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第3章 飽食の宴 ~夏休み合宿編・下~
第23話 水飴、完成!
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翌朝目覚めてすぐ麦芽糖の様子を見に行く。うんうん、いい感じで糖化が進んでいるようだ。
念の為もう一度かき混ぜて魔法で温度を60度に上げてから、顔を洗ってキッチンへ。
俺は下手な物を食べるよりは自分で作る主義。でも今朝はやりたい事が色々あるのでサンドイッチ中心の簡単なメニュー。
サンドイッチは野菜サンド、ハムサンド、ツナサンド、卵サンド。それに鶏出汁冷製スープとサラダという感じだ。
「舌が贅沢になってきた気がするな、そろそろ」
「それ私も思った。日常に戻るのがやばいかも」
「確かに美味しいですわ。一見何と言う事無い料理に見えますのに」
うんうん今日も好評で何よりだ。さて今朝は皆にお願いが何点かある。
「アキナ先輩とヨーコ先輩、申し訳無いですが今朝は少し手伝っていただけますか」
「いいぞ、何か面白い物を作るのか?」
「私もいいですわ」
「何何、何をやるの?」
お願いした2人だけではなく、全員が身を乗り出してきた。
「昨日下準備した材料を使って甘い食べ物を作ります。その際に風魔法と熱魔法を使うので、協力していただけると有り難いです」
「熱魔法はわかるが、風魔法を料理に使うというのははじめて聞くな」
ヨーコ先輩がそんな事を言う。
「石鹸製造でヨーコ先輩に風魔法で高圧力をつくって貰いましたけれど、あれが出来るなら逆に低圧力、空気を一部だけ抜くなんて事もきっと出来ますよね」
「ああ、空気を追い出す奴だな。密閉容器があると楽だが無くても表面だけなら出来なくもない」
おお、さすが特殊魔法の風魔法はハイスペックだ。羨ましい。
「その魔法を使って水分を抜く方法があるんです。それで煮出したり糖化させたりしたものから水を抜く作業をお願いしたいんです」
「よくわからないが、その辺はミタキに聞けばいいな」
「ええ」
よしよし、これで安直版のフリーズドライが使えるぞ。
「私も手伝える事があったら手伝うわよ」
これはミド・リーだ。
「なら昨日シンハが干していた海藻をよく洗って、大鍋におさまるように入れてひたひたに水を入れて、カップ4分の1程酢を加えて煮込んでくれ。煮込むのは熱魔法でいい」
「僕も何か手伝えるかな?」
もちろんシモンさんにもやって欲しい事がある。
「シンハに近所から頑丈な木綿の布を買ってきてもらって、それで大鍋に入るサイズの頑丈な袋をつくって欲しい」
「全員で作業した方がいいのでないでしょうか? 石鹸のように」
アキナ先輩がそう言ってくれた。
「そうですね。ならお願いしていいですか」
「勿論です」
「当然だよ」
おお、皆さん協力的で大変に嬉しい。これなら昼前にずんだ版あんみつが食べられそうだ。
◇◇◇
食事後、シンハ君は布を買いにお出かけ。ミド・リーとフールイ先輩は乾かしたテングサを洗って鍋へ。
残りはキッチンの作業台の周りに集まる。
「まずはこの昨日から作った糖の元の液体をこの鍋の底に薄く入れる」
底から5ミリくらいの高さになるように茶色の液体を入れる。
「これをヨーコ先輩、表面から空気を奪った状態にして下さい」
「うーん、出来るけれどもう少し密閉して貰った方が楽かな」
確かにそうだろうな。そう思った処でふいっとシモンさんが顔を出した。
「ならこの鍋の蓋との間をちょっと加工するよ、これで押さえておけば空気が抜ける穴はここしか無い」
なんと、そんな事も出来るのか。工作魔法持ち、異常に便利だ。
「ああ、これだと楽だな。うーん、これを持続すればいいかな」
ヨーコ先輩の言葉を聞いて俺は鑑定魔法で中を確認。
おお、水分がガンガン蒸発している。あっという間に半分以下になった。
「あ、もう大丈夫です。ではこれを繰り返します」
水分多めの糖液を入れ、空気を抜いて水分を蒸発させる。嵩が減ったらまた水分多めの糖液を入れる。
繰り返した結果、鍋の下から3センチ位の深さに蜂蜜のようなどろっとした濃い茶色のものが出来上がった。
木の菜箸でちょっとつついてなめてみる。うん甘い。水飴完成だ。
「私も味見していいかしら」
「私も食べたい」
「僕も」
「同意」
そんなこんなで買い物に行っているシンハ君以外が集まってきた。仕方ないので味見用を皿へと取って回す。
「わあ甘い! 蜂蜜とはちょっと風味が違うけれど」
「こんな甘い物が麦と小麦粉で出来るのか」
「あまり食べないで下さいよ。楽しみ分が無くなりますから」
鍋から取り出しはじめたので一応そう注意。
「次はこの煮込んでいる奴を布で漉して、同じ方法で固まるまで乾燥させます。でもその前にずんだ餡を作っておくか」
昨日豆状態にしておいた枝豆を冷蔵庫から取り出す。
「ずんだ餡って何?」
「この豆を加工したものだ。豆を柔らかくなるまで加熱して、あとは潰して潰して潰しまくる。潰したら塩をほんの少しとこの水飴を適量入れて、混ぜ合わせる。ちょっとだけ見本を作ってみるぞ」
そんな訳ですりこぎとすり鉢、皮を取った枝豆を用意して潰しまくる。指先でほんの少しだけ塩を入れ、ずんだの餡が崩れない程度に水飴を加え、程良く均一になるまで混ぜると完成。
ちょっと味見してみる。砂糖で無く水飴を使ったからか甘さがちょっと素朴に感じる。しかし悪くない味だ。
「これは見本だから全部味見していいです。これと今煮込んでいる海藻を使ったものが、今回作るおやつの完成形になります」
茶碗一杯分作った見本は案の定すぐに無くなった。皆さんの表情を見ると好評だというのがすぐわかる。
よしよし。手応えは充分だ。
念の為もう一度かき混ぜて魔法で温度を60度に上げてから、顔を洗ってキッチンへ。
俺は下手な物を食べるよりは自分で作る主義。でも今朝はやりたい事が色々あるのでサンドイッチ中心の簡単なメニュー。
サンドイッチは野菜サンド、ハムサンド、ツナサンド、卵サンド。それに鶏出汁冷製スープとサラダという感じだ。
「舌が贅沢になってきた気がするな、そろそろ」
「それ私も思った。日常に戻るのがやばいかも」
「確かに美味しいですわ。一見何と言う事無い料理に見えますのに」
うんうん今日も好評で何よりだ。さて今朝は皆にお願いが何点かある。
「アキナ先輩とヨーコ先輩、申し訳無いですが今朝は少し手伝っていただけますか」
「いいぞ、何か面白い物を作るのか?」
「私もいいですわ」
「何何、何をやるの?」
お願いした2人だけではなく、全員が身を乗り出してきた。
「昨日下準備した材料を使って甘い食べ物を作ります。その際に風魔法と熱魔法を使うので、協力していただけると有り難いです」
「熱魔法はわかるが、風魔法を料理に使うというのははじめて聞くな」
ヨーコ先輩がそんな事を言う。
「石鹸製造でヨーコ先輩に風魔法で高圧力をつくって貰いましたけれど、あれが出来るなら逆に低圧力、空気を一部だけ抜くなんて事もきっと出来ますよね」
「ああ、空気を追い出す奴だな。密閉容器があると楽だが無くても表面だけなら出来なくもない」
おお、さすが特殊魔法の風魔法はハイスペックだ。羨ましい。
「その魔法を使って水分を抜く方法があるんです。それで煮出したり糖化させたりしたものから水を抜く作業をお願いしたいんです」
「よくわからないが、その辺はミタキに聞けばいいな」
「ええ」
よしよし、これで安直版のフリーズドライが使えるぞ。
「私も手伝える事があったら手伝うわよ」
これはミド・リーだ。
「なら昨日シンハが干していた海藻をよく洗って、大鍋におさまるように入れてひたひたに水を入れて、カップ4分の1程酢を加えて煮込んでくれ。煮込むのは熱魔法でいい」
「僕も何か手伝えるかな?」
もちろんシモンさんにもやって欲しい事がある。
「シンハに近所から頑丈な木綿の布を買ってきてもらって、それで大鍋に入るサイズの頑丈な袋をつくって欲しい」
「全員で作業した方がいいのでないでしょうか? 石鹸のように」
アキナ先輩がそう言ってくれた。
「そうですね。ならお願いしていいですか」
「勿論です」
「当然だよ」
おお、皆さん協力的で大変に嬉しい。これなら昼前にずんだ版あんみつが食べられそうだ。
◇◇◇
食事後、シンハ君は布を買いにお出かけ。ミド・リーとフールイ先輩は乾かしたテングサを洗って鍋へ。
残りはキッチンの作業台の周りに集まる。
「まずはこの昨日から作った糖の元の液体をこの鍋の底に薄く入れる」
底から5ミリくらいの高さになるように茶色の液体を入れる。
「これをヨーコ先輩、表面から空気を奪った状態にして下さい」
「うーん、出来るけれどもう少し密閉して貰った方が楽かな」
確かにそうだろうな。そう思った処でふいっとシモンさんが顔を出した。
「ならこの鍋の蓋との間をちょっと加工するよ、これで押さえておけば空気が抜ける穴はここしか無い」
なんと、そんな事も出来るのか。工作魔法持ち、異常に便利だ。
「ああ、これだと楽だな。うーん、これを持続すればいいかな」
ヨーコ先輩の言葉を聞いて俺は鑑定魔法で中を確認。
おお、水分がガンガン蒸発している。あっという間に半分以下になった。
「あ、もう大丈夫です。ではこれを繰り返します」
水分多めの糖液を入れ、空気を抜いて水分を蒸発させる。嵩が減ったらまた水分多めの糖液を入れる。
繰り返した結果、鍋の下から3センチ位の深さに蜂蜜のようなどろっとした濃い茶色のものが出来上がった。
木の菜箸でちょっとつついてなめてみる。うん甘い。水飴完成だ。
「私も味見していいかしら」
「私も食べたい」
「僕も」
「同意」
そんなこんなで買い物に行っているシンハ君以外が集まってきた。仕方ないので味見用を皿へと取って回す。
「わあ甘い! 蜂蜜とはちょっと風味が違うけれど」
「こんな甘い物が麦と小麦粉で出来るのか」
「あまり食べないで下さいよ。楽しみ分が無くなりますから」
鍋から取り出しはじめたので一応そう注意。
「次はこの煮込んでいる奴を布で漉して、同じ方法で固まるまで乾燥させます。でもその前にずんだ餡を作っておくか」
昨日豆状態にしておいた枝豆を冷蔵庫から取り出す。
「ずんだ餡って何?」
「この豆を加工したものだ。豆を柔らかくなるまで加熱して、あとは潰して潰して潰しまくる。潰したら塩をほんの少しとこの水飴を適量入れて、混ぜ合わせる。ちょっとだけ見本を作ってみるぞ」
そんな訳ですりこぎとすり鉢、皮を取った枝豆を用意して潰しまくる。指先でほんの少しだけ塩を入れ、ずんだの餡が崩れない程度に水飴を加え、程良く均一になるまで混ぜると完成。
ちょっと味見してみる。砂糖で無く水飴を使ったからか甘さがちょっと素朴に感じる。しかし悪くない味だ。
「これは見本だから全部味見していいです。これと今煮込んでいる海藻を使ったものが、今回作るおやつの完成形になります」
茶碗一杯分作った見本は案の定すぐに無くなった。皆さんの表情を見ると好評だというのがすぐわかる。
よしよし。手応えは充分だ。
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