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第24章 冬がはじまるよ
第204話 植物品種改良魔法発動中
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砦に戻って早速ミナミさんは植物の改良に入る。
「まずは種を取ります。クレソンは水に付けた状態の方がいいと思いますので、バケツに水を入れて中に入れて」
さっき採取したうちの一株をバケツの中に入れる。
「それでは促成栽培を始めます。あ、これは使いやすくていい感じです」
ミナミさんがそう言っている間にもバケツ内の植物は茎が伸び白い花が咲き、さや状の種を多数つけた。
「凄い、本当にあっという間ね」
生物魔法の使い手であるミド・リーが驚いている。
「私の魔法は植物の操作に特化していますから。でもこの杖は本当にいいです。焦点を絞りやすいですし威力があるけれど扱いやすいし」
ミナミさんの杖はミド・リーやユキ先輩と長さも仕様も同じもの。つまり超高速促成栽培や遺伝子操作も生物系の魔法の一分野という事なのだろう。
「それでは種を取って、色々加工してみますね」
種はごくごく小さい。それを丁寧に手で取ってテーブルに並べる。
ミナミさんはそこから十数粒を取り出し紙にのせテーブルの別の場所に置いた。そして魔法アンテナの先を取り出した種に向ける。
「それではまず分析。うん、抗魔作用というのも魔法の一種ですから、根や茎により魔力を蓄積して、かつ抗魔作用そのものは出来るだけ減らす方向でまず調整してみます。茎は太目で加工しやすいよう柔らかく、葉も同じように柔らかく魔力が入った感じにして……」
魔力が動いているのはわかるが対象が小さすぎるのとやっている事自体への知識が足りないのとでよくわからない。
同じ生物魔法の使い手であるミド・リーに聞いてみよう。
「わかる? やっている事」
「私でも何となくという感じ。これはちょっと真似出来ないわ」
生物魔法の天才がそう言うんじゃ俺がわからないのは当然だろう。そう思って自分を納得させた。
それでは人の作業ばかり見ていないで自分の作業もしておこう。そう思いつつも皆さんの動向をつい見てみたりする。
ナカさん中心にアキナ先輩、ユキ先輩がやっているのはいわゆる経理作業。すみませんごめんなさいでも手伝えませんと思いつつ他を見る。
シンハ君はヨーコ先輩、フルエさんとともに外へトレーニングに出かけた。
フールイ先輩は新規に自分用の空間系魔法杖を制作している模様。これは本来の杖型の魔法杖だ。携帯用の魔法杖から配線をつないで使うので元々空間系魔法を持たないフールイ先輩でも使う事が出来る。
素材的には魔法銀が今は無いので魔法銅《オリハルコン》製。なので性能は少し落ちる。でも一応フルサイズのホイップアンテナなので携帯用のものよりは強力だ。
なおこの作成は俺やシモンさんではなく自分で工作系魔法杖を使って作っている。
この工作系魔法杖は以前それぞれ専用の空間移動用魔道具を作った際に何本か作ったものだ。便利なので常に3本位は旅行先にもっていっている。実は俺自身も1本常用しているし。
ミド・リーは先程のまま、ミナミさんの植物操作魔法を見学中。
シモンさんはタカモ先輩やキーンさんと魔法銅《オリハルコン》で有用な合金が出来ないか試作中。
そしてタカス君は怪しい読書中だ。ぶれないな、タカス君は。
さて、俺も課題を考えるとするか。
紙とペンを持ってきて作業開始。
まず作ろうとしているのはガスタービンエンジン。
最終的にはプロペラをつけてターボプロップエンジンにする予定だけれども。
まずはシンプルな概念図を描いてみる。
5段くらいの軸流式圧縮機、言い換えれば動く風車と動かない風車で空気を詰め込んで圧縮し、燃焼室で爆発させ、後半の風車3段を回して回転力を得る仕組み。
圧縮機の最後の段を遠心式にした方がいいだろうか。こっちのほうが効率がいいが場所を取る。
でも試作品なら色々な構造を入れてみた方がいいだろう。3段の軸流式と遠心式の組み合わせに描き直す。
燃焼室は基本的なカン型でいいだろう。あとは冷却機構と潤滑機構か。
圧縮機からの空気をある程度バイパスさせてやる。潤滑油のタンクやポンプ、冷却器を引きまわしてと。
基本的な概念図のつもりが随分と複雑になってしまった。これでも日本等にあった実際のガスタービンエンジンよりは簡単かつ単純だ。
魔法を使えるので点火用の色々とかがいらないし、冷却も場所によっては記述式魔法を使うから。
さて次はたたき台の模型でも作ろうか。そう思って周りを見ると思ったより時間が経っていたようだ。
タカス君とフールイ先輩がキッチンにいるのはきっと誰もが作業に夢中で何もしなかったから。
手伝おうかと思ったら既に簡単なサンドイッチからなる軽食が出来ていた。ちょっと申し訳ない。
「すみません。気が付きませんでした」
「問題ない。時間があっただけ」
「別に狩りの後に夕食を食べるし無くてもいいだろうけれど」
本人達はそう言っているが誰もいらないという顔をしていない。
よこせと顔に書いてあるのが6割。申し訳ないけれどくださいというのが4割。つまり皆さん作業を止めて食べに集まってきた状態。
「それではこれを食べたら魔物討伐の準備をしましょうか」
「そうですね」
当然のように全員でテーブルに付き食事開始。まあタカス君達も慣れているので全員分しっかり用意はできているのだけれども。
「それで皆さんの成果はどうでしょうか。会計はとりあえずもうちょっと経費を使うべきという結論に達しましたけれど」
ナカさんは昨年税金の額で大変ショックをうけていたからな。
今年は頑張って節税を目指すようだ。
「うちはトレーニングをしていただけだな。ここは坂道も多いし結構いいぞ」
身体強化組はまあそんな感じだろう。
「植物は面白いのが出来たわよ。明日には見本が出来ると思う。大々的に栽培すれば面白い事になると思うわ」
それをミナミさんではなくミド・リーが言うのは何だかなと思う。
「魔法合金はなかなか難しいです。今のところあまり意味のある組み合わせは出来ていません」
銅の合金というと青銅とか黄銅とかだよな。確かに今ひとつぱっとしない印象がある。
「空間系魔法は面白い。今はアイテムボックス魔法を訓練中」
フールイ先輩そんな事をしていたんですか。
「俺は読書していただけ」
タカス君、読んだ本の内容は言わないで下さい。
「ミタキは何をしていたの?」
「新しいエンジンの基本構想を作っていたところ。まだまだだけれどさ」
「それってあの空飛ぶ機械用の?」
「その基礎になる部分。まだまだ先は長いかな」
そんな事を話しているうちにサンドイッチは全滅する。
「まずは種を取ります。クレソンは水に付けた状態の方がいいと思いますので、バケツに水を入れて中に入れて」
さっき採取したうちの一株をバケツの中に入れる。
「それでは促成栽培を始めます。あ、これは使いやすくていい感じです」
ミナミさんがそう言っている間にもバケツ内の植物は茎が伸び白い花が咲き、さや状の種を多数つけた。
「凄い、本当にあっという間ね」
生物魔法の使い手であるミド・リーが驚いている。
「私の魔法は植物の操作に特化していますから。でもこの杖は本当にいいです。焦点を絞りやすいですし威力があるけれど扱いやすいし」
ミナミさんの杖はミド・リーやユキ先輩と長さも仕様も同じもの。つまり超高速促成栽培や遺伝子操作も生物系の魔法の一分野という事なのだろう。
「それでは種を取って、色々加工してみますね」
種はごくごく小さい。それを丁寧に手で取ってテーブルに並べる。
ミナミさんはそこから十数粒を取り出し紙にのせテーブルの別の場所に置いた。そして魔法アンテナの先を取り出した種に向ける。
「それではまず分析。うん、抗魔作用というのも魔法の一種ですから、根や茎により魔力を蓄積して、かつ抗魔作用そのものは出来るだけ減らす方向でまず調整してみます。茎は太目で加工しやすいよう柔らかく、葉も同じように柔らかく魔力が入った感じにして……」
魔力が動いているのはわかるが対象が小さすぎるのとやっている事自体への知識が足りないのとでよくわからない。
同じ生物魔法の使い手であるミド・リーに聞いてみよう。
「わかる? やっている事」
「私でも何となくという感じ。これはちょっと真似出来ないわ」
生物魔法の天才がそう言うんじゃ俺がわからないのは当然だろう。そう思って自分を納得させた。
それでは人の作業ばかり見ていないで自分の作業もしておこう。そう思いつつも皆さんの動向をつい見てみたりする。
ナカさん中心にアキナ先輩、ユキ先輩がやっているのはいわゆる経理作業。すみませんごめんなさいでも手伝えませんと思いつつ他を見る。
シンハ君はヨーコ先輩、フルエさんとともに外へトレーニングに出かけた。
フールイ先輩は新規に自分用の空間系魔法杖を制作している模様。これは本来の杖型の魔法杖だ。携帯用の魔法杖から配線をつないで使うので元々空間系魔法を持たないフールイ先輩でも使う事が出来る。
素材的には魔法銀が今は無いので魔法銅《オリハルコン》製。なので性能は少し落ちる。でも一応フルサイズのホイップアンテナなので携帯用のものよりは強力だ。
なおこの作成は俺やシモンさんではなく自分で工作系魔法杖を使って作っている。
この工作系魔法杖は以前それぞれ専用の空間移動用魔道具を作った際に何本か作ったものだ。便利なので常に3本位は旅行先にもっていっている。実は俺自身も1本常用しているし。
ミド・リーは先程のまま、ミナミさんの植物操作魔法を見学中。
シモンさんはタカモ先輩やキーンさんと魔法銅《オリハルコン》で有用な合金が出来ないか試作中。
そしてタカス君は怪しい読書中だ。ぶれないな、タカス君は。
さて、俺も課題を考えるとするか。
紙とペンを持ってきて作業開始。
まず作ろうとしているのはガスタービンエンジン。
最終的にはプロペラをつけてターボプロップエンジンにする予定だけれども。
まずはシンプルな概念図を描いてみる。
5段くらいの軸流式圧縮機、言い換えれば動く風車と動かない風車で空気を詰め込んで圧縮し、燃焼室で爆発させ、後半の風車3段を回して回転力を得る仕組み。
圧縮機の最後の段を遠心式にした方がいいだろうか。こっちのほうが効率がいいが場所を取る。
でも試作品なら色々な構造を入れてみた方がいいだろう。3段の軸流式と遠心式の組み合わせに描き直す。
燃焼室は基本的なカン型でいいだろう。あとは冷却機構と潤滑機構か。
圧縮機からの空気をある程度バイパスさせてやる。潤滑油のタンクやポンプ、冷却器を引きまわしてと。
基本的な概念図のつもりが随分と複雑になってしまった。これでも日本等にあった実際のガスタービンエンジンよりは簡単かつ単純だ。
魔法を使えるので点火用の色々とかがいらないし、冷却も場所によっては記述式魔法を使うから。
さて次はたたき台の模型でも作ろうか。そう思って周りを見ると思ったより時間が経っていたようだ。
タカス君とフールイ先輩がキッチンにいるのはきっと誰もが作業に夢中で何もしなかったから。
手伝おうかと思ったら既に簡単なサンドイッチからなる軽食が出来ていた。ちょっと申し訳ない。
「すみません。気が付きませんでした」
「問題ない。時間があっただけ」
「別に狩りの後に夕食を食べるし無くてもいいだろうけれど」
本人達はそう言っているが誰もいらないという顔をしていない。
よこせと顔に書いてあるのが6割。申し訳ないけれどくださいというのが4割。つまり皆さん作業を止めて食べに集まってきた状態。
「それではこれを食べたら魔物討伐の準備をしましょうか」
「そうですね」
当然のように全員でテーブルに付き食事開始。まあタカス君達も慣れているので全員分しっかり用意はできているのだけれども。
「それで皆さんの成果はどうでしょうか。会計はとりあえずもうちょっと経費を使うべきという結論に達しましたけれど」
ナカさんは昨年税金の額で大変ショックをうけていたからな。
今年は頑張って節税を目指すようだ。
「うちはトレーニングをしていただけだな。ここは坂道も多いし結構いいぞ」
身体強化組はまあそんな感じだろう。
「植物は面白いのが出来たわよ。明日には見本が出来ると思う。大々的に栽培すれば面白い事になると思うわ」
それをミナミさんではなくミド・リーが言うのは何だかなと思う。
「魔法合金はなかなか難しいです。今のところあまり意味のある組み合わせは出来ていません」
銅の合金というと青銅とか黄銅とかだよな。確かに今ひとつぱっとしない印象がある。
「空間系魔法は面白い。今はアイテムボックス魔法を訓練中」
フールイ先輩そんな事をしていたんですか。
「俺は読書していただけ」
タカス君、読んだ本の内容は言わないで下さい。
「ミタキは何をしていたの?」
「新しいエンジンの基本構想を作っていたところ。まだまだだけれどさ」
「それってあの空飛ぶ機械用の?」
「その基礎になる部分。まだまだ先は長いかな」
そんな事を話しているうちにサンドイッチは全滅する。
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