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第8章 食欲と挑戦の秋(2)
第59話 学園祭初日の朝
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この辺は大体、10月中旬は毎年天候がいい。元々雨は少ないのだが、この季節は快晴で風も少ない日が続く。
学園祭初日の今日も絶好調に晴れ上がった。空気も涼しいし色々な意味で熱気球びよりという訳だ。
なお熱気球のコントロールは改良した。具体的にはアキナ先輩が気球に同乗しなくも良くなっている。
『空中閲覧体験・午前10時~午後1時・晴天で無風時に限る』と書かれた大型掲示板と気球のアンカー、これが改良部分だ。
大型掲示板はアンカーを兼ねて地中に埋まっているが、実はこれが魔力アンテナになっている。もちろん熱魔法用のアンテナだ。
つまりここにアキナ先輩がいて、看板から伸びている線を手に持っていれば、アンテナ経由で熱気球内の気温をコントロール出来る。
これでアキナ先輩も同乗しなくて済むし魔力も節約出来る訳だ。設置するためグラウンドを3メートル掘ったシンハ君、お疲れ様だ。
グラウンド中央に設置した屋根付きのブース。巨大タープ2つと超大型ドームテントを並べたものだが、実はこれも展示品。
例えば屋根として設置したタープはドーム型テントと同様にポールのテンションで自立するタイプ。テーブルは折りたたみ出来る軽量タイプ。椅子も折りたたみ式でまったり座れるタイプだ。
気球の収納用を兼ねた大型ドームテントまである。更に悪乗りして昼寝用キャンプコットなんてのも作った。アウトドアなんてのも前世で憧れだった俺が思いついてシモンさんに作ってもらった品々だ。
大型タープ2つのうちひとつは気球の受付等の事務用。もう一つは制作品色々の展示用だ。
テーブル、椅子、コット等の他に熱気球開発時にあの布地で作ったドレスも展示している。更に精油とかお香のようなアロマテラピーグッズまで。
流石に蒸気機関関係とか魔法アンテナ、石鹸関連は展示しなかったけれど。
「肝心なものを出していない割には色々モノがあるなあ」
ヨーコ先輩が全体を眺めてそんな感想を漏らす。
「シモンさんに頼めば何でもすぐ作ってくれますしね」
「ミタキの考えるものは面白いからね。作って試すのが楽しいんだ」
「この椅子もなかなか座り心地がいいですわ」
アキナ先輩はリラックスチェアにオットマンまで使って完全にくつろいでいる。
「それにしてもお客さん誰もこないね」
「学園祭は開場したけれどな」
「まあ展示場所が他と離れているしね」
他は大体教室棟など建物内で展示をしている。一方でこっちは第一グラウンドの中央。
普通に考えたら人はなかなか来ないだろう。
「気球を出したらきっと集まると思いますわ」
「同意。それまで休憩」
「でもお客さんがいないのも……あれ」
何か女子数人が校舎棟からこっちに来るぞ。
顔が見えるようになる。何人かは俺の知っている顔だった。同じクラスで、俺と極めて仲が宜しくない皆様だ。
何故仲が宜しくないかというとまあ、ある人物の存在がある訳で……
「ヨーコ様、こちらにいらっしゃったんですか」
「こんな処で何をしていらっしゃるのですか?」
そう、こいつらはヨーコ先輩のファンクラブの皆様だ。ちなみにこっちのファンクラブは全員女子。
なお男子だけの秘密のファンクラブもあるが詳細は不明。かつてシンハ君も所属していたらしいが除名されたらしい。
「最近の放課後はこっちで物を作っている方が多くてね。何なら見てみるかい」
「是非お願いします」
わいわいきゃあきゃあ。そんな女子の一群を引き連れてヨーコ先輩は隣のタープへ。
「大変だな、ヨーコ先輩も」
「なんだかんだ言って人がいいですからね」
ナカさんがそう言ってため息をつく。
「私がマネージャーとしてそばにいるのでさえ、色々チクチク文句を言われましたから。ミタキ君が無事なのが不思議なくらいです」
おいおい。
しかしだ。
「ミタキを昔から知っている奴は手を出さないだろ」
「そうよね、危なくて」
シンハ君とミド・リーがそんな台詞を吐く。
「何故ですか? 身体が弱くて死にそうだからとか」
ナカさんの台詞に2人は苦笑。
「まあそれもきっとあるけれどさ、それだけじゃない」
「怒ると怖いのよね。相手を散々挑発した後実力行使に出るから」
「必ず先に相手に手を出させるんだよな」
「そうそう、自分は被害者で正当防衛だって」
「酷い事言うなあ」
俺の台詞に対し2人の台詞がハモる。
「事実でしょ」
「事実だろ」
大分昔の事なので正直もうあまり話題にしてもらいたくない。あの頃俺はまだ幼かった。それだけだ。
「失礼ですが、ミタキ君はそんなに強そうにはみえないのですが」
「文句なく弱いわよ。でも受けて立った時は最強最悪」
「捨身技しか使わないけれどな」
「ぎりぎりで相手の方が被害が大きいかな程度の結果が多いよね」
「階段の上から捨て身技って、普通の人間はそんな危ない技出さないよな」
「病気で痛いのや苦しいのに慣れているから気にしない、って凶悪すぎだよね」
おいおい2人で昔の傷をえぐりまくるのはやめてくれ。
「まあそれはおいておいて、そろそろ気球の準備をしようか」
「そうね。出して広げて組み立てて、空気を入れればいいくらいに」
よし話題が変わったぞ。そんな訳で俺達は気球をしまってあるドームテントの方へ向かう。
学園祭初日の今日も絶好調に晴れ上がった。空気も涼しいし色々な意味で熱気球びよりという訳だ。
なお熱気球のコントロールは改良した。具体的にはアキナ先輩が気球に同乗しなくも良くなっている。
『空中閲覧体験・午前10時~午後1時・晴天で無風時に限る』と書かれた大型掲示板と気球のアンカー、これが改良部分だ。
大型掲示板はアンカーを兼ねて地中に埋まっているが、実はこれが魔力アンテナになっている。もちろん熱魔法用のアンテナだ。
つまりここにアキナ先輩がいて、看板から伸びている線を手に持っていれば、アンテナ経由で熱気球内の気温をコントロール出来る。
これでアキナ先輩も同乗しなくて済むし魔力も節約出来る訳だ。設置するためグラウンドを3メートル掘ったシンハ君、お疲れ様だ。
グラウンド中央に設置した屋根付きのブース。巨大タープ2つと超大型ドームテントを並べたものだが、実はこれも展示品。
例えば屋根として設置したタープはドーム型テントと同様にポールのテンションで自立するタイプ。テーブルは折りたたみ出来る軽量タイプ。椅子も折りたたみ式でまったり座れるタイプだ。
気球の収納用を兼ねた大型ドームテントまである。更に悪乗りして昼寝用キャンプコットなんてのも作った。アウトドアなんてのも前世で憧れだった俺が思いついてシモンさんに作ってもらった品々だ。
大型タープ2つのうちひとつは気球の受付等の事務用。もう一つは制作品色々の展示用だ。
テーブル、椅子、コット等の他に熱気球開発時にあの布地で作ったドレスも展示している。更に精油とかお香のようなアロマテラピーグッズまで。
流石に蒸気機関関係とか魔法アンテナ、石鹸関連は展示しなかったけれど。
「肝心なものを出していない割には色々モノがあるなあ」
ヨーコ先輩が全体を眺めてそんな感想を漏らす。
「シモンさんに頼めば何でもすぐ作ってくれますしね」
「ミタキの考えるものは面白いからね。作って試すのが楽しいんだ」
「この椅子もなかなか座り心地がいいですわ」
アキナ先輩はリラックスチェアにオットマンまで使って完全にくつろいでいる。
「それにしてもお客さん誰もこないね」
「学園祭は開場したけれどな」
「まあ展示場所が他と離れているしね」
他は大体教室棟など建物内で展示をしている。一方でこっちは第一グラウンドの中央。
普通に考えたら人はなかなか来ないだろう。
「気球を出したらきっと集まると思いますわ」
「同意。それまで休憩」
「でもお客さんがいないのも……あれ」
何か女子数人が校舎棟からこっちに来るぞ。
顔が見えるようになる。何人かは俺の知っている顔だった。同じクラスで、俺と極めて仲が宜しくない皆様だ。
何故仲が宜しくないかというとまあ、ある人物の存在がある訳で……
「ヨーコ様、こちらにいらっしゃったんですか」
「こんな処で何をしていらっしゃるのですか?」
そう、こいつらはヨーコ先輩のファンクラブの皆様だ。ちなみにこっちのファンクラブは全員女子。
なお男子だけの秘密のファンクラブもあるが詳細は不明。かつてシンハ君も所属していたらしいが除名されたらしい。
「最近の放課後はこっちで物を作っている方が多くてね。何なら見てみるかい」
「是非お願いします」
わいわいきゃあきゃあ。そんな女子の一群を引き連れてヨーコ先輩は隣のタープへ。
「大変だな、ヨーコ先輩も」
「なんだかんだ言って人がいいですからね」
ナカさんがそう言ってため息をつく。
「私がマネージャーとしてそばにいるのでさえ、色々チクチク文句を言われましたから。ミタキ君が無事なのが不思議なくらいです」
おいおい。
しかしだ。
「ミタキを昔から知っている奴は手を出さないだろ」
「そうよね、危なくて」
シンハ君とミド・リーがそんな台詞を吐く。
「何故ですか? 身体が弱くて死にそうだからとか」
ナカさんの台詞に2人は苦笑。
「まあそれもきっとあるけれどさ、それだけじゃない」
「怒ると怖いのよね。相手を散々挑発した後実力行使に出るから」
「必ず先に相手に手を出させるんだよな」
「そうそう、自分は被害者で正当防衛だって」
「酷い事言うなあ」
俺の台詞に対し2人の台詞がハモる。
「事実でしょ」
「事実だろ」
大分昔の事なので正直もうあまり話題にしてもらいたくない。あの頃俺はまだ幼かった。それだけだ。
「失礼ですが、ミタキ君はそんなに強そうにはみえないのですが」
「文句なく弱いわよ。でも受けて立った時は最強最悪」
「捨身技しか使わないけれどな」
「ぎりぎりで相手の方が被害が大きいかな程度の結果が多いよね」
「階段の上から捨て身技って、普通の人間はそんな危ない技出さないよな」
「病気で痛いのや苦しいのに慣れているから気にしない、って凶悪すぎだよね」
おいおい2人で昔の傷をえぐりまくるのはやめてくれ。
「まあそれはおいておいて、そろそろ気球の準備をしようか」
「そうね。出して広げて組み立てて、空気を入れればいいくらいに」
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