ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀

文字の大きさ
上 下
90 / 279
第22章 冒険者ではないお仕事

第181話 契約の決定

しおりを挟む
 昨日と同じ場所に家を出し、中へと入る。

「フミノ、やりたいと思っているでしょ?」

 いきなりリディナに言われた。その通りだ。しかしそれはあくまで私の意見にすぎない。

「私達は3人パーティ。だからリディナとセレスの意見も重要」
 
「フミノがやりたいと思うならいいと思うよ。セレスはどう?」

「ええ。それにどんなものになるのか見てみたい気がします」

 あっさり。あっさりすぎて不安というか申し訳ないというか、大丈夫なのだろうかと思ってしまう。

「本当にいい?」

「大丈夫だよ。ここは図書館も充実しているし、まわりが山だから魔物討伐も出来るしね」

「そうですね。ゴーレムを使った討伐の練習だけでなく、勉強の方もじっくり出来そうです。
 ただ明日から良ければトロワ君を貸して貰えますか。普通にゴーレムを操る練習だけでなく、別の場所から獲物を追い立てる事も出来ますから」

 なるほど。確かにゴーレムを使って巻き狩りなんて事も出来そうだ。
 しかしそれならトロワ君じゃない方がいい。ヒイロ君達のタイプは簡易生産型で耐久性が今ひとつだから。

 バーボン君改2をアイテムボックスから出す。

「ならバーボン君を使って。この子の方が高性能。耐久性も上」

「いいんですか」

「勿論」

「ありがとうございます」

 よし、2人がOKなら問題無い。明日イオラさんに話して契約してしまおう。
 それなら今回の試作に必要な材料類もリストアップしておいた方がいいだろう。夕食までの間に考えておくとしよう。

 ◇◇◇ 

 翌朝、朝食後。
 イオラさんが出勤したのを確認して、念の為半時間30分おいてから事務所へ。勿論リディナとセレスにも同行して貰う。契約ごととか苦手なのと1人では少し心細いのとで。

「ありがとう。それじゃこっちは今は製鉄所経由で魔法金属の取り寄せをして、製品ワイヤーの見本を各種揃えておけばいい? あとは製作用に鉄のインゴットを用意して。材木は此処にいれば使い放題だから。

 図面は一応揃えておいたけれど現地に行くときは声をかけて。案内役を同行させるから。あとはフェデリカさんとも顔合わせをした方がいいかな。普段はローラッテの事務所にいるけれど。

 現場のローラッテに事務の場所が必要、または家を向こうに移転した方が良ければいつでも言って。それくらいはすぐ用意するから。
 それまでは今家をおいている場所を自由に使って。どうせあと3ヶ月くらいは河原メインでこっちの場所を使わないし」

 至れり尽くせりだな、本当に。思わず頭を下げてしまう。

「お願いします」

「お願いするのはこっちよ。それじゃ魔法金属とワイヤーは入手次第連絡するわ。それまでは連絡先、あの家でいい?」

 少し考えて、そして思いつく。

「もう1軒作業用の平屋を出すからそこで」

「わかったわ。それじゃ最初の1ヶ月分の報酬。あと必要経費はその都度言って。精算するから」

 いきなり大金が出てきた。正金貨3枚150万円小金貨13枚130万円正銀貨20枚20万円、あわせて正金貨6枚300万円分だ。

 今回はゴーレム製作者としての契約。だから冒険者ギルドとは違う契約方法になる。しかしちょっとこれは破格すぎる。少なくとも私の感覚では。

「いいの?」

 思わずリディナに聞いてしまった。

「商会相手なら普通の契約よ。だから心配しなくて大丈夫」

「そうそう。割と一般的な条件だし、このくらいなら私の一存で出せるわ」

 うーむ。私達は冒険者としては結構お金持ちの方だと思っていた。しかし商会とか貴族となると扱う金額がかなり異なる模様だ。
 この辺の常識とかはもうリディナに投げてしまおう。私の理解が及ぶところでは無い。

「なら問題ない」

「あと明日、案内役とフェデリカさんを呼んで顔合わせをするから。今日と同じくらいの時間にこの事務所に来て貰っていい?」

 私は頷く。何せすぐそこに家を出しているのだ。それくらいなら簡単。

「それでは宜しく。私は大抵ここにいるから、何かあった時は気兼ねなく教えて」

 もう一度頷く。うん、これならやりやすくていい。

 契約書と1ヶ月分の受け取り領収書に署名をした後、事務所を出る。まずは作業場代わりにリビング専用に使っていた平屋を出してと。

「私とセレスは街に行ってくるね。何か買ってきた方がいいもの、あるかな?」

「大丈夫」

「わかった」

 2人を見送ってから平屋の中へ。小さいテーブルを出して、そして預かった図面を置く。
 まずはこの図面を読み込んで、そして大雑把な仕様を決めてしまおう。

 どうやら坑道は思った以上に狭いようだ。人を使わず犬型ゴーレムでの採掘が基本だから。念の為偵察魔法で現地を確認。

 うん、狭い。ここに複線を通すならナローゲージ762mmなんて無理。せいぜい15インチ軌間381mm、いや、それすら厳しいような……

 ただトンネルそのものの作りはかなりいい。採掘場所以外は崩落がないよう周囲をきっちり岩盤化処理している。フェデリカさん、かなり有能な魔法使いのようだ。

 幸いカーブはほとんど無い。だからぎりぎり、いや少し余裕を見て軌間は30指30cmかな。この大きさならレールも2腕2mあたり2重12kgレールでいいか。

 それではまずレール関係、つまり枕木や締結金具等も含めたあたりの試作からやってみよう。ワイヤーの誘導滑車も今のうちに組み込んだ方が楽だよな。

 ワイヤーと言えばトンネル内の傾斜は大丈夫かな……問題無い。坂はかなり緩いようだ。しかも全体的にほぼまっすぐに作ってある。トロッコ化しても問題は無いだろう。
しおりを挟む
感想 115

あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。

リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。 そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。 そして予告なしに転生。 ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。 そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、 赤い鳥を仲間にし、、、 冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!? スキルが何でも料理に没頭します! 超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。 合成語多いかも 話の単位は「食」 3月18日 投稿(一食目、二食目) 3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。