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第24章 冬がはじまるよ

第200話 冬合宿へ

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 今回ヌクシナまでは交通機関はどうするか。ボートか車か移動魔法か。

 検討した結果、蒸気ボートと移動魔法の折衷案になった。
  ① カーミヤ近郊まで強力空間魔法杖を使ってボートごと移動
  ② フールイ先輩は強力空間魔法杖を折りたたみ携帯魔道具でボート上に移動
  ⑤ ボート上にオマーチの3人を魔法杖で移動
  ③ カーミヤで買い物を済ませたら適当な人目の無い処でボートごと魔法移動
  ④ ②と同じくフールイ先輩と折りたたんだ魔法杖がボートに移動
  ⑥ ヌクシナのクサズリ砦へ
という手順だ。

 フールイ先輩の負担が非常に高いような気がするが、本人に言わせると、
「問題無い」
そうである。
 移動用魔法杖に慣れた結果、あまり魔力を使わなくても魔法移動が出来るようになったらしい。
 そのうち杖無しでも移動魔法を使い出すのではないか。そんな気すらする。

 期末テストも無事終わった。俺は少し順位が上がったがそれ以上にシンハ君の順位が上がったため、差が十人程度まで縮まってしまっている。俺としては素直に喜ぶべきだと思うのだけれどどうもしっくりこない。
 フルエさんも相変わらずぎりぎりだが成績優秀者欄に名前が載っている。シモンさんは相変わらず俺とほぼ同じで合計でも1点差。
 なおミド・リーとかタカス君とかナカさん、先輩方の順位は見てはいけない。一桁前半部というか思い切り最先端にいたりするのだ。

「今回は1問フールイに負けたな」

「見直しをしないのが悪い」

「見直しをするのって面倒だよね。せっかくゆっくり寝れる時間なのに」

「勿体ないと思います」

「ケアレスミスも実力」

 こんな奴らが順位欄の右端を占めていたりするのだ。少しは真面目にやっている人の事を考えてほしい。俺にそれを言う権利はきっと無いけれど。

 さて冬合宿の準備だ。
 最近実家の店で煎酒や鶏出汁の素を扱っているので今回は持っていくつもりだ。無論開発したのは俺。
 元々自分で使うのに便利なので実作して家のキッチンに常備していた。それをうちの母が見つけた結果、あれしてなにして市販となった訳だ。
 両方ともじわじわ売れていき、今ではそこそこ人気商品になっている。あると料理を作るのがかなり楽になるしな。

 他にも海運が活発になってきたおかげで入る品物が増えてきた。西岸だけのものだった米だとか米酒とか味醂なんてのも入るようになったのだ。
 これは海軍の新型船による私掠船対策のおかげらしい。


 海軍は夏から私掠船対策の新型船投入を開始。探索用の大型魔法アンテナと攻撃用の大型魔法アンテナを積んだ蒸気機関駆動の高速小型戦闘艦だ。敵より遙か遠くから発見する事が出来、魔法の射程も倍以上。しかも風向きに関係なく高速で航行できる。
 何か胸に手を当てて考えると思い当たる技術が色々あるような……

 まあ私掠船なんて出す方が悪いのだ。俺は生活が豊かになった事を喜ぶことにしよう。

 当初は甘い調味料である味醂のせいでシンハ君宅も影響が出るか心配したらしい。しかし海運が活発になった結果むしろ水飴等も売れるようになったそうだ。
 それでも詳細は秘密だが一応対応策を作っているとのこと。
 石鹸等についても同様販売量が増えたらしい。シンハ君によれば調子よく次の増産計画を立てているそうだ。

 姉貴の店では更に新製品が増えている。味醂の他北部から入る林檎酒なんてのも使うようになった。おかげでフルエさんがいつもピーピー状態になっているらしい。

「いくら買いあさっても制覇できないのだ!」

 そんな事を言ってはタカス君に指導を入れられている。
 更には期末テスト終了祝いの席で味醂をたっぷり使ったパウンドケーキをフルエさんが一気食いした結果、酔っ払って研究室内を大暴走。全員+オマーチの3人を含めた大捕物の上、ミド・リーの魔法で気絶させて捕獲。簀巻き状態にされて寮直送になってしまった。

「速度特化の身体強化をすると床だけでなく壁も走れるんだな」

「壁は走れるが窓は割れる」

 その時の俺とタカス君の会話である。

 まあ話が大分横に逸れたが、そんな訳で色々調味料を買い込んだ。お約束の焼肉のタレも何種類か作って熟成してある。
 でも今度はすき焼き風とか牛丼風とかを作ってみてもいいかもしれない。味醂の甘さならその辺にもあうだろう。

 寒天とかベーキングパウダーとかも当然用意。生クリームとかはカーミヤで購入予定だ。甘い物も作らないと文句が出るからな。量が多いのでここのところ少しずつ家から研究室へ運んでいる。

 俺だけでは無い。皆さんじわじわと荷物を増やしている状態だ。最悪ボートに積めなくても研究室に置いておけばいい。移動魔法で運んでくれる予定だから。


 ◇◇◇


 そして2学期最後の日の夕方。俺達は無事クサズリ砦にたどり着いた。
 道中は思った以上に大変だった。オマーチ組3人が予想以上に色々お買い物をしてしまったのである。

 状況や理由はわかる。この3人は普段、安全の為にあまり外に出してもらえない状態。それがいきなり南部最大の商業都市に買い物に来てしまったのだ。楽しくて仕方ないのはよくわかる。
 しかも3人は蒸気自動車のタイヤの件でお金に余裕がある状態。更に世話好きなミド・リーが色々な店を案内して回ってしまった結果。移動魔法なしでは時間に間に合わない位お買い物してしまった訳だ。

 途中で今回の旅行に必要ない荷物はそれぞれの寮へと移動魔法で転送した。ちょっと可愛い服だとかアクセサリーとか。タカス君が購入した百合な漫画十数冊とか。

 何せ改装したとは言え元は8人乗りのつもりで作った蒸気ボート。14人乗りだと結構狭い。操縦席がシモンさんで他は2~3人ずつ一列だ。しかも色々荷物を詰め込んでいるし。

 そんな感じでやっとの思いで砦に到着。当座必要な荷物等をいつもの荷車に載せ、坂道を押して上って上の入口へ。
 下の船着き場にいた番兵から話がついていたらしく、ヨーコ先輩がちょっと受付で話すだけでカギを3つ渡される。

「今回は人数が多いので3部屋借りた。とりあえず前回と同じ部屋に集合して寝るときに各部屋にわかれることにしよう。まずは大部屋に荷物を入れて夕食の支度だ」

「今日は時間が無いから簡単なものにしますよ」

 もう外が暗くなりかけている。この世界は夜は早い。灯火魔法で明かりは得られるのだけれど。
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