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第1章 空を自由に飛びたいな
4 飛ぶぞ飛ばすぞ実習課題
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試作品が完成するまで、3日かかった。
まずこの飛行機械を作る前に、注文を受けていた杖を完成させる。
幸い残り工程はわずか。
焼成した頭部分に魔石を裏から埋めて杖本体と頭を固定。
頭部分の細かい意匠を削って調節して、最後に磨いてやれば完成だ。
最高の出来とは言わなが、及第点以上の出来にはなっていると思う。
使ってみて気に入らなければ、後で調整をすればいい。
杖を注文者に引き渡したら、いよいよ飛行機械だ。
まずは飛行機械の設計図を描く作業から。
飛行機械の形はどうしようか。
フルスクラッチで作る程時間の余裕は無い。ある物を使って製作するのがベターだ。
そんな訳で背負う形式から、自転車のように乗る方式に変更。
そこいらに捨ててあった自転車のフレームを使用して作ることにする。
自転車の前後に、浮上用の重りを重さを調整できるように取り付ける。
更に自転車の後ろに液体窒素用のタンクを取り付けた。
このタンクは結構しっかり作り込む必要がある。
ある程度圧力をかけてやる予定なので。
その他圧力調節の弁やら何やら考えていたら。
設計図が完成しないうちに、部屋の使用門限7時になってしまった。
仕方ない。学校内のサーバに作成途中の設計図を保存。
寮の自室で呼び出し、夜中までかけて設計図を仕上げる。
そして次の金曜日の放課後は、第1工作室にこもって丸々作業だ。
元になる自転車フレームを学園内ゴミ捨て場から調達して、余分な部品を外してサビを取ってと。
香緒里ちゃんが様子を見に来たが、頭の中は今の製作物のことでいっぱいの状態。
香緒里ちゃんも自分の頼んだことなので、納得してくれた模様だ。
更に休みの土曜日も第1工作室にこもって、日曜日もこもって。
やっと機械それ自体の工作は終わった。
格好はあまり良くは無い。自転車のフレームにあれこれ部品を溶接した、そのままだ。
しかし理論上も製作精度上も問題は無い。
後は香緒里ちゃんに魔法をかけてもらって、試運転するだけだ。
月曜は1年生は授業が4限まで。
3限までの俺は第1工作室から完成した試作品を出し、乗れるよう準備する。
液体空気採取用ファン用のバッテリーも充電済み。
香緒里ちゃんの体重を45kgと仮定した場合の重量調整も完了している。
俺の場合はさらに重り4つを前後に載せてやればいい。
重りを入れた分だけ浮くという香緒里ちゃんの魔法。
これを重量調整タンクに付加すれば、重さがそのまま浮力になる。
念のため更に追加の重り40kgも用意済みだ。
さて、試乗準備。
俺は試作品の前後輪を、ワイヤーで近くのコンクリから出ている鉄筋につなぐ。
ここは前に建物があったところで、取り壊した後もコンクリ打ちっばなし部分や鉄筋が出た部分が残っている。
今回の実験にちょうどいい場所だ。
4限終了のチャイム終了後、思ったより早く香緒里ちゃんが現れた。
見ると息を切らしている。走ってきた模様。
「長津田先輩、準備できたですか」
はあはあ言いながらも、そう俺に尋ねた。
俺は勿論、大きく頷く。
「あとは香緒里ちゃんに魔法をかけてもらえば完成。頼めるかな」
「勿論です。魔力は十分です。では、かける魔法を説明してもらっていいですか」
「うん、じゃあまずここのパイプに窒素しか通さないフィルタ機能を……」
そうやって
○ 窒素しか通さないフィルタ魔法
○ 窒素タンクや吹き出し口にかける温度調整付加の魔法
○ 重量調整タンクに『内部に入ったものの重量が反転する』魔法
をかけてもらう。
前後輪に通していたワイヤが引っ張られ、本体が宙にちょっとだけ浮いた。
これで準備はOKの筈だ。
「これで乗れるけど、試運転はどうする。なんなら最初は俺がやるけど」
香緒里ちゃんはゴテゴテした自転車、という感じの試作品を観察する。
「ここは荷物置き場ですか」
シートの後ろ、後部を覆うカバーが少し平らになった部分を指さす。
「そう、一応ちょっとは物を積めないと不便かなと思って」
「なら、ここに私が乗っても大丈夫ですね」
えっ?
俺が思っても見なかった言葉を聞いた。
「浮力は前後に重りを目一杯積めば大丈夫ですよね。確か体重120kgでも大丈夫な設計の筈ですから、私さえ乗れれば2人乗りをしても問題はないですよね」
予想外の言葉に、俺は返答出来ない。
その間に香緒里ちゃんはたたみかける。
「どうせ私と先輩の共作ですし、一緒に乗りませんか」
そう言われてしまうと、俺も断りにくい。
強度上も他の設計上も、確かに問題は無いのだ。
仕方ない。
「じゃあ乗ってみるか、二人で」
「お願いします」
しょうがないな、と俺は思いつつ重りを用意。
2人で乗る計画ではなかったので、発進を手伝う補助者がいない。
だから点順はちょっとばかり面倒だ。
① 荷台とカウルの上に10kgの重り2個を乗せる。
荷台に後ろ向きに香緒里ちゃんが乗る。
② 前かごに10kgの重りを載せ、前後の係留用チェーンを外す。
この段階では重りの重さと香緒里ちゃんの体重で試作品は浮き上がらない。
③ 俺が10kgの重り2個を持って乗る。
④ 2人で声を掛け合って、前後同時に浮力用スペースに重りを入れる。
⑤ 香緒里ちゃんが後ろで前向きになるよう回って、俺の体に手を回す。
これで発進だ。
「左グリップで上昇下降を調節」
香緒里ちゃんの為に口に出しつつ操作。
自転車改造の試作品の左グリップを手前にひねると、元自転車はすうっと空へと舞い上がる。
「あ、飛びました」
「全速で重力加速度の2割位の速度で上昇可能かな。降りるのも同じ位」
4階建ての校舎を見下ろせるくらいまで上昇する。
「後ろは大丈夫。不安はない」
「車輪が回らないから足をフレームにかけられるし大丈夫です。それにこうやってしっかり掴まっていますし」
ぎゅっと俺を抱きしめる感触。
おいおいまずい、胸が絶対当たっているぞ。
そう思えば当たっている部分が熱く感じるような気がする。
まずいまずい。相手は年下の幼馴染だ。
風呂だって一緒に入ったことがある。十年以上前だけど。
何とか無理やりその辺の生理現象等も押さえ込んで。
「じゃあその辺を回ってみるか」
「お願いします。空中散歩です」
俺は自転車の右グリップを握る。
「右グリップを握れば前進、反対に回せば後退になる」
液体窒素が気化して後方へと噴射される勢いで自転車は前進する。
それ程速度は出ない。
せいぜい20km/h程度。
のんびりと試作品は前進する。
「ハンドルを切るとそっちへ曲がる」
普通に自転車のハンドルを切るのと違い、若干こじるように曲げる。
空中では地面が無いのでフラフラしそうだから、バネで手を離せば程度直進するようハンドルを調整しているのが工夫した点。
ハンドルを右に切る。
後輪右後ろの噴射口から気化した液体窒素が噴射。すっと向きが変わる。
それでも姿勢は崩れない。
設計通りだ。
アルドゥイーノで姿勢制御している成果が出ている。
加速度センサーを使用しているので前進すると後ろがちょっと上がるし、左右それぞれに曲がるとそれに合わせて傾斜する。
それが安定性につながっているようだ。
まずこの飛行機械を作る前に、注文を受けていた杖を完成させる。
幸い残り工程はわずか。
焼成した頭部分に魔石を裏から埋めて杖本体と頭を固定。
頭部分の細かい意匠を削って調節して、最後に磨いてやれば完成だ。
最高の出来とは言わなが、及第点以上の出来にはなっていると思う。
使ってみて気に入らなければ、後で調整をすればいい。
杖を注文者に引き渡したら、いよいよ飛行機械だ。
まずは飛行機械の設計図を描く作業から。
飛行機械の形はどうしようか。
フルスクラッチで作る程時間の余裕は無い。ある物を使って製作するのがベターだ。
そんな訳で背負う形式から、自転車のように乗る方式に変更。
そこいらに捨ててあった自転車のフレームを使用して作ることにする。
自転車の前後に、浮上用の重りを重さを調整できるように取り付ける。
更に自転車の後ろに液体窒素用のタンクを取り付けた。
このタンクは結構しっかり作り込む必要がある。
ある程度圧力をかけてやる予定なので。
その他圧力調節の弁やら何やら考えていたら。
設計図が完成しないうちに、部屋の使用門限7時になってしまった。
仕方ない。学校内のサーバに作成途中の設計図を保存。
寮の自室で呼び出し、夜中までかけて設計図を仕上げる。
そして次の金曜日の放課後は、第1工作室にこもって丸々作業だ。
元になる自転車フレームを学園内ゴミ捨て場から調達して、余分な部品を外してサビを取ってと。
香緒里ちゃんが様子を見に来たが、頭の中は今の製作物のことでいっぱいの状態。
香緒里ちゃんも自分の頼んだことなので、納得してくれた模様だ。
更に休みの土曜日も第1工作室にこもって、日曜日もこもって。
やっと機械それ自体の工作は終わった。
格好はあまり良くは無い。自転車のフレームにあれこれ部品を溶接した、そのままだ。
しかし理論上も製作精度上も問題は無い。
後は香緒里ちゃんに魔法をかけてもらって、試運転するだけだ。
月曜は1年生は授業が4限まで。
3限までの俺は第1工作室から完成した試作品を出し、乗れるよう準備する。
液体空気採取用ファン用のバッテリーも充電済み。
香緒里ちゃんの体重を45kgと仮定した場合の重量調整も完了している。
俺の場合はさらに重り4つを前後に載せてやればいい。
重りを入れた分だけ浮くという香緒里ちゃんの魔法。
これを重量調整タンクに付加すれば、重さがそのまま浮力になる。
念のため更に追加の重り40kgも用意済みだ。
さて、試乗準備。
俺は試作品の前後輪を、ワイヤーで近くのコンクリから出ている鉄筋につなぐ。
ここは前に建物があったところで、取り壊した後もコンクリ打ちっばなし部分や鉄筋が出た部分が残っている。
今回の実験にちょうどいい場所だ。
4限終了のチャイム終了後、思ったより早く香緒里ちゃんが現れた。
見ると息を切らしている。走ってきた模様。
「長津田先輩、準備できたですか」
はあはあ言いながらも、そう俺に尋ねた。
俺は勿論、大きく頷く。
「あとは香緒里ちゃんに魔法をかけてもらえば完成。頼めるかな」
「勿論です。魔力は十分です。では、かける魔法を説明してもらっていいですか」
「うん、じゃあまずここのパイプに窒素しか通さないフィルタ機能を……」
そうやって
○ 窒素しか通さないフィルタ魔法
○ 窒素タンクや吹き出し口にかける温度調整付加の魔法
○ 重量調整タンクに『内部に入ったものの重量が反転する』魔法
をかけてもらう。
前後輪に通していたワイヤが引っ張られ、本体が宙にちょっとだけ浮いた。
これで準備はOKの筈だ。
「これで乗れるけど、試運転はどうする。なんなら最初は俺がやるけど」
香緒里ちゃんはゴテゴテした自転車、という感じの試作品を観察する。
「ここは荷物置き場ですか」
シートの後ろ、後部を覆うカバーが少し平らになった部分を指さす。
「そう、一応ちょっとは物を積めないと不便かなと思って」
「なら、ここに私が乗っても大丈夫ですね」
えっ?
俺が思っても見なかった言葉を聞いた。
「浮力は前後に重りを目一杯積めば大丈夫ですよね。確か体重120kgでも大丈夫な設計の筈ですから、私さえ乗れれば2人乗りをしても問題はないですよね」
予想外の言葉に、俺は返答出来ない。
その間に香緒里ちゃんはたたみかける。
「どうせ私と先輩の共作ですし、一緒に乗りませんか」
そう言われてしまうと、俺も断りにくい。
強度上も他の設計上も、確かに問題は無いのだ。
仕方ない。
「じゃあ乗ってみるか、二人で」
「お願いします」
しょうがないな、と俺は思いつつ重りを用意。
2人で乗る計画ではなかったので、発進を手伝う補助者がいない。
だから点順はちょっとばかり面倒だ。
① 荷台とカウルの上に10kgの重り2個を乗せる。
荷台に後ろ向きに香緒里ちゃんが乗る。
② 前かごに10kgの重りを載せ、前後の係留用チェーンを外す。
この段階では重りの重さと香緒里ちゃんの体重で試作品は浮き上がらない。
③ 俺が10kgの重り2個を持って乗る。
④ 2人で声を掛け合って、前後同時に浮力用スペースに重りを入れる。
⑤ 香緒里ちゃんが後ろで前向きになるよう回って、俺の体に手を回す。
これで発進だ。
「左グリップで上昇下降を調節」
香緒里ちゃんの為に口に出しつつ操作。
自転車改造の試作品の左グリップを手前にひねると、元自転車はすうっと空へと舞い上がる。
「あ、飛びました」
「全速で重力加速度の2割位の速度で上昇可能かな。降りるのも同じ位」
4階建ての校舎を見下ろせるくらいまで上昇する。
「後ろは大丈夫。不安はない」
「車輪が回らないから足をフレームにかけられるし大丈夫です。それにこうやってしっかり掴まっていますし」
ぎゅっと俺を抱きしめる感触。
おいおいまずい、胸が絶対当たっているぞ。
そう思えば当たっている部分が熱く感じるような気がする。
まずいまずい。相手は年下の幼馴染だ。
風呂だって一緒に入ったことがある。十年以上前だけど。
何とか無理やりその辺の生理現象等も押さえ込んで。
「じゃあその辺を回ってみるか」
「お願いします。空中散歩です」
俺は自転車の右グリップを握る。
「右グリップを握れば前進、反対に回せば後退になる」
液体窒素が気化して後方へと噴射される勢いで自転車は前進する。
それ程速度は出ない。
せいぜい20km/h程度。
のんびりと試作品は前進する。
「ハンドルを切るとそっちへ曲がる」
普通に自転車のハンドルを切るのと違い、若干こじるように曲げる。
空中では地面が無いのでフラフラしそうだから、バネで手を離せば程度直進するようハンドルを調整しているのが工夫した点。
ハンドルを右に切る。
後輪右後ろの噴射口から気化した液体窒素が噴射。すっと向きが変わる。
それでも姿勢は崩れない。
設計通りだ。
アルドゥイーノで姿勢制御している成果が出ている。
加速度センサーを使用しているので前進すると後ろがちょっと上がるし、左右それぞれに曲がるとそれに合わせて傾斜する。
それが安定性につながっているようだ。
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