187 / 281
エピローグ 卒業
第271話 記念品の話し合い
しおりを挟む「ここがフィリップの書斎なのね…」
セシルに連れられて執務室の中へ入った私は部屋の中を見渡した。セシルの部屋には大きな書棚が幾つも並べられていた。部屋の窓際には大きなマホガニー製の書斎机が2台置かれている。
「え?ひょっとしてエルザはこの部屋に入るのは初めてなのか?」
扉を閉めながらセシルは驚いたように私を見た。
「え?え、ええ。そうなの…」
「結婚して1週間も経つのに?」
「…」
私は黙って頷いた。これでは私とフィリップの夫婦仲がうまくいっていないとセシルにバレてしまうかもしれない。
「…エルザ、ひょっとして…」
フィリップの言葉に思わずピクリと肩が動いてしまった。
「…いや。何でも無い」
そしてセシルは書斎机に向かうと、手にしていたカバンから次々と書類を取り出していく。
「兄さんからこの書斎は自由に使っていいと言われているんだ」
「そうなのね?」
やっぱり、セシルはフィリップから絶大な信頼を得ているのだ。
それに比べて私は…考えると気分が落ち込んでしまう。
セシルの様子を横目で見ながら、改めて初めて入るフィリップの書斎を見渡し…本棚に目を止めた。
「…あら?」
何だろう?見間違いだろうか?
本棚に近づき、私は息を飲んだ。
「ど、どうして…?」
その棚には私がフィリップの為に買った本が3冊並べられていたのだが…全く同じ本が隣に立てられていたのである。
何故?
何故私がフィリップの為に買ってきた本が…2冊ずつあるの…?
「どうかしたのか?エルザ」
気づけば、いつの間にかやってきていたのか背後にセシルが立っていた。
「い、いえ…。同じ本が2冊ずつ並べられているから…」
「あれ?本当だ?何でだろう?でもこの本は兄さんのお気に入りの本だから2冊ずつ買ったのかもしれないな…。元々兄さんは新刊が出ると本屋にお取り置きして貰っていたようだからね」
「そ、そうだった…の…?」
私は並べられている本を眺めながら信じられない気持ちでセシルの話を聞いていた。
もしかして、フィリップは私が本をプレゼントする前から持っていたのだろうか?
『…こんな物の為に…わざわざ出掛けるなんて…』
本を手渡した時フィリップは私にそう、言った。あれは…もしかするとこの本はもう持っているのにわざわざ買ってくるなんて…という意味で言ったのだろうか?
でもこの本を持っているのか、私が尋ねた時フィリップは持っていないとはっきり返事をした。
でも、ひょっとして…わざわざ買ってきた私に気を使って、持っていないと答えたのだろうか…?
「エルザ、大丈夫か?さっきからずっと本棚を見つめているけど…何か他に気になる本でもあったのか?」
不意にセシルに声を掛けられて私は現実に引き戻された。
「あ、いいえ。何でも無いの。ただ、他にどんな本があるのかと思って眺めていただけよ」
「そうか?エルザは読書が好きなんだっけ?何か気になった本があれば借りていけばいいさ」
「そ、そうね…」
セシルはにこやかに言うけれども、今の私とフィリップの仲は最悪の状況の中にある。気軽に本を借りることが出来ない間柄であることを…セシルは何も知らないのだ。
「そんな事よりもセシル、お仕事を始めるのでしょう?私にもお手伝いさせてくれるのよね?少しでもフィリップの助けになりたいのよ」
落ち込んでなどいられない。私はフィリップに認めてもらうように努力しようと決めたのだから。
「ああ、分かった。それならまずは資料整理から覚えてもらおうか?」
「ええ」
私は頷いた。
そう、フィリップに…ほんの少しでもいいから、私は役に立つ妻だと認めてもらいたい。
彼のことが好きだから―。
セシルに連れられて執務室の中へ入った私は部屋の中を見渡した。セシルの部屋には大きな書棚が幾つも並べられていた。部屋の窓際には大きなマホガニー製の書斎机が2台置かれている。
「え?ひょっとしてエルザはこの部屋に入るのは初めてなのか?」
扉を閉めながらセシルは驚いたように私を見た。
「え?え、ええ。そうなの…」
「結婚して1週間も経つのに?」
「…」
私は黙って頷いた。これでは私とフィリップの夫婦仲がうまくいっていないとセシルにバレてしまうかもしれない。
「…エルザ、ひょっとして…」
フィリップの言葉に思わずピクリと肩が動いてしまった。
「…いや。何でも無い」
そしてセシルは書斎机に向かうと、手にしていたカバンから次々と書類を取り出していく。
「兄さんからこの書斎は自由に使っていいと言われているんだ」
「そうなのね?」
やっぱり、セシルはフィリップから絶大な信頼を得ているのだ。
それに比べて私は…考えると気分が落ち込んでしまう。
セシルの様子を横目で見ながら、改めて初めて入るフィリップの書斎を見渡し…本棚に目を止めた。
「…あら?」
何だろう?見間違いだろうか?
本棚に近づき、私は息を飲んだ。
「ど、どうして…?」
その棚には私がフィリップの為に買った本が3冊並べられていたのだが…全く同じ本が隣に立てられていたのである。
何故?
何故私がフィリップの為に買ってきた本が…2冊ずつあるの…?
「どうかしたのか?エルザ」
気づけば、いつの間にかやってきていたのか背後にセシルが立っていた。
「い、いえ…。同じ本が2冊ずつ並べられているから…」
「あれ?本当だ?何でだろう?でもこの本は兄さんのお気に入りの本だから2冊ずつ買ったのかもしれないな…。元々兄さんは新刊が出ると本屋にお取り置きして貰っていたようだからね」
「そ、そうだった…の…?」
私は並べられている本を眺めながら信じられない気持ちでセシルの話を聞いていた。
もしかして、フィリップは私が本をプレゼントする前から持っていたのだろうか?
『…こんな物の為に…わざわざ出掛けるなんて…』
本を手渡した時フィリップは私にそう、言った。あれは…もしかするとこの本はもう持っているのにわざわざ買ってくるなんて…という意味で言ったのだろうか?
でもこの本を持っているのか、私が尋ねた時フィリップは持っていないとはっきり返事をした。
でも、ひょっとして…わざわざ買ってきた私に気を使って、持っていないと答えたのだろうか…?
「エルザ、大丈夫か?さっきからずっと本棚を見つめているけど…何か他に気になる本でもあったのか?」
不意にセシルに声を掛けられて私は現実に引き戻された。
「あ、いいえ。何でも無いの。ただ、他にどんな本があるのかと思って眺めていただけよ」
「そうか?エルザは読書が好きなんだっけ?何か気になった本があれば借りていけばいいさ」
「そ、そうね…」
セシルはにこやかに言うけれども、今の私とフィリップの仲は最悪の状況の中にある。気軽に本を借りることが出来ない間柄であることを…セシルは何も知らないのだ。
「そんな事よりもセシル、お仕事を始めるのでしょう?私にもお手伝いさせてくれるのよね?少しでもフィリップの助けになりたいのよ」
落ち込んでなどいられない。私はフィリップに認めてもらうように努力しようと決めたのだから。
「ああ、分かった。それならまずは資料整理から覚えてもらおうか?」
「ええ」
私は頷いた。
そう、フィリップに…ほんの少しでもいいから、私は役に立つ妻だと認めてもらいたい。
彼のことが好きだから―。
299
お気に入りに追加
2,985
あなたにおすすめの小説

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました
言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。
貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。
「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」
それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。
だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。
それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。
それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。
気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。
「これは……一体どういうことだ?」
「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」
いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。
――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
スキル『日常動作』は最強です ゴミスキルとバカにされましたが、実は超万能でした
メイ(旧名:Mei)
ファンタジー
この度、書籍化が決定しました!
1巻 2020年9月20日〜
2巻 2021年10月20日〜
3巻 2022年6月22日〜
これもご愛読くださっている皆様のお蔭です! ありがとうございます!
発売日に関しましては9月下旬頃になります。
題名も多少変わりましたのでここに旧題を書いておきます。
旧題:スキル『日常動作』は最強です~ゴミスキルだと思ったら、実は超万能スキルでした~
なお、書籍の方ではweb版の設定を変更したところもありますので詳しくは設定資料の章をご覧ください(※こちらについては、まだあげていませんので、のちほどあげます)。
────────────────────────────
主人公レクスは、12歳の誕生日を迎えた。12歳の誕生日を迎えた子供は適正検査を受けることになっていた。ステータスとは、自分の一生を左右するほど大切であり、それによって将来がほとんど決められてしまうのだ。
とうとうレクスの順番が来て、適正検査を受けたが、ステータスは子供の中で一番最弱、職業は無職、スキルは『日常動作』たった一つのみ。挙げ句、レクスははした金を持たされ、村から追放されてしまう。
これは、貧弱と蔑まれた少年が最強へと成り上がる物語。
※カクヨム、なろうでも投稿しています。

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく
しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ
おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ
元勇者の俺と元魔王のカノジョがダンジョンでカップル配信をしてみた結果。
九条蓮@㊗再重版㊗書籍発売中
ファンタジー
異世界から帰還した元勇者・冴木蒼真(さえきそうま)は、刺激欲しさにダンジョン配信を始める。
異世界での無敵スキル〈破壊不可(アンブレイカブル)〉を元の世界に引き継いでいた蒼真だったが、ただノーダメなだけで見栄えが悪く、配信者としての知名度はゼロ。
人気のある配信者達は実力ではなく派手な技や外見だけでファンを獲得しており、蒼真はそんな〝偽者〟ばかりが評価される世界に虚しさを募らせていた。
もうダンジョン配信なんて辞めてしまおう──そう思っていた矢先、蒼真のクラスにひとりの美少女転校生が現れる。
「わたくし、魔王ですのよ」
そう自己紹介したこの玲瓏妖艶な美少女こそ、まさしく蒼真が異世界で倒した元魔王。
元魔王の彼女は風祭果凛(かざまつりかりん)と名乗り、どういうわけか蒼真の家に居候し始める。そして、とあるカップルのダンジョン配信を見て、こう言った。
「蒼真様とカップル配信がしてみたいですわ!」
果凛のこの一言で生まれた元勇者と元魔王によるダンジョン配信チャンネル『そまりんカップル』。
無敵×最強カップルによる〝本物〟の配信はネット内でたちまち大バズりし、徐々にその存在を世界へと知らしめていく。
これは、元勇者と元魔王がカップル配信者となってダンジョンを攻略していく成り上がりラブコメ配信譚──二人の未来を知るのは、視聴者(読者)のみ。
※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。