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第10章 便利道具と魔獣狩り ~冬休み合宿編・中~
第82話 シモンさんとお話中(2)
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「さて話を戻すよ。ミタキ君は先輩達3人のうち誰がいいと思っているのかな。それとも年上は範囲外なのかな」
しまった。この話題に戻ってしまった。
すっかり昔話でこの話題を忘れかけていたのに。
「やっぱりミド・リーが本命なのかな」
そう言われてもな。
「だから多分、誰が好きとか好きになるとかいう事に俺が慣れていないんだよ。さっきも言った通りミド・リー以外の女の子と話す機会なんて無かったしさ。どうしても付き合うとなると将来とか色々考えなきゃならなくなるだろ」
これが俺の実情でかつ公式見解。しかしシモンさんは許してくれない。
「そこまで真剣に考えると誰とも付き合えなくなっちゃうよ。ある程度軽く考えないと。今が楽しければいいかな位にさ。何ならその辺に慣れるため僕と付き合ってみるかい。僕の方は全然OKだよ」
おいちょっと待った! 思わず想像というか妄想が色々出てきそうになる。
シモンさんは確かに可愛い。それだけでなく工作系魔法で何でも作れる。確かに近くにいてくれたらありがたいし、それ以上に色々と……
胸はあまり無いけれど体型は小柄ですらりとしていい感じだ。性格も悪くないし、繰り返すが顔は確かに可愛い。彼女としては胸以外文句ないし、ついでに言うと俺はおっぱい星人じゃない。
でも……だけど……
「今の俺じゃ無理だな。多分そこまで気軽に考えられない」
本音を言うとこんな事言わずにがっつきたい気持ちもかなりある。彼女が欲しくない訳ないし、アレやコレとかもしたい。俺だって健全な男子だしアレやコレ的な欲もあるのだ。
ただ今の俺の状態で誰かと付き合うのは何か申し訳ないような気がする。シモンさんは軽く考えていいといったけれど、多分俺には出来ない。
何というか損な性分だとは思う。でも俺はこういう奴だから仕方ない。
シモンさんはにやり、と笑った。
「残念、駄目だったか。今のではいと返事してくれれば、ネタにして楽しもうと思ったんだけれどな」
おいおい。
「さてミタキ君をからかうのはこの辺にして、次の概念図は無いかな。そろそろ何枚か描いている頃じゃないかな」
ちょっと待て。今のは俺をからかっていただけなのかよ! そう言いたくもなったが、ちょっと待てよとも思う。
今のは何処まで冗談だったのかそれとも本気だったのか。その辺が俺にはわからない。女の子って難しいよなまったく。
だから次の話題にあっさり移る事にする。
「今度は鹿魔獣《チデジカ》の魔石を使ってみようと思うんだ。概念図は……」
◇◇◇
装置をあれやこれや改良した結果、鹿魔獣《チデジカ》の魔石から電気を取り出す事には成功した。
装置の中心部分は黒鉛製ダイポールアンテナを中央に入れた円筒。
① アンテナから発する電撃魔法で円筒をマイナスに帯電させる。
② 円筒とアースの間に巨大な平行板コンデンサーをかませる。
③ 円筒とアースの間の電位差から電流を取り出す。
という形で電気を取り出す。
そんな訳で電流は直流。電圧は蒸気ボートの補助発電機とほぼ同じくらい。もちろんその辺は錫の抵抗線で調整したのだけれど。
なお魔力は波らしくコイルの大きさや巻き数で減衰する度合いが変わる模様。まあアンテナで効果があるのだから波なのは元々間違いない。波長もアンテナの長さでわかっている。
改良に改良を重ね大きさも肩掛けで持ち歩ける程度まで小さくなった。中で電撃魔法がうなっていると考えるとなかなか怖い代物だけれども。
更にその装置と電球を組み合わせた便利道具をシモンさんが組み立てる。この世界としては異様に明るい投光器だ。
電球4個と反射板を組み合わせて50腕以上遠くまで明るく照らし出す。たためば持ち運び可能だ。
「これは何とか形になったな」
「便利だよね。これで夜でも充分明るくなるよ」
「でもこれを発表したら鹿魔獣の乱獲が起きそうだな」
「電撃魔法を持っている魔獣はそこそこ多いから大丈夫だよ。例えば鼠魔獣も電撃魔法持ちだしね。魔石のサイズは小さいけれど」
「電球以外と組み合わせてもいいしな。熱にもなるしモーターつけて動力にしても」
「魔石を取り出すために鹿魔獣の牧場が出来たりしてね」
「危なそうだなそれは」
「鹿魔獣《チデジカ》は怒らせなければ電撃を使わないから大丈夫だよ。でも鹿魔獣《チデジカ》目当てに熊魔獣《アナログマ》が出るとまずいかな。あれは凶暴だし」
そういえば熊魔獣《アナログマ》はまだ討伐していないな。
「熊魔獣《アナログマ》ってどんな魔獣なんだ?」
「大きさは人間よりひとまわり大きい。あと太いというか筋肉量が多いかな。夜行性で他の魔獣を襲って食べる。特に鹿魔獣が好物らしいよ。魔力が大きくて敵が見えた瞬間から火魔法と風魔法を使ってくるからかなり危ない。魔法銀か魔法銅《オリハルコン》の大盾は最低限必要かな。格闘戦では人間に勝ち目は無いし、遠距離からでも見えた瞬間から魔法を放ってくるからね。だから基本的な討伐方法は罠。生きている間は近づかない方がいい最悪な魔獣だよ」
おいおいそんな化け物かよ。
「ヨーコ先輩達はそんなものも討伐するつもりだったのかよ」
「まだやる気じゃなかったと思うよ。熊魔獣《アナログマ》は夜行性だから日中は動かないしね。ただそのうちやるとは思うよ。ヨーコ先輩もアキナ先輩も魔法銀の武具を持ってきているようだし」
なら、まさか……
「持ち運び投光器なんて作ったら、それこそ……」
「うん、やるだろうね」
おいおいちょっと待ってくれ。
しまった。この話題に戻ってしまった。
すっかり昔話でこの話題を忘れかけていたのに。
「やっぱりミド・リーが本命なのかな」
そう言われてもな。
「だから多分、誰が好きとか好きになるとかいう事に俺が慣れていないんだよ。さっきも言った通りミド・リー以外の女の子と話す機会なんて無かったしさ。どうしても付き合うとなると将来とか色々考えなきゃならなくなるだろ」
これが俺の実情でかつ公式見解。しかしシモンさんは許してくれない。
「そこまで真剣に考えると誰とも付き合えなくなっちゃうよ。ある程度軽く考えないと。今が楽しければいいかな位にさ。何ならその辺に慣れるため僕と付き合ってみるかい。僕の方は全然OKだよ」
おいちょっと待った! 思わず想像というか妄想が色々出てきそうになる。
シモンさんは確かに可愛い。それだけでなく工作系魔法で何でも作れる。確かに近くにいてくれたらありがたいし、それ以上に色々と……
胸はあまり無いけれど体型は小柄ですらりとしていい感じだ。性格も悪くないし、繰り返すが顔は確かに可愛い。彼女としては胸以外文句ないし、ついでに言うと俺はおっぱい星人じゃない。
でも……だけど……
「今の俺じゃ無理だな。多分そこまで気軽に考えられない」
本音を言うとこんな事言わずにがっつきたい気持ちもかなりある。彼女が欲しくない訳ないし、アレやコレとかもしたい。俺だって健全な男子だしアレやコレ的な欲もあるのだ。
ただ今の俺の状態で誰かと付き合うのは何か申し訳ないような気がする。シモンさんは軽く考えていいといったけれど、多分俺には出来ない。
何というか損な性分だとは思う。でも俺はこういう奴だから仕方ない。
シモンさんはにやり、と笑った。
「残念、駄目だったか。今のではいと返事してくれれば、ネタにして楽しもうと思ったんだけれどな」
おいおい。
「さてミタキ君をからかうのはこの辺にして、次の概念図は無いかな。そろそろ何枚か描いている頃じゃないかな」
ちょっと待て。今のは俺をからかっていただけなのかよ! そう言いたくもなったが、ちょっと待てよとも思う。
今のは何処まで冗談だったのかそれとも本気だったのか。その辺が俺にはわからない。女の子って難しいよなまったく。
だから次の話題にあっさり移る事にする。
「今度は鹿魔獣《チデジカ》の魔石を使ってみようと思うんだ。概念図は……」
◇◇◇
装置をあれやこれや改良した結果、鹿魔獣《チデジカ》の魔石から電気を取り出す事には成功した。
装置の中心部分は黒鉛製ダイポールアンテナを中央に入れた円筒。
① アンテナから発する電撃魔法で円筒をマイナスに帯電させる。
② 円筒とアースの間に巨大な平行板コンデンサーをかませる。
③ 円筒とアースの間の電位差から電流を取り出す。
という形で電気を取り出す。
そんな訳で電流は直流。電圧は蒸気ボートの補助発電機とほぼ同じくらい。もちろんその辺は錫の抵抗線で調整したのだけれど。
なお魔力は波らしくコイルの大きさや巻き数で減衰する度合いが変わる模様。まあアンテナで効果があるのだから波なのは元々間違いない。波長もアンテナの長さでわかっている。
改良に改良を重ね大きさも肩掛けで持ち歩ける程度まで小さくなった。中で電撃魔法がうなっていると考えるとなかなか怖い代物だけれども。
更にその装置と電球を組み合わせた便利道具をシモンさんが組み立てる。この世界としては異様に明るい投光器だ。
電球4個と反射板を組み合わせて50腕以上遠くまで明るく照らし出す。たためば持ち運び可能だ。
「これは何とか形になったな」
「便利だよね。これで夜でも充分明るくなるよ」
「でもこれを発表したら鹿魔獣の乱獲が起きそうだな」
「電撃魔法を持っている魔獣はそこそこ多いから大丈夫だよ。例えば鼠魔獣も電撃魔法持ちだしね。魔石のサイズは小さいけれど」
「電球以外と組み合わせてもいいしな。熱にもなるしモーターつけて動力にしても」
「魔石を取り出すために鹿魔獣の牧場が出来たりしてね」
「危なそうだなそれは」
「鹿魔獣《チデジカ》は怒らせなければ電撃を使わないから大丈夫だよ。でも鹿魔獣《チデジカ》目当てに熊魔獣《アナログマ》が出るとまずいかな。あれは凶暴だし」
そういえば熊魔獣《アナログマ》はまだ討伐していないな。
「熊魔獣《アナログマ》ってどんな魔獣なんだ?」
「大きさは人間よりひとまわり大きい。あと太いというか筋肉量が多いかな。夜行性で他の魔獣を襲って食べる。特に鹿魔獣が好物らしいよ。魔力が大きくて敵が見えた瞬間から火魔法と風魔法を使ってくるからかなり危ない。魔法銀か魔法銅《オリハルコン》の大盾は最低限必要かな。格闘戦では人間に勝ち目は無いし、遠距離からでも見えた瞬間から魔法を放ってくるからね。だから基本的な討伐方法は罠。生きている間は近づかない方がいい最悪な魔獣だよ」
おいおいそんな化け物かよ。
「ヨーコ先輩達はそんなものも討伐するつもりだったのかよ」
「まだやる気じゃなかったと思うよ。熊魔獣《アナログマ》は夜行性だから日中は動かないしね。ただそのうちやるとは思うよ。ヨーコ先輩もアキナ先輩も魔法銀の武具を持ってきているようだし」
なら、まさか……
「持ち運び投光器なんて作ったら、それこそ……」
「うん、やるだろうね」
おいおいちょっと待ってくれ。
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