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第2章 甘味は何処だ ~夏休み合宿編・上~
第17話 夏休みの始まり
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夏休みの旅行は予定より5日遅れた。シンハ君が期末テストの算術と論理学で赤点となり、補習と再テストを受けたからである。
仕方無いのでシンハ君を除く7人で4回分位のスキンケアグッズを生産した。
この間のシンハ君の取り分は場所代だけという事で半人分。
奴は『折角の小遣い稼ぎの機会が!』と悔しがった。
しかしこれも自業自得。赤点を取る奴が悪い。
なお今回は酸化を防ぐため石鹸は収納袋を作り、中を窒素充填してある。
うちの親とかミド・リーの親とかには売り出す日まで冷蔵庫保管もお願いした。幸いどっちの家も職業柄冷蔵庫は大きいのを置いてある。
ちなみに冷蔵庫とは魔力をかける事により中に大きめの氷が数カ所出来て、2日くらいは中が涼しいままで持つという代物。
これである程度は新鮮さを保てる筈だ。
さて、シンハ君が無事再テストに合格した翌朝、早速旅行に出発。8人なので中型馬車を1台借り切るという豪勢な旅行だ。
まあ往復の馬車と食費はスキンケアグッズの儲けで充分ペイ出来るけれど。
女性陣の皆さんの荷物が多いので馬車内は狭い。
なお俺の持ち物は上着下着タオル1組を小型のバッグ1個に入れただけ。シンハ君も似たような感じ。
それがミド・リーあたりになるとバッグが一回り大きくなる。フールイ先輩も同じ程度。そしてナカさんシモンさんは同等の大きさのバッグに俺達と同じ程度の小型バッグも付く。
大貴族の御令嬢2人となると更に大きいバッグを2個持参。召使いに持ってこさせるような荷物を持ち込んでどうする気だ。
まあ口でも実戦でも勝てないので何も言わないけれど。
さて結局この面子だけの旅行は決行されてしまった。俺以外誰も疑問も不安も感じないようなので仕方ない。
でも今、俺はそんな疑問や不安より遥かに恐ろしいものと戦っている。乗り物酔いという奴だ。
馬車の乗り心地というのは正直あまり良くない。俺もこの世界の住民だしそれが普通だとはわかっている。
でも石畳の道を鉄の輪がついた車輪の乗り物が走る様子を想像して欲しい。無論サスペンションなんて優雅なものはついていない。
そんな環境で数時間過ごすとどうなるか。それが今の俺の状態である。
ちなみに俺以外は皆さん平気なようだ。
シンハ君は頑丈だから何やっても大丈夫。でもそれ以外の皆さんも平気な顔をしていやがる。
ミド・リーが色々丈夫なのは昔から良く知っているが、ナカさんシモンさんフールイ先輩にヨーコ先輩アキナ先輩まで。
何でと言いたいがもうそんな気力はない。
そんな訳で格好が悪いが馬車最後方から顔だけ出して外へ噴出させて貰う。ウゲゲゲゲッ、オエエッ、ゼイ、ゼイ、ゼイ……
「もう、相変わらずよね、ミタキは」
そう言いつつも背中をさすってくれるミド・リー、申し訳無い。
「清拭魔法!」
口の中と回りをナカさんの魔法で綺麗にして貰った。これもまた申し訳無い。何せこれで噴出3回目だ。
「こうなったら仕方無いわね。馬車の一番前、あそこが揺れが一番ましだからそっちへ移動よ」
ミド・リーはそう言う。
「でもまだ胸が落ち着かない状態だぜ。後の方が安ぜ……ううっ」
幸い吐いたばかりなので何も出ない。
「いいから。ナカさんごめんね清拭魔法もう1回お願い」
「わかりました。でも大丈夫ですか」
「こいつとは長い付き合いだからね。対処法もあるわよ」
何だろう。俺はそんな対処法知らない。
ミド・リーに追い立てられるように前へと行く。
「先輩すみません、失礼します」
「大丈夫か」
「私が何とかしますから」
そんな訳でミド・リーとともに一番前へ。
「そう、そこで後の荷物袋にもたれた姿勢で。いくわよ、強制睡眠魔法!」
あ、そう言えば以前もこんな事があったようななかったような……
そう思い出す前に俺の意識は途切れた。
◇◇◇
見えるのはいつもの天井……ではない。いつもと違う部屋の、でも似たような木の天井。ベッドも俺のではないベッドだ。
徐々に記憶が戻ってくる。そうだ、俺は荷馬車の中で強制睡眠魔法を撃ち込まれたんだ。
起き上がってまわりを見る。そんなに大きくない部屋に、シングルベッドが2台置いてあるだけの部屋だ。客用の寝室なのかな。
部屋を出て廊下をちょっと歩くと広間に出た。
「おっとミタキ、大丈夫か?」
シンハ君が気づいて声をかけてくれる。
「ああ、済まなかったな。荷物や色々、俺まで運んで貰って」
「いや、俺は荷物を運ぶので精一杯だった。ミタキを運んだのはミド・リーだ」
何だと!
「昔からいつもの事じゃない」
そう言われると確かに色々憶えはある。古くは5歳くらいの時、外で遊んでいて軽い熱中病で倒れた時とか。最近は学校でマラソンの授業があって途中で倒れた時とか。
そういった場合、睡眠魔法と治療魔法をかけられながらミド・リーに家の治療院なり学校の保健室なりに連れて行ってもらったというか搬送されている。
俺は意識が飛んでいるので覚えていないけれど。
でも今はきっと体重が3割くらいは違う筈だ。俺は男だし身長も並程度、一方でミド・リーは小柄細めだから。
「肩と腰を使って器用に身体に乗っけて運んでいました」
「流石幼馴染みだよな」
ナカさんとシモンさんがそう言うけれど、
「これも王道の幼馴染みから始まる愛というものでしょうか」
そう言ってニヤニヤしているアキナ先輩の台詞は断固として否定するべきだろう。
「違いますよ」
「違うからね」
見事にミド・リーとハモってしまった。いかんいかん。
「確かに幼馴染みだけれど、たまたま近くに住んでいて学年一緒で家が治療院だから、必然的にミタキが倒れた場合の措置は私の役目になっただけだから」
このミド・リーの台詞が全てだと思う。
「麗しき友情ってやつかな」
ヨーコ先輩、台詞はともかくにやにやしている表情が不穏だ。絶対台詞と違う事を考えているだろうと思う。
藪蛇になりそうだから問いただしたりはしないけれど。
仕方無いのでシンハ君を除く7人で4回分位のスキンケアグッズを生産した。
この間のシンハ君の取り分は場所代だけという事で半人分。
奴は『折角の小遣い稼ぎの機会が!』と悔しがった。
しかしこれも自業自得。赤点を取る奴が悪い。
なお今回は酸化を防ぐため石鹸は収納袋を作り、中を窒素充填してある。
うちの親とかミド・リーの親とかには売り出す日まで冷蔵庫保管もお願いした。幸いどっちの家も職業柄冷蔵庫は大きいのを置いてある。
ちなみに冷蔵庫とは魔力をかける事により中に大きめの氷が数カ所出来て、2日くらいは中が涼しいままで持つという代物。
これである程度は新鮮さを保てる筈だ。
さて、シンハ君が無事再テストに合格した翌朝、早速旅行に出発。8人なので中型馬車を1台借り切るという豪勢な旅行だ。
まあ往復の馬車と食費はスキンケアグッズの儲けで充分ペイ出来るけれど。
女性陣の皆さんの荷物が多いので馬車内は狭い。
なお俺の持ち物は上着下着タオル1組を小型のバッグ1個に入れただけ。シンハ君も似たような感じ。
それがミド・リーあたりになるとバッグが一回り大きくなる。フールイ先輩も同じ程度。そしてナカさんシモンさんは同等の大きさのバッグに俺達と同じ程度の小型バッグも付く。
大貴族の御令嬢2人となると更に大きいバッグを2個持参。召使いに持ってこさせるような荷物を持ち込んでどうする気だ。
まあ口でも実戦でも勝てないので何も言わないけれど。
さて結局この面子だけの旅行は決行されてしまった。俺以外誰も疑問も不安も感じないようなので仕方ない。
でも今、俺はそんな疑問や不安より遥かに恐ろしいものと戦っている。乗り物酔いという奴だ。
馬車の乗り心地というのは正直あまり良くない。俺もこの世界の住民だしそれが普通だとはわかっている。
でも石畳の道を鉄の輪がついた車輪の乗り物が走る様子を想像して欲しい。無論サスペンションなんて優雅なものはついていない。
そんな環境で数時間過ごすとどうなるか。それが今の俺の状態である。
ちなみに俺以外は皆さん平気なようだ。
シンハ君は頑丈だから何やっても大丈夫。でもそれ以外の皆さんも平気な顔をしていやがる。
ミド・リーが色々丈夫なのは昔から良く知っているが、ナカさんシモンさんフールイ先輩にヨーコ先輩アキナ先輩まで。
何でと言いたいがもうそんな気力はない。
そんな訳で格好が悪いが馬車最後方から顔だけ出して外へ噴出させて貰う。ウゲゲゲゲッ、オエエッ、ゼイ、ゼイ、ゼイ……
「もう、相変わらずよね、ミタキは」
そう言いつつも背中をさすってくれるミド・リー、申し訳無い。
「清拭魔法!」
口の中と回りをナカさんの魔法で綺麗にして貰った。これもまた申し訳無い。何せこれで噴出3回目だ。
「こうなったら仕方無いわね。馬車の一番前、あそこが揺れが一番ましだからそっちへ移動よ」
ミド・リーはそう言う。
「でもまだ胸が落ち着かない状態だぜ。後の方が安ぜ……ううっ」
幸い吐いたばかりなので何も出ない。
「いいから。ナカさんごめんね清拭魔法もう1回お願い」
「わかりました。でも大丈夫ですか」
「こいつとは長い付き合いだからね。対処法もあるわよ」
何だろう。俺はそんな対処法知らない。
ミド・リーに追い立てられるように前へと行く。
「先輩すみません、失礼します」
「大丈夫か」
「私が何とかしますから」
そんな訳でミド・リーとともに一番前へ。
「そう、そこで後の荷物袋にもたれた姿勢で。いくわよ、強制睡眠魔法!」
あ、そう言えば以前もこんな事があったようななかったような……
そう思い出す前に俺の意識は途切れた。
◇◇◇
見えるのはいつもの天井……ではない。いつもと違う部屋の、でも似たような木の天井。ベッドも俺のではないベッドだ。
徐々に記憶が戻ってくる。そうだ、俺は荷馬車の中で強制睡眠魔法を撃ち込まれたんだ。
起き上がってまわりを見る。そんなに大きくない部屋に、シングルベッドが2台置いてあるだけの部屋だ。客用の寝室なのかな。
部屋を出て廊下をちょっと歩くと広間に出た。
「おっとミタキ、大丈夫か?」
シンハ君が気づいて声をかけてくれる。
「ああ、済まなかったな。荷物や色々、俺まで運んで貰って」
「いや、俺は荷物を運ぶので精一杯だった。ミタキを運んだのはミド・リーだ」
何だと!
「昔からいつもの事じゃない」
そう言われると確かに色々憶えはある。古くは5歳くらいの時、外で遊んでいて軽い熱中病で倒れた時とか。最近は学校でマラソンの授業があって途中で倒れた時とか。
そういった場合、睡眠魔法と治療魔法をかけられながらミド・リーに家の治療院なり学校の保健室なりに連れて行ってもらったというか搬送されている。
俺は意識が飛んでいるので覚えていないけれど。
でも今はきっと体重が3割くらいは違う筈だ。俺は男だし身長も並程度、一方でミド・リーは小柄細めだから。
「肩と腰を使って器用に身体に乗っけて運んでいました」
「流石幼馴染みだよな」
ナカさんとシモンさんがそう言うけれど、
「これも王道の幼馴染みから始まる愛というものでしょうか」
そう言ってニヤニヤしているアキナ先輩の台詞は断固として否定するべきだろう。
「違いますよ」
「違うからね」
見事にミド・リーとハモってしまった。いかんいかん。
「確かに幼馴染みだけれど、たまたま近くに住んでいて学年一緒で家が治療院だから、必然的にミタキが倒れた場合の措置は私の役目になっただけだから」
このミド・リーの台詞が全てだと思う。
「麗しき友情ってやつかな」
ヨーコ先輩、台詞はともかくにやにやしている表情が不穏だ。絶対台詞と違う事を考えているだろうと思う。
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