ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀

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第21章 馴染みの街

第177話 相談とは何だろう

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 翌日。家を仕舞って、ゴーレム車に乗ってローラッテへ。

「家が増えているね」

「新しい家ばかりですね」

「この辺、半年前までは単なる山の谷間だったんだよ。此処を出る前にトンネル入口近くまでぐるっと壁で囲ったけれどそれだけで」

 どれだけ急速に発展しているのだ、本当に。

「人も荷車も多いし、やっぱり製鉄所がフル稼働した影響なのかな、これ。あとで図書館に寄って統計資料を見てみようかな。速報版ならある程度最近の事まで載っているし」

 なるほど。そうやってリディナは知識をアップデートさせているのか。
 そんな感じで話しながら他の通行者や荷車と速度をあわせ、ゆっくりとトンネルへ向かう。

 トンネルへ向かう登り口の道も私が知っている時点より整備されている。私が作った時より1腕2m位幅が広くなっているし、崖になっている側に落下防止用の柵が出来ていたりもする。

 更に崖が崩れないよう面はきっちり1対2斜面になっているし、土では無く岩盤化されている。どうやら私達が出た後、かなり手を入れたようだ。

「ミメイさんかな」

「違うと思う。あの男爵領から戻った時はアコチェーノエンジュの森林整備で大変だと言っていたし、その後すぐカレンさんとラツィオへ行った筈でしょ。
 だから別の魔法使いだと思うよ。ミメイさんが作業できる時間は無かったと思うから」

 なるほど、確かに。しかしそれならばだ。

「最低でもレベル6以上の土属性使い。しっかり一枚の岩盤になっている」

「ミメイさんレベルの土属性持ちって事ね。鉱山で土属性の魔法が必要だから新たに探して呼んだのかな」

 確かにそうかもしれない。私は頷いて賛意を示す。

「そんなに高レベルの魔法使いが簡単に見つかるんでしょうか」

「鉱山経営は領主の管轄だからね。領主自ら探したり、冒険者ギルドで高い報酬を提示したりして専属を探したのかも。必要だと思えば気前よくお金を出すだろうしね、ここの領主なら」

 確かにここの領主はその辺はケチらないだろう。その辺は私とリディナはよく知っている。

 やはり広く直されていたトンネルを経由し向こう側へ。
 出たらすぐに村だった。どうやらアコチェーノと同様にトンネル近くまで村として整備されたようだ。
 いや、既に村という規模では無いか、これは。

 ただ製鉄所は特徴的な巨大煙突がそのまま。だから迷うことはない。
 煙突の下の、いかにも製鉄所直売店という感じの建物へ。

「いらっしゃいませ。どんな御用でしょうか」

「鉄のインゴットを購入したいのですけれど。あと一応このゴーレム製造者登録証があるのですけれど、使えますでしょうか」

「ええ、大丈夫です。あ、え、でもゴーレム製造者登録証という事は、ひょっとしてフェルマ伯爵家からの依頼を受けていらっしゃったのでしょうか」

 依頼? 何だろうそれは。

「いえ、私達は移動中に単に立ち寄っただけですけれども」

「そうですか。申し訳ありませんでした。それでは現在の相場はこちらになります。登録証を提示されましたので2割引きとなります」

 安い。ラツィオでの値段の7割くらいだ。思わず目一杯買いそうになってしまうが自制心で少し堪える。

 ここは400重2,400kgで妥協しよう。
 本当はその10倍位は欲しい。しかしそんなの持ち歩ける自在袋なんて無い。どう言い訳しても無理がある。だから言い訳できる範囲で我慢だ。

 正銀貨32枚32万円を支払う。

「はい、ありがとうございました。それでは商品はこちらになります」

 案内されたのは以前も来た事がある倉庫だ。

「1本が1重6kgで、ロープで20本、20重120kgずつ束ねてあります。
 400重《2,400kg》ですとここの横5個、上から4段目までを収納下さい」

 かつてインゴット運びの依頼を受けた時と同じだな。そう思うと懐かしい。

「ところで本日はローラッテでお泊まりでしょうか。他の街へ出られますか?」

「アコチェーノで泊まる予定ですけれど」

 リディナがそう返答する。しかし何だろう。

「実を申しますと鉱山のゴーレムの事で、ゴーレム製造技術を持つ方に相談したい件があるのです。勿論此処の鉱山の運営者でありますフェルマ伯爵家に相談した上での事になりますけれども。

 このような田舎にゴーレム製造者がいらっしゃる事は滅多にありません。ですので大変無礼だとは思いますが、もし相談するならどちらへ伺えばよいか、教えて頂ければ有り難いです」

「フミノ、教えていいかな」

「問題無い」

 今泊まっているのは森林組合の空き地だ。そして私達の家も森林組合の製品。だから点検等で分解して持ってきたと言えば問題無い。
 
 それにここの領主は信頼してよさそうだと思っている。本人には会わない方がいいと言う話もあるけれども。性格では無く外見的な意味で。

「アコチェーノの、森林組合の裏庭の一部を借りています。ただ日中は買い物や調べ物等がありますので、戻る時間はわかりませんけれども」

「森林組合ですか。わかりました。どうもありがとうございました」

 彼女は森林組合と聞いた時、一瞬驚いたような表情をした。
 何か特別な意味があるのだろうか。そう思いつつ普通に挨拶をして製鉄所の倉庫を後にする。
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