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第11章 冬合宿・おかわり ~冬休み合宿編・下~
第90話 夕刻色の時間
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俺の不安は半分当たって半分外れた。
当たった部分は混浴だった事。外れたのは……
「服を着たままお湯に入るなんて不思議な感覚だよね」
「でも気持ちいい」
「そうですね」
つまり浴槽内でもそのまま着衣だという事だ。
服を着たまま温泉に浸かり、ミストサウナも浴びる。出るときは服を脱いで着替えて、濡れた服は熱魔法で乾かす。そういう仕組みだ。
濡れてもかまわない出来るだけ丈夫で簡単な服というのはこの伏線だったか。
ただ服を着ているとは言っても問題が無いわけではない。お湯からあがると服はぴったり肌にくっついてくる。
つまりは体形まる見えなのだ。体型というだけではなく、それこそ胸の天辺の位置までぽっつんと。
元々ここの世界はその辺日本と比べて非常におおらかだ。夏だと普通にぽっつん丸見えのまま歩いている女性も多い。
だが今の俺には日本での常識だの感覚だのが入ってしまっている。その視線で見てしまうと非常にエロい。
エロすぎてお湯からあがれない。少なくとも下半身部分が。
シンハ君は全く平気な模様だけれど。
そんな訳でやや涼しい浴槽の一番外側の隅にお湯に腰以下をつけたまま移動する。冬の山間からの風が冷たいが、お湯に入っていればちょうどいい。快適と言ってもいいくらいだ。
目を瞑ってぼーっとその快適さに浸ってみる。うん、これはなかなか。こういった広い浴槽もやはりいいものだ。
こっそり作っても……って置ける場所は無いか。
そんな事を考えていた時。
「ミタキ大丈夫? さっきから目を瞑って動かないけれど」
目を開けたのが失敗だった。思い切りミド・リーを見てしまった。
低い視点から見ると無い無いと言っていた胸もしっかり存在がわかる。確かに小さめだけれど。
慌てて目を瞑る。平常心、平常心……
「大丈夫。ここでこうしているのが気持ちいいだけ」
「試してみようかな」
すぐ横に腰を下ろした気配。ミド・リーが立てた波が俺の肩と首をくすぐる。
おい待てそんな近くに来るんじゃ無い。平常心がおかしくなるだろ!
「確かにこの場所気持ちいいかも。外の風がほどよく冷たくて」
落ち着け俺。相手はミド・リーだ!
全裸を見られた事もある。治療中の出来事だけれども。
落ち着く為に何かを無心で唱えよう。取り敢えず円周率を3.14159265358979……
あ、駄目だ、これ以上覚えていない。
◇◇◇
酷い目に遭った。あやうくのぼせて気絶するところだった。
ミド・リーがサウナに行った隙を狙って風呂を脱出。リビングでぐったりと息をつく。皆さんが風呂からあがってくる頃には何とか普通の状態を取り戻した。
ただまだ皆さんの濡れた服姿は脳裏に残っている。
まともに顔を合わせられないのでキッチンに逃げよう。ちょうど夕食を作るのによさそうな時間だ。
流石に焼き肉と刺身には飽きたので夕食はカツレツとハンバーグ。ちょっと固めの部分を脂と混ぜてガンガン叩いてミンチにする。塩を混ぜてほんの少しタマネギ入れて練って練って練ればハンバーグのタネ完成。
カツはちょっと分厚めで、中はほんのり熱が通る程度に揚げる。
それにしても1人あたり分厚いトンカツと握りこぶし2個分のハンバーグだと量が多すぎるだろうか。最近の皆さんの食欲を考えるとこれが普通に感じるけれど、きっと何かおかしい。
なお俺用はボリューム半分で作ってある。
俺の不安も杞憂に終わり多すぎる夕食もあっさり無くなった後。
「ミタキ君、ちょっとこの後付き合って貰っていいかな。下で蒸気自動車の案を練りたいんだ。具体的には模型をいくつか作って実際に動かして確認したい」
「わかった」
何か作業をした方が気が楽だ。作業中は邪念を忘れられるから。それに蒸気自動車は何としても作りたいし。
紙とペン、更に素材色々を抱えて下の作業場へ。外が暗くなり始めているが、投光器を若干出力抑え気味に使えば明るいしそこそこ温かくもなる。
「さて、まずはピストン式の蒸気機関の構造を教えて欲しいな。原理はわかったけれど、実際にどんな感じなのか概念図を描いてくれると助かるんだ」
「ちょっと待っていてくれよ」
確かライブスチームの模型を見た事があったよな。複動式でピストンバルブ式の。
何枚かスケッチを描き直してやっと思い出す。
思い出した完全な図面を改めて描いて、そしてシモンさんに示す。
「こんな感じだ。実際にはこの機構を2個作って、ピストン位置を変えて組み合わせてやる」
「何故かな」
「このピストンが一番下に行った状態や、一番上に行った状態だとうまく動かない可能性があるだろ。だからその状態が揃わないようにずらしておくんだ」
シモンさんは技術的な事については理解が早い。
「なるほど。これで作れるよ。とりあえず素材は今あるものでいいかな」
「そうだな。模型は真鍮製だったと思う。鉄だと固くていいけれど錆びるしさ」
「その辺は色々テストしてみよう」
まずは動く模型を実作することだ。そしてシモンさんはアンテナ型魔法杖があればほぼ思考したとおりの物を作り出せる。
それでは俺は必要な燃料や道具類を用意するとしよう。燃料は船に積んである石炭でいい。潤滑油も船の蒸気機関で使っているものを流用すればいいだろう。その辺りの予備は船に常備しているから問題無い。
となると必要なのは他に……
当たった部分は混浴だった事。外れたのは……
「服を着たままお湯に入るなんて不思議な感覚だよね」
「でも気持ちいい」
「そうですね」
つまり浴槽内でもそのまま着衣だという事だ。
服を着たまま温泉に浸かり、ミストサウナも浴びる。出るときは服を脱いで着替えて、濡れた服は熱魔法で乾かす。そういう仕組みだ。
濡れてもかまわない出来るだけ丈夫で簡単な服というのはこの伏線だったか。
ただ服を着ているとは言っても問題が無いわけではない。お湯からあがると服はぴったり肌にくっついてくる。
つまりは体形まる見えなのだ。体型というだけではなく、それこそ胸の天辺の位置までぽっつんと。
元々ここの世界はその辺日本と比べて非常におおらかだ。夏だと普通にぽっつん丸見えのまま歩いている女性も多い。
だが今の俺には日本での常識だの感覚だのが入ってしまっている。その視線で見てしまうと非常にエロい。
エロすぎてお湯からあがれない。少なくとも下半身部分が。
シンハ君は全く平気な模様だけれど。
そんな訳でやや涼しい浴槽の一番外側の隅にお湯に腰以下をつけたまま移動する。冬の山間からの風が冷たいが、お湯に入っていればちょうどいい。快適と言ってもいいくらいだ。
目を瞑ってぼーっとその快適さに浸ってみる。うん、これはなかなか。こういった広い浴槽もやはりいいものだ。
こっそり作っても……って置ける場所は無いか。
そんな事を考えていた時。
「ミタキ大丈夫? さっきから目を瞑って動かないけれど」
目を開けたのが失敗だった。思い切りミド・リーを見てしまった。
低い視点から見ると無い無いと言っていた胸もしっかり存在がわかる。確かに小さめだけれど。
慌てて目を瞑る。平常心、平常心……
「大丈夫。ここでこうしているのが気持ちいいだけ」
「試してみようかな」
すぐ横に腰を下ろした気配。ミド・リーが立てた波が俺の肩と首をくすぐる。
おい待てそんな近くに来るんじゃ無い。平常心がおかしくなるだろ!
「確かにこの場所気持ちいいかも。外の風がほどよく冷たくて」
落ち着け俺。相手はミド・リーだ!
全裸を見られた事もある。治療中の出来事だけれども。
落ち着く為に何かを無心で唱えよう。取り敢えず円周率を3.14159265358979……
あ、駄目だ、これ以上覚えていない。
◇◇◇
酷い目に遭った。あやうくのぼせて気絶するところだった。
ミド・リーがサウナに行った隙を狙って風呂を脱出。リビングでぐったりと息をつく。皆さんが風呂からあがってくる頃には何とか普通の状態を取り戻した。
ただまだ皆さんの濡れた服姿は脳裏に残っている。
まともに顔を合わせられないのでキッチンに逃げよう。ちょうど夕食を作るのによさそうな時間だ。
流石に焼き肉と刺身には飽きたので夕食はカツレツとハンバーグ。ちょっと固めの部分を脂と混ぜてガンガン叩いてミンチにする。塩を混ぜてほんの少しタマネギ入れて練って練って練ればハンバーグのタネ完成。
カツはちょっと分厚めで、中はほんのり熱が通る程度に揚げる。
それにしても1人あたり分厚いトンカツと握りこぶし2個分のハンバーグだと量が多すぎるだろうか。最近の皆さんの食欲を考えるとこれが普通に感じるけれど、きっと何かおかしい。
なお俺用はボリューム半分で作ってある。
俺の不安も杞憂に終わり多すぎる夕食もあっさり無くなった後。
「ミタキ君、ちょっとこの後付き合って貰っていいかな。下で蒸気自動車の案を練りたいんだ。具体的には模型をいくつか作って実際に動かして確認したい」
「わかった」
何か作業をした方が気が楽だ。作業中は邪念を忘れられるから。それに蒸気自動車は何としても作りたいし。
紙とペン、更に素材色々を抱えて下の作業場へ。外が暗くなり始めているが、投光器を若干出力抑え気味に使えば明るいしそこそこ温かくもなる。
「さて、まずはピストン式の蒸気機関の構造を教えて欲しいな。原理はわかったけれど、実際にどんな感じなのか概念図を描いてくれると助かるんだ」
「ちょっと待っていてくれよ」
確かライブスチームの模型を見た事があったよな。複動式でピストンバルブ式の。
何枚かスケッチを描き直してやっと思い出す。
思い出した完全な図面を改めて描いて、そしてシモンさんに示す。
「こんな感じだ。実際にはこの機構を2個作って、ピストン位置を変えて組み合わせてやる」
「何故かな」
「このピストンが一番下に行った状態や、一番上に行った状態だとうまく動かない可能性があるだろ。だからその状態が揃わないようにずらしておくんだ」
シモンさんは技術的な事については理解が早い。
「なるほど。これで作れるよ。とりあえず素材は今あるものでいいかな」
「そうだな。模型は真鍮製だったと思う。鉄だと固くていいけれど錆びるしさ」
「その辺は色々テストしてみよう」
まずは動く模型を実作することだ。そしてシモンさんはアンテナ型魔法杖があればほぼ思考したとおりの物を作り出せる。
それでは俺は必要な燃料や道具類を用意するとしよう。燃料は船に積んである石炭でいい。潤滑油も船の蒸気機関で使っているものを流用すればいいだろう。その辺りの予備は船に常備しているから問題無い。
となると必要なのは他に……
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