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第24章 南へ

第201話 自動討伐装置?

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 午後3半の鐘が鳴る少し前、テモリの街を出発。カラバーラに向けて東海岸沿いの街道を南へ。

 ゴーレム車を牽くライ君はリディナが操縦。私は移動しながらどこまで魔物や魔獣が討伐できるかお試し中。

「どう、フミノ。この速度でも魔物討伐は大丈夫?」

「問題ない」

 ライ君牽引のゴーレム車はやっぱり速い。上り坂であろうと時速10離20km/hをキープ。

 しかし今の私は空即斬を使える。この魔法は空間属性で私が認識可能な場所ならどこでも起動可能。

 つまり討伐に必要な時間がごくごく短い。見つけてから視点を動かし、空即斬でばっさりやって、死んだところを収納するまで5数える程度。
 だからこの速度でも余裕。

「どれ位の範囲を見ていて、どれくらいの魔物を狩っているんですか?」

10半時間6分に1回程度、大体がゴブリン。見ている範囲は海側半離1km、山側2離半5km位まで」

 雲がないので上空高いところに視点を3つ飛ばしている。1つは私の真上、もう1つは私から1離2km程右側。そしてもう1つは更にその1離2km程右側。

 これで幅3離6kmの範囲を上空から確認している。右側に寄せているのは左側半離1km程度先は海だから、陸地重視という事で。

 そしてスティヴァレの東海岸側は西海岸側と比べて発展していない。だからなのかこれだけ偵察範囲をひろげれば魔物はそこそこいる。

「この状態でそこら中を行ったり来たりするだけで十分稼げるよね」

「私もそう思います」

 確かにそうかもしれない。以前もゴーレム車で移動しながら討伐をしていたけれど、その頃より討伐できる範囲が広くなっている。移動速度も速くて大丈夫。

 だから魔物さえ多い場所ならこのゴーレム車に乗車したままの討伐だってそれなりに成果を出す事が可能だ。

「何なら道路以外でも大丈夫かな」

 いやリディナ、流石にそれはちょっと辛い。

「ゴーレム車に乗ってライ君を操縦して貰わないと無理。だから道がないと難しい」

「ライ君とシェリーちゃんの組み合わせで何とかならないかな。ライ君を私かセレスが操縦、シェリーちゃんをフミノが操縦。

 これでライ君にシェリーちゃんをのせて歩かせれば道でなくとも大丈夫だよね。万が一この状態で誰かに出遭ってもシェリーちゃんがのっていれば魔物ではないと説明できるし」

「あ、確かに」

 その方法なら、道がない場所でも討伐出来る。

 ただこの方法での討伐は結構疲れる。原因は視点3つそれぞれで見落としが無いように確認する作業。これ、結構注意力を必要とするのだ。長時間集中しっぱなしは辛い。

 だから1時間ほどやった後、リディナに頼む。

「ごめん、少し休憩、いい?」

「わかった。それじゃ停めるね」

 道の右側にゴーレム車を寄せ停車。
 リディナが自在袋から乳清飲料とおやつを取り出しテーブルに並べる。
 おっと、これはレーズンウィッチか?

「この前フミノがこのお菓子を作ってくれたけれどね。もっと前にこのお菓子について話をしてくれた事があったじゃない。
 あの後、いつか作ろうと思ってドライフルーツを酒漬けしておいたの。それがちょうどちょうどいい塩梅になってきたからどうかな、と思って」

 やはりそのようだ。手を伸ばして口へ。
 美味しい。本物より美味しいかもしれない。本物の味は憶えていないし、そもそもおぼえる程食べてもいないけれど。

「美味しい」

「美味しいです。何か高価でいいお菓子って感じがします」

 セレスの言う通りだ。味に高級感を感じる。

「確かにちょっといい雰囲気の味になるよね。お酒のせいかな。あとこれだと乳清飲料より紅茶の方がいいかも」

 確かに普通の人はそうなのかもしれない。でも私は甘いのが好きだから乳清飲料の方がいい。

「今日はこの後、何処か途中の森で家を出す形ですか?」

 セレスの質問にリディナは頷く。

「そうなるかな。約束がある訳じゃないし、ゆっくりでいいと思うよ。暗くなる前に適当な場所で停まればいいんじゃないかな」

「そうですね」

 セレスが頷くのを見ながら私は考える。 

 出来ればカラバーラまでにゴブ換算で100匹は狩りたい。何故なら昨日、図書館で正銀貨30枚30万円程使ってしまったから。

 今のペースなら討伐回数は1時間に6回程度。1回につきゴブリン1~3匹、平均2匹として1時間12匹。100匹狩るには8時間と少し。
 暗くなる前にお家を出したい。だから今日はあと1時間ぐらいしか移動出来ないだろう。

 勿論夜、お風呂に入っている時間も討伐をする。
 それにゴブリンより単価が高い魔物がいればもっと稼げる。ただいくら田舎道とは言え街道沿いにそんな危険なのがそうそういるとは思えない。

 とりあえずはカラバーラにつくまでこつこつ稼いでいくのが正しいのだろう。

 そんな事を考えながら食べているとレーズンウィッチ1個目が終わってしまった。もう1個と食べそうになって慌ててやめる。

 何せ今日は身体を動かしていない。動かしているのは視点と魔法だけ。それでおやつを食べまくったら間違いなく太る。

 私自身は太りにくい体質だと思う。成長もしにくいみたいだけれども。

 見かけはあまり気にしない。もてたいとかは全く思っていないから。

 しかし太ると動けなくなる。以前失敗したあのトレーニングを本気でやらなければならない、なんて事にもなりかねない。

 だからレーズンウィッチは1個だけ、いや2個だけにして次を最後にしようかな。リディナやセレスも2個目を食べているし。

 きっと魔法もカロリーを消費する。だからもう1個くらいは大丈夫。うん、きっと大丈夫。

「それにしてもこれ美味しいですね、本当に」

「でも2個……3個までにしておいた方がいいかな。今日は身体を動かしていないし、太りそうだから」

 おっと、リディナも同じ事を思っていたようだ。どちらかというとリディナは甘い物よりがっつり系なのだけれど。
 なら私も2個まででやめておくとしよう。

 休憩を終了し、今度はセレスがライ君を操縦してゴーレム車は動き始める。
 バーリまでは大きい街もない。そしてこの街道は交通量も少ない。だからゴーレム車は乗り心地が悪化しないぎりぎり、時速10離20km/h程度でひたすら走る。

 結局もう1時間移動し行程終了。いつもと同様、街道から少し外れた場所をさがしてゴーレム車を停める。

 テモリから数えた討伐成果はゴブリン22匹、ホブゴブリン1匹、その他あわせて合計25匹。

 なお行程中にレーズンウィッチ5枚、乳清飲料3杯、紅茶1杯を消費。増えているのは1回目の休憩後、移動中に我慢できず食べてしまったから。

「ずっとゴーレム車に乗っているのも疲れるよね」

「そうですね。贅沢な悩みだと思いますけど」

 そんな事を言いながらお家を出し、中へ。
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