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第25章 開拓の日々

第214話 名前を考えた

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 山羊を放牧し、念の為ヒイロ君とカトル君を見張り兼護衛につけて家へ戻る。

 まずは山羊小屋を出そう。

「山羊小屋はどの辺がいいかな?」

「家のすぐ近くがいいと思います。そうすれば天気が悪い時でも世話しやすいので。あと山羊は暑いのが苦手ですから、日陰になる場所で、風通しがいい方がいいです」

「ならここかな」

 リディナは3階建てのお家の、聖堂と反対側の隣りを指差した。確かに残した木によって木陰になっている。風通しも良さそうだ。

「そうですね」

 なら私の出番だろう。

「わかった。整地もするから少し待って」

 木や草をカットして収納するのはいつもと同じだ。しかし恒久的に建物を置くのでその後は少し念入りに。

 予定地の土を深さ2腕4mほど収納。アイテムボックス内で高熱にして木や草の根を分解。更に半分を土壌改質魔法で礫にしてから出す。その上はやはり魔法で細かな砂と粒状の土にして出して、表面から4半腕50cmはつき固め→乾燥→高熱魔法でガチガチに固める。

 足りない分の土は収納済みのものから出して、他の地面より10指10cm程高くした。これで水はけもいい筈だ。

「念入りだね。これなら安心かな」

「そうですね」

 実はお家の方の地面も整備しなおしてある。どうやら長期間ここに住みそうだと思ったから。

 ここでのんびり、ゆっくり落ち着いて生活していくのかな。そう思いながら整備し終えた土地にアイテムボックス内で出来上がった山羊小屋をどんと出す。

 いい出来だ。いかにもログハウスという感じで。

「立派な小屋だよね。あんな短時間で作ったとはとても思えない位」

「山羊ちゃん達も喜ぶと思います」

 中に入って確認。今は床だけで何もないけれども。
 セレスは窓をのぞき込んだり壁を押したりして確認した後、大きく頷く。

「頑丈ですし風通しもいいですし、すごくいいと思います。これなら相当な豪雨でも雨が入り込まないでしょうし」

「そうだよね。人間でも快適そう」

 うんうん、褒めてくれてありがとう。

「それじゃお家で一休みしようか。お昼には少し早いけれどね」

 まだ11の鐘より前だ。色々な事があった気がするけれど。

 お家に入ったらテーブルを囲んでお茶とおやつ。
 おやつと言ってもリディナとセレスは甘い物ではなく軽食だ。私は甘い物を食べるけれど。

 本日の軽食は王都ラツィオで買った薄焼きピタパンサンド。セレスとリディナの分の中身は鶏肉青菜炒めにチーズ追加、私の分は林檎バター水飴。

 なお、子犬は箱に入ったままだ。

「私達が食べ終わったら箱から出しましょう。放した状態で私達が御飯を食べていると、食べているものを欲しがりますから」

「あげちゃ、駄目?」

「人間が食べていいものでも犬では駄目な場合が多いんです。だから食べ物は別にした方がいいですね」

 なるほど。
 それではおやつ時間、開始。

「それじゃ山羊と子犬の名前を考えようか」

 リディナがピタパンサンドを一口食べてから切り出す。そうだ、そういう課題があった。

「早く名付けた方がいいですよね。特に山羊ちゃん達は今日、夕方から名前を呼んだら来るように練習させたいです」

 確かにその通りだろう。そう思ったからうんうんと頷く。

「そうだね。何かいい案、あるかな?」

「フミノさんは何かありますか?」

 私は首を横に振る。いいのが思い浮かばない。出てくるのは八木橋とかユキとか何処かで聞いたような名前。

 あ、バフォメットなんてのも浮かんだ。しかしこれは付けてはいけない名前だ、きっと。
 必要なのはヤバい名前ではなく可愛い名前。それはわかっている。でも脳裏にはバフォメットつながりで悪魔の名前ばかりが浮かんで……

「セレスは何か、思いついたのかな?」

「……平凡ですけれどいいですか?」

 おっと、何か思いついているようだ。

「どんな名前?」

「男の子がノクト、女の子がアレアというのはどうでしょうか?」

 どちらも可愛い名前だなと思う。少なくとも八木橋とかバフォメットよりは数段ましだろう。

「可愛いし、いいと思う」

「フミノもそう言っているし、いいんじゃないかな」

「実は実家でずっと昔に飼っていた山羊の名前なんです、どちらも。でもいいですか、それで」 

 うんうん、私は頷く。

「なら山羊はアレアとノクトでいいね。あとは子犬の名前、何かいいのあるかな」

「山羊ちゃん達は私が名前をつけたので、わんちゃんはリディナさんかフミノさんが名前をつけてやってください」

 うーん、チョビは女の子だからパス、平九郎は男の子のラブだけれど、この国の語感的になしで。

「リディナ、何かいい名前、ある?」

 聞いてみる。

「そうね。エルマ、というのはどう? 昔読んだ絵本に出て来た元気な男の子の名前なんだけれど」

 エルマーの冒険か、そう思いかけてすぐ気づく。あれは地球の本だ、スティヴァレの絵本ではない。
 きっと似たような話があるのだろう、多分。

 語感的にも悪くないと思う。元気な男の子ならぴったりだ。

「いいと思う」

「ならエルマくんですね」

 子犬、いやエルマくんは箱の中からこちらを見ている。いや、見ているだけではなく箱の隅で立ち上がってこちらに来ようとしている。しかし足が短いから出る事が出来ない。その様子が可愛い。

 それじゃ食べ終わったらエルマくんと遊ぼう。うん、そうしよう。
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