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第8章 食欲と挑戦の秋(2)
第62話 大名行列御案内
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今日も快晴で無風状態な午後1時少し前。熱気球体験最後の便がそろそろ下降を始めるという頃。
大名行列みたいなのが校舎の方からぞろぞろと向かってくるのが見えた。これはアレに間違いないだろう。
気にはなるけれど俺はまだ審査魔法で熱気球を監視中だ。ついでに言うとアキナ先輩もまだ熱気球内温度を調整従事中。
だから対応はヨーコ先輩に任せるしかない。
「わざわざお越しいただき大変光栄でございます……」
何か聞き慣れない敬語表現が聞こえているようだけれどとりあえず無視。
一応ヨーコ先輩には熱気球やそのほか色々な展示品の説明資料を渡してある。更にナカさんを補助に、技術担当としてシモンさんもついている。
だから問題はない筈だ。多分きっと。
ただ本音を言うと理論関係は俺がいた方がいいだろうし、説明役もアキナ先輩の方が適任。
ヨーコ先輩は確かに優秀だし頭もいいし家柄もいい。ただアキナ先輩の方が応用が利くしこっちが説明していない事でも何とか出来るし安心なのだ。
その分敵に回すと怖いというのも事実だけれど。
ただ熱気球が下降中のため2人とも場を外せない。この状態が一番デリケートな操作が必要だから仕方ない。
大名行列は受付タープから横の展示用タープへ移動した模様。
ヨーコ先輩の説明が聞こえる。今は屋外を楽しもうグッズの説明だな。コンセプトから試作品の紹介、特長とか利点等の説明をしている。
庭園等にはガーデンチェアとかあるけれど、持ち歩きの出来る椅子や机、タープやテントなんてのは俺が知る限り存在していない。
だからコンセプトだの使用状況の説明だのが必要なのだ。ただ物の説明だけでは無く。
なおこの熱気球も、屋外を楽しもうの発展形として展示している。
無論理論的な説明もその実証等もあるけれど、あくまで今回の説明は軽く。中等学生らしくレジャー用途としての説明を主体にしてある。
軍事観測用にも使えるなんて事は間違っても言わない。
本日の熱気球一般体験最後の便が無事着地する。皆さんこっちの状況を上で観察していたようで静かだが興味津々という感じだ。
「それではこちらへ」
大名行列が熱気球の方へとやってきた。
今回は王子だけでない。学園長、研究院長、ウージナ市長等のお偉いさんにその護衛や補佐等総勢15人程の団体だ。
以前に王子と一緒にいたシャクさんとターカノさんもいる。
「それではこちらも御体験なされますか」
「ああ。乗せて貰おう。確か8人乗りだったよね」
そうだけれど、それは中等学生の場合だ。
「ええ。ただ大人ですと籠が狭いので7人までにした方がいいと思います。あと1名こちらの者を付けますので、搭乗可能なのは6人という事になります」
「それならまず僕が行こう。シャクとターカノは下で待っていてくれ。あとはヒジヤマ副長官、ダンバラ学園長、カナ・ワージマ研究院長、それにマトゥバ君いいかな。
あとそちらはアキナさんとミタキ君、説明と案内を頼む。ミタキ君がいれば僕でもこの熱気球を操作できるのは確認済みだしね。いいかな」
おいちょっと待って欲しい。事もあろうに俺が指名されてしまった。アキナ先輩はこの前も一緒に乗ったし顔見知りだろうからわかるけれど。
でも断るわけにもいかないだろう。何せ相手は第一王子、しかもお偉い様方の監視付きだ。仕方ない。
「かしこまりました。それではこちらへ」
熱気球へと案内する。
まあ説明は基本的にアキナ先輩に任せておけばいい筈だ。理論的な事もそうでない事もだいたい答えてくれるから。
俺は基本的には黙っていよう。下手な事を言うとまずいし。
「それでは行こう。水が沸騰するより少し上の温度でいいんだね」
「はい。お願い致します」
熱気球がゆっくりと上昇を始める。以前乗った時のことを憶えているのだろう。
何やかんや思うが王子の魔法の腕、やはり確かだ。気球は早すぎず遅すぎずいい感じで上昇していく。
校舎の上より高くなったところでホン・ド王子が口を開いた。
「さてと。いくつか質問するけれどいいかな」
「はい。わかることでしたら何でも答えさせていただきます」
頼むアキナ先輩。その調子で頑張ってくれ。
何せ今回は重鎮さんたちが揃っている。以前蒸気ボートの試乗で海軍の皆さんを乗せた時以上に俺は緊張状態だ。
せめて王子1人だけならここまで緊張しないのだけれども。
「それじゃ聞くよ。この熱気球は何故こうやって浮くか、もう一度説明してもらってもいいかな」
「ええ。空気は暖めると膨張します。つまり同じ重さの空気なら暖かい方が体積として大きくなります。逆に言えば同じ体積なら暖かい空気の方が軽くなります。その暖かい空気とそうでない空気の重さの違いが、この熱気球を浮かせている訳です」
流石アキナ先輩。完璧な答えだ。
「なら次の質問。この熱気球の大きさとかはどうやってきめたんだい」
「実験室で模型を作って、どれくらいの浮力を必要とするか計算しました」
「形はこの気球と同じ形かい?」
「いいえ、中の空気の体積の計算を簡単にするため、円筒形で作りました」
質疑応答は続く。
大名行列みたいなのが校舎の方からぞろぞろと向かってくるのが見えた。これはアレに間違いないだろう。
気にはなるけれど俺はまだ審査魔法で熱気球を監視中だ。ついでに言うとアキナ先輩もまだ熱気球内温度を調整従事中。
だから対応はヨーコ先輩に任せるしかない。
「わざわざお越しいただき大変光栄でございます……」
何か聞き慣れない敬語表現が聞こえているようだけれどとりあえず無視。
一応ヨーコ先輩には熱気球やそのほか色々な展示品の説明資料を渡してある。更にナカさんを補助に、技術担当としてシモンさんもついている。
だから問題はない筈だ。多分きっと。
ただ本音を言うと理論関係は俺がいた方がいいだろうし、説明役もアキナ先輩の方が適任。
ヨーコ先輩は確かに優秀だし頭もいいし家柄もいい。ただアキナ先輩の方が応用が利くしこっちが説明していない事でも何とか出来るし安心なのだ。
その分敵に回すと怖いというのも事実だけれど。
ただ熱気球が下降中のため2人とも場を外せない。この状態が一番デリケートな操作が必要だから仕方ない。
大名行列は受付タープから横の展示用タープへ移動した模様。
ヨーコ先輩の説明が聞こえる。今は屋外を楽しもうグッズの説明だな。コンセプトから試作品の紹介、特長とか利点等の説明をしている。
庭園等にはガーデンチェアとかあるけれど、持ち歩きの出来る椅子や机、タープやテントなんてのは俺が知る限り存在していない。
だからコンセプトだの使用状況の説明だのが必要なのだ。ただ物の説明だけでは無く。
なおこの熱気球も、屋外を楽しもうの発展形として展示している。
無論理論的な説明もその実証等もあるけれど、あくまで今回の説明は軽く。中等学生らしくレジャー用途としての説明を主体にしてある。
軍事観測用にも使えるなんて事は間違っても言わない。
本日の熱気球一般体験最後の便が無事着地する。皆さんこっちの状況を上で観察していたようで静かだが興味津々という感じだ。
「それではこちらへ」
大名行列が熱気球の方へとやってきた。
今回は王子だけでない。学園長、研究院長、ウージナ市長等のお偉いさんにその護衛や補佐等総勢15人程の団体だ。
以前に王子と一緒にいたシャクさんとターカノさんもいる。
「それではこちらも御体験なされますか」
「ああ。乗せて貰おう。確か8人乗りだったよね」
そうだけれど、それは中等学生の場合だ。
「ええ。ただ大人ですと籠が狭いので7人までにした方がいいと思います。あと1名こちらの者を付けますので、搭乗可能なのは6人という事になります」
「それならまず僕が行こう。シャクとターカノは下で待っていてくれ。あとはヒジヤマ副長官、ダンバラ学園長、カナ・ワージマ研究院長、それにマトゥバ君いいかな。
あとそちらはアキナさんとミタキ君、説明と案内を頼む。ミタキ君がいれば僕でもこの熱気球を操作できるのは確認済みだしね。いいかな」
おいちょっと待って欲しい。事もあろうに俺が指名されてしまった。アキナ先輩はこの前も一緒に乗ったし顔見知りだろうからわかるけれど。
でも断るわけにもいかないだろう。何せ相手は第一王子、しかもお偉い様方の監視付きだ。仕方ない。
「かしこまりました。それではこちらへ」
熱気球へと案内する。
まあ説明は基本的にアキナ先輩に任せておけばいい筈だ。理論的な事もそうでない事もだいたい答えてくれるから。
俺は基本的には黙っていよう。下手な事を言うとまずいし。
「それでは行こう。水が沸騰するより少し上の温度でいいんだね」
「はい。お願い致します」
熱気球がゆっくりと上昇を始める。以前乗った時のことを憶えているのだろう。
何やかんや思うが王子の魔法の腕、やはり確かだ。気球は早すぎず遅すぎずいい感じで上昇していく。
校舎の上より高くなったところでホン・ド王子が口を開いた。
「さてと。いくつか質問するけれどいいかな」
「はい。わかることでしたら何でも答えさせていただきます」
頼むアキナ先輩。その調子で頑張ってくれ。
何せ今回は重鎮さんたちが揃っている。以前蒸気ボートの試乗で海軍の皆さんを乗せた時以上に俺は緊張状態だ。
せめて王子1人だけならここまで緊張しないのだけれども。
「それじゃ聞くよ。この熱気球は何故こうやって浮くか、もう一度説明してもらってもいいかな」
「ええ。空気は暖めると膨張します。つまり同じ重さの空気なら暖かい方が体積として大きくなります。逆に言えば同じ体積なら暖かい空気の方が軽くなります。その暖かい空気とそうでない空気の重さの違いが、この熱気球を浮かせている訳です」
流石アキナ先輩。完璧な答えだ。
「なら次の質問。この熱気球の大きさとかはどうやってきめたんだい」
「実験室で模型を作って、どれくらいの浮力を必要とするか計算しました」
「形はこの気球と同じ形かい?」
「いいえ、中の空気の体積の計算を簡単にするため、円筒形で作りました」
質疑応答は続く。
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