129 / 139
第23章 終着点
第128話 待っていた人物
しおりを挟む
「何が起きているのかわかりますか? 運営が何か企んでいるんですか?」
ベータテストだと思っていたがそうではない。
そして此処はタイムスタンプすら狂う、本来使われないはずの場所。
そんな事が出来るのは運営くらいだろう。
「企んでいるというか、運営は本来業務をやっているだけだ。ただ企んでいるというのも正しい。ミヤさんは巻き込まれた形だ」
巻き込まれたか。
「ならカリーナちゃんに何かあるんですか」
「ああ。ただ時間が惜しい。ミヤさんはできるだけ早くカリーナと合流してくれ。多分それは可能な筈だ。
この件でミヤさんには直接的な不利益は出ない筈だ。だからそこは安心していい」
何か変だ。理由はすぐにわかる。メアリーさん、明らかに言及を避けている事があるのだ。
肝心な事を言っていない、聞いていない。言わないようにしている。
「言いたくない事情と言えない事情、どっちですか?」
思い切ってずばり聞いてみた。
「両方だ。今はあくまで私の勘で動いている。その勘があっているかどうかわからないから詳細まで言えない。それでも手遅れにはしたくない。だから理由を言わないまま急かしている。
もし私の勘があっているのなら運営のターゲットはカリーナだ。動いている理由は規約第10条。
そっちのアドレスは掴めた。私もできるだけ速くそっちへ行く。しばらく連絡がとれなくなるけれど心配しないでくれ。
ミヤはカリーナを探す事に専念。そこのマップから出ていない筈だし、そもそもそんなに広い範囲を作ってあるとも思えない。そっちの領域の大きさを考えるとコルフ島の半分程度までだろう。
以上、あまり長い事接続かけていると運営にバレちまうから切る」
ウィンドウが自動で閉じた。
連絡終了という事のようだ。
何なんだろう。言っている言葉はわかるけれど意味が繋がらない。
運営にばれる、運営は本来業務をやっているだけ。運営のターゲットはカリーナちゃん。理由は規約第10条。
それでも今は急ぐべき状況のようだ。
だから移動しながら考えよう。
私は今習った講習内容から地理についての知識を引っ張り出す。
カリーナちゃんが行くと言っていたのは街の北側、キキョウ町やその先の山の方。
そちらへ向かう最短経路はどうだろう。
路面電車が走る道を自分の足でハコダテ駅まで行って、そこから汽車に乗ってキキョウ駅へ向かうのが最短らしい。
路面電車よりは私の足のほうが速いけれど、私の足より汽車が速いし、ハコダテ駅からキキョウ駅は結構遠い。
なおキキョウ町は駅の東側、結構広いエリアのようだ。
ハコダテ駅へ向かって走りながら別Windowを出す。
規約第10条を調べるためだ。
すぐに規約の文面が出てきた。
『第10条(会員の解約)
1 会員は当社所定の方法にて当社に届け出る事により、会員としての登録を解除し、解約することが出来るものとする。
2 当社は以下の会員については、登録を解除し解約すること出来るものとする。
① 最終ログインから1年以上経過している会員
② 死亡が確認された会員
③ 当規約に違反する行為を行う等、他会員及びシステムに多大な損害を与えていると認められる会員』
思ってもいなかった内容だった。
このどこにカリーナちゃんがひっかかるのだろうか。
まず①はありえない。
病気で24時間ログインしっぱなしの筈だし。
かと言って③はカリーナちゃんの性格的にありえない気がする。
そして②、死んでいるというのはもっとありえない筈だ。
つい今朝、カリーナちゃんと話をしたばかり。
そして今のこの状況、此処ハコダテへ来る前から始まっているはずだから。
第10条から離れ、状況を整理するために考える。
今回の事態はいつ頃から起こったのかと。
この場所は本当はベータテストではないらしい。
ならベータテストの話そのものが運営が作った嘘なのだろう。
カリーナちゃんをこの場所へ引き込む為の。
では何故この場所へ引き込んだのだろう。
わざわざ函館、カリーナちゃんの出身を模した街まで作って。
技術的にはこの街を作る事はそれほど難しくはないと思う。
大学でもどこかのサークルが学内ほぼ全域を仮想モデリング化なんてしていたから。
その気になれば航空写真やグーグル等のストリートビューデータ、国土地理院の電子地図を使って数日で出来るらしい。
オンラインゲーム用に大型サーバを持っている会社ならそれほど難しくは無いだろう。
しかし単に規約違反を退会させるだけならそんな事をする必要はない。
32条違反の馬鹿どもに対処したように、その場であの武装天使っぽいのを出して連行すればいいだけ。
わからない、けれど不穏な予感がする。
いや私、本当にわからないのだろうか。
わからないふりをしているだけではないのだろうか。
そうだとしてもこの場にありそうな答えを具体的に表層思考に出す事が出来ない。
理由は怖いからだ、多分。
怖いまま、わからないまま、私は走る。
一応信号は守るし交通事故には気をつけるけれど、ほぼ全開の速度で走り続ける。
停留所に停まろうとしている路面電車を追い越し、信号待ちで車の前、交差点の先端に出て信号とともにダッシュかけて。
路面電車の停留所にハコダテ駅前と書いてある。
このさき左側、広くなっていそうなところが駅のようだ。
運よく信号が青だったので交差点を一気に駆け抜け、見えた駅らしい建物へ一気に駆け込もうとした時。
「思ったより早かったわねぇ」
知っている声がした。
誰かはすぐにわかる。
何も不思議なことはない。
私やカリーナちゃんを此処へ誘ったのは彼女だったのだから。
そして私、思わないようにしていただけで実際は想定済みだったのだろう。
彼女が関わっている事に。
ベータテストだと思っていたがそうではない。
そして此処はタイムスタンプすら狂う、本来使われないはずの場所。
そんな事が出来るのは運営くらいだろう。
「企んでいるというか、運営は本来業務をやっているだけだ。ただ企んでいるというのも正しい。ミヤさんは巻き込まれた形だ」
巻き込まれたか。
「ならカリーナちゃんに何かあるんですか」
「ああ。ただ時間が惜しい。ミヤさんはできるだけ早くカリーナと合流してくれ。多分それは可能な筈だ。
この件でミヤさんには直接的な不利益は出ない筈だ。だからそこは安心していい」
何か変だ。理由はすぐにわかる。メアリーさん、明らかに言及を避けている事があるのだ。
肝心な事を言っていない、聞いていない。言わないようにしている。
「言いたくない事情と言えない事情、どっちですか?」
思い切ってずばり聞いてみた。
「両方だ。今はあくまで私の勘で動いている。その勘があっているかどうかわからないから詳細まで言えない。それでも手遅れにはしたくない。だから理由を言わないまま急かしている。
もし私の勘があっているのなら運営のターゲットはカリーナだ。動いている理由は規約第10条。
そっちのアドレスは掴めた。私もできるだけ速くそっちへ行く。しばらく連絡がとれなくなるけれど心配しないでくれ。
ミヤはカリーナを探す事に専念。そこのマップから出ていない筈だし、そもそもそんなに広い範囲を作ってあるとも思えない。そっちの領域の大きさを考えるとコルフ島の半分程度までだろう。
以上、あまり長い事接続かけていると運営にバレちまうから切る」
ウィンドウが自動で閉じた。
連絡終了という事のようだ。
何なんだろう。言っている言葉はわかるけれど意味が繋がらない。
運営にばれる、運営は本来業務をやっているだけ。運営のターゲットはカリーナちゃん。理由は規約第10条。
それでも今は急ぐべき状況のようだ。
だから移動しながら考えよう。
私は今習った講習内容から地理についての知識を引っ張り出す。
カリーナちゃんが行くと言っていたのは街の北側、キキョウ町やその先の山の方。
そちらへ向かう最短経路はどうだろう。
路面電車が走る道を自分の足でハコダテ駅まで行って、そこから汽車に乗ってキキョウ駅へ向かうのが最短らしい。
路面電車よりは私の足のほうが速いけれど、私の足より汽車が速いし、ハコダテ駅からキキョウ駅は結構遠い。
なおキキョウ町は駅の東側、結構広いエリアのようだ。
ハコダテ駅へ向かって走りながら別Windowを出す。
規約第10条を調べるためだ。
すぐに規約の文面が出てきた。
『第10条(会員の解約)
1 会員は当社所定の方法にて当社に届け出る事により、会員としての登録を解除し、解約することが出来るものとする。
2 当社は以下の会員については、登録を解除し解約すること出来るものとする。
① 最終ログインから1年以上経過している会員
② 死亡が確認された会員
③ 当規約に違反する行為を行う等、他会員及びシステムに多大な損害を与えていると認められる会員』
思ってもいなかった内容だった。
このどこにカリーナちゃんがひっかかるのだろうか。
まず①はありえない。
病気で24時間ログインしっぱなしの筈だし。
かと言って③はカリーナちゃんの性格的にありえない気がする。
そして②、死んでいるというのはもっとありえない筈だ。
つい今朝、カリーナちゃんと話をしたばかり。
そして今のこの状況、此処ハコダテへ来る前から始まっているはずだから。
第10条から離れ、状況を整理するために考える。
今回の事態はいつ頃から起こったのかと。
この場所は本当はベータテストではないらしい。
ならベータテストの話そのものが運営が作った嘘なのだろう。
カリーナちゃんをこの場所へ引き込む為の。
では何故この場所へ引き込んだのだろう。
わざわざ函館、カリーナちゃんの出身を模した街まで作って。
技術的にはこの街を作る事はそれほど難しくはないと思う。
大学でもどこかのサークルが学内ほぼ全域を仮想モデリング化なんてしていたから。
その気になれば航空写真やグーグル等のストリートビューデータ、国土地理院の電子地図を使って数日で出来るらしい。
オンラインゲーム用に大型サーバを持っている会社ならそれほど難しくは無いだろう。
しかし単に規約違反を退会させるだけならそんな事をする必要はない。
32条違反の馬鹿どもに対処したように、その場であの武装天使っぽいのを出して連行すればいいだけ。
わからない、けれど不穏な予感がする。
いや私、本当にわからないのだろうか。
わからないふりをしているだけではないのだろうか。
そうだとしてもこの場にありそうな答えを具体的に表層思考に出す事が出来ない。
理由は怖いからだ、多分。
怖いまま、わからないまま、私は走る。
一応信号は守るし交通事故には気をつけるけれど、ほぼ全開の速度で走り続ける。
停留所に停まろうとしている路面電車を追い越し、信号待ちで車の前、交差点の先端に出て信号とともにダッシュかけて。
路面電車の停留所にハコダテ駅前と書いてある。
このさき左側、広くなっていそうなところが駅のようだ。
運よく信号が青だったので交差点を一気に駆け抜け、見えた駅らしい建物へ一気に駆け込もうとした時。
「思ったより早かったわねぇ」
知っている声がした。
誰かはすぐにわかる。
何も不思議なことはない。
私やカリーナちゃんを此処へ誘ったのは彼女だったのだから。
そして私、思わないようにしていただけで実際は想定済みだったのだろう。
彼女が関わっている事に。
19
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
じいちゃんから譲られた土地に店を開いた。そしたら限界集落だった店の周りが都会になっていた。
ゆうらしあ
ファンタジー
死ぬ間際、俺はじいちゃんからある土地を譲られた。
木に囲まれてるから陽当たりは悪いし、土地を管理するのにも金は掛かるし…此処だと売ったとしても買う者が居ない。
何より、世話になったじいちゃんから譲られたものだ。
そうだ。この雰囲気を利用してカフェを作ってみよう。
なんか、まぁ、ダラダラと。
で、お客さんは井戸端会議するお婆ちゃんばっかなんだけど……?
「おぉ〜っ!!? 腰が!! 腰が痛くないよ!?」
「あ、足が軽いよぉ〜っ!!」
「あの時みたいに頭が冴えるわ…!!」
あ、あのー…?
その場所には何故か特別な事が起こり続けて…?
これは後々、地球上で異世界の扉が開かれる前からのお話。
※HOT男性向けランキング1位達成
※ファンタジーランキング 24h 3位達成
※ゆる〜く、思うがままに書いている作品です。読者様もゆる〜く呼んで頂ければ幸いです。カクヨムでも投稿中。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。
みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ!
そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。
「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
リアゼノン・オンライン ~プレイ中のゲームから異世界に連行された俺は、多くの人に学ぶ中で最強を目指す。現在地球は大変だそうです
八ッ坂千鶴
SF
レベルアップするとステータスの数値が減少するデスゲーム
〈リアゼノン・オンライン〉
そんなゲームにログインしたのは、要領が悪い高校1年生宮鳥亜蓮十六歳。
ひょんなことから攻略ギルド【アーサーラウンダー】へ参加することになり、ギルド団長ルグア/巣籠明理に恋をしてしまう。
第十層で離れ離れになっても、両思いし続け、ルグアから団長の座をもらったアレン。
スランプになりながらも、仲間を引っ張って行こうとしていたが、それは突然崩されてしまった。
アレンはルーアという謎の人物によって、異世界【アルヴェリア】へと誘拐されて行方不明に……。
それを聞きつけてきた明理は、アレンを知っているメンバーと共に、異世界から救出するため旅に出る。
しかし、複数の世界が混じり合い、地球が破滅の一途に進んでいたとは、この時誰も知らなかった。
たった一人を除いて……。
※なろう版と同じにしている最中なので、数字表記や記号表記が異なる場合があります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる