肘掛け付きの椅子に座ったジェニーの椅子に、座っているように置いてある脚を1本ずつ取って作業台へ。
 2本め右脚を取った時にジェニーが片手に持った水色の布切れが見えたような気がしたが、意識しないことにする。

「さてこれから加工するけれど、形状とか細かい注文あるか?長さは関節の関係もあってあまり変えられないけれど」

「どうでしょうね。カオリは何か意見あるすか」

「そうですね。何なら私の脚と比べてみますか」

 え、今香緒里ちゃんとんでもない事言わなかったか。

「それがいいす。比べれば思いつくす」

 あ、危険な方向へ行ってしまった。

「どうする。香緒里ちゃんの横にこの義足を持っていくか」

「それよりカオリにその机の上に乗ってもらって、上から見たほうがいいす。その方が違いがわかりやすいす」

 香緒里ちゃんは作業台の上に腰を下ろし、靴を脱いで脚を上げ、義足と脚が並ぶようにして横になる。

「これでいいのかな」

「私から見えないす。オサム抱き上げて欲しいす」

 しょうがないので脇の下付近を持って持ち上げてやる。
 人差し指と中指の先の感触が柔らかくてちょっと気になる。
 でも気にしてはいけない。

「うーん、カオリの脚可愛いすね。やっぱりこれくらいメリハリある方が可愛いすね。ん、もうちょっと上見たいすね」

「こう、ですか」

 カオリちゃんがスカートを少し上にたくし上げる。
 薄いグレーの布地が一瞬見えた気がした。

「オサム、もうちょっと近づけて欲しいす」

 ジェニーの要望に合わせてジェニーをもっと香緒里ちゃんの脚に近づける。

「ひゃああっ!」

 今のはいきなり太腿を擦られて驚いた香緒里ちゃんの悲鳴。

「うん、やっぱり本物の肌触りはいいすね。これくらいの太さと質感があったほうが可愛いす」

 そのままジェニーは香緒里ちゃんの太腿をさすりつつ。
 さらに根元の方へと手を這わせる。

「ジェニー、あんまりそっちは……」

「オサム、カオリの脚を参考に私の脚は太腿とふくらはぎをもう少し増量お願いするす。うん、いい感触す」

 完全に香緒里ちゃんのグレーのパンツが見えている。

「うう、こんな事ならもう少し可愛いパンツはいてきたのに」

 香緒里ちゃん、そういう問題だろうか。
 取り敢えずこれ以上セクハラする前にジェニーを椅子の上に戻した。

「香緒里ちゃん、まだ動くなよ」

「何でですか」

「ジェニーの脚の参考にするから」

 マルチプルフィクスチャーで浮かした状態で義足を固定して、俺は魔法を発動。
 義足外側の素材であるシリコンライナーを任意に加工する機械などここにはない。
 なので俺の魔法で加工して一気に仕上げる。

 今まで身体に回り込ませていた部分をカット。
 その分をジェニーお望みの増量に使う。
 ラインが自然になるように整え、シリコンライナー部分の加工は終わり。

 台の上に戻し、最後にソケットとライナーの間を外して。
 調整済みの魔法保定具を埋め込んだら完成だ。

「香緒里ちゃんありがとう、もういいよ」

 香緒里ちゃんは作業台の上から降りる。

「うー、修兄、見たですか」

「脚のデータはね」

「うう、そういう事ではないです」

 そう言いつつも香緒里ちゃんはそれ以上文句を言わない。

「あとジェニーに義足渡して。俺は向こう側を向いているから」

「えっ、あ、そうですね」

 香緒里ちゃんは何故俺が向こうを向いたか理解した。

 そこそこ重い義足を片方ずつ作業台から下ろし、ジェニーが座っている椅子へと運んでいる気配。
 そしてもぞもぞとジェニーがやっている気配。

「オサム、付けたすよ」

「まだ振り向かないで!ジェニー、せめてパンツはいて!」

 すぐに振り向かないで正解だったようだ。

「もう大丈夫か」

 少し間を置いて、俺は聞いてみる。

「オサム大丈夫すよ」

 今度は香緒里ちゃんの駄目出しがないので、多分大丈夫なのだろう。
 俺が振り向くと満面の笑顔のジェニーとちょっと疲れた顔の香緒里ちゃんがいた。

「どう、義足の方は」

「前と感じは変わらないすね」

 ジェニーはちょっと広いところへと行って、いきなりジャンプして空中一回転をしてみせる。

「運動能力も問題ないすね」

 さっき以上に水色のパンツが丸見えだった。
 でも俺も指摘する気力がなくなりつつあるのでどうでもいい。

「強いて言えば太腿のつなぎ目、よく見ると見えるのです。ブルマやハイレグはけなくなったすね」

 何だその意見は。

「でも蒸れる部分は減ったし着脱も楽だろ。それくらいは大目にみてくれよ」

「まあそうすね。肌の色あわせてあるしよく見ないとわからないすし。ただ、お気に入りの点が一つ増えたす」

 ジェニーはそう言ってにやりと笑う。
 ジェニーは香緒里ちゃんの横にぴたっと寄り添うように立って、次の瞬間。

「お揃いなのす!」

 自分と香緒里ちゃんのスカートをまくり上げた。

「いやーっ!」

 香緒里ちゃんの悲鳴と一瞬の残像。
 確かに香緒里ちゃんの脚と形はそっくりだ。
 何せ香緒里ちゃんの脚の形を元に加工したのだから。

 でも俺の目に残像として残ったのはそれだけではない。
 香緒里ちゃんの足の付根を覆っているグレーの布地とジェニーのそこを覆っている水色の布地。
 俺の目に思い切り焼き付いてしまう。

「ううー、こうなるならもっと可愛いのはいてきたのに……」

 そして香緒里ちゃんの涙声が工房に響いた……
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