210 / 266
第24章 冬がはじまるよ
第201話 合宿開始
しおりを挟む
今日はユキ先輩とナカさんの2人でささっと料理。
ささっとの割にはビーフシチューとキッシュなんて凝った料理が出てきた。
せいぜい3半時間程度しか使っていないのに。
「何故こんなに味が染みたのをこんな短時間で作れるんですか」
「味を調えた後、高熱高圧にしてその後低温低圧にしてやるんです。そうすると味が一気に染みます。野菜が型崩れしないよう注意が必要ですけれど。お肉だけはそれでは柔らかくならないので薄切りにしてごまかしています」
「キッシュは魔法で全体を加熱すれば簡単ですしね」
なるほど。
日常魔法でも使い方次第でかなり素早く美味しく作れるわけか。
「ずっと川で風を受けていましたし、暖かいものが美味しいです」
「でもボートで飛ばすのも楽しかったですけれどね」
「私はちょっと怖かったです」
シモンさんの運転は相変わらずで……まあいいや。
終わったことだ。
今度の移動の事は今度考えればいい。
「それで明日朝は買い出し、明日夕方から魔獣狩りだ。今年はもう色々出てきているらしい。今のところ猿魔獣と鹿魔獣ばかりらしいけれどな。だから明日にある程度近場のを狩っておきたい」
「猪魔獣《オツコト》や熊魔獣《アナログマ》はどうですか」
「まだ出ていないと言っていたけれどな。でも今年は魔獣そのものは多いらしい。油断はしない方がいいだろう」
「魔獣狩りなんて初めてです」
「私は2回目なのだ」
「ここはコイより遥かに魔獣が多いぞ。大猪魔獣《オツコトヌシ》5匹を一気に狩ったときは運ぶだけで大変だったしさ」
「猪魔獣《オツコト》と鹿魔獣《チデジカ》は美味しい」
「でも獲ってたその日は肉は食べられないので内臓肉中心ですね」
「でもモツが美味しいんだ、実は」
作戦会議の筈だったのだがいつのまにか食欲の方が前に出てきている。
でもまあ明日は買い物と魔獣退治第1回。
魔獣退治は夕方からというのが通じれば問題ないか。
明日は買い物で魔法銅《オリハルコン》を大量購入して、他にパンとか生野菜も購入。
買ってきた魔法銅《オリハルコン》で3人分の魔法アンテナを作り、そして魔獣討伐。
色々充実した日になりそうだ。
充実しすぎて大変な一日にならなければいいけれど。
◇◇◇
今朝は特に何もないからゆっくり起床。昨日購入したパンやチーズ、牛パストラミ等でサンドイッチを作って食べて、一服したら買い出しだ。
なお今回は魔法銅《オリハルコン》を大量購入する予定。なので荷車を引いていく。
この荷車も例によってシモンさんの改造によって大分形が変化した。折りたたみ機能付きで長さも幅も可変。フレームも中敷きもホイールもオマーチの研究室から取り寄せたアルミ合金製。タイヤはゴム製高圧タイヤでディスクブレーキまで装備。
形はリアカーなのだけれど必要に応じて補助タイヤも展開可能。ただ今は何も載せていないので最小サイズで引っ張っている。
この状態だと長さ150指幅66指。割とコンパクトだ。
「最初は食べ物から回ろうか。金属は重いし」
「そうだね」
まずは野菜やパンから。ヌクシナの街は小さいし昨年も来たから店が何処にあるかは分かっている。
ニンニクは最近ウージナでもある程度見かけるようになった。でもやっぱりここの方が安いので購入。
同じく唐辛子も購入。パスタも当然購入。ピザ用の丸くて薄いパンももちろん大量購入。そんな感じで目についたものを買いあさる。
何せ今年は14人の大所帯。大量に買っても何とかなるし大量に買わないと間に合わない。
ただここヌクシナの街でも何か商品というか品物が増えている。乾燥バジルなんて去年なかったような。
これもウージナと同じように海運が活発になったおかげだろうか。俺としては売っていて使えそうなものはありがたく購入するけれど。
「何かミタキ、こういうところでは生き生きしているよね」
「料理に使えそうなものがあるとつい買ってしまうんだ」
「それはそれで食事に反映するから楽しいよね」
気持ちよく散財して荷車を少しだけサイズ変更をした状態で食品市場を後にする。
「さて、次は魔法銅《オリハルコン》だ」
「他の金属等も扱っているのでしょうか」
「銅と銅合金の他に鉄は一般用で売っているよ。あとは錫とか亜鉛は銅合金の材料だから扱っているよ」
「うーん、それならとりあえず魔法銅《オリハルコン》を優先した方がいいです。他は一通り扱いましたから。研究開発用に素材も多少持ち込んでいますし」
昨年と同様組合のやっている店へ。
値段は多分昨年と同じ。銅の上級品が1重で小銀貨6枚。魔法銅の最上級品がやはり1重で正銀貨6枚。
「とりあえず魔法銅の最上級品は30重購入しておこうかな。色々使えて便利だし」
シモンさんが景気がいいというか金額考えない発言をする。これはさすがにナカさんの制止が入るだろう。そう思ったのだけれど。
「税金で一気に取られるよりは使った方がましです」
あっさり会計担当の許可が下りた。
「うーん、私達の方はとりあえず5重でしょうか。うちの研究室は人数多いですからあまり私達だけで使うのも申し訳無いですし」
「そうですね」
ここでちょっと疑問。
「材料費は国から出るんじゃないの? うちは自由に使うためある程度は自費購入しちゃうけれど」
俺が思っていた事をシモンさんが質問する。
「国から出ますけれど研究会長決裁なんです。具体的に言うと学園祭の時ウージナに来た副院長の決裁ですね」
「でもあまり断られた事は無いです」
「組成変化実験の為ダイヤモンドの大量購入をお願いした時くらいでしょうか」
「あれは流石に金額が金額でしたから」
タカモさん、物腰と言葉遣いに似合わず時には豪快な事もするようだ。
「帰ったら魔法銅で色々な合金を作ってみたいですね」
「なら一応錫と亜鉛も購入しておきましょう」
そんな訳で錫と亜鉛も購入。ここまで買うと流石にずっしり重い。荷車も第三の車輪を展開した状況だ。
「あとここの鉱山の廃水沈殿池を見てきていいでしょうか」
タカモさんが意外な事を言う。
「でもあれって結構毒だよ」
「色々な微量元素が沈殿している事が多いんです。有用なものが得られるかもしれないので」
なるほど。そんな訳で鉱山や精錬所の先にある沈殿池へ。
鑑定魔法で見ると色々危険だったりする。そもそも池の周りにほとんど草が生えておらず、わずかな草もほぼ枯れている時点でやばい。
それがわかっているのか厳重に管理されているようだ。他の水脈等とあわさらないよう池の底までしっかり厚い防水層をつくっている。
更に下流部分に水門があり、その先に浅くて広い貯水池状の場所がある。これは底にたまった汚泥を出すためのものだ。
よく見ると乾燥した元汚泥の山が付近に何カ所か出来ている。ここで汚泥を出して乾かした後、積んでおくようだ。
「ここまできっちり管理してあると安全ですね。それに魔法も使いやすいです」
下流のほうの乾燥池の方へタカモさんは歩いて行き、すぐ近くから乾燥池全体を見回す。
「うーん、多いのは危険で役立たないものですね。でも少しは面白いものもあるようです」
乾燥中のどろっとした汚泥が動き出す。スライムが出現してタカモさんの前を横切るように通っていく感じだ。
それとともにタカモさんの横に何か固形のものが少しずつ出現していく。鑑定魔法で見ると金、銀、錫、亜鉛、ニッケルといった金属だ。
6半時間程度で乾燥池の汚泥全部がほぼひとまわりした。タカモさんがはあっと息をつく。
「そろそろ魔力の限界ですね。今の私の魔力ではこの程度です」
1指四方程度の金、その5倍位の銀。そして亜鉛、錫、ニッケルがそれぞれ握りこぶし大くらい。
「もう少し魔力があれば魔法精錬も簡単なのですけれどね」
だとしたらだ。
「この前頂いた軽量金属、あれを精錬するのは大変だったんじゃないですか」
「ここみたいに微妙しか含んでいないものをかき集めるのには魔力が必要です。けれど含有量さえ多ければ魔法精錬もそれほど難しくはありません。あの軽量金属《アルミ合金》はそこら中に含有量が多い石があります。材料さえあれば軽量金属なら1日に50重程度は魔法精錬できます」
うーん、この人の魔法は特別扱いされるだけある。まあオマーチの3人は3人とも特別扱い系の魔法持ちなのだけれど。
ささっとの割にはビーフシチューとキッシュなんて凝った料理が出てきた。
せいぜい3半時間程度しか使っていないのに。
「何故こんなに味が染みたのをこんな短時間で作れるんですか」
「味を調えた後、高熱高圧にしてその後低温低圧にしてやるんです。そうすると味が一気に染みます。野菜が型崩れしないよう注意が必要ですけれど。お肉だけはそれでは柔らかくならないので薄切りにしてごまかしています」
「キッシュは魔法で全体を加熱すれば簡単ですしね」
なるほど。
日常魔法でも使い方次第でかなり素早く美味しく作れるわけか。
「ずっと川で風を受けていましたし、暖かいものが美味しいです」
「でもボートで飛ばすのも楽しかったですけれどね」
「私はちょっと怖かったです」
シモンさんの運転は相変わらずで……まあいいや。
終わったことだ。
今度の移動の事は今度考えればいい。
「それで明日朝は買い出し、明日夕方から魔獣狩りだ。今年はもう色々出てきているらしい。今のところ猿魔獣と鹿魔獣ばかりらしいけれどな。だから明日にある程度近場のを狩っておきたい」
「猪魔獣《オツコト》や熊魔獣《アナログマ》はどうですか」
「まだ出ていないと言っていたけれどな。でも今年は魔獣そのものは多いらしい。油断はしない方がいいだろう」
「魔獣狩りなんて初めてです」
「私は2回目なのだ」
「ここはコイより遥かに魔獣が多いぞ。大猪魔獣《オツコトヌシ》5匹を一気に狩ったときは運ぶだけで大変だったしさ」
「猪魔獣《オツコト》と鹿魔獣《チデジカ》は美味しい」
「でも獲ってたその日は肉は食べられないので内臓肉中心ですね」
「でもモツが美味しいんだ、実は」
作戦会議の筈だったのだがいつのまにか食欲の方が前に出てきている。
でもまあ明日は買い物と魔獣退治第1回。
魔獣退治は夕方からというのが通じれば問題ないか。
明日は買い物で魔法銅《オリハルコン》を大量購入して、他にパンとか生野菜も購入。
買ってきた魔法銅《オリハルコン》で3人分の魔法アンテナを作り、そして魔獣討伐。
色々充実した日になりそうだ。
充実しすぎて大変な一日にならなければいいけれど。
◇◇◇
今朝は特に何もないからゆっくり起床。昨日購入したパンやチーズ、牛パストラミ等でサンドイッチを作って食べて、一服したら買い出しだ。
なお今回は魔法銅《オリハルコン》を大量購入する予定。なので荷車を引いていく。
この荷車も例によってシモンさんの改造によって大分形が変化した。折りたたみ機能付きで長さも幅も可変。フレームも中敷きもホイールもオマーチの研究室から取り寄せたアルミ合金製。タイヤはゴム製高圧タイヤでディスクブレーキまで装備。
形はリアカーなのだけれど必要に応じて補助タイヤも展開可能。ただ今は何も載せていないので最小サイズで引っ張っている。
この状態だと長さ150指幅66指。割とコンパクトだ。
「最初は食べ物から回ろうか。金属は重いし」
「そうだね」
まずは野菜やパンから。ヌクシナの街は小さいし昨年も来たから店が何処にあるかは分かっている。
ニンニクは最近ウージナでもある程度見かけるようになった。でもやっぱりここの方が安いので購入。
同じく唐辛子も購入。パスタも当然購入。ピザ用の丸くて薄いパンももちろん大量購入。そんな感じで目についたものを買いあさる。
何せ今年は14人の大所帯。大量に買っても何とかなるし大量に買わないと間に合わない。
ただここヌクシナの街でも何か商品というか品物が増えている。乾燥バジルなんて去年なかったような。
これもウージナと同じように海運が活発になったおかげだろうか。俺としては売っていて使えそうなものはありがたく購入するけれど。
「何かミタキ、こういうところでは生き生きしているよね」
「料理に使えそうなものがあるとつい買ってしまうんだ」
「それはそれで食事に反映するから楽しいよね」
気持ちよく散財して荷車を少しだけサイズ変更をした状態で食品市場を後にする。
「さて、次は魔法銅《オリハルコン》だ」
「他の金属等も扱っているのでしょうか」
「銅と銅合金の他に鉄は一般用で売っているよ。あとは錫とか亜鉛は銅合金の材料だから扱っているよ」
「うーん、それならとりあえず魔法銅《オリハルコン》を優先した方がいいです。他は一通り扱いましたから。研究開発用に素材も多少持ち込んでいますし」
昨年と同様組合のやっている店へ。
値段は多分昨年と同じ。銅の上級品が1重で小銀貨6枚。魔法銅の最上級品がやはり1重で正銀貨6枚。
「とりあえず魔法銅の最上級品は30重購入しておこうかな。色々使えて便利だし」
シモンさんが景気がいいというか金額考えない発言をする。これはさすがにナカさんの制止が入るだろう。そう思ったのだけれど。
「税金で一気に取られるよりは使った方がましです」
あっさり会計担当の許可が下りた。
「うーん、私達の方はとりあえず5重でしょうか。うちの研究室は人数多いですからあまり私達だけで使うのも申し訳無いですし」
「そうですね」
ここでちょっと疑問。
「材料費は国から出るんじゃないの? うちは自由に使うためある程度は自費購入しちゃうけれど」
俺が思っていた事をシモンさんが質問する。
「国から出ますけれど研究会長決裁なんです。具体的に言うと学園祭の時ウージナに来た副院長の決裁ですね」
「でもあまり断られた事は無いです」
「組成変化実験の為ダイヤモンドの大量購入をお願いした時くらいでしょうか」
「あれは流石に金額が金額でしたから」
タカモさん、物腰と言葉遣いに似合わず時には豪快な事もするようだ。
「帰ったら魔法銅で色々な合金を作ってみたいですね」
「なら一応錫と亜鉛も購入しておきましょう」
そんな訳で錫と亜鉛も購入。ここまで買うと流石にずっしり重い。荷車も第三の車輪を展開した状況だ。
「あとここの鉱山の廃水沈殿池を見てきていいでしょうか」
タカモさんが意外な事を言う。
「でもあれって結構毒だよ」
「色々な微量元素が沈殿している事が多いんです。有用なものが得られるかもしれないので」
なるほど。そんな訳で鉱山や精錬所の先にある沈殿池へ。
鑑定魔法で見ると色々危険だったりする。そもそも池の周りにほとんど草が生えておらず、わずかな草もほぼ枯れている時点でやばい。
それがわかっているのか厳重に管理されているようだ。他の水脈等とあわさらないよう池の底までしっかり厚い防水層をつくっている。
更に下流部分に水門があり、その先に浅くて広い貯水池状の場所がある。これは底にたまった汚泥を出すためのものだ。
よく見ると乾燥した元汚泥の山が付近に何カ所か出来ている。ここで汚泥を出して乾かした後、積んでおくようだ。
「ここまできっちり管理してあると安全ですね。それに魔法も使いやすいです」
下流のほうの乾燥池の方へタカモさんは歩いて行き、すぐ近くから乾燥池全体を見回す。
「うーん、多いのは危険で役立たないものですね。でも少しは面白いものもあるようです」
乾燥中のどろっとした汚泥が動き出す。スライムが出現してタカモさんの前を横切るように通っていく感じだ。
それとともにタカモさんの横に何か固形のものが少しずつ出現していく。鑑定魔法で見ると金、銀、錫、亜鉛、ニッケルといった金属だ。
6半時間程度で乾燥池の汚泥全部がほぼひとまわりした。タカモさんがはあっと息をつく。
「そろそろ魔力の限界ですね。今の私の魔力ではこの程度です」
1指四方程度の金、その5倍位の銀。そして亜鉛、錫、ニッケルがそれぞれ握りこぶし大くらい。
「もう少し魔力があれば魔法精錬も簡単なのですけれどね」
だとしたらだ。
「この前頂いた軽量金属、あれを精錬するのは大変だったんじゃないですか」
「ここみたいに微妙しか含んでいないものをかき集めるのには魔力が必要です。けれど含有量さえ多ければ魔法精錬もそれほど難しくはありません。あの軽量金属《アルミ合金》はそこら中に含有量が多い石があります。材料さえあれば軽量金属なら1日に50重程度は魔法精錬できます」
うーん、この人の魔法は特別扱いされるだけある。まあオマーチの3人は3人とも特別扱い系の魔法持ちなのだけれど。
応援ありがとうございます!
3
お気に入りに追加
2,158
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる