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第20章 それでも続く夏合宿

第162話 そして結局肉祭り

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 皆さんがオリジナルを作っている間に第1回試食用フランクフルトが完成した。見本で作ってゆでていた奴である。
 食べ方の見本ということで皿に並べてのせて串を刺して、ケチャップとマスタードをつけて皆に配る。
 日本の露店やフードコート風、正しいフランクフルトの食べ方という奴だ。

「これがスタンダードに作った場合の見本」

「あのレッドスイートソースをつけるのか」

「これは向こうの世界流。この世界だとどうだっけ」

 そっちの方が逆にわからなかったりする。転生者あるあるというやつだろう、きっと。

「塩かそのまま。でもこの方が美味しい。というかこのソーセージが美味しい」

「本当だ。中の肉の感触が違う」

「美味しいですね、確かに」

 俺もいただく。厳密に言えばパリッと加減がいまいちだ。まあそうしたいのなら乾燥させて燻製すればいいのだろうけれど。
 でも中身の旨さはいい感じだ。この粗挽きの食感も非常に良い。

「作った後に温風で半時間乾かして燻製すると食感がもっと良くなる筈だ」

「やってみるね」

「美味しい。もっと作ろう」

「そうですね。これは作る価値があります」

 そんな感じで作りながら食べて、作りながら食べて。おかげで完成品がちっとも貯まらないのに肉はどんどん減っていく。当然最初に準備した1重6kgの肉では足りなくなった。冷蔵庫から出して追加だ。


 試しで挽肉の一部はハンバーグ状にして焼いてみたりもする。タマネギとかは入れていないがこれもなかなかに美味しい。中にチーズなんて仕込むと最高だ。

 燻製にしたゆで卵やチーズ、ナッツやジャガイモなんてのも出回り始めた。更にガーリックバターパンなんてのまで誰か作って回している。完全に宴会状態だ。

「何かこういうのも楽しいよね」

「同意」

「そうだな。美味しいし」

「でも毎回こんなことをやったら太りますよね」

「その時はまた運動すればいい。例えばまた登山するとか」

 それだけはやめて欲しい。

「あれは頼むから勘弁してくれ。あの後普通に動けなかったしさ」

「次は多分少しは楽になっていると思うわよ。あの時の分筋肉が強化された筈だし」

 本当だろうか。試して痛い目にあうのはごめんだ。

 さて、作ったソーセージにも個性が出る。茶色でパリッとして中がジューシーなのはフールイ先輩作。白くて香草が爽やかで美味しいのがナカさん作だ。この辺は市販の高級品よりよっぽど美味しい。

 勿論美味しいのもあればいまいちなのもある。例えばこの粗挽き過ぎて中がまとまっていないのは確かヨーコ先輩作。詰まり過ぎと空気抜きの甘さで破裂しているのがシンハ君作だ。
 そしてこの怪しい緑色のはどんな味かというと……

 うっ! 何だこのハーブ入れ過ぎで線香を食べているような香りと苦さは! しかも塩入れすぎ! しょっぱすぎる!
 誰の作品かすぐわかったがあえて俺は指摘しない。これもまた個性だ、きっと。
 刻んでスパゲティにでも入れればそれなりに食べられない事も無いだろう。このままでは今ひとつというか味の暴力だけれども。

 そろそろ皆さん食べるのにも飽きてきたのだろう。ストックができはじめた。このうちの一部は冷やした後水分を魔法で取って冷蔵庫へ。この状態で殺菌魔法をかけてやればそれなりに持つはずだ。

「美味しかったけれど肉ばかり大量に食べると飽きるよな」

 そりゃ6kg単位で作った物を食べまくれば飽きるのは当たり前だろう。

「でもこういうのもなかなか面白いですわ」

「大量に作った割に出来上がったソーセージが少ないのですね」

「作ったそばから食べているから仕方無いよ」

「肩肉と肩ロース肉あわせて3重18kg使った筈ですけれど」

 俺は鑑定魔法で冷蔵庫内とここで冷やしている最中のソーセージを確認する。うん、加工中を含めても1重半9kgってところだな。
 つまり残りは皆さんのお腹の中に収まったという事だ。健康に悪そうだけれど大丈夫なのか?

 ソーセージ以外にも肉関係は色々作っている。ベーコンやパンチェッタにするつもりのバラ肉塩漬けとか。魔法で減圧乾燥させた後薄く切って燻製にしたジャーキーとか。骨付き塊肉の燻製とか。


 塩辛い味付けに飽きた時用に日本風の甘辛角煮もことこと煮えている。冷製用に茹でて脂を除いた後冷やしたものも骨からゼラチン質が出てぷるんぷるんに仕上がった。

「やっぱり肉祭りをやるには買ってきた肉より捕ってきた肉の方がいいよな」

「そうですね。心置きなく使えますし色々な部位も楽しめますから」

 何せ食べまくるからな、皆さん。買ってきた肉ではここまでガンガン食べられない。

「こういう食べ方は初めてなのだ」

「いや、俺達だって初めてだから。ソーセージ作りながら宴会ってのは」

「確かに宴会状態だよね」

「でも少しずつ撤収準備もしましょうか」

「はーい」

 そんな訳でミンチ作成機等使わなくなったものから洗っておく。洗うと言っても清拭魔法で一発なのだけれど。混ぜ機やボール、出していた香辛料や香草も同様に。
 ただ……

「肉には飽きたと思ったけれど、この冷製は美味しいよね」

「この甘辛い肉の煮物もなかなか美味しい」

 そうやって別のところがまた散らかって行く。
 そして時間はゆっくりとだが過ぎていき……
 
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