ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀

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第26章 大物討伐

おまけ(舞台裏) 新しい付帯設備?

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 ついこの前、魔物退治で深い深い穴を掘った。
 そして私は気づいてしまった。この地方でも深く穴を掘れば温泉が出るという事に。

 ならば当然作らねばなるまい。私達の農場に温泉を。農作業は汗をかくし土で汚れたりもする。だからリディナやセレスも温泉があると喜ぶに違いない。

 朝食の時間にリディナとセレスにお願いする。

「申し訳ないけれど、ちょっとやりたい事がある。だから今日、マスコビーの卵を採取した後はその作業をしていい?」

「私は大丈夫だと思うけれど、セレスはどう?」

「もちろん問題ないです。フミノさんには昨日、畑全部の雑草取りをしてもらいましたし。草地の牧草も刈るのはもう少し伸びてからの方がいいと思います。だからフミノさんは今日、何なら今週いっぱいは自由に使ってください」

 少しばかり申し訳ないなとは思う。特にセレスは毎日欠かさず山羊ちゃん達の世話をしているし。
 でも温泉が出来たらきっとセレスも喜んでくれるだろう。なら問題はない。多分きっと。

「ありがとう」

 なおマスコビーの卵は偵察魔法で探してアイテムボックスに入れるだけ。生まれて1日以内の卵なら収納しても魔力消費は少ないから大丈夫。

 この作業、いつもは貯水池まで行ってやっている。その方がマスコビー達の調子を確認しやすい。それにとんでもない場所に新たに出来た巣を発見したりなんて事も出来る。

 しかし今日は時間節約のため、リビングから偵察魔法とアイテムボックススキルで遠隔採取。

 卵3個を採取してリディナに渡して卵の作業は終了。

 それでは温泉を作るとしよう。私はお家を出て裏側へと回る。

 これからやる事は、
  ① 地面を深く掘って温泉源を見つける
  ② 広くて快適な温泉ハウスを作る
の2点だ。

 ②は洗い場、3人で目一杯身体を伸ばしても問題ないくらい広い浴槽、そして露天風呂があればいいだろう。

 場所は家に近い方がいい。だからこの場所、家の裏側にした。家の裏と畑との間にはまだ森の木が残っている。まずはここを宅地造成するところから開始だ。

 温泉ハウスと露天風呂の分の場所として合計12本の木を伐採。根を収納したり草を熱分解したりするのはいつもと同じ。土を平らにして均し、熱を加えて固めるところも。

 それでは次に泉源の確認。この前のクラーケン討伐では2離4kmの穴を掘った。でもそこまで深くなくとも十分にお湯は出そうな感じだった。

 だから偵察魔法で地中の状況を確認。概ね500腕1,000m下にいい感じの層があった。温泉らしい黒い水だ。でもオイルくさかったりとかはない。
 そしてこの水の温度、100度を超えている。量も相当ありそうだ。

 なおかつこの水の層、圧力がかかりまくっている。掘ったらかなり上まで出てくるだろう。上手くいけば自噴してくれるかもしれない。

 自噴するとなると先に止水栓も作っておいた方がいいかな。鉄では錆びそうなので青銅で。パッキンはまだコルクが残っているのでこれを使用。

 この程度の小物なら多少の精密加工が必要だろうがアイテムボックス内でガンガン作製する事が出来る。あっという間に止水栓とその前後のパイプ部分完成。

 あと熱水の下部分を採取できるよう、長いパイプも作っておこう。これは太さ直径15指15cmくらいでいいかな。
 これも青銅でいいだろう。青銅ならカラバーラでも買えるから全部使ってしまえ。
 採水用の20腕40mパイプ、完成だ。

 それでは掘削作業。円柱を意識して土を収納し、周囲から水が染み出る前に火属性魔法で周囲を焼き固める。これをひたすら繰り返して、温泉が出る場所までパイプ状の穴を掘る。それだけだ。

 穴の直径はパイプと同じ15指15cmくらいとした。細い方が上まで温泉が噴き出しやすそうな気がしたから。
 この太さで統一しておけば中が詰まった時、アイテムボックススキルで取り除きやすいだろう。

 穴を熱で固める作業に少し手間がかかる。だから一度に掘り進めるのはせいぜい50腕100mくらい。これが手間というのはチートだという自覚はある。しかし手間には違いない。

 掘って固めて掘って固めて。あと一作業で泉源というところで、今まで掘ったパイプ状の穴の上部分に止水栓を出した。周囲の土で固めて、乾燥させて焼いて完全に固定してと。

 それでは最後の作業。これは、
  ① 穴を一気に掘る
  ② 穴とくっついた状態で採水用のパイプを出す
  ③ パイプ内に入った熱水を水属性魔法で凍らせる
  ④ 穴の乾燥・熱加工をやって防水処理をする
  ⑤ ③の氷を解凍する
を一気にやる。これで温泉水がうまくいけば自噴してくれる筈だ。

 自噴してくれなかったら泉源の熱水層にアイテムボックスで大量の水を送り込んでやるなんて事を考えている。圧力が上昇するから吹き出しやすくなるだろう。

 ⑤の解凍作業でパイプ内と穴がつながった。圧力の差で一気に熱水が穴途中まで上がってくる。うんうん、いい感じだ。
 それでは自噴するか確認しよう。

 地中では100度を超えている熱水だ。だから安全の為私自身は少し離れる。
 作業する為にゴーレムのシェリーちゃんを出した。彼女を操って、ゆっくり止水栓を開いていく。

 おし、急速に熱水が上昇していくのを偵察魔法で確認。止水栓の先のパイプ出口から最初は空気、次は湯気、そして少し茶色の熱湯が噴き出て来た。
 成功だ! 私はシェリーちゃんを使って止水栓を閉める。
 
 次は温泉小屋だ。あとこの源泉、そのままでは熱すぎてやけどをしてしまう。加水して冷やしてもいいが成分が薄まると勿体ない。ここは地下水や空気を使って冷却するシステムをつくるべきだろう。

 熱交換器といえばやはり銅のパイプだ。これを地下の帯水層に……
 待てよ、この熱水と蒸気の圧力を使えばポンプを動作させる事が出来そうだ。それならある程度深い所にある水をそのポンプでくみ出せば……
 
 それに熱水をそのまま使ってスチームサウナなんてのも……ついでに、ジェットバスなんてのも……なら寝湯も欲しいかな……

 ◇◇◇

 温泉ハウスが完成するまで3日もかかってしまった。これは付帯設備が予想以上に増えてしまった結果だ。
 しかしその結果、想像以上にいいものが出来た。少なくとも私はそう自画自賛している。

 さあ、それではこの成果を皆に分かち合おう。
 お家に到着。ちょうどセレスが農作業を終えて戻って来たところだった。リディナもいる。エルマくんももちろんいる。
 御披露目にはちょうどいい。

「リディナ、セレス、いいものが出来た。設備が揃った広くて快適なお風呂。早速皆で使い勝手を確認して欲しい」

「いいお風呂ですか。今のこのお家のお風呂も快適だと思いますけれど」

 ふっふっふっ、セレス、その認識は甘い。確かにこのお家の浴槽もそこそこ広くて快適かもしれない。それにこの世界の家にはお風呂なんてものは無いのが普通。

 しかし上には上がある。風呂好き民族日本人に生まれながら貧乏故にスーパー銭湯にすらほとんど行った事がない私の夢の結晶を見るがいい。

「フミノがそう言うという事は本当にいいのが出来たんだよね、きっと。エルマくんはお家に置いておいた方がいいかな?」

 いや、あの広さなら問題ない。それにラブラドールレトリバーは水が大好きな筈。エルマくんも見た目はラブラドールレトリバーだ。
 それに実は最初からエルマくんの事を考慮済みだったりする。そのために温度がぬるくて長い浴槽なんてのも作った。だからきっと問題ない。

「大丈夫。一緒に入って問題ない」

 タオルや着替えを持って温泉ハウスへ。エルマくんも当然のようについてくる。

「結構大きいね、この建物。いつものお家より大きい?」

 リディナの言う通りなので頷く。

 1階の床面積で比較すると3階建てのお家の3倍以上。内部の施設を増やした結果こうなってしまった。ポンプや温度調整部分、露天風呂部分を含めたら5倍近い。いやもっとあるかな。

「湯気があちこちから出ています」

 熱調整部分、サウナ等だけではなく、とにかく全体から出ている。温泉だから仕方ない。

 脱衣所で服を脱いで、そして中へ。

「浴槽がいっぱいあります!」

 熱めの浴槽、ぬるめの浴槽、もっとぬるめのエルマくん用浴槽、水風呂、寝湯、おまけのジェットバス。
 浴槽それぞれはスーパー銭湯のものよりは狭い。それでも3人が手足を伸ばしても問題ない広さだ。

 一応設備の説明もしておこう。

「こっちはサウナ。熱い湯気で汗を流す場所。これはシャワー、ここの栓を開くと上からお湯が降ってくる。外にも浴槽を作った。のんびり入るのにはちょうどいい場所」

 既にエルマくんは興奮状態だ。走り回って、臭いをかいで、そしてエルマくん用湯浴槽へ。流石だ、自分用だと気づいてやがる。

 おっと、気持ち良さそうに泳ぎはじめた。多少汚れや毛が浮くかもしれない。でも大丈夫、かけ流しで流しているうちに流れるだろう。

「……フミノにしては時間がかかっていると思ったけれど、想像以上ね、これって。こんなお風呂、凄すぎて聞いた事も無いな」

「気持ち良さそうです。ところでこのお湯が黒っぽいのは何故ですか?」

 そうそう、よくぞ聞いてくれたセレス。

「この黒いのは地中深くにあるお湯。これに入ると普通のお湯より健康にいい」

 それでは2人とも堪能してくれ。既に1匹堪能しまくっている奴がいるけれど楽しそうだからそのままで。

 私も身体を洗ったら堪能させて貰おう。最初はやっぱりぬる湯で、次はサウナかな。
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