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第31章 魔法の勉強会

第253話 教材の作成計画

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 勉強会が終わった。
 片付けた後、5人で聖堂から歩いて帰る。

「この感じなら皆、次回も来てくれるかな」

「そうですね。お昼も美味しそうに食べていましたし」

 確かに今回の勉強会は成功だったな。
 そう私も思う。

 参加者52人のうち45人が灯火魔法を使えるようになったし、残りの7人も灯火魔法の代わりに水を出す魔法が使えるようになった。
 両方できるようになった子も5人いた。
 
 他にはステータスを書いたカードの見方を説明し、数字の読み書きの練習もした。今日練習した数字の読み方と意味、次回まで何となくでいいから覚えていてくれればいいのだけれど。

「楽しかった」

 これはレウス君だ。
 レウス君は今回の勉強会の内容は全部学習済み。だから退屈になるかなと少し心配していた。
 でも同じくらいの年齢の子と色々話す事が出来て楽しかったらしい。私達も一安心だ。

「私も楽しかったです。この村、こんなに子供がいたんですね。今まで知りませんでした」

 サリアちゃんも同年代の女の子と話したり、勉強会でわからない部分を教えたりしていた。
 おかげでサリアちゃんの周囲だけ、他より進みが良かった位だ。

「ただ次回までは同じような感じで出来るけれど、3回目からは少し難しくなるかもしれないね。簡単に覚えられる魔法がなくなるし、文字の勉強を本格的に始めるし」

「それなんですけれど、私とサリアで少し考えた事があるんです」

 セレスとサリアちゃんで考えた事か。山羊さんの手伝いの時に話しあったのかな。

「何かな?」

 リディナの問いかけで、セレスがサリアちゃんに目配せする。サリアちゃんから話すように、という事だろう。

「魔法の勉強で使っている、フミノさんが書いたものがありますよね。あれを魔法ごとにわけて、私やレウスでもわかるように簡単な言葉で書き換えるんです。
 文字が読めれば魔法の覚え方が解る。それなら難しくても読んでわかろうとするんじゃないか。そう思うんです」

 セレスがよく言ったねという感じで頷いて、後を続ける。

「ひとつの魔法に1枚ずつ、簡単な文章で説明が書いてある。そんな教材を作ろうと思うんです。

 この作業は私とサリア、レウスの3人でやろうと思います。フミノさんやリディナさんは難しい言葉を無意識に使ってしまいますから。

 これを使えば興味があったり適性があったりする魔法を選んで覚える事ができますし、文字を読む勉強をする気にもなる。
 そう思うのですけれどどうでしょうか?」

 なるほど、確かに良さそうだ。

 スティヴァレ語の表記は表音文字だ。だから日常で使っている簡単な言葉で書かれた文章なら、文字から音へ変換出来れば意味を理解出来る。

「なら最初は文字の読み方だけ教えて、あとはその教材をやるようにすればいい訳だね」

「そうです。文字が読める子は先に教材を始めて貰えばいいかと思います」

 よく出来た案だ。でもひとつ心配がある。サリアちゃん、レウス君、そしてセレスの仕事量だ。

「何なら私が山羊ちゃんのお仕事、手伝おうか?」

 私より先にリディナがそう尋ねた。

「それなら山羊ちゃんを放牧した後の監視を御願いして良いですか? 朝一番の乳搾りや餌やり、放牧までは私達3人でやりますから」

「監視なら私がやる?」

 偵察魔法はリディナより私の方が得意だ。いざとなれば任意の場所にゴーレムを出すなんて事も出来る。

「フミノには出来上がった教材の監修を御願いしたいかな。あと複写作業もね。
 それにフミノが訳したあの本、魔法の他にも役に立つ知識が書いてあるって言っていたよね。その部分もスティヴァレ語に翻訳できれば教材も充実するんじゃないかな」

 リディナの言うとおりだ。大事典、魔法部分以外はまだほとんど翻訳していない。
 確かに薬草とか魔物の知識とか、役に立つ事が多く書いてある。あの知識を教材にして子供たちに教えれば、生活に役立つだろう。

「わかった」

 多分セレスの目的は教材作りだけではない。
 この作業はサリアちゃんやレウス君の勉強にもなる。更に専門の仕事が出来た事で2人、特にサリアちゃんの自己肯定感とか自信とかに結びつけるなんて事も考えているのだろう。

「まずは全属性のレベル1魔法分を、出来るだけ今週中に作ってしまおうと思っています。1日につき2枚作れれば5日で10枚は出来ますよね。そうすれば3回目の勉強会には充分間に合うと思いますから。
 その時はレウスにも頑張ってもらうつもりです。もし読めなくて困っている子がいたら教えて上げて下さい」

「そうする」

 なるほど、友達作りにも役に立つと。一石何鳥になるのだろう。思った以上に考えられている作戦だ。

 さて、もうすぐお家というところでレウス君からこんな提案が。

「いつもより遅いから、エルマがまだかなまだかなと待っていると思う。だから皆で迎えに行こう」

 確かに。いつもならお昼前に迎えに行っているのに、今日はお昼を半時間過ぎている。

「そうだね。皆で一緒に行けばエルマも喜ぶよね」

「うん!」

 レウス君はエルマくんが大好きで、エルマくんもレウス君が大好きだ。

 2人とも何気に相手を弟分だと思っている節がある。でも順位争いみたいな事をする訳ではない。弟分だし好きだから世話してやる。お互いそう見ているような感じだ。
 そこが見ていて無茶苦茶微笑ましい。
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