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第16章 新人到来
第137話 合宿の終わり
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2泊3日の合宿なんて短いものだ。気が付けば最終日。今日はお昼前に撤収して帰る予定だ。
なおお昼は蒸気自動車で移動しながら食べる予定。フールイ先輩が色々入ったお焼きを作ってくれるそうだ。
そんな訳で朝食のサンドイッチを食べた後はボディボードで遊ぶ。ちょっと遠方に泳いで行っては波で戻ってくるの繰り返しだ。
単純だがこれが面白い。波をふっと横切る感覚とか、逆に波にのってすーっと進む感覚とか。
大きいボードを作ってもらってサーフィンなんてやるのも面白いかもしれない。俺の運動神経では立って波乗りなんて絶対出来ないと思うけれど。
気がつくと太陽がかなり上。影も大分短くなっている。そろそろ時間かな、俺はボードを持って陸へと上がる。
まだ遊んでいる人もいるけれど俺は一休みした方がいいだろう。助手席と運転席は移動中寝ることが出来ないし。
家へ入るとフールイ先輩が昼食を作っている最中だった。
「手伝いましょうか?」
「大丈夫、問題無い」
なら先に自分の部屋を片付けておくか。そう思ったところでだ。
「やっぱりお願い」
何だろう。キッチンに顔を出す。
「何をしましょうか」
キッチンには出来上がったお焼きが並んでいる。ほぼ完成していて今は粗熱を取っている状態のようだ。
「料理道具の収納お願い。洗ってあるから熱魔法で乾かしてそこの箱に入れて」
麺棒や大きめのまな板、菜箸や中華包丁みたいな包丁が洗って置いてある。
「仕舞う順番は何かありますか」
「まな板が一番下。あとは適当。包丁はそこのタオルを巻いて」
言われた通りに日常魔法で乾かしてしまっていく。なおフールイ先輩はお焼きを包む木の皮を処理している。洗って熱を加えて乾かしてまとめている感じ。
「この料理道具や木の皮は持って来たんですか」
「念の為。お焼きや麺を作るのに便利」
なるほど、使うかもしれないと思ってわざわざ用意してくれていた訳か。ならもう少しご飯をお願いしてもよかったな。ちょっと反省。
「なら今度麺を食べてみたいです。どんな麺ですか」
「細くて平たい麺。次の合宿で作ってみる」
「楽しみにしています」
「わかった」
そんな話をしながら道具類をしまい終えた。
「こんな感じでいいですか」
「ありがとう」
その言葉が随分近くで聞こえた。えっと思う間もなく背中に暖かい感触。背後から息がかかっているのも感じる。
コレは……
ちょっと待った、状況を整理しよう。どう考えてもこれはフールイ先輩に背後から抱きつかれた状態だ。今の動きと相互の位置から考えて間違いない。
でも何故。背中に感じる柔らかさはきっと、これは多分間違いなく……。もっと触りたい。あ、いかん、邪念が。
その感触は突然ふっと離れた。
「回復終了」
フールイ先輩の声。何だそれは! そう言いたい。
でも今のは何だったのか、聞かない方がいいような気がした。横目でちらっと見るとフールイ先輩も目というか顔を背けているし。
うん、何もなかった。そういう事で。
「じゃ部屋を片付けてきます」
何でもない事のようにそう言って、俺は自分の部屋へ向かう。
◇◇◇
帰りは寄り道が少ないので速い。ドバーシでエビスさんに挨拶した後はウージナまで一気だ。
「合宿って結局、遊んで美味しいものを食べるだけなのだな」
「まあそうだな。でも楽しいだろ」
「そうそう、楽しければいいのですわ」
真面目なタカス君は沈黙。本当にこれでいいのか悩んでいるような気配だ。
「でも実際に合宿で遊んだり食べたりしていると色々新しいものが出来たりするんだよ。あの鏡なんてそうだし、この蒸気自動車だって主な機構は冬休みの合宿で考えたんだから」
シモンさん、時速50離で運転しながら会話に参加しないでくれ。横に座っていてかなり怖い。
「それに今回の合宿で試作した夜間自動灯、それなりに需要があるんじゃないかな。試験的にいくつか作ってレンタル形式で試して貰おうよ」
わかったから運転に専念してくれ。頼むから。そう思っても俺は何も出来ない。
取りあえず物入れに置いておいた木の皮で包まれたお焼きを取り出す。がぶっと一口。うん、やはり美味しい。
やっぱりお焼きには菜っ葉浅漬けと肉を炒めたものが具材として一番あっている。今回のはプラスしてチーズも入っていて更に幸せな味。疲れが回復するようだ。
回復と言えばあのフールイ先輩の行動はいったい……
でも取りあえず答えとか結論はあえて考えない事にしよう。友達同士のじゃれ合い、それで今はいい。
それにしてもやはり飛ばし過ぎで前を見ると怖い。調節して蒸気圧をやや低めにしているのだが、平地だとあまり影響は無い模様だ。なら次の給炭を減らして蒸気圧を更に下げようかな。
「もう少しで坂道が始まるから、そろそろ蒸気圧を高めにお願い」
わざと蒸気圧を低めにしていたのがバレてしまった。仕方ない。車の中では運転手の指示は絶対だ。
そんな訳で今回もドバーシからウージナまでの約50離を、1時間と少しで走破してしまうのだった。
なおお昼は蒸気自動車で移動しながら食べる予定。フールイ先輩が色々入ったお焼きを作ってくれるそうだ。
そんな訳で朝食のサンドイッチを食べた後はボディボードで遊ぶ。ちょっと遠方に泳いで行っては波で戻ってくるの繰り返しだ。
単純だがこれが面白い。波をふっと横切る感覚とか、逆に波にのってすーっと進む感覚とか。
大きいボードを作ってもらってサーフィンなんてやるのも面白いかもしれない。俺の運動神経では立って波乗りなんて絶対出来ないと思うけれど。
気がつくと太陽がかなり上。影も大分短くなっている。そろそろ時間かな、俺はボードを持って陸へと上がる。
まだ遊んでいる人もいるけれど俺は一休みした方がいいだろう。助手席と運転席は移動中寝ることが出来ないし。
家へ入るとフールイ先輩が昼食を作っている最中だった。
「手伝いましょうか?」
「大丈夫、問題無い」
なら先に自分の部屋を片付けておくか。そう思ったところでだ。
「やっぱりお願い」
何だろう。キッチンに顔を出す。
「何をしましょうか」
キッチンには出来上がったお焼きが並んでいる。ほぼ完成していて今は粗熱を取っている状態のようだ。
「料理道具の収納お願い。洗ってあるから熱魔法で乾かしてそこの箱に入れて」
麺棒や大きめのまな板、菜箸や中華包丁みたいな包丁が洗って置いてある。
「仕舞う順番は何かありますか」
「まな板が一番下。あとは適当。包丁はそこのタオルを巻いて」
言われた通りに日常魔法で乾かしてしまっていく。なおフールイ先輩はお焼きを包む木の皮を処理している。洗って熱を加えて乾かしてまとめている感じ。
「この料理道具や木の皮は持って来たんですか」
「念の為。お焼きや麺を作るのに便利」
なるほど、使うかもしれないと思ってわざわざ用意してくれていた訳か。ならもう少しご飯をお願いしてもよかったな。ちょっと反省。
「なら今度麺を食べてみたいです。どんな麺ですか」
「細くて平たい麺。次の合宿で作ってみる」
「楽しみにしています」
「わかった」
そんな話をしながら道具類をしまい終えた。
「こんな感じでいいですか」
「ありがとう」
その言葉が随分近くで聞こえた。えっと思う間もなく背中に暖かい感触。背後から息がかかっているのも感じる。
コレは……
ちょっと待った、状況を整理しよう。どう考えてもこれはフールイ先輩に背後から抱きつかれた状態だ。今の動きと相互の位置から考えて間違いない。
でも何故。背中に感じる柔らかさはきっと、これは多分間違いなく……。もっと触りたい。あ、いかん、邪念が。
その感触は突然ふっと離れた。
「回復終了」
フールイ先輩の声。何だそれは! そう言いたい。
でも今のは何だったのか、聞かない方がいいような気がした。横目でちらっと見るとフールイ先輩も目というか顔を背けているし。
うん、何もなかった。そういう事で。
「じゃ部屋を片付けてきます」
何でもない事のようにそう言って、俺は自分の部屋へ向かう。
◇◇◇
帰りは寄り道が少ないので速い。ドバーシでエビスさんに挨拶した後はウージナまで一気だ。
「合宿って結局、遊んで美味しいものを食べるだけなのだな」
「まあそうだな。でも楽しいだろ」
「そうそう、楽しければいいのですわ」
真面目なタカス君は沈黙。本当にこれでいいのか悩んでいるような気配だ。
「でも実際に合宿で遊んだり食べたりしていると色々新しいものが出来たりするんだよ。あの鏡なんてそうだし、この蒸気自動車だって主な機構は冬休みの合宿で考えたんだから」
シモンさん、時速50離で運転しながら会話に参加しないでくれ。横に座っていてかなり怖い。
「それに今回の合宿で試作した夜間自動灯、それなりに需要があるんじゃないかな。試験的にいくつか作ってレンタル形式で試して貰おうよ」
わかったから運転に専念してくれ。頼むから。そう思っても俺は何も出来ない。
取りあえず物入れに置いておいた木の皮で包まれたお焼きを取り出す。がぶっと一口。うん、やはり美味しい。
やっぱりお焼きには菜っ葉浅漬けと肉を炒めたものが具材として一番あっている。今回のはプラスしてチーズも入っていて更に幸せな味。疲れが回復するようだ。
回復と言えばあのフールイ先輩の行動はいったい……
でも取りあえず答えとか結論はあえて考えない事にしよう。友達同士のじゃれ合い、それで今はいい。
それにしてもやはり飛ばし過ぎで前を見ると怖い。調節して蒸気圧をやや低めにしているのだが、平地だとあまり影響は無い模様だ。なら次の給炭を減らして蒸気圧を更に下げようかな。
「もう少しで坂道が始まるから、そろそろ蒸気圧を高めにお願い」
わざと蒸気圧を低めにしていたのがバレてしまった。仕方ない。車の中では運転手の指示は絶対だ。
そんな訳で今回もドバーシからウージナまでの約50離を、1時間と少しで走破してしまうのだった。
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