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拾遺録4 帰りたい場所
6 協議会⑵ 参加者の確認と質疑応答開始(ラツィオ新報 エミル記者視点)
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さて、まもなく会議再開だ。
僕は改めて参加者を確認する。
国王庁教育局の出席者は変わらず、エクセスタ伯爵とエミリア管理官のままだ。
報告者として臨席しているリディナ氏もそのまま。
次が質疑応答だから、この辺りが回答者として残っているのは当然だろう。
他に国王庁から出席しているのは、国王庁の関係各局の管理官級10名。
それ以外の出席者は、貴族院で教育担当部会員を務める貴族が5名。
現場代表で国立学校の校長が4名。
オブザーバーとして冒険者ギルドを代表してタウフェン公爵が臨席している。
ここも休憩前と変わらない。
このうち教育担当部会員と国立学校校長というのが曲者だ。
部会員の5名全員がナイケ教会シンパの貴族。
国立学校校長も4名全員が、ナイケ教会からの出向者だから。
これはかつてエールダリア教会が失墜した際、国立学校の教育を代行したのがナイケ教会だった事が原因だ。
当時は国の教育関係者でエールダリア教会に関わっていない者は、ほとんどいなかった。
それらの者をパージした結果、現に残っている国直轄の人員では、現に生徒がいる国立学校ですら、適切な運営が不可能となってしまったのだ。
そして外部で学校を運営するような教育関係の制度がまがりなりにも存在する組織は、冒険者ギルドと商業ギルド、そして各教会くらい。
しかし冒険者ギルドと商業ギルドは国際的組織だ。
国の教育を任せるのは危険だ。
そう主張する貴族がいるのは、仕方ないだろう。
そうなると頼れるのは、各教会しかない。
教会も国際組織ではあるが、エールダリア教会という先例がある分、抵抗が少ないというのもあるだろう。
そして貴族子弟が多い国立学校の教育を、
〇 信者は商人がほとんどのマーセス教会
〇 農村地帯や貧困者が信者のほとんどのセドナ教会
〇 芸能や美術、音楽等が活動の中心であるマリナハ教会
に任せていいと考える貴族は、ほとんどいなかった。
結果、エールダリア教会を除く各教会の中で、
○ 貴族の信者が、比較的多く、
○ その分国政にもある程度の影響力があった
ナイケ教会が、国の教育を一時預かることとなったのだ。
そしてエールダリア協会失墜から10年以上経った現在でも、国立学校の運営はナイケ教会が半ば司っている状態にある。
ただし評判は決して良くない。
教育に関しては、まだエールダリア教会の方が良かった。
そう巷でささやかれている程に。
さて、協議会の出席者はこんな感じだが、傍聴席の方はどうだろう。
貴族傍聴席の方は10名程。いずれも貴族家当主ではなく、子弟や部下で代理といった形。
顔ぶれを見るに、ナイケ教会から動員がかかったようだ。
一般傍聴席の方は定員120名のところ、ほぼ満席。
一般傍聴席の右側の方は、ナイケ教会の面々。教育担当のトップであるソロア正司教を囲むように十数人ほど。
そして一般人らしき傍聴者が80名くらいいる。この種の協議会の傍聴者としてはかなり多い。
おかげで傍聴席がほぼ満席だ。
どうやらこの協議会、かなりの注目を集めているようだ。
いや、注目を集めているのは確かだが、それだけだろうか。
僕はふと、ある可能性に気づく。
この一般人らしい傍聴者の中にも、別の意図を持った者が含まれている可能性に。
ナイケ教会側が、固まって座っている、いかにもそれっぽい連中だけとは限らない。
もしこの協議会を無かったものにする気なら、それ用の工作員を送り込んでいても不思議では無いのだ。
そういった者を送り込むのなら、いかにもナイケ教会側の席に置くわけにはいかないだろう。
一般傍聴者の方へ紛れ込ませる筈だ。
傍聴人の所持品等は確認している筈だ。
それでも不安は消えない。
なお僕がいるのは一般傍聴席より前に設けられた記者席だ。
ここも20名程と、ほぼ満席。
記者というか出版社や図書館もこの協議会に注目しているのがわかる。
さて、先程から僕はナイケ教会側とそれ以外という形で勢力をわけて見てしまっている。
この見方については偏見とか予断とかの類いにも感じないではない。
しかし、少なくとも新聞記者の大部分と、ナイケ教会側の面々は、そういう色分けでみているのではないだろうか。
そしておそらく、それ以外のほとんどの者も。
ナイケ教会は、かつてエールダリア教会がやったように、教育と関連部分を握って国と国民に影響力を及ぼそうとしている。
少しでも状況を知る者ならそう見えるだろうから。
「まもなく質疑応答を開始します。それぞれ自席につくようにお願いします」
司会進行補助の事務官が告げた。
さて、ナイケ協会側は質疑応答でどう攻撃するか。
明日の会合では今日の発表を踏まえた義務教育案の提示がなされる。
これを討議によって修正し、適切な形にしてまとめ、国王陛下へ上奏する手はずだ。
そして今日ここまでの発表から考えて、明日提示される義務教育実施案の内容は、ナイケ教会色が払拭される事になるだろう。
そしてそれは、教育行政を足がかりにして国政に影響力を及ぼしたい教会側にとって避けるべき事態だ。
だから教会側は、この後の質疑応答と明日の討論によって、そうならないようにする筈だ。
具体的には、明日出される案がナイケ教会色に染まるのが当然となるよう、今日の発表内容を叩きまくる事になる。
ナイケ教会寄りの貴族に動員をかけているのもその為だ。
つまり明日に向けての前哨戦がこれから戦われる訳だ。
記者として、一言一句逃す訳にはいかない。
僕は改めて参加者を確認する。
国王庁教育局の出席者は変わらず、エクセスタ伯爵とエミリア管理官のままだ。
報告者として臨席しているリディナ氏もそのまま。
次が質疑応答だから、この辺りが回答者として残っているのは当然だろう。
他に国王庁から出席しているのは、国王庁の関係各局の管理官級10名。
それ以外の出席者は、貴族院で教育担当部会員を務める貴族が5名。
現場代表で国立学校の校長が4名。
オブザーバーとして冒険者ギルドを代表してタウフェン公爵が臨席している。
ここも休憩前と変わらない。
このうち教育担当部会員と国立学校校長というのが曲者だ。
部会員の5名全員がナイケ教会シンパの貴族。
国立学校校長も4名全員が、ナイケ教会からの出向者だから。
これはかつてエールダリア教会が失墜した際、国立学校の教育を代行したのがナイケ教会だった事が原因だ。
当時は国の教育関係者でエールダリア教会に関わっていない者は、ほとんどいなかった。
それらの者をパージした結果、現に残っている国直轄の人員では、現に生徒がいる国立学校ですら、適切な運営が不可能となってしまったのだ。
そして外部で学校を運営するような教育関係の制度がまがりなりにも存在する組織は、冒険者ギルドと商業ギルド、そして各教会くらい。
しかし冒険者ギルドと商業ギルドは国際的組織だ。
国の教育を任せるのは危険だ。
そう主張する貴族がいるのは、仕方ないだろう。
そうなると頼れるのは、各教会しかない。
教会も国際組織ではあるが、エールダリア教会という先例がある分、抵抗が少ないというのもあるだろう。
そして貴族子弟が多い国立学校の教育を、
〇 信者は商人がほとんどのマーセス教会
〇 農村地帯や貧困者が信者のほとんどのセドナ教会
〇 芸能や美術、音楽等が活動の中心であるマリナハ教会
に任せていいと考える貴族は、ほとんどいなかった。
結果、エールダリア教会を除く各教会の中で、
○ 貴族の信者が、比較的多く、
○ その分国政にもある程度の影響力があった
ナイケ教会が、国の教育を一時預かることとなったのだ。
そしてエールダリア協会失墜から10年以上経った現在でも、国立学校の運営はナイケ教会が半ば司っている状態にある。
ただし評判は決して良くない。
教育に関しては、まだエールダリア教会の方が良かった。
そう巷でささやかれている程に。
さて、協議会の出席者はこんな感じだが、傍聴席の方はどうだろう。
貴族傍聴席の方は10名程。いずれも貴族家当主ではなく、子弟や部下で代理といった形。
顔ぶれを見るに、ナイケ教会から動員がかかったようだ。
一般傍聴席の方は定員120名のところ、ほぼ満席。
一般傍聴席の右側の方は、ナイケ教会の面々。教育担当のトップであるソロア正司教を囲むように十数人ほど。
そして一般人らしき傍聴者が80名くらいいる。この種の協議会の傍聴者としてはかなり多い。
おかげで傍聴席がほぼ満席だ。
どうやらこの協議会、かなりの注目を集めているようだ。
いや、注目を集めているのは確かだが、それだけだろうか。
僕はふと、ある可能性に気づく。
この一般人らしい傍聴者の中にも、別の意図を持った者が含まれている可能性に。
ナイケ教会側が、固まって座っている、いかにもそれっぽい連中だけとは限らない。
もしこの協議会を無かったものにする気なら、それ用の工作員を送り込んでいても不思議では無いのだ。
そういった者を送り込むのなら、いかにもナイケ教会側の席に置くわけにはいかないだろう。
一般傍聴者の方へ紛れ込ませる筈だ。
傍聴人の所持品等は確認している筈だ。
それでも不安は消えない。
なお僕がいるのは一般傍聴席より前に設けられた記者席だ。
ここも20名程と、ほぼ満席。
記者というか出版社や図書館もこの協議会に注目しているのがわかる。
さて、先程から僕はナイケ教会側とそれ以外という形で勢力をわけて見てしまっている。
この見方については偏見とか予断とかの類いにも感じないではない。
しかし、少なくとも新聞記者の大部分と、ナイケ教会側の面々は、そういう色分けでみているのではないだろうか。
そしておそらく、それ以外のほとんどの者も。
ナイケ教会は、かつてエールダリア教会がやったように、教育と関連部分を握って国と国民に影響力を及ぼそうとしている。
少しでも状況を知る者ならそう見えるだろうから。
「まもなく質疑応答を開始します。それぞれ自席につくようにお願いします」
司会進行補助の事務官が告げた。
さて、ナイケ協会側は質疑応答でどう攻撃するか。
明日の会合では今日の発表を踏まえた義務教育案の提示がなされる。
これを討議によって修正し、適切な形にしてまとめ、国王陛下へ上奏する手はずだ。
そして今日ここまでの発表から考えて、明日提示される義務教育実施案の内容は、ナイケ教会色が払拭される事になるだろう。
そしてそれは、教育行政を足がかりにして国政に影響力を及ぼしたい教会側にとって避けるべき事態だ。
だから教会側は、この後の質疑応答と明日の討論によって、そうならないようにする筈だ。
具体的には、明日出される案がナイケ教会色に染まるのが当然となるよう、今日の発表内容を叩きまくる事になる。
ナイケ教会寄りの貴族に動員をかけているのもその為だ。
つまり明日に向けての前哨戦がこれから戦われる訳だ。
記者として、一言一句逃す訳にはいかない。
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