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第17章 1学期中の出来事
第140話 もうすぐ夏
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「そろそろ夏合宿の計画を考えませんか」
アキナ先輩からそんな提案が出た。確かにカレンダー上はそんな時期になっている。外は雨だけれど、気温は既に夏だし。
「夏と言えば海かな、それとも山かな」
「アージナはやめた方がいいですわ。この季節は暑すぎて滞在にむいていません」
新人歓迎の時点で既に海遊び適温だったからな。あれ以上気温が高ければ確かに厳しいだろう。
「涼しい方がいいのか」
フルエさんの言葉にアキナ先輩が頷く。
「勿論過ごしやすい方がいいですわ」
「遠くても大丈夫なのか」
「あの蒸気自動車なら国内何処でも2日あれば行けるよね」
「休みが長い夏こそ遠くに行く絶好の機会ですわ」
ミド・リーとアキナ先輩の言葉にフルエさんがにやーっとする。どうも何か心当たりがあるようだ。
「タカス、あそこはどうなのだ。コイの別荘地」
タカス君はちょっと顔をしかめた。
「確かに涼しいが遠い。魔獣もたまに出る」
シモンさんが反応した。
「どんな魔獣が出るんだい?」
「大分あの辺は整備されたのだ。もう魔獣は出ないと思うのだ」
「以前は鹿魔獣《チデジカ》や猪魔獣、猿魔獣《ヒバゴン》あたりが出た。他に小さいのはうじゃうじゃ。別荘内まで鼠魔獣が入り込んでいた」
「あれはタカスの便利魔法で一掃したのだ。それにもう開発済みだしいなくなったと思うのだ」
「タカス君は行った事があるのですね」
アキナ先輩の問いかけに彼は頷く。
「ええ。以前フルエの家族に招待されて」
タカス君はフルエさんの家族とも仲がいい模様。つまり公認の仲という訳か。恋人というよりはお嬢様と世話役という感じがするけれど。
「景色は最高なのだ。あと湖で泳げるし滝や沢も気持ちいいのだ」
「どんな山荘でしょうか」
アキナ先輩が興味を持ったようだ。
「作りは一般的な山荘なのだ。この前合宿で行ったアキナ先輩の別荘とほぼ同じ。個室も12室以上あるのでここの人数なら大丈夫なのだ」
「馬車道は続いていますの」
「1級規格の馬車道がある。ただ馬車だと控えの馬と1時間おきに交代だ。ずっと坂道だし俺やフルエだと走った方が速い」
フルエさんは身体強化できるしタカス君も記述魔法で似たような事が出来る。そして坂道でなくとも馬車より強化した人間が走る方が速い。
ただ1時間おきに馬を交代するとなると相当の坂道ではあるのだろう。
「バカンスシーズンは定期馬車が出ているのだ。換え馬もポイント毎に準備されているのだ。貸し馬もあるのだ」
そんな坂道にもかかわらず、なかなか整備されているようだ。つまり需要があるという事なのだろう。
それに俺達なら馬が大変であっても関係はない。
「蒸気自動車なら問題無いよな」
そういう事だ。あとヨーコ先輩も完全に興味を示している模様。
「魔獣はどれくらい出るんだ?」
「以前も大きいのは別荘周辺には出なかった。開発地帯から離れた場所で餌をしかけておけば出るかな位。勿論未開発地域に狩りに行けばそこそこ出る」
「猪魔獣の革がそろそろ欲しいんだよね」
「あれは肉も美味しかったな」
この反応は間違いない。ヨーコ先輩とシモンさんは行く気だ。しかしわかっていない事もまだ多い。
「でもコイってどの辺なんだ」
そう、場所がまだよくわかっていないのだ。
「地図で確認しましょう」
ナカさんがどこからともなく地図を持ってきた。アストラム国全土を描いたもので、広げると4人用食卓テーブルくらいになる大きなものだ。
「ここなのだ」
フルエさんが指さしたのは国のまさに北。北部山地に貼り付いたような場所だった。
「一日で行くには辛そうだね」
鑑定魔法で図上距離を測って縮尺をかける。350離近くある模様だ。
「でもそう言えば雑誌に載っていたな。確かアストラム最新お勧めスポットで」
ヨーコ先輩は時々妙な雑誌を愛読している。これもきっとそういったソースだろう。
「うちの家が開発した一押しの場所なのだ。アストラム最新の人工観光都市なのだ」
「風景が綺麗で湖でも遊べる涼しい場所だ。それに近郊の有名店や評判のいい店を集めた商店街なんかも作ってある」
「楽しそうだよね」
「同意」
皆さん乗り気になってきたようだ。
「何ならオマーチとかシンコ・イバシとか観光しながら行けばいいのですわ。その方が楽しいと思いますし」
「いいですね。行きは東海岸、帰りは西海岸なんて道を変えても面白そうです」
「確かに楽しそう」
「帰りに実家に顔見せに寄ってもいいのだ」
どうやら決定だな、これは。まあ俺も行ってみたいという気になっている。そもそも国の北部はほとんど行ったことが無い。それだけに興味がある訳だ。
「予定は何日間にしましょうか」
「行き帰りに2日ずつ使うとして合計14日だね」
その予定では休みの半分が合宿になってしまう。なかなか強烈だ。予算的には全く心配無い。
しかし皆さん家庭的に大丈夫なのだろうか。まあ今更という気がしないでもないけれど。冬もかなり長期で合宿したし。
「なら7月2日から12日まで使えるように手紙を書いておくのだ」
「無理だったら別の場所にするから気にしなくていいぞ」
「問題無いのだ」
本当に問題がないだろうか。日程が決まっても課題が残っている。その日程で大丈夫なのか、そもそも夏休みがフリーになれるのかという問題が。つまり……
「その日程だと期末試験で赤点を取ったらおいてけぼりだな」
タカス君がそう宣告。
「大丈夫なのだ。何とかするのだ」
「俺も勉強やるからさ、何ならここで試験対策もするといい」
「私も付き合うぞ」
身体強化組3名が一致団結した模様だ。確かに出来ない相手に教えるのは2人とも上手い。だから何とかなるだろう。多分だけれど。
アキナ先輩からそんな提案が出た。確かにカレンダー上はそんな時期になっている。外は雨だけれど、気温は既に夏だし。
「夏と言えば海かな、それとも山かな」
「アージナはやめた方がいいですわ。この季節は暑すぎて滞在にむいていません」
新人歓迎の時点で既に海遊び適温だったからな。あれ以上気温が高ければ確かに厳しいだろう。
「涼しい方がいいのか」
フルエさんの言葉にアキナ先輩が頷く。
「勿論過ごしやすい方がいいですわ」
「遠くても大丈夫なのか」
「あの蒸気自動車なら国内何処でも2日あれば行けるよね」
「休みが長い夏こそ遠くに行く絶好の機会ですわ」
ミド・リーとアキナ先輩の言葉にフルエさんがにやーっとする。どうも何か心当たりがあるようだ。
「タカス、あそこはどうなのだ。コイの別荘地」
タカス君はちょっと顔をしかめた。
「確かに涼しいが遠い。魔獣もたまに出る」
シモンさんが反応した。
「どんな魔獣が出るんだい?」
「大分あの辺は整備されたのだ。もう魔獣は出ないと思うのだ」
「以前は鹿魔獣《チデジカ》や猪魔獣、猿魔獣《ヒバゴン》あたりが出た。他に小さいのはうじゃうじゃ。別荘内まで鼠魔獣が入り込んでいた」
「あれはタカスの便利魔法で一掃したのだ。それにもう開発済みだしいなくなったと思うのだ」
「タカス君は行った事があるのですね」
アキナ先輩の問いかけに彼は頷く。
「ええ。以前フルエの家族に招待されて」
タカス君はフルエさんの家族とも仲がいい模様。つまり公認の仲という訳か。恋人というよりはお嬢様と世話役という感じがするけれど。
「景色は最高なのだ。あと湖で泳げるし滝や沢も気持ちいいのだ」
「どんな山荘でしょうか」
アキナ先輩が興味を持ったようだ。
「作りは一般的な山荘なのだ。この前合宿で行ったアキナ先輩の別荘とほぼ同じ。個室も12室以上あるのでここの人数なら大丈夫なのだ」
「馬車道は続いていますの」
「1級規格の馬車道がある。ただ馬車だと控えの馬と1時間おきに交代だ。ずっと坂道だし俺やフルエだと走った方が速い」
フルエさんは身体強化できるしタカス君も記述魔法で似たような事が出来る。そして坂道でなくとも馬車より強化した人間が走る方が速い。
ただ1時間おきに馬を交代するとなると相当の坂道ではあるのだろう。
「バカンスシーズンは定期馬車が出ているのだ。換え馬もポイント毎に準備されているのだ。貸し馬もあるのだ」
そんな坂道にもかかわらず、なかなか整備されているようだ。つまり需要があるという事なのだろう。
それに俺達なら馬が大変であっても関係はない。
「蒸気自動車なら問題無いよな」
そういう事だ。あとヨーコ先輩も完全に興味を示している模様。
「魔獣はどれくらい出るんだ?」
「以前も大きいのは別荘周辺には出なかった。開発地帯から離れた場所で餌をしかけておけば出るかな位。勿論未開発地域に狩りに行けばそこそこ出る」
「猪魔獣の革がそろそろ欲しいんだよね」
「あれは肉も美味しかったな」
この反応は間違いない。ヨーコ先輩とシモンさんは行く気だ。しかしわかっていない事もまだ多い。
「でもコイってどの辺なんだ」
そう、場所がまだよくわかっていないのだ。
「地図で確認しましょう」
ナカさんがどこからともなく地図を持ってきた。アストラム国全土を描いたもので、広げると4人用食卓テーブルくらいになる大きなものだ。
「ここなのだ」
フルエさんが指さしたのは国のまさに北。北部山地に貼り付いたような場所だった。
「一日で行くには辛そうだね」
鑑定魔法で図上距離を測って縮尺をかける。350離近くある模様だ。
「でもそう言えば雑誌に載っていたな。確かアストラム最新お勧めスポットで」
ヨーコ先輩は時々妙な雑誌を愛読している。これもきっとそういったソースだろう。
「うちの家が開発した一押しの場所なのだ。アストラム最新の人工観光都市なのだ」
「風景が綺麗で湖でも遊べる涼しい場所だ。それに近郊の有名店や評判のいい店を集めた商店街なんかも作ってある」
「楽しそうだよね」
「同意」
皆さん乗り気になってきたようだ。
「何ならオマーチとかシンコ・イバシとか観光しながら行けばいいのですわ。その方が楽しいと思いますし」
「いいですね。行きは東海岸、帰りは西海岸なんて道を変えても面白そうです」
「確かに楽しそう」
「帰りに実家に顔見せに寄ってもいいのだ」
どうやら決定だな、これは。まあ俺も行ってみたいという気になっている。そもそも国の北部はほとんど行ったことが無い。それだけに興味がある訳だ。
「予定は何日間にしましょうか」
「行き帰りに2日ずつ使うとして合計14日だね」
その予定では休みの半分が合宿になってしまう。なかなか強烈だ。予算的には全く心配無い。
しかし皆さん家庭的に大丈夫なのだろうか。まあ今更という気がしないでもないけれど。冬もかなり長期で合宿したし。
「なら7月2日から12日まで使えるように手紙を書いておくのだ」
「無理だったら別の場所にするから気にしなくていいぞ」
「問題無いのだ」
本当に問題がないだろうか。日程が決まっても課題が残っている。その日程で大丈夫なのか、そもそも夏休みがフリーになれるのかという問題が。つまり……
「その日程だと期末試験で赤点を取ったらおいてけぼりだな」
タカス君がそう宣告。
「大丈夫なのだ。何とかするのだ」
「俺も勉強やるからさ、何ならここで試験対策もするといい」
「私も付き合うぞ」
身体強化組3名が一致団結した模様だ。確かに出来ない相手に教えるのは2人とも上手い。だから何とかなるだろう。多分だけれど。
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