124 / 139
第22章 昔いた街
第123話 お昼を食べに行く道で
しおりを挟む
カリーナちゃんが案内してくれた市場はなんというか、昔懐かしい昭和の庶民の商店街&屋根付き市場という感じだった。
外周部は寂れた田舎の街のアーケードも何もない元商店街の外れという感じ。
建て直して店ではなくなった家とか、昔は店だったという感じの建物とか、空地になっている区画とか。
しかし屋根付きの市場とかその周辺はまだまだ生きている感じ。
店頭に品物と手書きの値札を並べて売っているという昔ながらのスタイルの店がそこそこ並んでいるし、人もいる。
「わざとレトロかつ庶民的に作っているのかな。寂れた感じを含めて」
「令和○○年の函館でも此処はこんな場所です。ただ活気は現実よりこっちの方があると思います」
「建物とかもこんな感じ?」
「そうです。その辺のボロさは現物そのままだと思います。うろ覚えですけれど」
市場というとすぐ思いつくような魚や野菜等だけでなく、惣菜だのも売っているし、薬局だの理髪店なんてのまである。
いわゆる昭和を詰め込んだ感じだ。
リアルタイムでは私、昭和どころか平成も知らないのだけれど。
ケルキラには無かった日本風の食材、カニだのタラコだのかまぼこ、更には豚肉だけれど焼き鳥、豆腐や豆腐コロッケなんてものまで購入してアイテムボックスへ。
「こういう食べ物って懐かしいよね。ケルキラには無かったし」
「そうですね。ものすごく久しぶりで食べるのが楽しみです。そう言えばお昼ですけれど何か食べたいものってありますか?」
食べたいものか。
個人的にはせっかく北海道に来たのだから寿司とか海鮮とかを食べたいところだ。
冒険者ギルドでもらった案内図にもおすすめの店が幾つか載っている。
でもカリーナちゃん、何か食べに行きたいものがあるように感じる。
だからここはカリーナちゃんに聞いてみよう。
「おすすめってある?」
カリーナちゃんは少し考えるような素振りをした後、冒険者ギルドで貰った案内図を見て、そして小さく頷いてから口を開く。
「せっかく函館に来たので最初はお寿司はどうでしょうか」
まさにそう思っていたのでありがたい。
「いいね。たしかに海鮮、美味しそうだし」
「観光目線で見ればきっと駅前の市場で海鮮丼とかが一般的です。でも今日は特別ではないものを多種類食べてみたいので回転寿司ではどうでしょう」
「もちろん。その方が絶対楽しい気がする」
「ならちょっと此処から歩きますけれどいいですか。早足で10分ちょいだと思います」
全く問題はない。
「勿論。ケルキラでは普通にそのくらいは歩いていたし」
「そうですね。なら行きましょうか」
路面電車の通りを渡って南方向へ歩いていく。
この辺はなんというか普通の住宅地だ。
ただ私にとっておなじみの東京近郊に比べると何処か違う感じがする。
少し歩いてみて、そして気づいた。
「この辺の家って塀が無いんだね」
「雪かきの時に不便だからと聞いたことがあります。あと除雪車が通ると壊れるからとか。
あと屋根も日本家屋っぽい陶器の瓦が少ないって聞きました」
言われて改めて見て確認してみる。
「本当だ。トタン屋根か、陶製じゃない薄い瓦」
「実は他の地域がどうなのかはよく知らないんです。小学校でそう習っただけですから。それにこの辺は元お店っぽい建物が多いので、完全な住宅地とはまた少し違うかもしれません」
確かに普通の戸建よりもう少し大きな箱型の建物が多い。
玄関というか出入口の開口部が大きく、元は店だったような建物も。
「街の中心が移ったのかな」
「函館自体の人口が減っているんです。日本全体の人口減少以上の速さで。毎年三千人以上減っていると聞いています。結果、お店なんかも廃業してただの住宅になったりしているんです。
目立った産業は観光以外何もないから仕方ないです。大学に行くならどうせ出ていくし、そうしたら仕事がないから戻らないだろう。小学校5年の時点でそう思っていました。
まさかこんな形で戻れなくなるとは思いませんでしたけれど」
まずい話題になっただろうか。
何気なさを装いつつカリーナちゃんの様子を伺う。
カリーナちゃんの様子はいつもと変わらない。
いや、ケルキラにいた頃とは少し違うような気がする。
しかし危険な感じ、心配しなければならない様子はない。
少なくとも現在、私の感じる限りでは。
大通りに出た。
向かい側にあるチェーン店風の食堂の駐車場の先に海が見える。
でも海が気になるけれど、実は今いる交差点のすぐ横の店も気になる。
鶏屋さんらしいメニューが出ている。
しかし店内で食べるメニューよりもテイクアウトの方がひかれる。
具体的には……
「今は回転寿司の気分だけれど、後でこの半身揚げのテイクアウトも買っていい?」
「ええ。小樽の有名店の支店でわりと評判はいいみたいです。勿論現実での話ですけれど」
「 現実のこの場所にもこのお店があるんだ」
「確か……ええ、今もあるみたいです」
どうやらネットを検索して調べた模様。
さて、目的地らしい回転寿司店は交差点のすぐ先に見える。
念のため確認しておこう。
「その回転寿司店だよね、目的地」
「ええ。お店が大きくて景色も良くて、駅前の市場より安いです。現実では最寄り駅が無いから車で来るしかないのですけれど」
外周部は寂れた田舎の街のアーケードも何もない元商店街の外れという感じ。
建て直して店ではなくなった家とか、昔は店だったという感じの建物とか、空地になっている区画とか。
しかし屋根付きの市場とかその周辺はまだまだ生きている感じ。
店頭に品物と手書きの値札を並べて売っているという昔ながらのスタイルの店がそこそこ並んでいるし、人もいる。
「わざとレトロかつ庶民的に作っているのかな。寂れた感じを含めて」
「令和○○年の函館でも此処はこんな場所です。ただ活気は現実よりこっちの方があると思います」
「建物とかもこんな感じ?」
「そうです。その辺のボロさは現物そのままだと思います。うろ覚えですけれど」
市場というとすぐ思いつくような魚や野菜等だけでなく、惣菜だのも売っているし、薬局だの理髪店なんてのまである。
いわゆる昭和を詰め込んだ感じだ。
リアルタイムでは私、昭和どころか平成も知らないのだけれど。
ケルキラには無かった日本風の食材、カニだのタラコだのかまぼこ、更には豚肉だけれど焼き鳥、豆腐や豆腐コロッケなんてものまで購入してアイテムボックスへ。
「こういう食べ物って懐かしいよね。ケルキラには無かったし」
「そうですね。ものすごく久しぶりで食べるのが楽しみです。そう言えばお昼ですけれど何か食べたいものってありますか?」
食べたいものか。
個人的にはせっかく北海道に来たのだから寿司とか海鮮とかを食べたいところだ。
冒険者ギルドでもらった案内図にもおすすめの店が幾つか載っている。
でもカリーナちゃん、何か食べに行きたいものがあるように感じる。
だからここはカリーナちゃんに聞いてみよう。
「おすすめってある?」
カリーナちゃんは少し考えるような素振りをした後、冒険者ギルドで貰った案内図を見て、そして小さく頷いてから口を開く。
「せっかく函館に来たので最初はお寿司はどうでしょうか」
まさにそう思っていたのでありがたい。
「いいね。たしかに海鮮、美味しそうだし」
「観光目線で見ればきっと駅前の市場で海鮮丼とかが一般的です。でも今日は特別ではないものを多種類食べてみたいので回転寿司ではどうでしょう」
「もちろん。その方が絶対楽しい気がする」
「ならちょっと此処から歩きますけれどいいですか。早足で10分ちょいだと思います」
全く問題はない。
「勿論。ケルキラでは普通にそのくらいは歩いていたし」
「そうですね。なら行きましょうか」
路面電車の通りを渡って南方向へ歩いていく。
この辺はなんというか普通の住宅地だ。
ただ私にとっておなじみの東京近郊に比べると何処か違う感じがする。
少し歩いてみて、そして気づいた。
「この辺の家って塀が無いんだね」
「雪かきの時に不便だからと聞いたことがあります。あと除雪車が通ると壊れるからとか。
あと屋根も日本家屋っぽい陶器の瓦が少ないって聞きました」
言われて改めて見て確認してみる。
「本当だ。トタン屋根か、陶製じゃない薄い瓦」
「実は他の地域がどうなのかはよく知らないんです。小学校でそう習っただけですから。それにこの辺は元お店っぽい建物が多いので、完全な住宅地とはまた少し違うかもしれません」
確かに普通の戸建よりもう少し大きな箱型の建物が多い。
玄関というか出入口の開口部が大きく、元は店だったような建物も。
「街の中心が移ったのかな」
「函館自体の人口が減っているんです。日本全体の人口減少以上の速さで。毎年三千人以上減っていると聞いています。結果、お店なんかも廃業してただの住宅になったりしているんです。
目立った産業は観光以外何もないから仕方ないです。大学に行くならどうせ出ていくし、そうしたら仕事がないから戻らないだろう。小学校5年の時点でそう思っていました。
まさかこんな形で戻れなくなるとは思いませんでしたけれど」
まずい話題になっただろうか。
何気なさを装いつつカリーナちゃんの様子を伺う。
カリーナちゃんの様子はいつもと変わらない。
いや、ケルキラにいた頃とは少し違うような気がする。
しかし危険な感じ、心配しなければならない様子はない。
少なくとも現在、私の感じる限りでは。
大通りに出た。
向かい側にあるチェーン店風の食堂の駐車場の先に海が見える。
でも海が気になるけれど、実は今いる交差点のすぐ横の店も気になる。
鶏屋さんらしいメニューが出ている。
しかし店内で食べるメニューよりもテイクアウトの方がひかれる。
具体的には……
「今は回転寿司の気分だけれど、後でこの半身揚げのテイクアウトも買っていい?」
「ええ。小樽の有名店の支店でわりと評判はいいみたいです。勿論現実での話ですけれど」
「 現実のこの場所にもこのお店があるんだ」
「確か……ええ、今もあるみたいです」
どうやらネットを検索して調べた模様。
さて、目的地らしい回転寿司店は交差点のすぐ先に見える。
念のため確認しておこう。
「その回転寿司店だよね、目的地」
「ええ。お店が大きくて景色も良くて、駅前の市場より安いです。現実では最寄り駅が無いから車で来るしかないのですけれど」
16
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる