21 / 266
第2章 甘味は何処だ ~夏休み合宿編・上~
第18話 宴の時間
しおりを挟む
「さて、今はここについて1時間位したところだ。食材はもうお金を渡してあって、毎日村の人に裏口まで持ってきて貰える契約になっている。
その食材が届いたので、そろそろ夕食の準備をしようかという処だ」
ナイス説明シンハ君。これでこの場の話題が切り替わる。
「わかった。ならちょうど一眠りして楽になったし、俺が作ろうか」
悪いが俺は食料品も扱う商店の息子だ。しかも両親や姉が遅くまで仕事しているから3日に2回は俺が夕飯を調理する。
更に現在の俺は前世での知識チートまであるのだ。
勿論俺がすすんで立候補するのは訳がある。
まずミド・リーは味音痴だ。色々世話になっているので言いたくないけれど、料理のセンスは最低レベル。
なまじ食べられない事は無いだけに業が深いという料理を量産する。
シンハ君は焼けば何でも食べられる脳筋派。なお焼かなくてもたいてい食べられる。
そしてスマッシャーアキナ先輩の料理は想像したくない。趣味的にとんでもない物を入れそうだ。
もう今日は一度倒れたし余計なイベントはいらない。楽しく美味しく食べられる夕食が欲しいのだ。
「ミタキ君は大丈夫ですか」
ナカさんがそう疑問を口にする。
「大丈夫大丈夫、ミタキは料理は上手いんだぞ」
「そうそう。一家に一人居ると助かるよね。普通の料理も変わったものも作れるしどれも美味しいよ」
付き合いの長い2人が太鼓判をおしてくれた。まあこの2人には色々食わせているからな。
「じゃあちゃっちゃと料理してくる。キッチンと材料は何処だ?」
「キッチンは向こうだ。材料はキッチンの冷蔵庫等に入れてある」
よしよし。そんな訳で俺はシンハ君の指した方向の部屋へ。
思った以上に大きく設備の整ったキッチンがあった。
この家は祭りで使うというからそれ用なのかな。何にしろ設備が整っているに越したことは無い。
巨大な冷蔵庫を見ると……ほうほう。メインは全長20センチ位ある魚が6匹、これはサバ科の何かだな。塩漬けした魚卵もある。
他にはオカヒジキっぽい野菜とさやエンドウっぽい豆とトマト等の野菜。ハムもあるけれどこれは明日の朝食に回すとしよう。
タマネギとタマゴは色々使えるな。
主食はいわゆるカンパーニュ系の大きなパンが朝食用含めて5個。調味料は油も酢も塩もマスタードもひととおり揃っている。
よし、ならアレを作るぞ! プランがまとまった。
◇◇◇
1時間程度で何とかひととおりの料理が出来た。
流石に食べ盛り8人分だと量が多い。俺1人で運ぶと大変そうだ。
こんな時は召喚呪文を使おう。
「シンハ、飯が出来たぞ。運ぶ手伝い頼む」
「おらよっと」
こいつの召喚コストは激安だ。
「何だこの皿の数、どうやって置いたらいいんだ」
「とりあえず全部運んで、テーブルの中央に集めてくれ」
「私も運ぶわよ」
「良ければ手伝います」
皆さんの暖かいご厚意で一回で運び終えた。
取り敢えず皆さん一人一人の前にあるのはスープの皿と空の平皿だけ。スープはトマトとオカヒジキ、溶きタマゴを入れたあっさり系魚出汁のスープ。
そしてテーブルの中央には
○ カット済みのパンの皿
○ カット済みのトマトやキュウリ等の野菜類
○ かりっと油多めで焼いたサバ(骨無し)
○ タマゴマヨソース、魚卵ジャガイモソース、タルタルソースの皿
○ 目玉焼き人数分
○ カットしたチーズ
○ 塩、マスタードの瓶
が並んでいる。
「これは自分の好きなようにパンに挟んで食べる料理だ。例えばキュウリ、トマト、このタルタルソース、サバ、タマゴソース、オカヒジキと挟んで、こうやって頬張る!」
実際に作りながら説明する。これは家でも作ってなかなか好評だったメニューだ。
「これはなかなか美味しそうだな」
「はじめて見る組み合わせもありますけれど、確かに美味しそうですわ」
「私もはじめてだな」
「美味しそう」
一通り感想が出た後、ヨーコ先輩が宣言。
「それでは食べよう、いただきます!」
色々取り合いがはじまった。
「ミタキの家で売っているイエローソースだよね。やっぱり美味しい!」
「こうやって色々混ぜるだけで更に美味しくなるのか……」
「ハフハフ、ハフハフ」
うん、なかなか好評のようで宜しい。
俺自身はサンドイッチ1個で充分。後はスティック状にカットしたキュウリや人参に魚卵ジャガイモソースをつけてかじかじといただく。
いわゆるタラモサラダの類似品だな。魚卵の種類がよくわからないけれど美味い。
なお自分で挟むサンドイッチは皆さんあまり経験が無い模様。
例えばヨーコ先輩が今食べているのは中身欲張りすぎて端から色々落ちている。逆にシモンさんは明太マヨ風に、タラモとタルタルをのせただけのパン作成。
確かにそれも美味しいかもしれないな。
「ミタキ君はもうパンを食べないのかしら」
野菜スティックとソースメインで食べている俺にアキナ先輩が尋ねる。
「ミタキは元々あまり食べないんだ」
「そうそう。だから私が代わりにミタキ分をいただいてと」
この辺は俺の少食を知っているし、その分容赦も無い。
それにしても皆さんよく食べる。俺はシンハやミド・リーを大食いだと思っていたのだが、皆さんそれくらい食べる模様だ。
もう少しパンを切ってこよう。俺はキッチンへと向かった。
◇◇◇
「美味かったな、今日の夕食」
「ええ」
ヨーコ先輩の台詞にアキナ先輩が頷く。
「うちの料理長はなかなかの腕だと思っていたのですが、発想の斬新さはミタキ君の方が上のようです。今の食べ方ははじめてですけれど、とても美味しかったです」
「うちもだな。料理長に教えてやりたい位だ」
ちょっと待って欲しい。
「そんな大貴族の料理長レベルと比べないで下さいよ」
「いやいや、今食べたものは確かに一見普通のサンドイッチ風に見えたけれど、魚を挟んだりソースが独自だったり、何処の料理店でも食べた事が無い味だったな」
「私もそう感じます」
「同意」
非常に評判はいいのだけれど、俺としてはまだ何か足りない気がする。
ちょっと考えて、そして気づいた。そうだ、デザートだ。
この国のこの地方には甘味というものが無い。強いて言えばはちみつをパンに塗って食べる位だ。
だから料理はどうしても塩気と肉類のコクで食べさせるものが中心になる。酢を使う料理もそれほど無いし。
何か甘味になるものは無いだろうか。常食するには蜂蜜は少し高価すぎる。サトウキビか砂糖大根かが生えていると色々ありがたいのだけれど。
砂糖大根は元々は地中海産だっけか。ならこの辺に似たような種類のものが生えていてもおかしくない。
明日は色々その辺を探してみよう。勿論体力の及ぶ範囲で、だけれども。
幸いミド・リーがいるから多少無理しても何とかなるかな。シンハ君もいることだし。
その食材が届いたので、そろそろ夕食の準備をしようかという処だ」
ナイス説明シンハ君。これでこの場の話題が切り替わる。
「わかった。ならちょうど一眠りして楽になったし、俺が作ろうか」
悪いが俺は食料品も扱う商店の息子だ。しかも両親や姉が遅くまで仕事しているから3日に2回は俺が夕飯を調理する。
更に現在の俺は前世での知識チートまであるのだ。
勿論俺がすすんで立候補するのは訳がある。
まずミド・リーは味音痴だ。色々世話になっているので言いたくないけれど、料理のセンスは最低レベル。
なまじ食べられない事は無いだけに業が深いという料理を量産する。
シンハ君は焼けば何でも食べられる脳筋派。なお焼かなくてもたいてい食べられる。
そしてスマッシャーアキナ先輩の料理は想像したくない。趣味的にとんでもない物を入れそうだ。
もう今日は一度倒れたし余計なイベントはいらない。楽しく美味しく食べられる夕食が欲しいのだ。
「ミタキ君は大丈夫ですか」
ナカさんがそう疑問を口にする。
「大丈夫大丈夫、ミタキは料理は上手いんだぞ」
「そうそう。一家に一人居ると助かるよね。普通の料理も変わったものも作れるしどれも美味しいよ」
付き合いの長い2人が太鼓判をおしてくれた。まあこの2人には色々食わせているからな。
「じゃあちゃっちゃと料理してくる。キッチンと材料は何処だ?」
「キッチンは向こうだ。材料はキッチンの冷蔵庫等に入れてある」
よしよし。そんな訳で俺はシンハ君の指した方向の部屋へ。
思った以上に大きく設備の整ったキッチンがあった。
この家は祭りで使うというからそれ用なのかな。何にしろ設備が整っているに越したことは無い。
巨大な冷蔵庫を見ると……ほうほう。メインは全長20センチ位ある魚が6匹、これはサバ科の何かだな。塩漬けした魚卵もある。
他にはオカヒジキっぽい野菜とさやエンドウっぽい豆とトマト等の野菜。ハムもあるけれどこれは明日の朝食に回すとしよう。
タマネギとタマゴは色々使えるな。
主食はいわゆるカンパーニュ系の大きなパンが朝食用含めて5個。調味料は油も酢も塩もマスタードもひととおり揃っている。
よし、ならアレを作るぞ! プランがまとまった。
◇◇◇
1時間程度で何とかひととおりの料理が出来た。
流石に食べ盛り8人分だと量が多い。俺1人で運ぶと大変そうだ。
こんな時は召喚呪文を使おう。
「シンハ、飯が出来たぞ。運ぶ手伝い頼む」
「おらよっと」
こいつの召喚コストは激安だ。
「何だこの皿の数、どうやって置いたらいいんだ」
「とりあえず全部運んで、テーブルの中央に集めてくれ」
「私も運ぶわよ」
「良ければ手伝います」
皆さんの暖かいご厚意で一回で運び終えた。
取り敢えず皆さん一人一人の前にあるのはスープの皿と空の平皿だけ。スープはトマトとオカヒジキ、溶きタマゴを入れたあっさり系魚出汁のスープ。
そしてテーブルの中央には
○ カット済みのパンの皿
○ カット済みのトマトやキュウリ等の野菜類
○ かりっと油多めで焼いたサバ(骨無し)
○ タマゴマヨソース、魚卵ジャガイモソース、タルタルソースの皿
○ 目玉焼き人数分
○ カットしたチーズ
○ 塩、マスタードの瓶
が並んでいる。
「これは自分の好きなようにパンに挟んで食べる料理だ。例えばキュウリ、トマト、このタルタルソース、サバ、タマゴソース、オカヒジキと挟んで、こうやって頬張る!」
実際に作りながら説明する。これは家でも作ってなかなか好評だったメニューだ。
「これはなかなか美味しそうだな」
「はじめて見る組み合わせもありますけれど、確かに美味しそうですわ」
「私もはじめてだな」
「美味しそう」
一通り感想が出た後、ヨーコ先輩が宣言。
「それでは食べよう、いただきます!」
色々取り合いがはじまった。
「ミタキの家で売っているイエローソースだよね。やっぱり美味しい!」
「こうやって色々混ぜるだけで更に美味しくなるのか……」
「ハフハフ、ハフハフ」
うん、なかなか好評のようで宜しい。
俺自身はサンドイッチ1個で充分。後はスティック状にカットしたキュウリや人参に魚卵ジャガイモソースをつけてかじかじといただく。
いわゆるタラモサラダの類似品だな。魚卵の種類がよくわからないけれど美味い。
なお自分で挟むサンドイッチは皆さんあまり経験が無い模様。
例えばヨーコ先輩が今食べているのは中身欲張りすぎて端から色々落ちている。逆にシモンさんは明太マヨ風に、タラモとタルタルをのせただけのパン作成。
確かにそれも美味しいかもしれないな。
「ミタキ君はもうパンを食べないのかしら」
野菜スティックとソースメインで食べている俺にアキナ先輩が尋ねる。
「ミタキは元々あまり食べないんだ」
「そうそう。だから私が代わりにミタキ分をいただいてと」
この辺は俺の少食を知っているし、その分容赦も無い。
それにしても皆さんよく食べる。俺はシンハやミド・リーを大食いだと思っていたのだが、皆さんそれくらい食べる模様だ。
もう少しパンを切ってこよう。俺はキッチンへと向かった。
◇◇◇
「美味かったな、今日の夕食」
「ええ」
ヨーコ先輩の台詞にアキナ先輩が頷く。
「うちの料理長はなかなかの腕だと思っていたのですが、発想の斬新さはミタキ君の方が上のようです。今の食べ方ははじめてですけれど、とても美味しかったです」
「うちもだな。料理長に教えてやりたい位だ」
ちょっと待って欲しい。
「そんな大貴族の料理長レベルと比べないで下さいよ」
「いやいや、今食べたものは確かに一見普通のサンドイッチ風に見えたけれど、魚を挟んだりソースが独自だったり、何処の料理店でも食べた事が無い味だったな」
「私もそう感じます」
「同意」
非常に評判はいいのだけれど、俺としてはまだ何か足りない気がする。
ちょっと考えて、そして気づいた。そうだ、デザートだ。
この国のこの地方には甘味というものが無い。強いて言えばはちみつをパンに塗って食べる位だ。
だから料理はどうしても塩気と肉類のコクで食べさせるものが中心になる。酢を使う料理もそれほど無いし。
何か甘味になるものは無いだろうか。常食するには蜂蜜は少し高価すぎる。サトウキビか砂糖大根かが生えていると色々ありがたいのだけれど。
砂糖大根は元々は地中海産だっけか。ならこの辺に似たような種類のものが生えていてもおかしくない。
明日は色々その辺を探してみよう。勿論体力の及ぶ範囲で、だけれども。
幸いミド・リーがいるから多少無理しても何とかなるかな。シンハ君もいることだし。
応援ありがとうございます!
15
お気に入りに追加
2,158
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる