115 / 323
第20章 ダンジョン攻略依頼
第173話 迷宮の消失
しおりを挟む
さて、夕食を食べ風呂に入り、自室に戻ってからも一仕事待っている。
やりたい事その2、バーボン君の再改造だ。
ヒイロ君達を使ってみて新たなゴーレムの可能性を感じたのだ。討伐専用機としての可能性を。
ヒイロ君、私自身より回避も移動も速い。そして当然のことながら私の魔法を使える。ならば私自身が歩いて討伐するよりヒイロ君達ゴーレムを使った方が効率がいい。
ライ君が出来たのでバーボン君にゴーレム車を牽かせる必要はなくなった。そしてバーボン君はヒイロ君よりいい材料や部品を使っている。だから改良して討伐用に最適化すればヒイロ君達よりもっと高性能になる筈だ。
隣や上の部屋でリディナ達が寝ている。だから本当はアイテムボックス内でやった方がいい。アイテムボックス内なら作業している気配とか音とかが伝わる事がないから。
しかしアイテムボックス内で作業をすると細かい部分の操作が難しい。木を任意の形にカットしたり金属部品を成型する等はアイテムボックス内でもいい。しかし部品を組み合わせる作業等は手でやった方が早くて楽。
そんな訳で自室の床に道具や材料を広げて作業を開始。
プロポーションを少し変化させよう。もう少し細く高く。脚の長さも更に長く。フレームも強度を確保しつつ全体的に軽量化してと。
ヒイロ君達と違いカスタム仕様だから構造は少し凝らせて貰う。関節等は当然ベアリング仕様。それも革パッキンを使ってシールド仕様にしておこう。水も泥も気にしなくて済むように。
腰を捻るなんて事も出来るようにしたし、脚の関節の自由度も上げておいた。慣れれば今まで以上に自由な動きが可能な筈だ。
瞬間的な大出力が出せるよう、魔力導線も太くしておく。出力そのものは魔法銀仕様の受容体のおかげで充分な筈。
しかし念の為、残っている魔法金属を使って更に出力を上げておこう。動きを速くするだけでなく、いざという時にはゴーレム車を引っ張る事も出来る位に。
鉱石倉庫等の使用しない機能は外す。しかしリディナやセレスが使う時の事も考え、自在袋を取り付け可能にしておこう。ワンタッチで取り付けて、手というか前脚で対象物に触れれば収納出来るように。
うーむ、バーボン君、外見イメージが大分変わった。譲り受けた当初はでっかいダックスフンドという形。その後、速力向上改良をした結果、シェパードっぽい形に変わった。
しかし今回の改造後の姿、犬というより魔狼っぽい。まあ戦闘用という意味では正しいのだろう。これも収斂進化みたいなものだ。違うかな。
大きさはヒイロ君と同じくらい。高性能を狙ったから重さはヒイロ君の3割増し。ただ出力はそれ以上に高いから問題無い筈だ。フレーム等の強度もヒイロ君達より倍以上。
あとは明日、討伐に使用して試してみることにしよう。少しでも寝ておかないと明日眠くなる。
そんな訳でバーボン君改2? を収納して、おやすみなさい……
◇◇◇
迷宮攻略開始から5日目。
朝食をとって家を仕舞い、まずはセレスがライ君を操縦して出発。検問所で止まって挨拶した後、今度はリディナが操縦してゴーレム車のまま北側の洞窟へ入り、そのまま分岐近くまで。
「もうあの混ざり物はいないと思うけれど、念の為ゴーレムで戦った方がいいよね」
「私もそう思います」
という事で分岐近くでゴーレム車を停めて準備。
今回、私はゴーレムを2体使うつもりだ。1体は勿論昨日改造を終えたバーボン君改2。もう1体はシェリーちゃんで、このゴーレム車の屋上からどれくらい防衛できるか試すつもりだ。
なおリディナがデュオ君、セレスがトロワ君を使うのは昨日と同じ。ただ今日は混ざり物はいないと思うので、分岐からゴーレム3体で歩いて行く。
「こうやって普通に歩かせるとそこそこ距離あるんですね」
「100腕ちょっと位かな。前回は一瞬だったけれど」
前回は縮地を使ったから。なお奥からの攻撃はない。やはり混ざり物の再発生はないようだ。
洞窟の合流をすぎ、そしてあの迷宮の中へ。
また少し世界が薄くなったように感じた。昨日は強敵がいたから気づく余裕がなかったけれど、実在感が薄く感じる。
空間構造が違うのだろうか。よくわからない。
さて、昨日混ざり物と戦った場所に到着。ただこの先は広い上、まだまだ魔物は多い。
「この中は広いから分担した方がいいかな。危険そうなのがいたら連絡するという事で」
「そうですね」
リディナもセレスもここ全体の形はわかっている筈だ。此処へ来る途中、昨日私が書いた地図を見て貰っているから。
漢字の王の字の中央の棒が上下に突き抜けたような形で、今は中央の棒の下端までやってきて下の交差にいる状態。
「確か交差する洞窟が3本あるんだよね、こことこの先と、さらにその先。その洞窟1本ずつわけようと思うけれど、何か希望ある?」
実はある。ここまで来る途中に若干気になった場所があったのだ。リディナ達はそこに気づいていないのだろうか。それとも気にする程ではないと判断しているのか。
私は調べてみたい。出来れば私自身で。
だから私は二人に告げる。
「此処の左右は私が行く」
つまり王の字の一番下の横棒部分だ。
「なら次の左右はセレスで、その次は私でいいかな。自分のところが終わったら、まだやっていない方へという事で」
「そうですね」
昨日、私、正確に言うと私が操縦しているヒイロ君は一番奥まで行っている。だから奥でも魔物の強さがかわらないのは確認済み。
今日の感じでは一番強いのでコボルトロードかアークトロル。どちらも遠距離攻撃は持っていない。だから問題はないだろう。
さて、まずはお掃除から。
私からは直接、偵察魔法でバーボン君達がいる閉鎖空間内を見る事は出来ない。
しかしバーボン君が閉鎖空間の中にいる。だからバーボン君を通してなら偵察魔法でこの空間内を見る事が出来るし、空属性の攻撃魔法を撃つことも出来る。
だから私はバーボン君を動かさず、見つけた魔物をそのまま魔法で倒していく。倒して収納してを繰り返し、担当区内の周囲の魔物を一掃。
担当区域の通路をもう一度確認、魔物がいなくなった事を確認した後、私はバーボン君をこの空間の入口側に向けた。
前回は気付かなかったが入口に何か銘板らしきものがあったような気がしたのだ。此処を担当する事を希望したのも実はそれを確認したかったから。
あった。確かに銘板だ。ただかなり潰れていて読みにくい。でも読める。スティヴァレ語とは少し違う言語だが私のスキルである自然言語理解(5)なら問題ない。
『INFN-LABORATORI NAZIONALI DEL G■■N SAS■O?』
文字の一部は潰れていて読めない。
でも研究所? 何故研究所がこんな地下に、それも高速道路みたいな場所から入るように出来ているのだろう。極秘の軍事基地というならわかるけれども。
周囲は研究所というより何かの工場のような感じだ。見落とした魔物の確認を兼ね、バーボン君を歩かせて周囲を観察する。
うーむ、5階建ての建物が入るくらいの巨大な洞窟内に鉄骨で出来た構造物が建ち並んでいるとしかわからない。
ただそれらの構造物そのものはこの世界、スティヴァレよりも地球、そして21世紀日本にある方がふさわしい感じだ。高電圧注意の看板等もそう。
かなり古びて廃墟風の感じだけれど。
洞窟内にあった避難口の看板を思い出す。これらが過去の遺跡なのだろうか。なら過去、この遺跡の時代は日本と同じように科学文明だったのだろうか。それならば魔法とは何なのだろう。
わからないまま左右合わせて100腕位の巨大洞窟を探索。魔物を完全に倒しきった事を確認。
ついでにリディナやセレスの、正確にはデュオ君とトロワ君の様子を偵察魔法で見てみる。順調に討伐しているようだ。
なら次に行こうかな。そう思った時だった。
ぐらっ、周囲の視界が揺れた気がした。気のせいだろうか。私自身の方は揺れを感じていない。
しかしバーボン君の視界は確かに揺れ始めている。更には私の知らない形の魔力の反応も。何だこれは一体。
「周囲が変です。何か景色が揺れているように見えます」
「迷宮の崩壊かな。結構魔物を倒したから。多分大丈夫だと思うけれど、一応ゴーレムを逃がした方がいいかもしれない」
それならばだ。
「回収する。操縦を切って」
「わかった」
バーボン君を通じて向こうの空間は把握できている。今は確かに風景が揺れているがそれでもまだ大丈夫。連続で縮地を起動しつつ移動してデュオ君とトロワ君を回収、こっちに向けてダッシュ。
景色の揺れが酷くなる。足場も揺れている。踏む足があらぬ方向を向いている気がする。しかし進んでいるのはわかる。だから急ぐ。
入口部分を抜けた。同時にふっと視界の揺れが消える。こちら側は揺れていない。なら中は。偵察魔法で確認する。
入口が閉じている。いや、無くなっている。あった筈の銘板も見えない。土がその先を塞いでいる。
偵察魔法を土中、さっきまで迷宮があった場所へと動かす。確かに何かがあった痕跡はある。
ただしあくまで痕跡だけだ。具体的には土中に埋まっている周囲にそぐわない残骸等。空間そのものは何百腕先まで見てみたけれど存在しない。全て土や岩で埋まっている。
今、迷宮が崩壊したから埋まった訳ではなさそうだ。もっと古く、私達が此処を訪れるよりずっと古くから埋まっていたように感じる。
なら何だったのだろう。そう思った時だった。ふらっと感じる感覚。これはまずいかも。
「急いで出る。掴まっていて」
直進方向は最後にゴーレム車が出られない。だからUターンして入ってきた出口を目指す。縮地を起動。だが瞬間、揺れが急速に強まってあたりが暗くなって……
次の瞬間、眩しいまでの明るさを感じた。すぐに気付く。外だ、ここは。
洞窟、いや迷宮のテラーモ側入口前の広場だった。しかし洞窟は2本とも無くなっている。ただの山だ。樹木も生えていて洞窟があった痕跡すら残っていない。
「あの洞窟も迷宮だったのね。崩壊して、きれいさっぱり無くなった訳か」
私は本で読んだ事を思い出した。
魔物の数というか集積度が一定以下になると魔素の発生が止まり、迷宮は消滅する。そして迷宮が消滅した際内部にいた人や魔物、その他物質等は迷宮化前の元の場所に戻される。
つまり迷宮が消え、私達は元の場所に戻された訳か。
ふと思う。夢から醒めたのかなと。私ではない。この場所が、あるいは地球が。
この場所がみていた過去か未来の夢。あのダンジョンはきっとそんな存在。
確証も何もない。ただ何となくそう感じたのだ。
やりたい事その2、バーボン君の再改造だ。
ヒイロ君達を使ってみて新たなゴーレムの可能性を感じたのだ。討伐専用機としての可能性を。
ヒイロ君、私自身より回避も移動も速い。そして当然のことながら私の魔法を使える。ならば私自身が歩いて討伐するよりヒイロ君達ゴーレムを使った方が効率がいい。
ライ君が出来たのでバーボン君にゴーレム車を牽かせる必要はなくなった。そしてバーボン君はヒイロ君よりいい材料や部品を使っている。だから改良して討伐用に最適化すればヒイロ君達よりもっと高性能になる筈だ。
隣や上の部屋でリディナ達が寝ている。だから本当はアイテムボックス内でやった方がいい。アイテムボックス内なら作業している気配とか音とかが伝わる事がないから。
しかしアイテムボックス内で作業をすると細かい部分の操作が難しい。木を任意の形にカットしたり金属部品を成型する等はアイテムボックス内でもいい。しかし部品を組み合わせる作業等は手でやった方が早くて楽。
そんな訳で自室の床に道具や材料を広げて作業を開始。
プロポーションを少し変化させよう。もう少し細く高く。脚の長さも更に長く。フレームも強度を確保しつつ全体的に軽量化してと。
ヒイロ君達と違いカスタム仕様だから構造は少し凝らせて貰う。関節等は当然ベアリング仕様。それも革パッキンを使ってシールド仕様にしておこう。水も泥も気にしなくて済むように。
腰を捻るなんて事も出来るようにしたし、脚の関節の自由度も上げておいた。慣れれば今まで以上に自由な動きが可能な筈だ。
瞬間的な大出力が出せるよう、魔力導線も太くしておく。出力そのものは魔法銀仕様の受容体のおかげで充分な筈。
しかし念の為、残っている魔法金属を使って更に出力を上げておこう。動きを速くするだけでなく、いざという時にはゴーレム車を引っ張る事も出来る位に。
鉱石倉庫等の使用しない機能は外す。しかしリディナやセレスが使う時の事も考え、自在袋を取り付け可能にしておこう。ワンタッチで取り付けて、手というか前脚で対象物に触れれば収納出来るように。
うーむ、バーボン君、外見イメージが大分変わった。譲り受けた当初はでっかいダックスフンドという形。その後、速力向上改良をした結果、シェパードっぽい形に変わった。
しかし今回の改造後の姿、犬というより魔狼っぽい。まあ戦闘用という意味では正しいのだろう。これも収斂進化みたいなものだ。違うかな。
大きさはヒイロ君と同じくらい。高性能を狙ったから重さはヒイロ君の3割増し。ただ出力はそれ以上に高いから問題無い筈だ。フレーム等の強度もヒイロ君達より倍以上。
あとは明日、討伐に使用して試してみることにしよう。少しでも寝ておかないと明日眠くなる。
そんな訳でバーボン君改2? を収納して、おやすみなさい……
◇◇◇
迷宮攻略開始から5日目。
朝食をとって家を仕舞い、まずはセレスがライ君を操縦して出発。検問所で止まって挨拶した後、今度はリディナが操縦してゴーレム車のまま北側の洞窟へ入り、そのまま分岐近くまで。
「もうあの混ざり物はいないと思うけれど、念の為ゴーレムで戦った方がいいよね」
「私もそう思います」
という事で分岐近くでゴーレム車を停めて準備。
今回、私はゴーレムを2体使うつもりだ。1体は勿論昨日改造を終えたバーボン君改2。もう1体はシェリーちゃんで、このゴーレム車の屋上からどれくらい防衛できるか試すつもりだ。
なおリディナがデュオ君、セレスがトロワ君を使うのは昨日と同じ。ただ今日は混ざり物はいないと思うので、分岐からゴーレム3体で歩いて行く。
「こうやって普通に歩かせるとそこそこ距離あるんですね」
「100腕ちょっと位かな。前回は一瞬だったけれど」
前回は縮地を使ったから。なお奥からの攻撃はない。やはり混ざり物の再発生はないようだ。
洞窟の合流をすぎ、そしてあの迷宮の中へ。
また少し世界が薄くなったように感じた。昨日は強敵がいたから気づく余裕がなかったけれど、実在感が薄く感じる。
空間構造が違うのだろうか。よくわからない。
さて、昨日混ざり物と戦った場所に到着。ただこの先は広い上、まだまだ魔物は多い。
「この中は広いから分担した方がいいかな。危険そうなのがいたら連絡するという事で」
「そうですね」
リディナもセレスもここ全体の形はわかっている筈だ。此処へ来る途中、昨日私が書いた地図を見て貰っているから。
漢字の王の字の中央の棒が上下に突き抜けたような形で、今は中央の棒の下端までやってきて下の交差にいる状態。
「確か交差する洞窟が3本あるんだよね、こことこの先と、さらにその先。その洞窟1本ずつわけようと思うけれど、何か希望ある?」
実はある。ここまで来る途中に若干気になった場所があったのだ。リディナ達はそこに気づいていないのだろうか。それとも気にする程ではないと判断しているのか。
私は調べてみたい。出来れば私自身で。
だから私は二人に告げる。
「此処の左右は私が行く」
つまり王の字の一番下の横棒部分だ。
「なら次の左右はセレスで、その次は私でいいかな。自分のところが終わったら、まだやっていない方へという事で」
「そうですね」
昨日、私、正確に言うと私が操縦しているヒイロ君は一番奥まで行っている。だから奥でも魔物の強さがかわらないのは確認済み。
今日の感じでは一番強いのでコボルトロードかアークトロル。どちらも遠距離攻撃は持っていない。だから問題はないだろう。
さて、まずはお掃除から。
私からは直接、偵察魔法でバーボン君達がいる閉鎖空間内を見る事は出来ない。
しかしバーボン君が閉鎖空間の中にいる。だからバーボン君を通してなら偵察魔法でこの空間内を見る事が出来るし、空属性の攻撃魔法を撃つことも出来る。
だから私はバーボン君を動かさず、見つけた魔物をそのまま魔法で倒していく。倒して収納してを繰り返し、担当区内の周囲の魔物を一掃。
担当区域の通路をもう一度確認、魔物がいなくなった事を確認した後、私はバーボン君をこの空間の入口側に向けた。
前回は気付かなかったが入口に何か銘板らしきものがあったような気がしたのだ。此処を担当する事を希望したのも実はそれを確認したかったから。
あった。確かに銘板だ。ただかなり潰れていて読みにくい。でも読める。スティヴァレ語とは少し違う言語だが私のスキルである自然言語理解(5)なら問題ない。
『INFN-LABORATORI NAZIONALI DEL G■■N SAS■O?』
文字の一部は潰れていて読めない。
でも研究所? 何故研究所がこんな地下に、それも高速道路みたいな場所から入るように出来ているのだろう。極秘の軍事基地というならわかるけれども。
周囲は研究所というより何かの工場のような感じだ。見落とした魔物の確認を兼ね、バーボン君を歩かせて周囲を観察する。
うーむ、5階建ての建物が入るくらいの巨大な洞窟内に鉄骨で出来た構造物が建ち並んでいるとしかわからない。
ただそれらの構造物そのものはこの世界、スティヴァレよりも地球、そして21世紀日本にある方がふさわしい感じだ。高電圧注意の看板等もそう。
かなり古びて廃墟風の感じだけれど。
洞窟内にあった避難口の看板を思い出す。これらが過去の遺跡なのだろうか。なら過去、この遺跡の時代は日本と同じように科学文明だったのだろうか。それならば魔法とは何なのだろう。
わからないまま左右合わせて100腕位の巨大洞窟を探索。魔物を完全に倒しきった事を確認。
ついでにリディナやセレスの、正確にはデュオ君とトロワ君の様子を偵察魔法で見てみる。順調に討伐しているようだ。
なら次に行こうかな。そう思った時だった。
ぐらっ、周囲の視界が揺れた気がした。気のせいだろうか。私自身の方は揺れを感じていない。
しかしバーボン君の視界は確かに揺れ始めている。更には私の知らない形の魔力の反応も。何だこれは一体。
「周囲が変です。何か景色が揺れているように見えます」
「迷宮の崩壊かな。結構魔物を倒したから。多分大丈夫だと思うけれど、一応ゴーレムを逃がした方がいいかもしれない」
それならばだ。
「回収する。操縦を切って」
「わかった」
バーボン君を通じて向こうの空間は把握できている。今は確かに風景が揺れているがそれでもまだ大丈夫。連続で縮地を起動しつつ移動してデュオ君とトロワ君を回収、こっちに向けてダッシュ。
景色の揺れが酷くなる。足場も揺れている。踏む足があらぬ方向を向いている気がする。しかし進んでいるのはわかる。だから急ぐ。
入口部分を抜けた。同時にふっと視界の揺れが消える。こちら側は揺れていない。なら中は。偵察魔法で確認する。
入口が閉じている。いや、無くなっている。あった筈の銘板も見えない。土がその先を塞いでいる。
偵察魔法を土中、さっきまで迷宮があった場所へと動かす。確かに何かがあった痕跡はある。
ただしあくまで痕跡だけだ。具体的には土中に埋まっている周囲にそぐわない残骸等。空間そのものは何百腕先まで見てみたけれど存在しない。全て土や岩で埋まっている。
今、迷宮が崩壊したから埋まった訳ではなさそうだ。もっと古く、私達が此処を訪れるよりずっと古くから埋まっていたように感じる。
なら何だったのだろう。そう思った時だった。ふらっと感じる感覚。これはまずいかも。
「急いで出る。掴まっていて」
直進方向は最後にゴーレム車が出られない。だからUターンして入ってきた出口を目指す。縮地を起動。だが瞬間、揺れが急速に強まってあたりが暗くなって……
次の瞬間、眩しいまでの明るさを感じた。すぐに気付く。外だ、ここは。
洞窟、いや迷宮のテラーモ側入口前の広場だった。しかし洞窟は2本とも無くなっている。ただの山だ。樹木も生えていて洞窟があった痕跡すら残っていない。
「あの洞窟も迷宮だったのね。崩壊して、きれいさっぱり無くなった訳か」
私は本で読んだ事を思い出した。
魔物の数というか集積度が一定以下になると魔素の発生が止まり、迷宮は消滅する。そして迷宮が消滅した際内部にいた人や魔物、その他物質等は迷宮化前の元の場所に戻される。
つまり迷宮が消え、私達は元の場所に戻された訳か。
ふと思う。夢から醒めたのかなと。私ではない。この場所が、あるいは地球が。
この場所がみていた過去か未来の夢。あのダンジョンはきっとそんな存在。
確証も何もない。ただ何となくそう感じたのだ。
351
お気に入りに追加
2,924
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。
しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹
そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる
もう限界がきた私はあることを決心するのだった
聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。