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第12章 春合宿は南へと
第99話 別荘到着
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ついでにシンハ君の貧乏話とかで場をつないでいるうちに、蒸気自動車はアージナの街に無事たどり着いた。
「どちらまでお送り致しましょうか」
「そうだね。それじゃ国王庁支所の近くで降ろしてくれないか。真ん前だと僕の正体が察知されかねないからひとつ角手前くらいで。車の方はまた別の機会に細かく見せて貰う事にするよ」
お忍びで視察の模様である。国王庁の皆様には申し訳ないがここは指示に従う事にしよう。
「アキナ先輩、案内していただけますか」
「わかりましたわ」
そんな訳でアキナ先輩に案内して貰い、国王庁支所の手前の角で殿下とターカノさんを降ろす。
「身分がバレるとまずいから挨拶も省略で頼む。ではまた」
殿下はそう言って2人でさっさと歩いて行ってしまった。
それにしても第一王子がお付き1人でその辺を歩いていていいのだろうか。極めて疑問なのだが本人の指示なので仕方ない。
「それでは私達は市場に向かいましょう。買い物もまだ途中でしたし」
再び蒸気自動車は走り出す。
◇◇◇
南国フルーツだの当座の食料だのを思い切りよく買い込んで、車はアージナの街を西へと走る。
街外れ、海沿いの道をやや北に向けて走った処に白い門があった。
「ちょっとお待ち下さいな。今開きますので」
そうアキナ先輩が言っているのとほぼ同時に門がゆっくり開く。
「物性付与の永続魔法がかけてあるんですの。登録された人が魔力をあてれば開くように出来ているのですわ」
門を入って少し走ると白い洒落た二階建てのやや大きい建物があった。
「玄関の前で車を停めて下さいな。他に人はおりませんので」
「ここは無人なんですか」
「ええ」
アキナ先輩は頷く。
「ここは家族や仲のいい友人とだけで来る場所ですわ。ですので常駐している使用人はおりません。でも使う事は話してありますので整備はしてある筈ですわ」
至れり尽くせりである。
中はヨーコ先輩の処の別荘と同じようなつくり。つまり大広間があって個室の寝室が並んでいるという感じだ。
部屋の隅々まで掃除が行き届いている。アキナ先輩の言うとおり事前に整備をしてくれていたようだ。
「今日は早めに夕食を作っていただけませんか。夕刻にちょっとお見せしたいものがありますので」
なるほど。
「見せたいものって何ですか」
「それはその時のお楽しみですね」
そう来たか。
「今日は夕食誰が作る?」
「ミタキが作りたそうにしているんじゃないの? さっき市場で色々妙な物を買っていたから」
否定はしない。しかし一応事前に言っておこう。
「俺に任せると夕食は生魚中心になるぞ」
「夏合宿のあれ美味しかったな。それじゃ任せよう」
「そうですね」
そんな訳で今夜の料理当番は俺だ。確かに市場で色々と興味のある物を仕入れてきた。だから望むところだったりする。
まずは買うときにミド・リーから変な物呼ばわりされた2種だ。具体的に言うとイカとタコ。この国に来て初めて市場にこいつらが並んでいるのを見た。
その時元日本人である俺は思ったのだ。これは刺身にして食べなければならないと。
あとは当然塩辛も作らないという話は無い。日本人の記憶を持つ者として義務のようなものだ。
更に今回は禁断の調味料も買ってある。魚醤だ。しょっつるとかヌクマムとかナンプラーとかと同じ系統のあの臭い調味料。
市場で見た時はどうしようか悩んだが結局買ってしまった。
一応売り場のおばさんに一番臭みが無い奴と指定して買ったのだがどうだろう。実際の香りはいかに。
小皿に少しあけてみる。弱めだけれどやはり整備していないトイレの香りがする。ただこの程度ならごまかせる筈だ。
魚醤と蒸留酒、シンハ家謹製水飴と水を適量鍋に入れて一煮立ち。これだけで匂いはほぼ消えるが更に刻んだタマネギをちょっと加えてやる。本当は長ネギが欲しいのだが無いので仕方ない。これで冷やせば臭いもあまり気にならなくなるはずだ。
試しにイカそうめんにつけて食べてみる。うんうん、上々だ。煮きり醤油レシピの改造版だがいい感じ。
更にイカ・タコをイカ素麺用、刺身用、カルパッチョ用に切る。更に出した内臓で即席塩辛を作成。
黒鯛に似た魚は市場で三枚に下ろして貰ったので作業は楽。これも刺身とカルパッチョ用。
カンパチはサクで購入したのだがこれも刺身とカルパッチョ用だ。後はアラの部分を水洗いして生活魔法で熱を加えて乾燥させ、だし汁用に。
今日の主食は押し麦の粥。とりあえず普通に炊いた後、魚のだし汁で軽く煮込むさらさら系の粥。一応念の為にパンも用意しておくけれど。
大量に買った小指程の鰯はカリッと2度揚げして南蛮漬け。人参やカボチャ、タマネギを揚げたものと一緒に揚げた後すぐに汁に漬け込む。
サラダ等に使う野菜類は俺の知らない品種ばかり。多分ルッコラだと思うものとか赤紫色の白菜みたいなのとかサボテンみたいな見た目だけれどきっとカリフラワーの仲間だろうとか。鑑定魔法でガンガン見分けてサラダとカルパッチョに投入。
サラダもカルパッチョも刺身も盛り付けまで終わった。
ドレッシングも
○ 煮きり醤油風魚醤ベース、
○ ごまペースト&酢にちょっと水飴と塩を混ぜたもの、
○ マヨネーズにすりおろしたホースラディッシュを混ぜたもの、
の3種類用意した。
他にも煮きり醤油そのままと、蓋をしたオリジナル魚醤も用意してある。
お粥もいい感じに出来たところで5時の鐘が鳴った。
「そろそろどうでしょうか」
アキナ先輩が様子を見に来る。
「ちょうど出来た処です」
「それでは皆で運びましょう」
呼びかけるまでもなく皆さんがやってくる。
「どちらまでお送り致しましょうか」
「そうだね。それじゃ国王庁支所の近くで降ろしてくれないか。真ん前だと僕の正体が察知されかねないからひとつ角手前くらいで。車の方はまた別の機会に細かく見せて貰う事にするよ」
お忍びで視察の模様である。国王庁の皆様には申し訳ないがここは指示に従う事にしよう。
「アキナ先輩、案内していただけますか」
「わかりましたわ」
そんな訳でアキナ先輩に案内して貰い、国王庁支所の手前の角で殿下とターカノさんを降ろす。
「身分がバレるとまずいから挨拶も省略で頼む。ではまた」
殿下はそう言って2人でさっさと歩いて行ってしまった。
それにしても第一王子がお付き1人でその辺を歩いていていいのだろうか。極めて疑問なのだが本人の指示なので仕方ない。
「それでは私達は市場に向かいましょう。買い物もまだ途中でしたし」
再び蒸気自動車は走り出す。
◇◇◇
南国フルーツだの当座の食料だのを思い切りよく買い込んで、車はアージナの街を西へと走る。
街外れ、海沿いの道をやや北に向けて走った処に白い門があった。
「ちょっとお待ち下さいな。今開きますので」
そうアキナ先輩が言っているのとほぼ同時に門がゆっくり開く。
「物性付与の永続魔法がかけてあるんですの。登録された人が魔力をあてれば開くように出来ているのですわ」
門を入って少し走ると白い洒落た二階建てのやや大きい建物があった。
「玄関の前で車を停めて下さいな。他に人はおりませんので」
「ここは無人なんですか」
「ええ」
アキナ先輩は頷く。
「ここは家族や仲のいい友人とだけで来る場所ですわ。ですので常駐している使用人はおりません。でも使う事は話してありますので整備はしてある筈ですわ」
至れり尽くせりである。
中はヨーコ先輩の処の別荘と同じようなつくり。つまり大広間があって個室の寝室が並んでいるという感じだ。
部屋の隅々まで掃除が行き届いている。アキナ先輩の言うとおり事前に整備をしてくれていたようだ。
「今日は早めに夕食を作っていただけませんか。夕刻にちょっとお見せしたいものがありますので」
なるほど。
「見せたいものって何ですか」
「それはその時のお楽しみですね」
そう来たか。
「今日は夕食誰が作る?」
「ミタキが作りたそうにしているんじゃないの? さっき市場で色々妙な物を買っていたから」
否定はしない。しかし一応事前に言っておこう。
「俺に任せると夕食は生魚中心になるぞ」
「夏合宿のあれ美味しかったな。それじゃ任せよう」
「そうですね」
そんな訳で今夜の料理当番は俺だ。確かに市場で色々と興味のある物を仕入れてきた。だから望むところだったりする。
まずは買うときにミド・リーから変な物呼ばわりされた2種だ。具体的に言うとイカとタコ。この国に来て初めて市場にこいつらが並んでいるのを見た。
その時元日本人である俺は思ったのだ。これは刺身にして食べなければならないと。
あとは当然塩辛も作らないという話は無い。日本人の記憶を持つ者として義務のようなものだ。
更に今回は禁断の調味料も買ってある。魚醤だ。しょっつるとかヌクマムとかナンプラーとかと同じ系統のあの臭い調味料。
市場で見た時はどうしようか悩んだが結局買ってしまった。
一応売り場のおばさんに一番臭みが無い奴と指定して買ったのだがどうだろう。実際の香りはいかに。
小皿に少しあけてみる。弱めだけれどやはり整備していないトイレの香りがする。ただこの程度ならごまかせる筈だ。
魚醤と蒸留酒、シンハ家謹製水飴と水を適量鍋に入れて一煮立ち。これだけで匂いはほぼ消えるが更に刻んだタマネギをちょっと加えてやる。本当は長ネギが欲しいのだが無いので仕方ない。これで冷やせば臭いもあまり気にならなくなるはずだ。
試しにイカそうめんにつけて食べてみる。うんうん、上々だ。煮きり醤油レシピの改造版だがいい感じ。
更にイカ・タコをイカ素麺用、刺身用、カルパッチョ用に切る。更に出した内臓で即席塩辛を作成。
黒鯛に似た魚は市場で三枚に下ろして貰ったので作業は楽。これも刺身とカルパッチョ用。
カンパチはサクで購入したのだがこれも刺身とカルパッチョ用だ。後はアラの部分を水洗いして生活魔法で熱を加えて乾燥させ、だし汁用に。
今日の主食は押し麦の粥。とりあえず普通に炊いた後、魚のだし汁で軽く煮込むさらさら系の粥。一応念の為にパンも用意しておくけれど。
大量に買った小指程の鰯はカリッと2度揚げして南蛮漬け。人参やカボチャ、タマネギを揚げたものと一緒に揚げた後すぐに汁に漬け込む。
サラダ等に使う野菜類は俺の知らない品種ばかり。多分ルッコラだと思うものとか赤紫色の白菜みたいなのとかサボテンみたいな見た目だけれどきっとカリフラワーの仲間だろうとか。鑑定魔法でガンガン見分けてサラダとカルパッチョに投入。
サラダもカルパッチョも刺身も盛り付けまで終わった。
ドレッシングも
○ 煮きり醤油風魚醤ベース、
○ ごまペースト&酢にちょっと水飴と塩を混ぜたもの、
○ マヨネーズにすりおろしたホースラディッシュを混ぜたもの、
の3種類用意した。
他にも煮きり醤油そのままと、蓋をしたオリジナル魚醤も用意してある。
お粥もいい感じに出来たところで5時の鐘が鳴った。
「そろそろどうでしょうか」
アキナ先輩が様子を見に来る。
「ちょうど出来た処です」
「それでは皆で運びましょう」
呼びかけるまでもなく皆さんがやってくる。
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