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第23章 二度目の学園祭
第195話 少し気は重いけれど
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ふうっと息をついてアキナ先輩とユキ先輩が椅子というか机に突っ伏した。
「まさかあんな大物が出てくるとは思いませんでしたわ」
「流石に私もちょっと参りました」
「予想外だったな。せいぜい研究院の学生くらいかと思ったのだが」
「反則ですね。あの方が出てくるなんて。残り2人は一応学生さんでしたけれど」
やっぱり貴族の皆さんは今のが誰か気づいていた模様。
「参考までにトモさんの正体を聞いていいですか。ターカノさん達を呼び捨てにしていましたけれど」
「先程の方はトモ・セイフー・シント侯爵本人です。ああ見えても30歳は超えています。現職はオマーチ王立学園研究院副院長兼国王庁科学技術部参与ですね」
えっ。ユキ先輩なんですと。
「私達はここで自由に遊んでいるつもりですけれどね。色々面倒ですわ」
「それだけここを重要視しているんだろう」
アキナ先輩とヨーコ先輩の台詞。つまりユキ先輩が言った事は事実らしい。
でもさっきの高等部学生風の女子が侯爵本人で、30歳以上だって。どう見ても高等部の学生にしか見えなかったのだけれども。
「トモ卿が出てきたのは残り2人の保護という意味もあるんだろうな。2人とも特殊魔法持ちの亡命貴族の子孫だし」
「何処で何をしているのかわかるだろうけれど秘密にして下さいという圧力ですね」
貴族の皆さんは他にも色々気づいた模様。
特殊魔法持ちの亡命貴族については聞いたことがある。スオー国で革命が起きた際、スオー国の貴族の一部がアストラム国へ亡命。それらのうち有能な者及び有用な魔法を持つ者はアストラムでも子爵以下の貴族として取り立てられた。
今でもスオー国は公式には国内犯罪人として元貴族の身柄引き渡しを求めている。故に彼らの身柄は厳重に保護されている訳だ。
その特殊魔法持ちの一部があの合金を作ったり植物の改良を行った訳か。となると、だ。
「そんな秘密レベルの人や技術を俺達に開示してしまった訳ですか」
「面倒な事になりそうですけれど仕方無いですわ。今は取りあえずもたらされた素材を活かすことを中心に考えましょう」
アキナ先輩がそう言ってため息をついた時。ちょうど隣の展示室側からシンハ君とフルエさんが顔を出した。フルエさんは部屋の中を見回す。
「怖いおばさんは帰ったようなのだ。ちょっとほっとしたのだ」
「あの人が怖い人って訳じゃないけれどな。侯爵ご本人となるとちょっとさ」
やっぱりこの2人も気づいていた訳か。それで帰ったのを見計らってこっちに顔を出したと。
何だかなあ。素材が手に入るのはいいけれど色々面倒な事になるかもしれない。そう思うとちょっと気が重い。
◇◇◇
そんな出来事が起きても学園祭は続く。忙しい間を縫って実演や展示の合間にあちこち他に出向いたりもする。
タカス君は掘り出し物を見つけたと上機嫌だ。
「やっぱり女性の描いた百合物は違うよな」
そう俺に話してくれたが俺は作者を知っている。奴はペンネームこそ女性名だが実は男だ。
だがその件については彼には言わないでおこう。知らない方が幸せな事も世の中には沢山あるのだ。
他にも学園祭とは関係無いが彼が追っかけている作家の新刊本が出たらしい。まさかユキ先輩達が動画の前にこっそり会議室で描いていた奴じゃないよな。確かめていないのでその辺は不明だけれども。
俺自身もそこそこ成果を手に入れた。
数少ないクラスメイトのミササ君との付き合いで手に入れた文芸部の同人誌。これが思ったより面白かったのだ。
他にもなかなかいい感じの音を奏でる自動オルゴールとか。来年のいい感じのカレンダーとか。
買い食いでも焼きそば屋があってこれがなかなか美味しい。この国で一般的な麺と違う、前世日本風の麺の焼きそばだ。
勿論この焼きそば屋には俺が絡んでいる。ひと月前ミササ君から相談されたのだ。
『文芸部で金が無いので模擬店をやりたいんだが、他と差別化で出来るような食べ物は何かないか』
文芸部では同人誌を毎回出している。既刊を読んでみたところなかなか面白いのだが収支は良くないらしい。
可哀そうなのでラーメン麺の製法を教えた訳だ。更にそれで簡単に作れるメニューとして焼きそばのレシピも。
実は俺はラーメンらしい麺を食べたいなと前々から思っていた。スパゲティを重曹で茹でると近い物にはなるがやっぱり微妙に違う。
でも俺自身研究を抱えていて麺のトライ&エラーなんてできる状況にない。そもそもうちの研究会では忙しすぎて試食販売等も出来ないだろう。だから誰か他の人開発してくれ、という想いを彼に託した訳だ。
今回は麺以外は簡単に出来るよう、出品メニューは焼きそばのみ。それも適当なソースが無いので塩焼きそば。ソースが焼けるあの匂いは残念ながら無い。
しかし目新しいのとコストパフォーマンスが高いのとで大いに売れているそうだ。実際に食べてみたけれどなかなか完成度が高い。前世で知っているものと遜色ない出来だ。
あとはソース焼きそばとか、できればラーメンの類も開発してほしい。なおソース焼きそばのソースは出来れば甘目が俺の好みだ。
出来れば広島風お好み焼きなんて開発してくれれば最高! 勿論この世界にオ●フクソースもカ●プソースも無いけれど。
「まさかあんな大物が出てくるとは思いませんでしたわ」
「流石に私もちょっと参りました」
「予想外だったな。せいぜい研究院の学生くらいかと思ったのだが」
「反則ですね。あの方が出てくるなんて。残り2人は一応学生さんでしたけれど」
やっぱり貴族の皆さんは今のが誰か気づいていた模様。
「参考までにトモさんの正体を聞いていいですか。ターカノさん達を呼び捨てにしていましたけれど」
「先程の方はトモ・セイフー・シント侯爵本人です。ああ見えても30歳は超えています。現職はオマーチ王立学園研究院副院長兼国王庁科学技術部参与ですね」
えっ。ユキ先輩なんですと。
「私達はここで自由に遊んでいるつもりですけれどね。色々面倒ですわ」
「それだけここを重要視しているんだろう」
アキナ先輩とヨーコ先輩の台詞。つまりユキ先輩が言った事は事実らしい。
でもさっきの高等部学生風の女子が侯爵本人で、30歳以上だって。どう見ても高等部の学生にしか見えなかったのだけれども。
「トモ卿が出てきたのは残り2人の保護という意味もあるんだろうな。2人とも特殊魔法持ちの亡命貴族の子孫だし」
「何処で何をしているのかわかるだろうけれど秘密にして下さいという圧力ですね」
貴族の皆さんは他にも色々気づいた模様。
特殊魔法持ちの亡命貴族については聞いたことがある。スオー国で革命が起きた際、スオー国の貴族の一部がアストラム国へ亡命。それらのうち有能な者及び有用な魔法を持つ者はアストラムでも子爵以下の貴族として取り立てられた。
今でもスオー国は公式には国内犯罪人として元貴族の身柄引き渡しを求めている。故に彼らの身柄は厳重に保護されている訳だ。
その特殊魔法持ちの一部があの合金を作ったり植物の改良を行った訳か。となると、だ。
「そんな秘密レベルの人や技術を俺達に開示してしまった訳ですか」
「面倒な事になりそうですけれど仕方無いですわ。今は取りあえずもたらされた素材を活かすことを中心に考えましょう」
アキナ先輩がそう言ってため息をついた時。ちょうど隣の展示室側からシンハ君とフルエさんが顔を出した。フルエさんは部屋の中を見回す。
「怖いおばさんは帰ったようなのだ。ちょっとほっとしたのだ」
「あの人が怖い人って訳じゃないけれどな。侯爵ご本人となるとちょっとさ」
やっぱりこの2人も気づいていた訳か。それで帰ったのを見計らってこっちに顔を出したと。
何だかなあ。素材が手に入るのはいいけれど色々面倒な事になるかもしれない。そう思うとちょっと気が重い。
◇◇◇
そんな出来事が起きても学園祭は続く。忙しい間を縫って実演や展示の合間にあちこち他に出向いたりもする。
タカス君は掘り出し物を見つけたと上機嫌だ。
「やっぱり女性の描いた百合物は違うよな」
そう俺に話してくれたが俺は作者を知っている。奴はペンネームこそ女性名だが実は男だ。
だがその件については彼には言わないでおこう。知らない方が幸せな事も世の中には沢山あるのだ。
他にも学園祭とは関係無いが彼が追っかけている作家の新刊本が出たらしい。まさかユキ先輩達が動画の前にこっそり会議室で描いていた奴じゃないよな。確かめていないのでその辺は不明だけれども。
俺自身もそこそこ成果を手に入れた。
数少ないクラスメイトのミササ君との付き合いで手に入れた文芸部の同人誌。これが思ったより面白かったのだ。
他にもなかなかいい感じの音を奏でる自動オルゴールとか。来年のいい感じのカレンダーとか。
買い食いでも焼きそば屋があってこれがなかなか美味しい。この国で一般的な麺と違う、前世日本風の麺の焼きそばだ。
勿論この焼きそば屋には俺が絡んでいる。ひと月前ミササ君から相談されたのだ。
『文芸部で金が無いので模擬店をやりたいんだが、他と差別化で出来るような食べ物は何かないか』
文芸部では同人誌を毎回出している。既刊を読んでみたところなかなか面白いのだが収支は良くないらしい。
可哀そうなのでラーメン麺の製法を教えた訳だ。更にそれで簡単に作れるメニューとして焼きそばのレシピも。
実は俺はラーメンらしい麺を食べたいなと前々から思っていた。スパゲティを重曹で茹でると近い物にはなるがやっぱり微妙に違う。
でも俺自身研究を抱えていて麺のトライ&エラーなんてできる状況にない。そもそもうちの研究会では忙しすぎて試食販売等も出来ないだろう。だから誰か他の人開発してくれ、という想いを彼に託した訳だ。
今回は麺以外は簡単に出来るよう、出品メニューは焼きそばのみ。それも適当なソースが無いので塩焼きそば。ソースが焼けるあの匂いは残念ながら無い。
しかし目新しいのとコストパフォーマンスが高いのとで大いに売れているそうだ。実際に食べてみたけれどなかなか完成度が高い。前世で知っているものと遜色ない出来だ。
あとはソース焼きそばとか、できればラーメンの類も開発してほしい。なおソース焼きそばのソースは出来れば甘目が俺の好みだ。
出来れば広島風お好み焼きなんて開発してくれれば最高! 勿論この世界にオ●フクソースもカ●プソースも無いけれど。
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