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第4章 廃坑調査

第50話 最初の分岐にて

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「それでは中に入りましょう。倒した魔物の魔石や、素材になりそうな死骸は私が回収します。照明魔法も私が起動します。ですので皆さんは警戒と魔物討伐、ルート開拓に専念して下さい」

「わかったニャ」

「わかりました」

「わかりました」

 俺としてもそうしてくれると助かる。
 特に今のようにある程度の範囲の敵を一気に倒した場合は。

 あちこちに感電して倒れた魔物の死骸がある。
 魔石は魔力反応があるから、見逃す事はない。

 しかしこれだけ死骸があると、手動で回収すると時間が掛かる。
 転送魔法を使うとその分魔力を消耗する。
 この先でも魔法で攻撃をする必要があるなら、魔力は出来るだけ残しておいた方がいい。

 それに回収作業をしなければ、その分魔力探査と透視魔法による索敵に集中できる。

「それニャあ、基本的に本坑を真っ直ぐ進むのニャ。何かありそうならエイダン、よろしくなのニャ」

「わかりました」

 ミーニャさんにあわせて、ゆっくり歩き出す。
 電撃が通った60m程度の間は魔物も魔獣もいない。
 しかし、その先は。

「60m位先から小さめの魔物反応がそこここにあります。ポイズンスライムとポイズントードですけれど、またある程度近づいたら電撃でいいでしょうか」

「そうしてくれると楽なのニャ。ポイスラもポイトドも毒を飛ばしてくるので面倒なのニャ。クリスタがいるから解毒は問題ニャいけど、毒に触れると装備とお肌が荒れるのニャ」

 ミーニャさん的にはまだ全然余裕っぽい感じだ。
 お肌が荒れるのを気にする程度という事だから。

 電撃魔法を放って、50m位進んでを更に⒉回。
 入口から150m程度進んだところで、様子が違う場所に出た。
 ちょっとした広場のようになっていて、道が3つに分かれている。

 右がこの鉱山初期の採掘坑で、廃坑になった頃は倉庫代わりになっていた場所。
 中央が廃坑当時に掘っていた採掘場所へ続く坑道。
 左がドワーフの居住区や生活関連施設を経て、カサクラの村に出る洞窟。
 ただしカサクラの村への出口は急な下り階段で、かつ今は閉鎖されている筈。

 進むべきなのは中央の坑道だ。
 ただし魔物や魔獣に挟撃されないよう、左右の坑道の先に魔物や魔獣がいないか確認する必要がある。

「エイダン、どうかニャ、左右は」

 右は何も反応が無い。
 問題は左だ。小さい反応が多数ある。これは……

「左の居住区にゾンビバットがいるようです。数は30匹以上。ただ居住区は個室が多くて、雷撃魔法で一掃は無理な感じです」

 洞窟内に居住区を設けるのはドワーフの習性だ。
 少なくとも前世ではそうだった。
 そして居住区は店だの家だのといった小洞窟があちこちに掘られているので、ひとつひとつを回ると手間がかかる。

「わかったのニャ。なら私とジョンの出番なのニャ。バット系の魔物は敵の気配が一定以上近づくと飛んで、攻撃か逃げるかしてくるのニャ。それを利用して叩くニャ」

 つまり近づいて攻撃という訳か。
 でも逃げられたら面倒だよな。
 そう思ったら更にミーニャさんが説明を追加する。

「逃げるバットにはジョンに弓で攻撃して欲しいのニャ。必ずしも当てなくていいのニャ。こちらが攻撃する意図があるとバットにわからせればいいのニャ。そうすれば逃げようとしたバットも逃げずに攻撃してくるのニャ」

「わかりました。それで弓で攻撃したバットが近づいてきた場合は、槍に持ち替えればいいですか」

 確かに弓で攻撃されたバットは、第一にジョンを狙ってくるだろう。
 そして飛んでいる敵に矢を当てるのは難しそうだ。
 そう思ったのだが、ミーニャさんは首を横に振った。

「ジョンは弓に専念して欲しいのニャ。そのかわり近づいたバットは必ず私が倒すのニャ。たかだか100匹以下なら問題無いのニャ」

 100匹が一斉に飛んで襲ってくるって、結構な修羅場ではないのだろうか。
 まあ今回は多くても40匹程度だけれど。

「わかりました」

 大丈夫なのだろうか、ジョンは。
 クリスタさんが何も言わない時点で、問題はないだろうと思うけれど。

「それじゃジョン、槍を貸して欲しいのニャ。もう1本の槍もエイダンに持ってきて貰っているのニャが、そっちの長い槍の方がバットを相手にしやすいのニャ」

 おっと、それじゃジョンが弓以外武器無しになってしまう。
 そこは近接戦用に何かあった方が安心だろう。

 でもミーニャさん用の武器は、基本的にジョンには重すぎる。
 となると、ちょうどいいのは……
 
 俺は取り敢えず一番自衛用に良さそうな刃物を、魔法収納アイテムボックスから出す。

「近接戦闘用が無しじゃ何だから、これを貸すよ」
 
 渡したのはソウギョを捌くために作った出刃包丁だ。
 一応鞘もついているし、ベルトに留められるようにもなっている。
 それに刃物としての性能は、その辺のナイフより上の筈だ。

「悪いな、それじゃ借りていく」

「ああ。 そっちは任せた」

 ミーニャさんは俺とジョンのやりとりを見て、そして頷いた。

「それじゃ2人で、ちょいちょいとバットを討伐してくるのニャ。そう時間はかからニャいと思うから、のんびりここで待っていてほしいのにゃ」

 そう言って、そして去って行く2人を見て、俺は思った。
 いいのだろうか、後衛を置いて前衛だけで出て行くなんてと。

 しかし後方の魔物は全滅させている。
 前方は真っ直ぐに近い坑道なので、俺の電撃魔法が使えるだろう。

 そもそもクリスタさんがいる時点でどうにでもなるような気がする。
 だから置いて行かれた後衛が危険という事は多分、無い。

 そしてジョン達の方も、多分問題ないのだろう。
 ミーニャさん、バット100匹以下なら全然余裕という感じだ。
 ジョンがいなくてもどうにでもなる位に。

 それでもジョンを連れて行くのは、こういった場でどれくらい戦力になるか確かめるためだろう。
 ジョンもそのことは、わかっているだろうけれど。
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