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拾遺録1 カイル君の冒険者な日々
俺達の決意⒄ 作戦開始
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騎士団が到着した翌々日の朝、10の鐘少し前。
俺達はアルベルト氏や騎士団部隊の一部とともに、騎士団の大型天幕内にいる。
「慣れない場所での作業となり、申し訳ありません。ですがこの方が意思疎通を図りやすいので、作戦中はここでゴーレムを操っていただけますでしょうか」
アルベルト氏からそう申し入れがあったからだ。
この天幕内には6人用のテーブルが4つある。
そのひとつを俺達のパーティで囲んでいる状態だ。
あとのテーブル3つのうち1つはアルベルト氏と、伝令と呼ばれている兵長さん2名。
残り2つは魔物誘導分隊を含む魔法偵察隊、外の警備部隊の幹部が詰めている。
戦闘の準備はほぼ調った。
魔物誘導分隊のゴーレムは4体配置している。
うち3体は迷宮内、入口から4離半の地点にある左右の洞窟を接続する小洞窟内で待機中だ。
この誘導分隊のゴーレムは灰色の犬型でそこそこ大きめ。
作戦開始前にアルベルト氏が見せてくれた。
「誘導分隊で使用しているのは騎士団標準の犬型ゴーレムです。物質転送魔法で移動させるのは無理ですが、それなりの移動速度と敵の攻撃を避ける事が可能な俊敏さを持っています。国立騎士団では迷宮内に限らず偵察に戦闘に広く用いられています」
「一つの騎士団でどれ位使われているのでしょうか?」
ヒューマの質問にアルベルト氏は肩をすくめてみせる。
「残念ながら正確な数は言えないのです。ただそれほど多くはない、とだけ言っておきましょう」
軍事上の秘密という奴なのだろう。
このゴーレム3体は万一の際に備えた配備だ。
俺達のゴーレムがリントヴルムを倒せなかった、または逃してしまった際、リントヴルムを出口方向では無く迷宮奥方向へ誘導する為のもの。
なおここに魔法偵察用の亀型ゴーレムも1頭配備している。
これは戦況がどうなっても、最後まで状況把握する為のものだ。
俺達のゴーレムは入口から5離地点にいる。
使用しているのはTシリーズゴーレム6体とEシリーズのゴーレム2体。
サリアがマグナス、インゲボルグ、ユースタシアの1体と2頭を操作。
他のパーティメンバーはTシリーズゴーレムを1体ずつ操縦。
ちなみに俺はセイバーではなくビッグを操縦している。
試した結果、Tシリーズの中ではビッグが一番使いやすかったからだ。
俺が操るビッグとレウスの操るロディマスは近接戦闘用の槍と投槍、他の4体は連弩を自在袋に入れている。
ビッグが近接戦闘用に用意しているのはリディナ先生と同じ、コボルトキングの戦槍。
レウス操るロディマスが用意しているのは形はほぼ同じだがやや短めの、フミノ先生が作った槍。
そしてサリアが操るマグナス、レズンが操るコンボイ、アギラが操るライオ、ヒューマが操るセイバーは自在袋に連弩と専用の矢を入れている。
この連弩はハンドルをゴーレムの腕力で回せば3数える間に10本の矢を放つ事が可能だ。
矢と言っても投槍の先端部みたいなごっつい代物。
オークなら当たれば一発で絶命するだろう。
そんな矢をそれぞれ30本ずつ仕込んである。
なお俺達のゴーレムと同じ位置にはもう2頭ゴーレムがいる。
魔法偵察隊のもので、2頭とも亀型ゴーレムだ。
この亀型ゴーレムの任務は、現在リントヴルムがいる場所より更に先の偵察。
「リントヴルムと遭遇した時点で、2頭の偵察用ゴーレムを迷宮最奥部まで物質転送魔法で送り込みます。奥により危険な魔物がいないか調査する為です」
確かにリントヴルムがいる先も10離程迷宮が続いている筈だ。
サリアの偵察魔法による外形観察が正しければ。
その部分はまだ内部偵察が出来ていない。
この件については先程ヒューマがアルベルト氏に尋ねた。
「より強力な魔物がいる可能性はどれくらいあるでしょうか?」
「おそらくは大丈夫かと思います。今まで調査されたほぼ全ての迷宮では、最も強い魔物が中央部にいましたから。
あくまで念の為です」
騎士団のプロがそう言うなら大丈夫だろう。
多分、きっと。
◇◇◇
「さて、時間です。配置は全て完了しました。第一段階に移りましょう。それではアディ十卒長、ファリニシュの移動を開始して下さい」
「了解」
アルベルト氏の命令に魔法偵察隊席にいる誘導分隊長のアディさんが返答。
俺達のゴーレムの横にいた灰色の犬型ゴーレム、ファリニシュが高速移動魔法で前へと進み始めた。
この犬型ゴーレムは前進しながら魔物を倒していく。
そのままリントヴルムの所まで行ったら、攻撃魔法を当てるなり誘引魔法を使うなりしてリントヴルムをこちらへ誘導。
俺達のゴーレムは先行する犬型ゴーレムが3離以上先行したら前進する予定。
リントヴルムは空属性の高速移動魔法を使えない筈だ。
飛行速度は過去の記録から最高で時速30離程度と推測されている。
だからリントヴルムまでの距離を3離以上取っていれば、遭遇まで10半時間の時間がとれる。
20半時間あれば連弩を設置し、投げ槍を構える事が出来る。
これは5回訓練をして確認済み。
「ファリニシュ、エルダーコボルト3匹討伐。5離半地点に到達」
「魔物の遭遇頻度は想定通りです。空即斬で対応できない敵はいません」
偵察隊席から次々に入る報告を聞きながら俺達は待機している。
ファリニシュがリントヴルムと接触するまでが第一段階。
誘導して俺達のゴーレムが攻撃を開始するまでが第二段階だ。
俺達はアルベルト氏や騎士団部隊の一部とともに、騎士団の大型天幕内にいる。
「慣れない場所での作業となり、申し訳ありません。ですがこの方が意思疎通を図りやすいので、作戦中はここでゴーレムを操っていただけますでしょうか」
アルベルト氏からそう申し入れがあったからだ。
この天幕内には6人用のテーブルが4つある。
そのひとつを俺達のパーティで囲んでいる状態だ。
あとのテーブル3つのうち1つはアルベルト氏と、伝令と呼ばれている兵長さん2名。
残り2つは魔物誘導分隊を含む魔法偵察隊、外の警備部隊の幹部が詰めている。
戦闘の準備はほぼ調った。
魔物誘導分隊のゴーレムは4体配置している。
うち3体は迷宮内、入口から4離半の地点にある左右の洞窟を接続する小洞窟内で待機中だ。
この誘導分隊のゴーレムは灰色の犬型でそこそこ大きめ。
作戦開始前にアルベルト氏が見せてくれた。
「誘導分隊で使用しているのは騎士団標準の犬型ゴーレムです。物質転送魔法で移動させるのは無理ですが、それなりの移動速度と敵の攻撃を避ける事が可能な俊敏さを持っています。国立騎士団では迷宮内に限らず偵察に戦闘に広く用いられています」
「一つの騎士団でどれ位使われているのでしょうか?」
ヒューマの質問にアルベルト氏は肩をすくめてみせる。
「残念ながら正確な数は言えないのです。ただそれほど多くはない、とだけ言っておきましょう」
軍事上の秘密という奴なのだろう。
このゴーレム3体は万一の際に備えた配備だ。
俺達のゴーレムがリントヴルムを倒せなかった、または逃してしまった際、リントヴルムを出口方向では無く迷宮奥方向へ誘導する為のもの。
なおここに魔法偵察用の亀型ゴーレムも1頭配備している。
これは戦況がどうなっても、最後まで状況把握する為のものだ。
俺達のゴーレムは入口から5離地点にいる。
使用しているのはTシリーズゴーレム6体とEシリーズのゴーレム2体。
サリアがマグナス、インゲボルグ、ユースタシアの1体と2頭を操作。
他のパーティメンバーはTシリーズゴーレムを1体ずつ操縦。
ちなみに俺はセイバーではなくビッグを操縦している。
試した結果、Tシリーズの中ではビッグが一番使いやすかったからだ。
俺が操るビッグとレウスの操るロディマスは近接戦闘用の槍と投槍、他の4体は連弩を自在袋に入れている。
ビッグが近接戦闘用に用意しているのはリディナ先生と同じ、コボルトキングの戦槍。
レウス操るロディマスが用意しているのは形はほぼ同じだがやや短めの、フミノ先生が作った槍。
そしてサリアが操るマグナス、レズンが操るコンボイ、アギラが操るライオ、ヒューマが操るセイバーは自在袋に連弩と専用の矢を入れている。
この連弩はハンドルをゴーレムの腕力で回せば3数える間に10本の矢を放つ事が可能だ。
矢と言っても投槍の先端部みたいなごっつい代物。
オークなら当たれば一発で絶命するだろう。
そんな矢をそれぞれ30本ずつ仕込んである。
なお俺達のゴーレムと同じ位置にはもう2頭ゴーレムがいる。
魔法偵察隊のもので、2頭とも亀型ゴーレムだ。
この亀型ゴーレムの任務は、現在リントヴルムがいる場所より更に先の偵察。
「リントヴルムと遭遇した時点で、2頭の偵察用ゴーレムを迷宮最奥部まで物質転送魔法で送り込みます。奥により危険な魔物がいないか調査する為です」
確かにリントヴルムがいる先も10離程迷宮が続いている筈だ。
サリアの偵察魔法による外形観察が正しければ。
その部分はまだ内部偵察が出来ていない。
この件については先程ヒューマがアルベルト氏に尋ねた。
「より強力な魔物がいる可能性はどれくらいあるでしょうか?」
「おそらくは大丈夫かと思います。今まで調査されたほぼ全ての迷宮では、最も強い魔物が中央部にいましたから。
あくまで念の為です」
騎士団のプロがそう言うなら大丈夫だろう。
多分、きっと。
◇◇◇
「さて、時間です。配置は全て完了しました。第一段階に移りましょう。それではアディ十卒長、ファリニシュの移動を開始して下さい」
「了解」
アルベルト氏の命令に魔法偵察隊席にいる誘導分隊長のアディさんが返答。
俺達のゴーレムの横にいた灰色の犬型ゴーレム、ファリニシュが高速移動魔法で前へと進み始めた。
この犬型ゴーレムは前進しながら魔物を倒していく。
そのままリントヴルムの所まで行ったら、攻撃魔法を当てるなり誘引魔法を使うなりしてリントヴルムをこちらへ誘導。
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リントヴルムは空属性の高速移動魔法を使えない筈だ。
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偵察隊席から次々に入る報告を聞きながら俺達は待機している。
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