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第9章 狩って吊して皮剥いで ~冬休み合宿編・上~

第76話 思わぬ結果と後始末

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 実験用の改造魔法アンテナを昨日魔獣討伐をした場所に設置した。念の為、他の魔法アンテナや武器類も同様に設置してある。
 なお実験は全員が堰堤に隠れて行う事にした。魔石を設置した改造魔法アンテナにセットし、這わせた導線を確認しつつ俺は皆がいる堰堤裏まで走る。

「それでは実施します。5、4、3、2、1、発射」

 ドン! ガシャーン! 衝撃波のような音と何かが壊れたような音。そして遠方にたつ砂埃。

「何だ何だ」

 すぐわかるのは改造魔法アンテナが無くなっている事。見ると設置した位置の後ろ、堰堤の石壁に叩き付けられて曲がっている。設置場所から吹っ飛んで叩き付けられたようだ。

「爆発か?」

 そんな声の中俺は状況を確認。吹っ飛んだ改造魔法アンテナの魔石部分を見る。
 収納箱そのものはそこまで壊れていないのに中の魔石が無くなっていた。そういうことか。

「実験は成功です。成功しすぎて失敗というべきかもしれない」

「どういう事?」

「恐らく魔石に込められた風魔法の力を全力で前方に放ったんです。その結果強力な風魔法が前方に向かって飛ぶとともに、反動でこの魔法杖が後ろに飛ばされてこうなった。そんな感じで……」

「まずいわ! 今のに魔獣が反応した。大型が数頭こっちに向かってる!」 

 ミド・リーの台詞で一気に空気が緊迫する。

「接敵どれくらいだ」

「あと100数える位よ! 方向は前方川の上流右側! 全部で5頭!」

「戦闘準備ですわね」

 それぞれが自分の武器なり魔法杖の場所につく。

「急いでヨーコ先輩の杖を直すよ!」

 シモンさんは折れ曲がった元魔法杖のところへ。

「頼む」

 まさか試験で魔獣をおびき寄せてしまうとは。今日は魔獣討伐はしない予定だったのに。そう思いながら俺も銃を構える。

「ヨーコ先輩とりあえずこれで使えます」

「ありがたい」

 シモンさんによる杖の応急修理が終わったようだ。横目で見ると所々曲がったりしているがアンテナ部分はきっちりなおっている。

「魔獣は5頭とも猪魔獣オツコトよ! かなり大きい!」

「先頭の1頭は私が確実に仕留めます。他はよろしく」

「右側2番目のは私がやろう」

「右側残りは私がなんとかする」

 しかし万が一外したらまずい。だから俺はミド・リーに尋ねる。

「ミド・リー、全体に強制睡眠魔法は出来ないか?」

「この大きさじゃ全部には効かない!」

 駄目か。

「一番左は俺の投げ槍で狙う」

「いざとなったら足下に炸裂魔法を連射する」

「残ったら僕も弓で足止めするよ」

 そんな声が飛び交う間にも時間は刻々と経っていく。

「もう出てくるわよ。8、7、6、5、4、3、2、1!」

 猪魔獣《オツコト》の集団が猛烈な勢いでやってきた。うち中央の1頭が次の瞬間倒れる。

「次!」

 俺も銃で狙いをつける。左側の奴に三点連射! 三脚を立てているのに感じる強烈な反動。
 やったか! 突進する勢いはそのままだが横に倒れた。よし次!

 前方を確認すると既に討伐は終わりかけていた。5頭ともそれぞれ倒れ、今はアキナ先輩がとどめをさしている状態だ。
 先頭の猪はアキナ先輩が倒したのだろう。
 右側に倒れているのは両目の間に穴が開いている。これは風魔法の風槍ウィンドスピア、ヨーコ先輩の魔法だ。
 更に右のには一見外傷も何も見えない。これはきっとミド・リーの仕業だな。
 左側の1頭は俺の銃。もう1頭はシンハ君の投げ槍が両目の間少し上部分に突き刺さっていた。

「接近した場合に備えて地表爆裂魔法を仕掛けていた。でも必要なかった」

「強いよね皆。僕の弓が出る幕は無かったな」

「これを使わなくて良かったです」

 シモンさんとナカさんがそれぞれの武器を下ろす。

「とりあえずこれで終わりよ。あとはやってきそうな魔獣はいないみたい」

 ミド・リーが状況終了を宣言。

「それにしても大きいな。これを運ぶのかよ」

「1頭につき1回ずつだね」

 どう見ても1頭あたり50重300kg以上はありそうだ。ならここで解体した方が楽だけれど……

「下の船着き場が使いやすいし解体に無難」

「堰堤のこっちは浄水だから汚せないぞ」

 という事は結論として……

「仕方ない、運ぶか」

 シンハ君の台詞が正解だ。仕方ない。


「こっちは血抜きをしながら体温を冷やして待っているわ。血が水に流れないようにすれば血抜きしてもいいよね」

「冷やすのならお任せ下さいな」

 そんな訳で作業開始。まずは手近な1頭を荷車へ。
 しかし重くてそのまま荷車へ持ち上げる事が出来ない。ローブで足を結わえてほぼ全員で引っ張ってなんとか載せる。

「一緒に行く。下で内臓を抜く処理をする」

「なら僕は上で出来るところまでやっておくよ」

「清拭魔法で水を汚さないようなんとかします」

 そんな訳で搬送要員はシンハ君、ヨーコ先輩、俺の3人となった。最初はフールイ先輩も一緒だ。
 荷物が重いので体力のあるシンハ君とヨーコ先輩は荷車の前。坂道で速度を抑えながらの搬送になる。

「重いぜ。強化魔法を使っても重いぜ」

「同意だな。私も強化魔法を使っているのだが足が滑りそうだ」

「頼むから滑らさないで下さい。洒落になりません!」

 そんな事を言いながら何とか船着き場まで持っていく。
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