病弱が転生 ～やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です～

第２章 甘味は何処だ ～夏休み合宿編・上～

第21話 爆発漁法ともう一つの材料

　そんな訳で午後は海。女性陣も泳げる格好に着替えた。
　この世界の女性の水着は上がヘソ出しタンクトップで下が短パン。日本の水着に比べて露出度は高くはないが、それでも体型がけっこう出る。

　例えば全体的に大きいのに腰がキュッと締まっていていやらしい体型のアキナ先輩とか、ロリ巨乳とはこのことですかと言いたくなるようなフールイ先輩とか。身長こそ高めと低めだけれども体型と何処ぞのサイズは中庸で正しいヨーコ先輩とナカさん。
　そして今後に期待できるか出来ないかというミド・リーとシモンさん。

　ただこうやって見るとみなさんそれぞれレベルが高い。顔とか体型のバランスとか。胸サイズは２名ほど残念だけれど、これも好き好きかもしれない。
　じっくりと見る度胸は俺には無いけれど。

　ちなみにシンハ君は短パンオンリーで、俺は長袖の薄いＴシャツと短パン。気を抜くと酷い日焼けとか日射病になるから。自己防衛という奴だ。

　なお熊手とか細い銛とかバケツも装備。つまり採取がてら遊ぼうという事だ。

「午前中歩いた結果、お勧めはこの辺かな。適度に遠浅で泳ぎやすいから」

　なるほど。
　そんな訳で俺も海を楽しむことにする。と言っても泳ぐような体力は無い。そこそこの深さの処に浸かって波で身体を上下させて遊ぶ程度。
　でもこれだけでも結構楽しいのだ。海に浸かっているから涼しいし。

　なおフールイ先輩は俺と同じようにクラゲの如く浸かっている派。他は泳いだり歩いたり色々やっている。
　あ、妙な姿勢で歩いたり止まったりしていたシンハ君が何かを拾い上げたぞ。見ると二枚貝、アサリの親類みたいなものだ。

「シンハ、それどうやって採るんだ？」

「砂の中で足をかかと中心に動かして底を探るんだ。違和感があれば岩か貝がある」

　なるほど、面白そうなので試してみる。でもそう簡単には……あれ。簡単に見つかったぞ。

『地球のアサリと同系統の二枚貝。餌によっては貝毒を持つがこれは毒はない』

　よーし、アサリゲットだぜ！　一度成功したのでついサル状態になって捕りまくる。
　バケツに12個目を入れたところでミド・リーから注意が入った。

「ミタキはしばらく陸上で休憩ね。唇が青くなっている」

　おっとそれじゃ仕方無い。結構面白かったのだけれど。
　
「ついでだから岩場行かない？　色々いるし楽しいよ」

　ミド・リーがそんな事を言ってくれる。

「いいな」

　そう言えば岩場で魚を捕ったんだよな。新鮮な魚といえば元日本人の俺としては刺身にしたくなる。

　病院では刺身なんて滅多に出なかったから。漁港の食堂で新鮮な刺身を食べる話なんて本で読んでうらやましくてたまらなかったのだ。よし、あの時の思いを今こそ！

「フールイ先輩、もう一回魚を捕ってみていただけますか」

「わかった」

「なら私も行く。風魔法が無いと集めるのは不便だからな」

「僕も行くよ。探査役がいた方がいいと思うしね」

「どうせなら皆で行きましょうか」

　全員でぞろぞろと岩場へ向かう。
　これで晩飯は刺身と貝焼きだ！　でも主食がパンだからカルパッチョとバター焼きの方がいいかな。早くも俺の頭の中、食欲と調理欲で一杯だ。

「先ほどはこの辺でしたね」

　岩場になっているところまで来た。先程の砂浜と海の色が違う。かなり深くなっているようだ。

「でも此処はさっき取った場所だしね。今、魚が多いのは……もう少し先、あの大きな岩の当たりだね」

　シモンさんの指示でそちらの岩場へ。

「ここの岩の、波が一番引いた時の２腕4mくらい下に海面に出てない岩があるんだ。衝撃を与えるならそこいいと思うよ」

「わかった」

　波が引いて海面が下がったところでドン！　と上下に響く衝撃と地響き。
　音の少し後に波で上がるのとは違う雰囲気の泡が浮き上がってきた。

「それでは寄せますわ」

　岩と岩の間に他より遥かに大きい波が押し寄せる。これは明菜先輩の魔法だ。その水流で浮き上がって来た魚やら海藻やらを風魔法でヨーコ先輩が岩場奥へと押しやる。
　
　波が引いた後、奥の岩場に海藻や魚が思い切りよく打ち上げられた。大量の海藻と混じって魚やエビ、貝まで。
　大きいブダイっぽい魚が美味そうだ。あとはやはり大きい黒鯛風なんてのも。イセエビっぽいのもいる。大漁と言っていいかもしれない。

　ただ海藻はゴミだろう。採取が終わったら海に流した方がいいだろうか。そう思いつつ何の気なしに鑑定魔法をかけてみた。

『地球の紅藻類テングサ科の海藻とほぼ同じもの』

　ふーん……えっ！　テングサだと！
　テングサと言えばやっぱり寒天だ。甘味にちょうどいい。ここは迷わず採取だ！

「この海藻も集めて下さい」

「あれは美味くなさそうだけれどな」

　ヨーコ先輩がそう言う。確かにそのまま食べるのには適さない。しかしだ。

「加工すれば面白いデザートになります！」

「なぬ！」

「この海草が？」

「ええ」

「なら採取ですわね」

　皆に魚とともにテングサも回収して貰った。これでデザート計画が一歩進展した！
　でもテングサ、これだけで足りるだろうか。どうせならこの機会に採れるだけとっておきたい。

「フールイ先輩、シモンさん。この海藻を採りたいので場所を探してもう一発お願いします」

「わかった」

「この海藻ならこの辺の深いところ何処でもあるよ。とりあえずは隣の突き出た岩場だね」

「なら移動しましょうか」

　結果、あと２回程爆発漁法を実施する事になった。
　テングサだけでなく魚も大漁を越えた状態になるのは、まあお約束。乱獲と言われそうだけれど３カ所だけだから大丈夫だろう。多分きっと。