機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

文字の大きさ
上 下
21 / 202
第5章 香緒里の護身具製作記

21 最強はやっぱり……

しおりを挟む
「じゃーん」

 私も着替えて出てきたぞ。
 そう主張している気がしたので、俺は振り向く。
 マイクロバスから出てきた由香里姉が俺に向かってポーズを取った。

「じゃーん、どうかしら」

 紺一色のシンプルなビキニ。
 肩紐無しの同じ幅の布を巻いているようなデザインの上パーツが胸の谷間をくっきり強調させている。
 下パーツもシンプルさが逆に体型を邪魔せず引き立てていてそそられてしまう。

 ただ、薊野姉妹は美人でスタイルもいいが胸は平均程度。
 だから爆発的な威力はそれほどない。

 今までの露天風呂の経験から考えると、最も危険なのは今海中にいて全身を見せていない奴だ。
 なので俺は俺はある程度余裕を持って応えられる。

「似合っていますよ」

 でも由香里姉は俺のその余裕に気づいたらしい。
 由香里姉の視線が香緒里ちゃん、月見野先輩の方をそれぞれ通過した後。
 沖で何やら潜ったりしている鈴懸台先輩にロックオンされた。

 そのまま由香里姉はすたすたと歩いていく。
 海上も歩く度に足元を凍らせてそのまま歩いていく。

 そしてちょうど息継ぎで海面に出た鈴懸台先輩をいきなり引っ張り上げた。
 後ろから脇の下に腕を通し、鈴懸台先輩の両胸に揉むように手を当てて。

「これか、これが足りないのか私には!」

「何だいきなり」

 鈴懸台先輩の水着は、鮮烈なまでの赤色だった。
 上は三角布に肩紐と背中への紐を付けた形、下も三角布紐付きという昔からグラビアの定番でよくあるタイプだ。

 ただ鈴懸台先輩は胸もあるが、肩や上腕部にそれなりに筋肉もついている。
 だからいやらしさはあまり無い。
 ある意味俺にとっては助かる。

 だが、後ろからその水着の胸部分を揉まれているとなると話は別だ。
 由香里姉の手の動きに合わせて。
 そこだけは柔らかそうな肉が刻一刻と形を変えていく。

「これが、この脂肪の塊が全ての諸悪の根源なのか!」

「ふふふ、持たざる者のヒガミか」

 ようやく鈴懸台先輩も自分が襲われた理由に気づいたらしい。

「持たざる者よ。我が胸に絶望するが良い」

 何か中二病っぽい台詞を吐いて、鈴懸台先輩は両手を頭の後ろに回して組んで、胸を強調するようなポーズを取る。

「どうだ!圧倒的じゃないかわがチチは!」

「ううっ、性能バストの違いが戦力の決定的差でないことを教えてやる!」

「黙れ、堕ちろ!蚊トンボ!」

「デカチチめ!堕ちろ!」

「Eカップは伊達じゃない!」

 このまま魔法戦闘に入るか、そう思った時だった。

 不意に2人の動きが止まって、力が抜けたように崩れて海中へと落ちた。
 慌てて助けに行く俺と香緒里ちゃん。
 そして背後から聞こえる低い声。

「胸なんて飾りですわ。エロい人にはそれがわからないのよ」

 ……コンプレックスあったんですね、月見野先輩。

 香緒里ちゃんと協力して何とか2人を砂浜に引っ張り上げる。
 ひっくり返して気道を確保。

 2人共、水も飲んでいないようだし大丈夫だろう。
 そうなる程度に月見野先輩が魔法を調整したのだろうけれども。
 ズレている水着も直して2人を置いて。

「これで大丈夫だろ」

「そうですね」

 そう言って、ふと香緒里ちゃんは俺の方をみて少しもじもじとする。

「ん、どうした」

「ええと、修兄もやっぱり大きい方が好きなんですか。」

 えっ。
 どう答えようか俺は本気で悩む。
 どんな答えだとこの場を無難に逃げられるだろうか。

 大きい方が好きと言うと、こっちに意識を向けている月見野先輩に抹殺される。
 でも『貧乳はステータスだ希少価値だ!』と叫ぶほど俺は変態紳士じゃない。

 ちなみに香緒里ちゃんは由香里姉と同じように普通サイズ。
 悩みつつ考えて、出たのは平凡な台詞。

「大きいか小さいかではなく、誰のかのほうが重要だろ」

 どっかで聞いた台詞だが、とりあえずこれで誤魔化そう。 
 でも香緒里ちゃんは少し考えて、次の質問をする。

「じゃあ私のおっぱいは好きですか」

 そう言って俺の方を見る。
 こら、その質問は反則だろう。
 それこそ答えに困る質問だ。
 と思って悩んだ時。

「香緒里ちゃん、長津田君が困っていますわ」

 思わぬ助け舟を月見野先輩が出してくれた。

「え、でも」

「さっきの長津田くんの言葉と併せると、その質問は『長津田君は私のことを好きですか』と直球で聞いているのと同じ事になりますわ。それを今、長津田君の心の準備もないままで聞いてもいいのかしら」

 香緒里ちゃんは月見野先輩の言っている事を理解したらしい。
 ぱあっと顔を真赤にする。

「だからその質問は、もっといい機会に取っておいた方がいいと思いますわ」

 そう言って月見野先輩は笑う。

「馬鹿どもが目覚めるまであと3時間位ですわ。私はそこの磯場で素材になりそうな生物探しをしておりますので、せっかくの機会ですからお二人でのんびりここを満喫されてはいかがですか。では失礼致します」

 それだけ言って返答も聞かず、さっさと月見野先輩は歩き出した。
 俺達はただそれを見送る。

「何か……自由な人だな」

「そうですね。ひょっとしたら役員3人の中で最強は月見野先輩なのかもしれないです。ん、最強ですか……そうだ!」

 香緒里ちゃんはいきなりダッシュしてキャンピングカー内に駆け込む。
 そして出てこない。

 どうしたのだろうか。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐
ファンタジー
小さな村にある小さな丘の上に住む治癒術師 そんな彼が出会った一人の女性 日々を平穏に暮らしていたい彼の生活に起こる変化の物語。 小説家になろう様、カクヨム様、ノベルピア様へも投稿しています。 表紙画像はAIで作成した主人公です。 キャラクターイラストも、執筆用のイメージを作る為にAIで作成しています。 更新頻度:月、水、金更新予定、投稿までの間に『箱庭幻想譚』と『氷翼の天使』及び、【魔王様のやり直し】を読んで頂けると嬉しいです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

処理中です...