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第1章 次の金儲け案
第12話 長い長い御説明
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「これはこれは。なかなか本格的な錬金術師の研究室だな」
ヨーコ先輩は中を見回しながら言う。
窓際では今も水酸化ナトリウム水溶液を生産中。出たガスは貯めておき、俺がいるときに熱反応させて塩化水素ガスにして、水に溶かして塩酸にする。
他にはは石鹸を作る時に使った大きな鍋。更に桶とかビーカー各種とか蒸留用フラスコとかが並んでいる訳だ。
「ここで動いているのは何をしているの」
「食塩水を分解して水酸化ナトリウム水溶液を作っているんだ。有毒ガスが出るから高熱で反応させて水に溶かして塩酸にしている」
ミド・リーの質問に答えたと思ったら、すぐにアキナ先輩から次の質問が飛んできた。
「水酸化ナトリウム水溶液とか塩酸とか、聞き覚えの無い名前ですがどのようなものなのでしょうか?」
「石鹸で使うのは水酸化ナトリウム水溶液の方です。塩酸の方は毒ガスが出ないように取り敢えず収集している状態になります」
「それで、あの品々はどうやって作るんですの」
アキナ先輩の質問は更に続く。
「今は無理です。化粧水まで含めたら2日がかりの作業になりますから」
「それではあの品々を作る課程を、最初から材料を含めて説明していただけますか」
いや先輩、ちょっと待って欲しい。
「アレは俺やシンハの大事な商売道具です。だから教える訳にはいきません」
俺だけで無くシンハ君もうんうん頷き同意する。
アキナ先輩は怪しい笑みを浮かべつつ頷いた。
「大丈夫ですわ。別に只で貰おうとか利益を横取りしようとかいうのではありませんから。むしろ欲しい人に行き渡るようお手伝いをしたい位ですわ。それでいいですよね、皆さん」
「そうだね。私もそう思う」
おっと、予想外の台詞が出た。
考えて見ればアキナ先輩は金持ちだし、こせこせ金儲けしようとは思わないよな。ヨーコ先輩も同じ。
あとは良く知らないけれどどうなんだろう。ミド・リーあたりは一攫千金とか狙いそうだけれど。
「ヨーコ先輩がそうおっしゃるなら」
「同意。アレが無いとまた髪がまとまらない」
「同じくだよ。出来ればお手伝いするからあれを欲しいな」
「私もその辺で妥協していいわ」
お、本当か。ならばと皆さんが加わる場合の損得を考えてみる。
どうせ今後の生産は俺とシンハ君だけでは間に合わない。なら協力者を求めてもいいだろう。
どうせここまでバレてしまったんだ。なら巻き込んでしまえ。
「わかった。なら最初の部分から説明する」
「いいのか、ミタキ」
こっちを見たシンハ君に俺は頷く。
「どうせ2人では手が足りなくなるんだ。これくらいの人数はいた方がいいだろう」
そんな訳でまずは電池用の硫酸を作るところから説明開始だ。
「最初から説明する。まずはここで硫黄と硝石を高熱で反応させる。俺の生活魔法だとごく少量ずつしか反応させられないけれど。これで出来た気体を水にとかせば硫酸という液体が出来る。
なおこの気体は毒だし水と反応させるときに高熱が出るから注意が必要だ。どのみち俺の日常魔法では少しずつしか出来ないけれどさ。この硫酸を頑張って作って集める」
次は硫酸銅水溶液を作る。こっちはそのままの材料があったので簡単だ。
「この胆礬の青いところを水に溶かせばこの青色の硫酸銅水溶液が出来る。これを取っておく」
次は電池のところだ。
「さっき出来た硫酸に亜鉛を少しだけ溶かして、こっちの素焼きの容れ物の外側に入れる。そしてこっちにさっき作った青色の硫酸銅水溶液を入れる訳だ。加えるだけなら亜鉛の方は溶かさなくても大丈夫だ。これで水酸化ナトリウムを発生させる装置のうち、この部分は完成だ」
ダニエル電池である。この世界はまだ電気というものが無いので装置という言い方で誤魔化す。
俺は今度は食塩水を電気分解する装置の方へと移動する。
「そして今度はこの装置。この中に食塩水を入れる。この液体に浸っている部分は木炭を魔法で思い切り固めたものな。それで出た気体はこの竹パイプでこっちへ導いて、この水中に逆さにした箱の中へと閉じ込める。
そしてここから出る気体に別のものが混じりはじめたらこの装置を外し、中の液体をこの瓶に入れ、また新しい食塩水を入れて繰り返す」
ここで塩酸として処理する方の説明をしておく。
「この気体はそのまま流すと危険だから、こっちの気体と熱で反応させた後、水に溶かす。この時も高熱が出るから少しずつ。
この液体は今のところ使わない。でも危険物ではあるので取り敢えず保存という訳だ」
今度は水酸化ナトリウム水溶液の方だ
「一方で瓶に入れたこっちの液体。これが水酸化ナトリウム水溶液、石鹸を作る時に必要になるものだ」
「ちょっと待って」
ミド・リーがストップをかけた。
「随分ややこしいのね。これがまだまだ続くわけ?」
「ここまでが下準備だな。ここからがやっと石鹸を作る工程になる」
「こんな長い工程をどうやって考えたのですか?」
ナカさんも半ば疲れた表情で聞いてきた。
「ここまではこの水酸化ナトリウム水溶液を作る為の課程なんだ。石鹸を作るのにどうしても必要だからこうやって作り出した」
「まあいい。続けてくれ」
そう言うヨーコ先輩も若干消化不良という表情。でも折角だから続けさせて貰おう。
「ここで石鹸の材料となる油を用意する。今回使ったのは牛脂だ。安いし成分的に肌にいいからさ。買った牛脂に予め水と熱を加えて、不純物が少ない脂にしておく」
「そしてこの牛脂に……」
この辺からはシンハ君とやった作業だ。
ヨーコ先輩は中を見回しながら言う。
窓際では今も水酸化ナトリウム水溶液を生産中。出たガスは貯めておき、俺がいるときに熱反応させて塩化水素ガスにして、水に溶かして塩酸にする。
他にはは石鹸を作る時に使った大きな鍋。更に桶とかビーカー各種とか蒸留用フラスコとかが並んでいる訳だ。
「ここで動いているのは何をしているの」
「食塩水を分解して水酸化ナトリウム水溶液を作っているんだ。有毒ガスが出るから高熱で反応させて水に溶かして塩酸にしている」
ミド・リーの質問に答えたと思ったら、すぐにアキナ先輩から次の質問が飛んできた。
「水酸化ナトリウム水溶液とか塩酸とか、聞き覚えの無い名前ですがどのようなものなのでしょうか?」
「石鹸で使うのは水酸化ナトリウム水溶液の方です。塩酸の方は毒ガスが出ないように取り敢えず収集している状態になります」
「それで、あの品々はどうやって作るんですの」
アキナ先輩の質問は更に続く。
「今は無理です。化粧水まで含めたら2日がかりの作業になりますから」
「それではあの品々を作る課程を、最初から材料を含めて説明していただけますか」
いや先輩、ちょっと待って欲しい。
「アレは俺やシンハの大事な商売道具です。だから教える訳にはいきません」
俺だけで無くシンハ君もうんうん頷き同意する。
アキナ先輩は怪しい笑みを浮かべつつ頷いた。
「大丈夫ですわ。別に只で貰おうとか利益を横取りしようとかいうのではありませんから。むしろ欲しい人に行き渡るようお手伝いをしたい位ですわ。それでいいですよね、皆さん」
「そうだね。私もそう思う」
おっと、予想外の台詞が出た。
考えて見ればアキナ先輩は金持ちだし、こせこせ金儲けしようとは思わないよな。ヨーコ先輩も同じ。
あとは良く知らないけれどどうなんだろう。ミド・リーあたりは一攫千金とか狙いそうだけれど。
「ヨーコ先輩がそうおっしゃるなら」
「同意。アレが無いとまた髪がまとまらない」
「同じくだよ。出来ればお手伝いするからあれを欲しいな」
「私もその辺で妥協していいわ」
お、本当か。ならばと皆さんが加わる場合の損得を考えてみる。
どうせ今後の生産は俺とシンハ君だけでは間に合わない。なら協力者を求めてもいいだろう。
どうせここまでバレてしまったんだ。なら巻き込んでしまえ。
「わかった。なら最初の部分から説明する」
「いいのか、ミタキ」
こっちを見たシンハ君に俺は頷く。
「どうせ2人では手が足りなくなるんだ。これくらいの人数はいた方がいいだろう」
そんな訳でまずは電池用の硫酸を作るところから説明開始だ。
「最初から説明する。まずはここで硫黄と硝石を高熱で反応させる。俺の生活魔法だとごく少量ずつしか反応させられないけれど。これで出来た気体を水にとかせば硫酸という液体が出来る。
なおこの気体は毒だし水と反応させるときに高熱が出るから注意が必要だ。どのみち俺の日常魔法では少しずつしか出来ないけれどさ。この硫酸を頑張って作って集める」
次は硫酸銅水溶液を作る。こっちはそのままの材料があったので簡単だ。
「この胆礬の青いところを水に溶かせばこの青色の硫酸銅水溶液が出来る。これを取っておく」
次は電池のところだ。
「さっき出来た硫酸に亜鉛を少しだけ溶かして、こっちの素焼きの容れ物の外側に入れる。そしてこっちにさっき作った青色の硫酸銅水溶液を入れる訳だ。加えるだけなら亜鉛の方は溶かさなくても大丈夫だ。これで水酸化ナトリウムを発生させる装置のうち、この部分は完成だ」
ダニエル電池である。この世界はまだ電気というものが無いので装置という言い方で誤魔化す。
俺は今度は食塩水を電気分解する装置の方へと移動する。
「そして今度はこの装置。この中に食塩水を入れる。この液体に浸っている部分は木炭を魔法で思い切り固めたものな。それで出た気体はこの竹パイプでこっちへ導いて、この水中に逆さにした箱の中へと閉じ込める。
そしてここから出る気体に別のものが混じりはじめたらこの装置を外し、中の液体をこの瓶に入れ、また新しい食塩水を入れて繰り返す」
ここで塩酸として処理する方の説明をしておく。
「この気体はそのまま流すと危険だから、こっちの気体と熱で反応させた後、水に溶かす。この時も高熱が出るから少しずつ。
この液体は今のところ使わない。でも危険物ではあるので取り敢えず保存という訳だ」
今度は水酸化ナトリウム水溶液の方だ
「一方で瓶に入れたこっちの液体。これが水酸化ナトリウム水溶液、石鹸を作る時に必要になるものだ」
「ちょっと待って」
ミド・リーがストップをかけた。
「随分ややこしいのね。これがまだまだ続くわけ?」
「ここまでが下準備だな。ここからがやっと石鹸を作る工程になる」
「こんな長い工程をどうやって考えたのですか?」
ナカさんも半ば疲れた表情で聞いてきた。
「ここまではこの水酸化ナトリウム水溶液を作る為の課程なんだ。石鹸を作るのにどうしても必要だからこうやって作り出した」
「まあいい。続けてくれ」
そう言うヨーコ先輩も若干消化不良という表情。でも折角だから続けさせて貰おう。
「ここで石鹸の材料となる油を用意する。今回使ったのは牛脂だ。安いし成分的に肌にいいからさ。買った牛脂に予め水と熱を加えて、不純物が少ない脂にしておく」
「そしてこの牛脂に……」
この辺からはシンハ君とやった作業だ。
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