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第18章 めでたく夏合宿
第142話 移動初日の誤算?
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1学期の授業終了日。予定通り俺達は蒸気自動車でウージナを旅立った。
改良した蒸気自動車はかなり加速が良くなっている。そのくせ挙動も安心感がある。何というか、色々危なげない感じだ。
「今日はオマーチまでだよね」
「そうです。オマーチの国教会聖堂近くに宿を取ってあります」
資料を見た感じでは高級そうな宿だった。
しかし大丈夫だろうか。料金的な問題では無い。俺達のような中高生の集団が泊まりに行って大丈夫かという意味だ。
一応アキナ先輩とユキ先輩は大人扱いだ。そしてよく考えたら半分近くは貴族。だから文句を言われる可能性はきっと低い。
しかし常識というものが俺の思考を引っ張る。こんな蒸気自動車に乗っている時点でもう常識ドコーという状態ではあるのだけれど。
昼過ぎに出たので馬車とのすれ違いや追い抜きが多い。おかげでなかなか速度が出せない。
「うーん、これじゃ1時間でカーミヤまで着けないな」
「着かなくていいから。倍かかっても十分速いから」
シモンさんも大分常識が狂ってきたようだ。
確かに急ぎたくなる気持ちはわかる。何せ本日の行程は長い。ウージナからオマーチまでだいたい170離。この車でも半日かかる距離だ。
ただ幸い本日は宿を夕食朝食付きで予約してある。だから遅くに到着しても全く問題はない。
なお行程中の昼食やおやつはたっぷり買っておいた。姉貴に頭を下げて特別注文したのだ。
現にシモンさんはドライフルーツ入りスティックケーキを食べながら運転中。
「これって何かしながら食べるのには最高だよね。今回はドライフルーツとチーズケーキと、あと何があるんだっけ」
「細いロールケーキ、スイートポテト&栗、緑茶風味ボックスクリームだな」
「なら次は緑茶のボックスクリームで」
「はいはい」
よそ見運転されたら困るというか危険だ。だからシモンさんの分のおやつは俺が取ることになっている。
飲み物もストロー入り容器に入った冷たい紅茶を常備している。だからそんな感じで補給しながら走れるだけ走る。
何せオマーチは遠い。順調にいっても到着は午後5時頃になる。
「そう言えば今度こそは出ないよね」
後ろの方でミド・リーが縁起でもない話をしている。
「出ないって何が」
「毎度おなじみホン・ド殿下」
やっぱりその話かと思った。まあ今日の日程で出るというと他には無いだろうけれど。山の中ではないから熊魔獣なんて事はない。
「今回はヤバいものを作っていないし大丈夫だろ」
俺としてはそう思いたい。
「そうですね。新人歓迎合宿にもいらっしゃいませんでしたし」
「そんなにしょっちゅう出るものなのですか」
ユキ先輩の疑問はもっともだと思う。今までの事情を知らないならばだけれども。
「学園祭の後は春合宿にいらっしゃっただけですわ。ですのでそれほど心配ないかと思います」
頼む、縁起でも無い。そもそも第一王子なんて存在はそんなに軽いものでは無い筈なのだ。
ただ本日の目的地はオマーチ。奴の本拠地だ。何があるかわからない。覚悟はしておいた方がいいだろう。したくないけれど。
◇◇◇
途中トイレ休憩3回を挟んで、無事午後5時少し前にオマーチに到着。馬車道を中心街へ向けてゆっくり走る。
前方には国教会の特徴的な尖塔が見えた。ガイドブックにも出てくるおなじみの姿だ。
「宿は中心街でいいんだよね」
「まだまだ真っ直ぐです。ミササ橋を渡ったら右です」
まだ明るいが注意を促すためヘッドライトをつけて走る。普通の人は灯火魔法だと思ってくれるだろう。実際そうやって走っている馬車もある。
「次の橋がミササ橋です。渡ったら次の太い道を右、50腕も行かないうちに宿の馬車停めがある筈です。看板があるそうです」
ナカさんの指示に従って橋を渡り、交差点を右折。
宿の位置はすぐわかった。さっきから見えている国教会の斜め前にあるいかにも大きな建物。その横には何台も馬車を停められそうな馬車停め兼用通路がある。
ただ予定外というか新人以外は皆さん予想していた障害があった。申し訳なさそうな顔で馬車停め入口に立っている小柄な女性。新人以外の皆さんは知っているあの人だ。
シモンさんは彼女の横で自動車を停める。予定通り、まるで全てわかっていましたとでもいうように。
「申し訳ありません。皆様をご案内するように申し付かっております。なおこの宿の方は既にキャンセルさせていただきました」
誰からとは言わない。でもこの人、ターカノさんが出てきた以上誰の命令かは明白だ。
「わかりました。それでは案内をお願いして宜しいでしょうか」
「ええ、そのつもりで参りました」
「どうぞ。2列目を空けますので」
タカス君とフルエさんが後ろに移動。代わりにターカノさんに2列目に座って貰う。
横はユキ先輩だ。彼女も大貴族の一員だし問題は無いだろう。
「それでは案内させて頂きます。まずはまっすぐ行って、次の交差点を左へとお願い致します」
さて何処へ連れて行かれるのだろうか。あと何が目的なのだろうか。今回は特に何も怪しいものは作っていない筈なのだけれど。
改良した蒸気自動車はかなり加速が良くなっている。そのくせ挙動も安心感がある。何というか、色々危なげない感じだ。
「今日はオマーチまでだよね」
「そうです。オマーチの国教会聖堂近くに宿を取ってあります」
資料を見た感じでは高級そうな宿だった。
しかし大丈夫だろうか。料金的な問題では無い。俺達のような中高生の集団が泊まりに行って大丈夫かという意味だ。
一応アキナ先輩とユキ先輩は大人扱いだ。そしてよく考えたら半分近くは貴族。だから文句を言われる可能性はきっと低い。
しかし常識というものが俺の思考を引っ張る。こんな蒸気自動車に乗っている時点でもう常識ドコーという状態ではあるのだけれど。
昼過ぎに出たので馬車とのすれ違いや追い抜きが多い。おかげでなかなか速度が出せない。
「うーん、これじゃ1時間でカーミヤまで着けないな」
「着かなくていいから。倍かかっても十分速いから」
シモンさんも大分常識が狂ってきたようだ。
確かに急ぎたくなる気持ちはわかる。何せ本日の行程は長い。ウージナからオマーチまでだいたい170離。この車でも半日かかる距離だ。
ただ幸い本日は宿を夕食朝食付きで予約してある。だから遅くに到着しても全く問題はない。
なお行程中の昼食やおやつはたっぷり買っておいた。姉貴に頭を下げて特別注文したのだ。
現にシモンさんはドライフルーツ入りスティックケーキを食べながら運転中。
「これって何かしながら食べるのには最高だよね。今回はドライフルーツとチーズケーキと、あと何があるんだっけ」
「細いロールケーキ、スイートポテト&栗、緑茶風味ボックスクリームだな」
「なら次は緑茶のボックスクリームで」
「はいはい」
よそ見運転されたら困るというか危険だ。だからシモンさんの分のおやつは俺が取ることになっている。
飲み物もストロー入り容器に入った冷たい紅茶を常備している。だからそんな感じで補給しながら走れるだけ走る。
何せオマーチは遠い。順調にいっても到着は午後5時頃になる。
「そう言えば今度こそは出ないよね」
後ろの方でミド・リーが縁起でもない話をしている。
「出ないって何が」
「毎度おなじみホン・ド殿下」
やっぱりその話かと思った。まあ今日の日程で出るというと他には無いだろうけれど。山の中ではないから熊魔獣なんて事はない。
「今回はヤバいものを作っていないし大丈夫だろ」
俺としてはそう思いたい。
「そうですね。新人歓迎合宿にもいらっしゃいませんでしたし」
「そんなにしょっちゅう出るものなのですか」
ユキ先輩の疑問はもっともだと思う。今までの事情を知らないならばだけれども。
「学園祭の後は春合宿にいらっしゃっただけですわ。ですのでそれほど心配ないかと思います」
頼む、縁起でも無い。そもそも第一王子なんて存在はそんなに軽いものでは無い筈なのだ。
ただ本日の目的地はオマーチ。奴の本拠地だ。何があるかわからない。覚悟はしておいた方がいいだろう。したくないけれど。
◇◇◇
途中トイレ休憩3回を挟んで、無事午後5時少し前にオマーチに到着。馬車道を中心街へ向けてゆっくり走る。
前方には国教会の特徴的な尖塔が見えた。ガイドブックにも出てくるおなじみの姿だ。
「宿は中心街でいいんだよね」
「まだまだ真っ直ぐです。ミササ橋を渡ったら右です」
まだ明るいが注意を促すためヘッドライトをつけて走る。普通の人は灯火魔法だと思ってくれるだろう。実際そうやって走っている馬車もある。
「次の橋がミササ橋です。渡ったら次の太い道を右、50腕も行かないうちに宿の馬車停めがある筈です。看板があるそうです」
ナカさんの指示に従って橋を渡り、交差点を右折。
宿の位置はすぐわかった。さっきから見えている国教会の斜め前にあるいかにも大きな建物。その横には何台も馬車を停められそうな馬車停め兼用通路がある。
ただ予定外というか新人以外は皆さん予想していた障害があった。申し訳なさそうな顔で馬車停め入口に立っている小柄な女性。新人以外の皆さんは知っているあの人だ。
シモンさんは彼女の横で自動車を停める。予定通り、まるで全てわかっていましたとでもいうように。
「申し訳ありません。皆様をご案内するように申し付かっております。なおこの宿の方は既にキャンセルさせていただきました」
誰からとは言わない。でもこの人、ターカノさんが出てきた以上誰の命令かは明白だ。
「わかりました。それでは案内をお願いして宜しいでしょうか」
「ええ、そのつもりで参りました」
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タカス君とフルエさんが後ろに移動。代わりにターカノさんに2列目に座って貰う。
横はユキ先輩だ。彼女も大貴族の一員だし問題は無いだろう。
「それでは案内させて頂きます。まずはまっすぐ行って、次の交差点を左へとお願い致します」
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