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第14章 3人目の仲間と 

第111話 目覚めのいい朝

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 硬い感触。木の床だな。私は床の上に横になっているようだ。
 ゆっくり目を開ける。木の天井に木の壁。階段。座卓。そして私を見ている2人の顔。リディナとセレス。

「気づいたみたいね。大丈夫?」

 私は身を起こす。そうだ。確か私はセレスと話していて……

「大丈夫なんですか、本当に」

 セレスが鼻声だ。それだけではなく音質も高い。涙の跡がある。しかも何か取り乱しているような感じだ。
 私と話していた間はそんな様子はなかったのだけれどな。妙に冷静にそんな事を思う。

「心配ないと思うよ。ステータス表示では恐怖で失神と出ていたし」

「でも……」

 その通りだ。恐怖耐性スキルでぎりぎりまで耐えていた。だから気を抜いたとたん、何とか頑張っていた意識がぷっつりしてしまった。

 あの後どれくらい経ったのだろう。状況はセレスがリディナを呼んで、それでリディナがやってきてといったところだろうか。ならせいぜい2~3分といったところだろう。

 以前タチの悪い冒険者に襲われた時の事を思い出す。あの時も意識が回復したのはそれくらいの時間だったかな。

 さて、それでは倒れた事の弁明をしないと。身を起こそうとしたらリディナに軽く腕を押さえられた。まだ横になっていろという事のようだ。

「前に少し話したけれどね。フミノは対人恐怖症なの。一応会話も出来るけれど、その辺はスキルの恐怖耐性で何とか耐えてやっているだけだから。
 知っている間柄ならある程度は平気。でも本気で面と向かって会話なんかするとやっぱり辛くて、結果こうやって限界になっちゃう訳。
 まあ今回はそれを覚悟の上で伝えたい事があったみたいだけれどね」

 リディナ、やはり状況を完全に理解している。ひょっとしてさっきの一幕、ひととおり全部聞かれていたのだろうか。だとすれば赤面ものだ。

「ごめんなさい。それじゃ私……」

「謝る必要はないかな。今回はこれで良かったんだと思うよ。フミノも倒れるの覚悟で言いたかったんだろうから。そうでしょ、フミノ」

「その通り」

 寝ていて頷けないので口頭で肯定する。

「でも、本当に大丈夫なんですか」

「大丈夫。このままでもあと少しでいつもの状態に戻ると思うよ。けれど夜も遅いしもう寝た方がいいかな。
 フミノは私が部屋へ連れていくからもう寝ましょ、セレスもね」

 うん、私もそうしようと思う。確かにもう大丈夫だけれど、自分の部屋でゆっくりしたいから。
 一度ダウンしたおかげで少し回復した。でも念の為に回復魔法を自分に軽くかける。
 私は身を起こす。ふらつかない。問題ない。

「もう大丈夫。自分で歩ける」

「なら念のため後ろを歩くから。でも気をつけてのぼってね」

「わかった」

 この家の数少ない欠点は階段が狭くて急なところ。まだ本調子では無いので2つほど前の段に手をついてゆっくりのぼる。無事2階へ到着。

「それじゃおやすみなさい」

「おやすみなさい」

 部屋へ入ってベッドへ倒れ込む。うん、大丈夫だけれどやっぱり限界。いつもと違って狩りをする気力もない。
 セレスに少しでも私の想いが伝わったかな。そう思いつつ目を閉じる。睡魔がすぐに襲ってきた。
 
 ◇◇◇

 久しぶりにすっきりと目が覚めた。
 いつもは半時間位ぐだぐだやってから部屋を出る準備をはじめる。それくらいないと完全に起きる事が出来ないから。

 しかし今日は何故かはっきりと目が覚めた。なら久しぶりにリディナの手伝いでもしようかな。そう思って何の気なしに偵察魔法で1階リビングを見る。

 おっと、早くもリディナとセレスが朝食調理をはじめていた。何か会話もしている様子。何だろう。
 偵察魔法では声は聞こえない。しかし同じ家の中だ。耳を澄ませば何とか内容は聞こえる。

「……大丈夫でしょうか、フミノさん」

 おっと、セレス、まだ私のことを心配しているようだ。なら早く行った方がいいかな。

「大丈夫だよ。もともとフミノは朝が弱いから。多分もう目は覚ましていると思う。でも部屋を出るまであと1時間くらいかかるかな」

 ふっふっふ。いつもはそうだけれど今日は違う。これはやっぱり姿を見せて早起きしたぞとアピールするべきだろう。そう思った時だ。

「ところで私はフミノさんになんと言えばいいのでしょうか。昨日あそこまで言って貰ったのに結局何も言えなくて」

 支度をしようとした私の手が思わず止まってしまった。
 これはこっそりでも聞かない方がいいだろうか。そう思いつつもつい聴覚に意識を集中させてしまう。

「気にしなくて大丈夫だよ。フミノは何かして欲しいからああ言った訳じゃ無いから。セレスに安心してここに居て欲しいと思っただけじゃないかな。きっと」

「でもそれだけで対人恐怖症で倒れそうなくらいなのに、あんなに面と向かって私に接してくれたんですか」

「フミノはそういう人だから」

 そう言って少し間をおいた後、リディナは続ける。

「私と会った時だってそうだったよ。私とフミノが出会ったのは私が乗っていた馬車が魔狼の群れに襲われていた時。それも馬車から魔狼を引き離す為私が麻痺魔法をかけられて簀巻きにされて馬車の外に放り出された時だったけれど」

「それ、流石に酷くないですか」

「当時は色々あってね。ついでだからちょっと昔話をしていいかな。私がフミノに出会った話」

 おっと、その辺は私もリディナから聞いたことがないなと思う。
 こっそり聞いていいんだろうか、本当はまずいんじゃないか。
 そう思いつつも物音を立てないよう身体の動きを止めたまま、聴覚だけに意識が集中してしまう。
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