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第14章 3人目の仲間と 

第115話 大漁の日

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 上に群れていたのはイワシっぽい魚で、下にいた大きいのは鰹っぽい魚だったようだ。
 半時間程度で鳥山は消えた。しかしそれまでに大物をリディナとセレスが3匹ずつ、私が1匹釣り上げる事に成功した。

 なぜ私が1匹だけだったのか。
 理由は明白。リディナ達に比べて私は釣りに関する動作、つまり釣り上げて魚を収納してまた投げてという流れが遅かったからだ。

「魚が見えたらすかさず冷却魔法をかけるの。そうすれば抵抗しなくなるから簡単に引き上げられるし回収できるよ。冷却魔法で死んでいるから触るだけで自在袋に回収できるしね」

 なるほど、食べる為の釣りだからファイトを楽しむより魔法を使って効率よくと。確かに正しい。

 それにしても大漁だ。

「この魚って生でもオイル煮にしても美味しいよね」
「オイル煮って、ソースと混ぜてご飯の中に入れているものですか」
「そうそう。あれ、サンドイッチでも美味しいし野菜と一緒に食べても美味しいの。この前はこの魚あまり売っていなかったから1匹しか買えなかったけれど、今日はいっぱい釣ったから後で思い切りつくりましょ」

 この魚は確かに美味しい。形と大きさは鰹なのだが味はマグロに近い。だから食べるのが非常に楽しみだ。

 リディナの作るシーチ●ンもどきはマヨ無しでも絶品。生のままカルパッチョ風に仕立てたものも当然すごく美味しい。

 もうこれだけで夕食は期待しまくり状態だ。

「それじゃ湾内に行こうか。向こうは向こうでまた違う魚が釣れるし面白いよ」

 まだ釣るのか。しかし楽しみではある。どんな魚がかかるのだろう。
 今度は湾内側、船着き場のように平らな岩の所へと移動した。

「今度はまず、針の小さい仕掛けに変えるの。あと浮きの下にエサカゴをつけるよ。針はカゴの下1腕2mくらい」

 リディナとセレスはあらかじめそんな仕掛けを作ってあるようだ。えさかごに魚のミンチ、針には小さく魚の身をつけて10腕くらい遠くへ投げる。

 すぐに浮きが動く。竿をあげるとイワシがかかっていた。

「これを釣って餌にするの。今度はさっきの大きいのを釣った仕掛けに今釣った魚をつけて砂浜の奥の方へ投げて。そうすると少し時間がかかるけれどまた違った魚がかかってくるから」

 なるほど、先程と同様、小さな魚を餌にして今度は砂底にいるのを狙うと。
 なお小さいのは幾らでも釣れるようだ。それなら試したい自作仕掛けがある。

 私はアイテムボックスから特製自作仕掛けを取り出す。これはセレスが釣りにはまる前から作ろうと構想していたものだ。

 これは上から
  大型のウキ
  →餌が入って少しずつ外に出ていくエサカゴ
  →20指20cm間隔で長さ20指20cmくらいの糸つき針が枝のように結び付けられているもの5つ
  →錘
という仕掛け。
 
 更に針のひとつひとつには魚皮を切ったものを結びつけてある。これが水中では餌に見えるらしい。

 つまり上のエサカゴに入った餌で魚を引き寄せ、下の魚皮を結び付けた針で釣ってしまうという方法論だ。
 日本の釣り用語で言うと、『投げスキンサビキ5本針仕掛け』という感じだろうか。自信無いけれど。

 エサカゴに魚のミンチを入れて、リディナ達と同じ場所へ。
 投げると数えるほどで浮きが動き始める。魚がすれていないせいか簡単にかかるようだ。
 
 偵察魔法で針2つに魚がついたのを確認して引き上げ。すぐアイテムボックスに魚を入れ、また仕掛け投入。すぐかかるから引き上げ。
 うん、効率がいい。面白いように釣れまくる。

「フミノのその仕掛け面白いね。最初から餌がついている訳?」

「乾かした魚の皮を針に縛り付けてある。エサカゴの中身があるうちはそのまま釣り可能」

「なら小さいの出来るだけいっぱい釣ってくれるかな。釣るのが面倒だからやらなかったけれど試してみたい料理があるから」

 おっとそれは楽しみだ。

「わかった」
 
 このサイズのイワシならいくらでもいるしいくらでも釣れる。
 そしてアイテムボックスには生きたままは入らないけれど鮮度は新鮮なまま。
 だからとにかく釣って入れて釣って入れて……
 
 しかしこれがどんな料理になるのだろう。気になったのでリディナに聞いてみる。

「どんな料理になるの?」

「量が少なければ軽く塩漬けした後、オリーブオイルで煮るのがいいかな。大きいサイズのオイル煮とはまた違った味になるよ。沢山釣れたらしっかり塩漬けにした後オイル漬けにして熱を加えないでそのまま使うなんてのも美味しいかな。
 骨をとった後ジャガイモ粉をつけてカリカリに揚げて、酢と水飴と魚醤を加えた液につけたのも美味しいよ」

 オイルサーディンとアンチョビ、南蛮漬けと考えればいいのだろうか。どれも美味しそうだ。
 ならマシーンに徹して釣れるだけ釣りまくってやろう。

 おっと、セレスが何かを釣り上げたようだ。何だろう、魚なのだろうかあれは。片面が赤っぽい茶色でもう片面が白っぽい、平べったい何か。

「魚?」

「舌平目、白身で美味しいお魚だよ。お酒で蒸したりバターで焼いたりするといいかな。まだ全員食べられる分釣っていないから料理しなかったけれど、これで3匹揃った……かかった!」

 今度はリディナの仕掛けに魚がかかったようだ。
 偵察魔法で確認。こっちは舌平目ではなく魚らしい魚だ。大きさはさっきの鰹もどきと近いが形が違う。

 それにしても舌平目、こんな感じの魚なのか。舌平目のムニエルという料理は聞いた事があるが本物は初めて見た。もっとも地球の舌平目と同じものかどうかはわからないけれど。

 いずれにせよ大漁モードだ。私も負けずにマシーンと化して数釣り作業を続けよう。

 ◇◇◇

 釣りの後、岩に張り付いている牡蠣をはがし、更に岩にくっついている岩海苔っぽい海藻もはがして集めた。

「これって食べられるんですか」

「私も知らなかったけれどね。乾かして紙みたいにすると独特の感じになって面白いよ」
 
 それだけ遊びまくってもまだお昼だ。

「休憩しようか。フミノもいるし、何ならこの辺で泊まってもいいよね」

「確かに」 

 家ごとアイテムボックスに入れてきている。だからここへ家を出してもかまわない。

「何処へ出そう」

「森の手前の草地のところでいいんじゃない? 平らだし、草の様子から見て天気が荒れない限り波も来なそうだし」

 確かにそうだな。

 踏み固め魔法で草ごと潰して整地して、トイレと排水の穴を掘った後、3階建ての家を出す。靴を脱いで上がってべたっと座る。

 疲れた身体にこの姿勢が心地よい。今日は日差しがあってそこそこ暖かいから木の床のひんやりした感触もいい。

 座卓に3人分の軽食と飲物を出せばお昼の準備完了。

 今日のお昼はパスカラで買った満月メンシスと呼ばれるピザを2枚挟んだような代物だ。既に6つにカットされているので食べる時はその6分の1をつまんで食べる形式。

 今回出したのは3枚で、種類はチーズ&トマト&塩漬け肉、野沢菜風菜っ葉の肉炒め&チーズ、栗&バター&水飴。

「この後は自由時間にしようよ。あとフミノ、食べ終わってからでいいからさっき釣った魚、共用の自在袋の方に入れておいて。あとで仕込むから」

「わかった」

 忘れないうちにやっておこう。

 私はこもってバーボン君の改造をするつもりだ。
 ここへ来る途中で魔法銀ミスリル無しの解決方法をひとつ思いついたのだ。それがうまくいくか試してみたい。
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