97 / 285
第22章 冒険者ではないお仕事
第188話 ゴーレム牽引トロッコの説明
しおりを挟む
「ところでその鉱石用ではない荷車は何に使うんだ? 何かゴーレムが乗るのに適した感じだけれど」
そう言えば制御台車について説明していなかったな。
「下りの時は此処にゴーレムを乗せて操作する。ここのワイヤーか先頭車両の同じ部分にあるワイヤーを操作しないと荷車全体が動かないようになっている。坂で勝手に動いて事故にならないようにする為。
今回は私が操作するから気にしなくていい」
ワイヤーを引っ張ればブレーキが解除される仕組みだ。操作しなければブレーキがかかりっぱなしになる。
「よく考えてあるなあ。それじゃ普段は荷物を引っ張りながらこのワイヤーも操作する訳か」
「牽引用ゴーレムはこのワイヤーを自動で接続できるようになっている。だから意識しなくても問題無い」
「あとで牽引用のゴーレムも見せて欲しいな。どんな感じか試してみたい」
確かにそうだろうなと思う。ならば出すとしよう。
「持ってきてある。これ。此処の採掘用ゴーレムから改造した」
ゴーレムがいる坑道では無く私達のいる部屋に05君を出す。
「これが牽引用ゴーレムですか。脚部分が少し違いますね。あと背中と胸から出ている後ろに伸ばせそうなものが引っ張る為の装置ですか?」
これはシモーヌさんだ。
「そう。脚は長さを変えられる。これは引っ張る荷車やコースの傾斜にあわせて、速度と牽引力を変化させる為。牽引用装置は後ろに伸ばして荷車の牽引装置にはめ込めば、そのままブレーキ操作までできるようになる」
連結器にブレーキ制御用ワイヤーの連結装置も仕込んである。だから連結・解放すればブレーキ制御用ワイヤーも同時に連結・解除される。
なお牽引用ゴーレムや車両を連結・解放する動作はワンタッチだ。牽引用ゴーレムは勿論、現在使用している採掘用ゴーレムの足でも操作する必要があるから。
更に牽引用ゴーレムは細かい操作が可能なフレキシブルアームを尻尾位置に内蔵している。これは万が一線路や付属施設に不具合を発見した場合、その場で直す為のもの。
そういった事をひととおり説明。
「それじゃ荷車を引いて選鉱場まで戻ろうか」
フェデリカさんのゴーレムに合わせてシェリーちゃんもワイヤーを引いてブレーキを解除する。
6両編成の車両が動き始めた。
「動き出しだけは少し重いが、あとは思った以上に軽いな」
「傾斜によっては結構重い。ただ平坦なら割とどうにでもなる」
「確かにそんな感じだ。チャックは採掘用ゴーレムよりは力が無い筈なんだけれど、それでもかなり余裕がある。これならあと5倍は積んでも大丈夫だろう」
フェデリカさんのゴーレム、チャックという名前のようだ。
「牽引可能な量については一度戻って、この専用ゴーレムで試してみましょう」
シモーヌさんの台詞にフェデリカさんは頷く。
「確かにそうだ。それに鉱石を下ろす動作も確認しないと」
チャック君はゆっくりだが確実に6両編成を引っ張って選鉱場の上、鍋の縁部分に到着。
「ここで止めて中の鉱石や土を下ろすにはどうすればいい?」
「専用ゴーレムの場合、ゴーレムと荷車の連結を外すだけ。そうすれば荷車にブレーキがかかって止まる」
今回はシェリーちゃんがブレーキワイヤーを手放せばいい。
「そうしたら荷車の横、下ろすのと反対側へと回る」
ゴーレム2体は鍋の中心と反対側へ移動。チャック君がシェリーちゃんの横からのぞいている状態になる。
「あとは荷車についたこの部分を動かすだけ」
鉱石運搬車の下部にはいくつかレバーがついている。このうち外側の1本ずつが荷台操作用だ。これをゴーレムの足等で蹴り上げるように動かせば、自動で荷台が反対側に傾く。
「線路のこの部分に、斜めに削った鉄の柱を立てておいてもいい。そうすれば引っ張って荷車が通った時、鉄の柱にこのレバーが当たって自動で荷台が傾く。
荷台が空になれば、傾いた荷台は自動で元に戻る」
この辺は私のオリジナルではない。日本で使われていた鉱石運搬車に実際にあった仕組みだ。Web上にあった軽便鉄道やトロッコ等の趣味ページに載っていたものを参考に作った。
我ながらよくこんな知識を覚えていたなと思う。しかも異世界で使う事になるとは。世の中何が役に立つかわからない。
「つまりその装置を作れば、牽引用のゴーレムは通り過ぎるだけで荷下ろしが出来るのか」
「坑内へ戻る際は先頭方向が逆になる。だから一度、先の分岐器の更に先までこれを引っ張って、そこでゴーレムを反対方向に付け替える。そうして引っ張れば、今度は鉱石を下ろした時と違う線路を通って、採掘現場に向かう事が出来る」
つまり此処で行き違いも出来る訳だ。
シモーヌさんが首を傾げつつ口を開く。
「牽引用ゴーレムが1頭だけの運用ならそこまで考えなくていいですよね。つまりこの折り返し場所は更に牽引用ゴーレムを増やした時用の措置って事でいいのでしょうか?」
「それもある。あとは使える技術の見本も兼ねて。この試験線で使った方法があればこの先更にこの線路や牽引用ゴーレムを増やす事が出来る。行き帰りの線路を別にする事も、途中で上り下りが行き違いをする場所を作る事も可能」
「つまりこれはこの運搬システム全体の見本でもある訳ですね。しかしこれはゴーレム製作者とはまた違う知識のように思えます。何か何処かで先例があるものなのでしょうか」
こういう質問はいつものお約束通りの回答だ。
「私の生まれ故郷、東の方はるか遠くにある国に実在するもの。ただ魔法で飛ばされてきたからどれくらい遠いかもわからない」
東の日出ずる国、日本の知識だ。
この世界にはきっと存在しないけれども。
そう言えば制御台車について説明していなかったな。
「下りの時は此処にゴーレムを乗せて操作する。ここのワイヤーか先頭車両の同じ部分にあるワイヤーを操作しないと荷車全体が動かないようになっている。坂で勝手に動いて事故にならないようにする為。
今回は私が操作するから気にしなくていい」
ワイヤーを引っ張ればブレーキが解除される仕組みだ。操作しなければブレーキがかかりっぱなしになる。
「よく考えてあるなあ。それじゃ普段は荷物を引っ張りながらこのワイヤーも操作する訳か」
「牽引用ゴーレムはこのワイヤーを自動で接続できるようになっている。だから意識しなくても問題無い」
「あとで牽引用のゴーレムも見せて欲しいな。どんな感じか試してみたい」
確かにそうだろうなと思う。ならば出すとしよう。
「持ってきてある。これ。此処の採掘用ゴーレムから改造した」
ゴーレムがいる坑道では無く私達のいる部屋に05君を出す。
「これが牽引用ゴーレムですか。脚部分が少し違いますね。あと背中と胸から出ている後ろに伸ばせそうなものが引っ張る為の装置ですか?」
これはシモーヌさんだ。
「そう。脚は長さを変えられる。これは引っ張る荷車やコースの傾斜にあわせて、速度と牽引力を変化させる為。牽引用装置は後ろに伸ばして荷車の牽引装置にはめ込めば、そのままブレーキ操作までできるようになる」
連結器にブレーキ制御用ワイヤーの連結装置も仕込んである。だから連結・解放すればブレーキ制御用ワイヤーも同時に連結・解除される。
なお牽引用ゴーレムや車両を連結・解放する動作はワンタッチだ。牽引用ゴーレムは勿論、現在使用している採掘用ゴーレムの足でも操作する必要があるから。
更に牽引用ゴーレムは細かい操作が可能なフレキシブルアームを尻尾位置に内蔵している。これは万が一線路や付属施設に不具合を発見した場合、その場で直す為のもの。
そういった事をひととおり説明。
「それじゃ荷車を引いて選鉱場まで戻ろうか」
フェデリカさんのゴーレムに合わせてシェリーちゃんもワイヤーを引いてブレーキを解除する。
6両編成の車両が動き始めた。
「動き出しだけは少し重いが、あとは思った以上に軽いな」
「傾斜によっては結構重い。ただ平坦なら割とどうにでもなる」
「確かにそんな感じだ。チャックは採掘用ゴーレムよりは力が無い筈なんだけれど、それでもかなり余裕がある。これならあと5倍は積んでも大丈夫だろう」
フェデリカさんのゴーレム、チャックという名前のようだ。
「牽引可能な量については一度戻って、この専用ゴーレムで試してみましょう」
シモーヌさんの台詞にフェデリカさんは頷く。
「確かにそうだ。それに鉱石を下ろす動作も確認しないと」
チャック君はゆっくりだが確実に6両編成を引っ張って選鉱場の上、鍋の縁部分に到着。
「ここで止めて中の鉱石や土を下ろすにはどうすればいい?」
「専用ゴーレムの場合、ゴーレムと荷車の連結を外すだけ。そうすれば荷車にブレーキがかかって止まる」
今回はシェリーちゃんがブレーキワイヤーを手放せばいい。
「そうしたら荷車の横、下ろすのと反対側へと回る」
ゴーレム2体は鍋の中心と反対側へ移動。チャック君がシェリーちゃんの横からのぞいている状態になる。
「あとは荷車についたこの部分を動かすだけ」
鉱石運搬車の下部にはいくつかレバーがついている。このうち外側の1本ずつが荷台操作用だ。これをゴーレムの足等で蹴り上げるように動かせば、自動で荷台が反対側に傾く。
「線路のこの部分に、斜めに削った鉄の柱を立てておいてもいい。そうすれば引っ張って荷車が通った時、鉄の柱にこのレバーが当たって自動で荷台が傾く。
荷台が空になれば、傾いた荷台は自動で元に戻る」
この辺は私のオリジナルではない。日本で使われていた鉱石運搬車に実際にあった仕組みだ。Web上にあった軽便鉄道やトロッコ等の趣味ページに載っていたものを参考に作った。
我ながらよくこんな知識を覚えていたなと思う。しかも異世界で使う事になるとは。世の中何が役に立つかわからない。
「つまりその装置を作れば、牽引用のゴーレムは通り過ぎるだけで荷下ろしが出来るのか」
「坑内へ戻る際は先頭方向が逆になる。だから一度、先の分岐器の更に先までこれを引っ張って、そこでゴーレムを反対方向に付け替える。そうして引っ張れば、今度は鉱石を下ろした時と違う線路を通って、採掘現場に向かう事が出来る」
つまり此処で行き違いも出来る訳だ。
シモーヌさんが首を傾げつつ口を開く。
「牽引用ゴーレムが1頭だけの運用ならそこまで考えなくていいですよね。つまりこの折り返し場所は更に牽引用ゴーレムを増やした時用の措置って事でいいのでしょうか?」
「それもある。あとは使える技術の見本も兼ねて。この試験線で使った方法があればこの先更にこの線路や牽引用ゴーレムを増やす事が出来る。行き帰りの線路を別にする事も、途中で上り下りが行き違いをする場所を作る事も可能」
「つまりこれはこの運搬システム全体の見本でもある訳ですね。しかしこれはゴーレム製作者とはまた違う知識のように思えます。何か何処かで先例があるものなのでしょうか」
こういう質問はいつものお約束通りの回答だ。
「私の生まれ故郷、東の方はるか遠くにある国に実在するもの。ただ魔法で飛ばされてきたからどれくらい遠いかもわからない」
東の日出ずる国、日本の知識だ。
この世界にはきっと存在しないけれども。
324
お気に入りに追加
3,130
あなたにおすすめの小説

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく
しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ
おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?
志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。
そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄?
え、なにをやってんの兄よ!?
…‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。
今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。
※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。